「Satisfaction」(昨年9月10日「21世紀の結婚を考察する『Satisfaction』『The Affair』」でご紹介)の期待のシーズン2が、 10月16日午後10時に放送開始されると聞きつけ、9月中旬からUSA局広報にDVDを送ってくれるよう再三依頼しました。ぎりぎりになって、DVDには焼かない方針になった、オンラインでも前もって観るようにはしていないと言い渡されました。えー?今年に入って、USA局のどの作品の番宣DVDも舞い込まなくなった訳です。
シーズンの展開を説明する文書と共に、1~2話録画したDVDを必ず送ってきたUSA。他局同様、オンラインに移行したのかと思い、アクセスしたいと懇願したがそれも断られた。(c) Meg Mimura
星の数ほどあるテレビ番組の中から、厳選してお薦めするのが評論家の使命です。視聴者と同時に観ていては、仕事になりません。新番組にしか番宣予算がとれない各局が、毎シーズン視聴率が下降することを前提に、継続番組の番宣に手間暇かけないと言う投げ遣りな態度が最近横行しています。シーズン2を観て、えー、こんな秀作見逃していたの?と気付く視聴者もいますから、番宣に手間暇かければ、この悪循環を断ち切ることは可能だと思うのですが....
とは言え、番宣予算云々以前に、局の持ち味が豹変し始めたことが気になります。USA局の名を上げるのに大きく貢献した青空シリーズ(Blue Sky series)が、一本ずつ消えて行きます。青空シリーズとは、「ホワイト・カラー」や「リーガルに恋して」「サイク/名探偵はサイキック? 」「ロイヤル・ペインズ/Royal Pains 〜救命医ハンク〜」「バーン・ノーティス 元スパイの逆襲」などに代表される、私立探偵/刑事/弁護士/医師のお洒落でユーモアたっぷりのドラメディーです。元々、レスリング局として知られていたUSAが、女性視聴者集客を目論む苦肉の策だったのかもしれません。
ところが、「SUITS/スーツ」ファンの半数以上が青年層と発表があり、スポンサーの毛色が変わった後に登場した「グレイスランド/西海岸潜入捜査ファイル」(2013年)辺りから、抜けるように青かったUSAの空に、雲が現れ始めました。2014年の「RUSH ~スキャンダルな外科医」は呆気なく打ち切られてしまいましたが、今春登場した「Complications」や「Mr. Robot」の前兆だったようです。来年1月にデビューを控えているカールトン・キューズの「Colony」は、宇宙人に乗っ取られたLAで必死に抵抗するレジスタンス一家を描くSFアクション・アドベンチャーです。次第に、USA局の青空に暗雲が垂れ込めるような、陰険な作品が登場し始めました。底抜けに明るい作品ばかりと言う訳には行かないのは分かりますが、陰険さで他局とどんぐりの背比べする必要はない筈です。
10月16日に始まった「Satisfaction」シーズン2も、暗雲に拍車を掛けています。シーズン1は、21世紀の結婚を考察する作品として、「アフェア 情事の行方」と並べてご紹介したほど、示唆に富んだドラマでした。
グレース(ステファニー・ショスタク、左)は、夫の裏切りに愛想をつかして、インテリア・デザイナーとして雇ってくれたマダム・エイドリアナ(キャサリン・ラナサ)の豪邸に逃げ込む。リッチな女性にジゴロを派遣するエイドリアナの商売や夫との関係にも興味津々のグレース。Courtesy of USA Network
何の不自由もなく、幸せな一家として世間から羨望の的だったトルーマン一家ですが、蓋を開けて見ると....外見と中身は大違い!進学を断念した歌手志望の娘アニカ(ミシェル・デション)が巣立つと、すれ違いで広がった溝を埋める努力を怠った結果、ニール(マット・パスモア)とグレース(ステファニー・ショスタク)は遂に別居してしまいます。
ニール(マット・パスモア)は、投資アドバイザーに復帰したものの、時々有閑マダムのお相手をする羽目に。マダム・エイドリアナのコントロールを嫌い、今シーズンはサイモンとコンビを組む。Courtesy of USA Network
夫婦を引き裂こうとするのは、ニールにあの手この手でちょっかいを出すマダム・エイドリアナ(キャサリン・ラナサ)と、グレースの元ジゴロのサイモン(ブレア・レッドフォード)です。しかし、ニールはサイモンと組んで高級ジゴロ派遣会社を設立し、グレースはマダム・エイドリアナの罠にまんまと引っかかって、男対女の闘いに発展して行きます。
サイモン(ブレア・レッドフォード)は、バーで会ったグレースに恋して、駆け落ちを提案した。シーズン2では、サイモンの素性や父親との複雑な関係が明るみに出て、意外な事件に発展して行く。Courtesy of USA Network
シーズン1からニールは悟りを開こうと奔走し、今シーズンも何とか倦怠期を乗り切ってグレースを取り戻そうとします。片や、相変わらず他力本願で、地に足が着かないグレースは、才能を伸ばす降って湧いたチャンスを棒に振って、逃げの一手に出ます。背信を詫びるどころか、自責の念に駆られることもありません。口にこそ出しませんが、グレースの居直りの根拠は、「夫に構ってもらえないから、浮気に走るのは当然!」のようです。シーズン2に至っては、マダム・エイドリアナの挑発に乗ったり、時にはニールを巡ってマダムと張り合ったり、どんどん現実離れして行きます。
第一話放送の翌日、シーズン2全10話が一気観できるようになっていることを発見しました。局の方針が不可解なので、一時的にアップロードされているだけかも知れないと、丸1日かけて、観ました、観ました。一気観は3話が限度なんですが....
「クリエイターはこんな展開を最初から予想して、創作したのだろうか?是非、聞いてみたい!」と思いました。クリエイターのビジョンが大きく振れたのではないか?と想像するからです。更に、余程女にひどい目に会ったのではないか?と思うほど、グレースとエイドリアナのキャラがどぎつい悪女として描かれています。
金曜日夜10時という放送時間をとっても、シーズン2が暗い、ムカつく終わり方をした事実をとっても、シーズン3はもうあり得ないと推測します。万が一更新されても、ニール以外のキャラには感情移入できないので、後は野となれ、山となれ!すっかり、興味を失ってしまいました。
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