「グッドワイフ」に登場する数あるユニークなキャラの中で、スピンオフを制作して欲しいと願う視聴者数が最も多いのが、キャリー・プレストンが演じるエルズベス・タシオニ弁護士です。そのプレストンが主演する春の新番組「Crowded」が、いよいよ放送開始となります。
タシオニ弁護士ほど一瞬たりとも目が離せないキャラではありませんが、友達親子のジレンマを一身に引き受けるマーティーナを演じるプレストン。子供がいないプレストンは、「大学院に行く前の数ヶ月、母親と同居して友達親子になった」と明かした。 WENN.com
ぬくぬくと生活できた実家が恋しくて、巣立った筈の若者が舞い戻ることをブーメラン現象と呼びます。米国では、伝統的に18歳あるいは大学に進学する時点で親元から独立するのが常識でしたが、2010年のリーマンショック以来、実家に戻る若者の数は年々増加し、今や社会問題になっています。
去る1月13日に実施された「Crowded」のパネルインタビューで、番組を創作したスザンヌ・マーティンは、本コメディーは「正に私の現実よ!」と告白しました。「ミレニアル世代の31%が実家で親と同居してると言う統計が出てるわ。注目すべき点は、何と80%が負け組と恥じるどころか、ぬくぬくと生活しているってこと!友達親子が多いって証拠じゃない?」と2015年の統計を披露しました。
20年余り子育てを優先して生きてきたマイク(パトリック・ウォーバートン)とマーティーナ(プレストン)が、やっと夫婦二人で自由を謳歌しようとしている矢先に、思いがけない邪魔が入ります。女優志望の長女ステラ(ミア・セラフィノ)と、天体物理学者を目指す次女シェイ(ミランダ・コスグローブ)が舞い戻り、老後を楽しむためフロリダに引っ越しする予定だったマイクの父親ボブ(ステイシー・キーチ)と後妻アリス(カーリース・バーク)が離れに居座ることになります。ブーメラン現象で親子三代が一軒家に同居するマーティンの現状を風刺すると同時に、ミレニアル世代を世に送り出してしまった友達親子の功罪をコメディー・タッチで描きます。
マイク役のウォーバートンは、マーティーナよりは子離れしているが、愛娘なので過保護になりがち。「でも、我が家の現実より、まだ救いがある」と本作がいかに軽症であるかを指摘した。ブーメラン現象や友達親子の蔓延度が伺える発言だ。 WENN.com
ステラやシェイが代表するミレニアル世代とは、1980年~2000年代前半に生まれた若者層のことで、日本の氷河期世代の終末部+ゆとり世代に匹敵すると言えば、思考経路をご想像頂けるでしょう。子供に嫌な思いをさせないため、叱らない/諭さない/躾けない/過保護の’友達志望の親’に育てられた世代のことです。
また、マーティンはミレニアル世代は「アメアイ世代」とも括ります。才能も技術も身につけていないのに、容易に「アメアイ」でアイドルになって富、名声を手に入れられると確信して止まない人種だからです。躓くと周囲や環境の所為にし、反省は一切なく、何の躊躇もなく実家に転がり込み、「帰ってきてあげたんだから、面倒みるのが当たり前でしょ!」的態度をとります。
「アメアイ世代」を絵に描いたような歌手/女優志望のステラを演じるセラフィノ。長女は普通、責任感が強い筈では? WENN.com
自らの体験を顧みて、「友達親子は、子育てじゃない。独り立ちできない、大人になりたくない子を育てたら、後悔先に立たず!と注意されたけど、それを敢えてやってしまった我々の世代を描きたかった」とマーティンは創作の動機を明かしました。自業自得と知りつつ、スパルタ教育で叩き上げられた団塊の世代は、正反対の友達親子になってしまい、此の期に及んで友達と親の狭間に立っていると漸く気付いたのでしょうか?
マイク役のウォーバートンは、「僕は『Crowded Light』って呼びたいね。我が家には子供4人と犬が4頭同居してるから、もっと重症ってことだよ。去年は、がん末期の舅を引き取り、看病に姻戚が出たり入ったりだったし、子供の彼氏や彼女も居着いてるし....」と、本作が如何に軽症であるかを語りました。
コスグローブが演じるシェイは、頭が良い分、社交性ゼロの物理オタクだ。姉ステラからデート術を伝授してもらうほど正反対だが、出世の確率は完全に高い妹シェイ。 WENN.com
子供に嫌われることが何よりも怖い親が、煽て上げて育ったミレニアル世代を演じるコスグローブは、(ウォーバートン曰く「子役で稼いで12歳で購入した」)持ち家があるにも関わらず、「99%は実家にいるわ。喧嘩になったら、『帰る!』って脅すけど、実家で過ごす方が楽」と述べました。友達親子については、「お父さんもお母さんも大好き。大事にしてくれるし、実家の私の部屋はそのままにしてくれてるし...」と子供に戻れる実家が痛くお気に入りです。
甘やかして、居心地満点にすれば、依頼心の強いミレニアル世代のこと、いつまで経っても巣立つ訳がありません。私は他人事と笑っていられますが、友達親子の功罪を徹底的に分析して、米国の将来を担える若者に鍛え直して頂きたいものです。
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