※「Tyrant」シーズン1~3、「SUITS/スーツ」シーズン5、6についてのネタバレを含みます。
架空の中東の国アブディンを舞台に繰り広げられる家族ドラマとして始まった「Tyrant」は、今月6日にシーズン3を迎えました。シーズン1では、祖国を捨て米国で小児科医になったバリー・アル=ファイード(アダム・レイナー)が、権力に酔いしれた兄ジャマル(アシュラフ・バローム)との信条の違いを目撃し、血の繋がった兄弟でありながら、文化や環境が形成した人となりを今更変えることはできないと悟りました。
アル=ファイード家の次男バリー(レイナー・左)は、長男ジャマル(バローム・右)の独裁者振りに耐えられず、ジャマルの失脚を企てて失敗、砂漠で放浪しているうちに革命運動の指導者に祭り上げられる。評論家は、レイナーの演技がいまひとつ...派と、振り出しに戻った、何の進展もないストーリーに難あり派に二分されている。WENN.com
シーズン2は、民主化革命運動に参加して、ジャマル失脚を企てたとし、処刑される筈だったバリーの長~くて辛い砂漠の流浪の旅を描きました。救いの手を差し伸べてくれた人達と共に、革命運動に復帰、友達を探していて、革命に巻き込まれた息子サミー(ノア・シルバー)に巡り会います。家族はバラバラで、シーズン2は家族ドラマと言うより、中東の政情を描くドラマでした。昨年6月11日の「USA局の新作『Complications』と『Tyrant』に相通じる父親像」で述べましたが、両作の主人公は目的の為なら手段も影響も顧みない無鉄砲な父親です。
バリーとモリーの長男サミー(シルバー)は、中東では到底生きていけないゲイだが、禁断の木の実を嗅ぎ分けては、トラブルに巻き込まれて行く。父親が家族を顧みず、好き勝手なことをしているから、当然と言えば当然の行動かもしれない。WENN.com
そして、シーズン3では、どうなるのか?バリーは、自分の無責任さを反省したか?を楽しみにしていたのですが....蓋を開けてみて、がっかり。兄ジャマルが危篤状態で、バリーは国民投票が実施できるまで、大統領を代行する羽目になります。しかも、シーズン2ではほとんど話題にも上らなかった、娘エマ(アン・ウィンターズ)を米国から呼び戻し、妻モリー(ジェニファー・フィニガン)、息子サミーの4人で宮殿に入り込み、何の抵抗もなくファースト・ファミリーの座に就きました。
バリーに恨み辛みの過激派リーダーを釈放したばかりに、エマを誘拐され、モリーが身代わりになって娘を助けようとしますが....バリーは何を考えているのでしょう?家族にとっては良い迷惑ですよ!同じ親から生まれた兄弟が、文化や育ちの違いでどう成長するのか?が面白かったシーズン1ですが、回り回って、結局振り出しに戻り、肩透かしを食ったような気がします。
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一体何の為に、家族を犠牲にして謀反を先導したのですか?と、バリーに詰問したくなります。扶養家族も責任もない独り者ではないのですから、家長がこんなに無責任で良いのでしょうか?身勝手な父親に腹が立つと同時に、何か納得できない、もやもやを感じます。
モリー(フィニガン・手前)は献身的な妻だが、こんな政情の不安な国に娘エマ(ウィンターズ・奥)を呼び戻すなど、現実的ではない。男の身勝手な行動に一番振り回されるのは、いつも周囲の女性たち。モリーよ、エマよ、立ち上がれ!(c) Kata Vermes/FX
一方、「SUITS/スーツ」シーズン6は、7月13日から再開されました。パイロットで、ハーヴィー(ガブリエル・マクト)が資格も免許もないと知りつつ、子分に相応しい’生きる知恵’を持った記憶力の鬼才マイク(パトリック・J・アダムズ)を雇った瞬間から、いつバレるのか?がこのドラマの前提です。シーズン3辺りから、マイクの化けの皮を部分的に剥がしてきましたが、シーズン5後半で遂に裁判沙汰になり、今シーズンは刑務所内のマイクとピアソン・スペクター・リット(PSL)法律事務所の再建が並行して描かれます。
別々の世界に生きることになったハーヴィー(マクト)とマイク(アダムズ)の師弟関係はどう変わるのか?先シーズン、パニック発作を起こし、カウンセリングに通い始めたハーヴィーをお守りする羽目になったマイク。ハーヴィーを守るために、ムショ入りしたマイクだけに、どっちが師?逆転した可能性は?を楽しみに観たい。WENN.com
シリーズ更新を確保するための策略だったのか、秘密を小出しにして、知っている人の輪を少しずつ広げ、今シーズンまで必然の結果を延ばし延ばしにしてきました。毎シーズン、’そんなアホな!’と苦笑してしまう安易な結末でお茶を濁して来たため、ハーヴィーに迷惑がかからないようにと、マイクが服役2年を選んだ善行が霞んでしまいました。ここまでの道のりが長過ぎた、紆余曲折が多々あり過ぎたこともあり、それほど衝撃を感じませんでした。
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まるで沈没する船から、瞬く間にネズミが逃げ出したように、見事に空っぽの事務所でジェシカ・ピアソン(ジーナ・トレス)、ハーヴィー、ルイス・リット(リック・ホフマン)が首脳会議を開き、今後の方針を練ります。3人に手を貸すのは、レイチェル(メーガン・マークル)、ハーヴィーの秘書に舞い戻ったドナ(サラ・ラファティー)、現在ルイスの秘書グレッチェン(アローマ・ライト)と、IT担当者の計4人です。
一方、刑務所で不安な第一夜を過ごすマイクは、優しく接してくれる同居人(?)フランク(ポール・シュルツ)に気を許して、身の上話をします。しかし、ハーヴィーとフランクは、繋がっていたのです。こうして、刑務所内とPSL法律事務所の二つの世界が巧みに描かれます。それにしても、ハーヴィーに個人的に恨みを抱いている人の多いことには、開いた口が塞がりません。シーズン5でカウンセラーに過去の欠片を語ってはいますが、どんなに阿漕なことをしたのでしょうか?私は、マイクを救い出すことより、ハーヴィーの過去を暴く方に興味を抱いてしまいます。キャラの動機を分析するのが大好きと言うこともありますが、どうも、シーズン6でシリーズが完了しそうな気配なので、チャンスは今しかない!と思うからです。
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