昨年9月10日「21世紀の結婚を考察する『Satisfaction』『The Affair』」でご紹介した二作の内、「Satisfaction」は、180度方向転換してしまい、更新されても観たくない暗~い作品になってしまったことは既にご報告しました。(10月30日の「『Satisfaction』よ、お前もか!?青空シリーズは古代の遺物になる?」をご覧ください。)
「Satisfaction」とは正反対、シーズン2は1の何倍も面白いのが、10月4日から放送されている「The Affair」です。英語で書いたテレビ評は、こちらをご覧ください。
http://www.familychoiceawards.com/entertainment/the-affair-season-2-airs-on-showtime/
邦題「アフェア 情事の行方」として、11月19日にWOWOWプライムで放送開始されましたが、シーズン2は益々面白くなるので、お見逃しなく!という私の一押しドラマです。ネタバレしない程度に、ご報告します。
クリエイター(ハガイ・リーヴィー、サラ・トリーム)の過去の実績を目の当たりにしていたので、不倫の波紋を描くこのドラマへの期待度は高かったのですが、第一話からすっかりハマってしまうほどの出来。昨今珍しい心理ドラマであることに加えて、不倫の当事者アリソン(ルース・ウィルソン)とノア(ドミニク・ウエスト)の物の見方が、如何に異なるかが実に巧妙に描かれました。性別、生い立ち、階級、教養などのフィルターを通すと、不倫に纏わるアリソンとノアの体験談がここまで違ってくるのか?とびっくりしました。
シーズン1プレミアに先駆けて、昨秋送られてきた小冊子。第1章ノアとヘレン(左上の白い冊子)と第2章アリソンとコール(紺色の冊子)には、トリームの序文、ドラマの触りやセリフ、俳優のプロフィール、制作陣の経歴などが記載されていた。右上端は、TCAプレスツアーで配布されたプレミア回のDVD。プレミア後は、数話纏めてDVD(下段の3枚)が届いた。(c) Meg Mimura
もう一つ驚いたのは、去る8月に実施されたパネルインタビューで、「事実はどれなのか?」と尋ねる評論家が多数いて、トリームとプロデューサーのジェフリー・ライナーを困惑させたことです。散り散りなった2組の夫婦を繋ぎ止める役目を果たす、とある「事件」の謎解きをしたい気持ちは解りますが、「事件」に固執する余りドラマの真髄を見逃しているな~と思いました。この手の心理ドラマに慣れていない評論家が多いからでしょうか?それとも得体の知れないものを分析しようとする余りの質問だったのでしょうか?確かに、シーズン1は「??」と思うことが多かったとは思いますが、私は何度も観て確認したので、質問は流し観している人から出たのではないでしょうか?
シーズン2は、4人の視点で描くドラマの内容に因んで、化粧箱を開けると、各キャラの小冊子が4冊出てきた。今シーズンから、オンラインで前もって視聴できるようになったが、最初の2話が入ったDVDも添付されていた。(c) Meg Mimura
現実からの逃避だったシーズン1とは打って変わり、今シーズンはアリソンとノアが現実に直面せざるを得なくなります。出逢いから不倫までは、夢の中のようで、現実が入り込む余地はほとんどありませんでしたが、流石にお互いの家族や日々の暮らしが貫入して来ると、綺麗事では済みません。
シーズン2は不倫発覚後のヘレン(モーラ・ティアニー)とコール(ジョシュア・ジャクソン)が加わり、4人の男女の視点から描かれ、早いペースで進展して行きます。アリソンとノアが築こうとする新たな世界は、波打ち際に作った砂の城のように、少しずつ崩れて行きます。ノアが書いた小説が作り話であるにも関わらず、登場人物として取り上げられた人達の現実が歪み始める「文字の魔力」が描かれている点は、もの書きにとっては特に面白い点です。
残り3回となってしまいましたが、早く次回が観たいと思うと同時に、終了してしまったら、シーズン3まで待てない!と不安を覚えます。
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