「ミディアム 霊能者アリソン・デュボア」を覚えていらっしゃいますか?2005~11年まで、7シーズン続いた犯罪捜査ドラマで、日本ではドラマの基になった実在の霊能者デュボアが訪日して人気を博しました。「ミディアム」が画面から姿を消してまだ5年しか経っていないと言うのに、遠い遠い昔のような気がするのは何故でしょうか?
過去5年、霊能者として世界的に有名なジョン・エドワードやジェームス・ヴァン・プラグなどを時折テレビで見かける以外、巷ではミディアムと言う言葉をほとんど聞かなくなりました。但し、私はこの分野に大いに興味があるので、クリント・イーストウッド監督の映画「ヒア アフター」(日本では2011年2月公開)を観て、大いに感動しました。死が取り持った3人が、生きる喜びを見出す、小粒ながらキラッと輝く癒し系の良い作品です。
この映画の影響かどうかは定かではありませんが、2011年、TLC局に「Long Island Medium」が登場しました。タイトル通り、NY州ロングアイランドに住むテレサ・カプートが、霊視する様子を記録したリアリティー番組で、今年で何と8シーズン目となりました。’テレサおばちゃん’と呼ぶに相応しい霊能者は、ロングアイランドの土地柄を絵に描いたような所謂大阪のおばちゃん風のどぎつさで、好き嫌いが二分される上、メディアでリーディングの仕掛けを叩かれてきました。シーズン3辺りまで最高時には300万人余りの視聴者がついていましたが、シーズン8ともなると、100万人まで低下しています。更新されるかどうかは、現時点では不明ですが、ほとんど毎日のように全米のあちこちで’テレサおばちゃん’のリーディングが実施されています。
一方、今年1月E!局で放送開始となった「Hollywood Medium with Tyler Henry」は、’もやし風’青年がハリウッドのセレブ相手に霊死するリアリティー番組です。しかし、大切な人を亡くした悲しみを公にしているセレブばかりを集めている点が、被害者をターゲットにしている、ケシカランと叩かれています。本日、シーズン2は8月17日再開と報道されました。
2015年、Freeform局で始まった「Monica the Medium」は、女子大生モニカ・テン=ケイト(22歳)が、天職/学業/恋愛や友情をバランス良くこなそうと四苦八苦する模様を記録していました。シーズン1は、ペンシルベニア州立大学に通うモニカが、霊能者として体験を積んで行くうちに、学業も人間関係も疎かになり、何とかバランスを取り戻そうと奮闘。しかし、モニカは大学側には煙たい存在で、キャンパスや授業風景の撮影許可が下りず、学業の部分の映像が不足していました。
霊視工程を勉強中のモニカが、1)これまで明かされなかった技術を説明する点と、2)女子大生として普通の女の子になりたいのになれない点が新鮮で、私はすっかりハマってしまいました。これは、Freeform局が14~34歳の若者を対象に番組作りをしているからで、特にリアリティー番組は、どんな職種に就こうか?天職は何か?と試行錯誤する世代に訴えます。又、「ミディアム」のアリソンとは異なり、悪霊、怨霊などとは交信しないように、意図的に避けている事実や、失踪者の居所など犯罪捜査には一切踏み込まず、癒しのメッセージのみを受信するように心がけていることも、モニカは明らかにしました。意図的に回路を塞ぐことができるとは....意外でした。
シーズン2は、サンディエゴの海辺に一軒家を借り、女子大生ルームメイト3人と団体行動するモニカ・テン=ケイトの日常を記録。彼氏も見つかり、仕事も順調で幸せそうなモニカ。 (c) Freeform/Sandy Huffaker
シーズン2は、私が長年住んでいたサンディエゴに引っ越したモニカの生活を追います。特にカールスバッド近辺には、スピリチュアルの権化が多数集まっており、モニカが漸く天職と認めた霊能者として師事する人が、より取り見取りと言うことです。モニカが選んだのは、他でもないジェームス・ヴァン・プラグで、一緒に公開リーディングをするほどの、気に入られ様です。サンディエゴ北部にあるミラ・コスタ短期大学に移籍し、天職を宣伝する為のマーケティング(特にソーシャル・メディア)を勉強することになりました。但し、毎回増えて行く仕事とデート量に、学業は押し潰されて隅っこに追いやられてしまった感が無きにしもあらず....シーズン1と同じく、学業は優先順位が低いのです。番組を撮影していない期間に、しっかっりお勉強してくださいよ。
シーズン2開始直前に電話インタビューが許されたので、それを元に番組評を書きました。
http://www.familychoiceawards.com/entertainment/monica-the-medium-season-2-premiers-april-25/
シーズン1では、街行く人やレストラン等で「他界した霊を読むのが仕事なの」と自己紹介する際、一瞬ですが躊躇を感じました。相手がどう反応するか恐る恐るだからで、「公式書類に職業を書き込む時、びびっちゃうの」と打ち明けました。過去に浴びた非難や罵詈雑言が未だに尾を引いているのに違いありません。ミディアムと言う言葉ではなく、「ヒーラーを使う方が、無難かも?」と老婆心ながら提案しました。
未練を残したまま他界した霊、加害者を恨まないよう、残された家族に伝える被害者の霊、死に水を取ってくれて有難うと伝えたくてウズウズしている霊など、霊も十人十色ですが、第二の人生に踏み出せないこの世の人にとって、モニカは癒しそのものです。又、モニカが読み取る些細な点には、仰天するばかりですが、霊は英語で話す訳ではなく、提示されるイメージ、音、感情などを翻訳して英語で伝えるのがモニカの腕の見せ所です。故に、経験を積めば積むほど正確に翻訳できるようになりますが、ミディアム駆け出しモニカの微に入り細に渡るリーディングは目を見張るものがあります。
インタビュー終了時に、「お母さんの存在を感じる」と電話口で言われました。広報担当者にせっつかれて、電話を切らなければならなかったので、近い内にサンディエゴに会いに行くと言うと、4月29日にLAで予定されていた公開リーディングに招待してくれました。
生まれて初めて参加したリーディングは、約3時間近くに渡って、モニカが感じる/読み取れる霊が誰か、他界してどのような生活を送っているのか、どのような形で残された家族や友達に自分の存在を知らせているか、今後どのように生きて欲しいか等を、矢継ぎ早に伝えます。この日は、何故か舞台下手にリーディングが偏っており、モニカが中央に歩み寄っても、すぐに下手に呼び戻されてしまいます。
リーディングは、およそ3時間続いたが、ほとんど舞台下手に集中。上手にはアリゾナから8時間車を走らせて参加した女性グループもいたが、霊が姿を現さなかった。 (c) Freeform/Eric McCandless
私は、他界した両親との交信を期待して参加した訳でもなく、リーディングへの興味本位で観察しました。敢えて言うなら、想いを寄せている人の本音を読んでもらいたいものだと思うのですが、モニカの日常は正にその葛藤なのです。家族や彼氏が何を考えているかは、読めないからです。見ず知らずの他人を癒すことはできても、自身や家族はお座なりになりがち....もっとも、人命救助に関わるプロ(消防士、医師、警察官など)は、皆同じ悩みを抱えています。
小柄で可愛いモニカは、’ノー’と言えないのが玉に瑕。経験を積めば、自分優先になれるか?
(c) Freeform/Eric McCandless
霊界からのメッセージを伝える作業は、集中力を必要とし、頭脳がフル回転できる数時間が限度です。私が昔取った杵柄(=通訳)と同じく、数時間経つと脳が完全に操業停止してしまうんだろうなぁ....とモニカの働きぶりを傍観していました。それでも、楽屋でインタビューに応じてくれると言うので、順番を待つことにしました。ところが、どこからともなく姿を現した男女カップルが割り込んできて、楽屋の戸が閉まって小一時間。「忙しそうだから、もうインタビューは諦めます」と、何度も広報担当者に伝えましたが、それでも「もうちょっと待って。すぐ終わるから」と引き止められてしまいました。
思った通り、モニカは憔悴しきっており、しどろもどろ!です。「異文化の霊を読むことはできますか?」と尋ねました。私の母は物静かな人だったし、英語は喋れないので、声高の霊に圧倒されて、モニカが読み取れなかったのかも知れないと言う素人考えでした。全く知識のない異文化の霊でも、読み取って言葉にして行く内に、聞いている方が「あー、それは○○○のことです」と推測してくれるので、問題はないそうです。
「来世では、何になりたいですか?」と尋ねましたが、「うわー、良い質問だけど、考えたこともなかったわ」と言うモニカ。未だ若いからでしょうか?しばらく、考えた挙句の果てに、「今と同じ、ヒーラーの仕事が良いわ!」と言うモニカでした。来世でも、人助けに余念がないとは、根っから殊勝な魂に違いありません。
↧