ABCのヒットメーカーとして君臨するションダ・ライムズが放つ春の新作「The Catch」。初めてパイロット版を目にしたのは、2015年1月でした。2015年冬のTCAプレスツアーの準備のため、ABCのサイトでストリーミングを観て以来、いつかいつかと待ち続けていたドラマです。詐欺や横領を専門に調査する会社で働くアリス(「THE KILLING~闇に眠る美少女」のミレイユ・イーノス)が、若いツバメに騙され、沽券に関わる!と復讐に立ち上がると言う設定でした。映画「トーマス・クラウン・アフェア」をテレビシリーズ化しようと言う意図が読み取れ、のめり込む要素はたっぷり、続きが観たい!と思う数少ないドラマの1本だったのですが....
ションダランド三人目のヒロインは腕利の調査員アリス(イーノス)。「THE KILLING~闇に眠る美少女」のサラ・リンデンとは正反対の、華麗でオシャレなデキる女に変~身。リンデンが見せたことのない’微笑み’が「The Catch」の売りだ。 WENN.com
昨年1月のプレスツアーでは紹介されず、一体どうなってるのか?と案じていましたが、5月頃から幸先の悪い報道が流れ始めました。7月、アリスをカモにした詐欺師を演じたデイモン・ダユーブが三行半を突きつけられ、代わりに「シックス・フィート・アンダー」等で日本でもお馴染みのピーター・クラウスが配役されたと報道されました。特にダユーブが良かったからと言う訳ではないのですが、どのキャラを演じても代わり映えしないクラウスは適材ではないので、待ち侘びていた番組だけに、がっかりしました。更に、翌月にはクリエイター(創作+脚本)ジェニファー・シュール(「THE KILLING~闇に眠る美少女」のライター)と制作を担当するジョシュ・レイムズ(「ブラザーズ&シスターズ」「ダーティー・セクシー・マネー」他)が降板してしまったのです。代わりに「スキャンダル」でお馴染みのアラン・ハインバーグに白羽の矢が立っていると伝えられ、期待のドラマが次々と変貌を遂げていることが察知できました。キャストの変更は頻繁にありますが、クリエイターの入れ替え=番組のヴィジョンが貫けなかったと読み取れ、トラブルの前兆に他なりません。
実業家クリストファー(クラウス)の本性は?30代のダユーブから、50代のクラウスに乗り換えたのは、アリス(イーノス)と渡り合える詐欺師にしたかったからに違いないが、クラウスがトーマス・クラウンの器量を備えているとは思えない。 WENN.com
そして、今月に入って初めて流れた番組のトレーラーは、以前観たパイロットでは頭脳戦が示唆されましたが、180度転換して、イーノスとクラウスのアクション路線に乗ってしまったように見えました。益々クラウスは適材ではない!と確信、期待感で膨らんでいた風船に又々、穴が開いて、空気が抜けて行きます。
いよいよ3月24日にプレミアに漕ぎ着ける「The Catch」ですが、ABCは本年1月のプレスツアーで紹介するどころか、未だにパイロットを送ってきません。これも局がこの作品にどの程度期待を寄せているかの証拠です。これまでションダ・ライムズのお墨付きドラマ(「OFF THE MAP/オフ・ザ・マップ」と「殺人を無罪にする方法」)は、ライムズ王国の家来がクリエイターでしたが、本作はどのような経路で入手したのかは不明ですが、家来が創作したドラマではありません。故に、継子扱いされているのかしら?と勘ぐってしまう程、邪険に扱われています。
いかにパイロットを入手しようかと思案している矢先に、テレビアカデミー会員向けのサイトで、ストリーミングされているので、是非プレミア前にご視聴あれ!とメールが舞い込みました。ラッキー!と早速観たのですが....内容はボツになったパイロットから大幅に変わっている上、やはりジャンルは追いつ追われつの犯罪捜査アクションドラマに変身しています。もっとも、二話以降は頭脳戦にレールが敷き戻されている可能性は無きにしも非ずですが....
アリス・ヴォーン(イーノス)は親友ヴァレリー・アンダーソン(ローズ・ローリンズ)と富豪や法人の不法侵入/詐欺/知的財産窃盗対策や警備を請け負うアンダーソン・ヴォーン調査事務所(AVI)を共同経営しています。泣く子も黙る調査員アリスは、何度も挑戦状を送りつけてきた謎のミスターXにかまけて、1年前に巡り合った実業家クリストファー・ホール(クラウス)との結婚式の準備は二の次にしてきました。式前日、駆け落ちを提案したまま、クリストファーはアリスの全財産と共に忽然と姿を消してしまいます。敏腕調査員が結婚詐欺のカモに!?プライドを傷つけられたアリスは、ヴァレリーや部下の力を借りて、クリストファー狩りに乗り出すのですが....意外な事実を探り当てたアリスは、AVIの死活を賭けて、クリストファーと追いつ追われつ劇にのめり込んで行きます。
イーノスの笑顔を初めて目にした喜び(?)とは裏腹に、陰気臭いクラウスは本作の翳りと言えるでしょう。他に適材が山といるに違いない....私なら誰を配役するかな~と、パイロット版を観て以来、毎日考えました。あーでもない、こーでもないと候補を挙げた結果、私は「コンティニュアム」で好演したビクター・ウェブスターが適役かと....今更、遅いのは百も承知です。(笑)
ションダランド制作の「スキャンダル」や「殺人を無罪にする方法」とパターンは同一で、本作でも我らがヒロインは仕事に生きる親分格で、オリヴィアの「グラジエーター」、アナリーズのエリート生徒(未だに渾名がつきませんね~)のように、各分野に長けた子分に支えられて誰にも負けない仕事振りを発揮します。ところが、デキる女トリオに共通するのは、紺屋の白袴だと言う点です。こと私生活となると、からっきしダメ女なのです。救いは、いずれのヒロインも極上のファッションセンスの持ち主であることでしょうか?
ションダランドの三大ヒロインが勢揃い。左からアナリーズ・キーティング(ヴィオラ・デイビス)、オリヴィア・ポープ(ケリー・ワシントン)、アリス・ヴォーン(イーノス)。デイビス主演の「殺人を無罪にする方法」シーズン2が終了し、代わって「The Catch」が同時間枠を埋める。 WENN.com
本作は映像が実に美しく、工夫を凝らしたトランジションは格別です。舞台はLAですが、15年余りここに住んでいる私でさえ、「LAって、こんなに綺麗な町だっけ?」と惚れ直してしまいました。願わくは、目の保養になる美男子が入れ替わり立ち替わり登場して、クラウスの翳りを照らしだしてくれることです。
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