いよいよ、今晩、オバマが再選を果たすか、歴史の逆戻りを提案するロムニーが勝つのかが決まります。今回は2008年ほどの盛り上がりも、気合いも感じられません。接戦なので、結果が出るまで、10日かかるかも?と今朝、ニュースで報道されていました。えーっ!?政界内幕暴露ドラマ、いやいやながら妻の義務で引っ張り込まれた政界入り、女傑に振り回される腑抜け大統領を視聴している方が、ずっと面白かった過去4年です。
きっかけは2009年に始まった「グッド・ワイフ」でした。番組のクリエイターであるロバートとミシェル・キングがプレスツアーで語った制作の動機が余りにも時を得ていてたからです。21世紀に入って、頻繁に報じられた政治家のスキャンダルからヒントを得たというキング夫妻。特に、ミシェルが記者会見が終わった後、「夫婦の間でどんな会話が交わされたのだろう?と想像してフローリック夫妻が生まれた」と言います。アリシアは、何事もなかったかのように、元の鞘におさまるのか?「冗談じゃないわ!」と我が道を行くのか?人生の岐路に立った女の再出発と成長振りが、それは見事に描かれています。
「グッド・ワイフ」アリシア役 ジュリアナ・マルグリーズ。「英雄でもない、犠牲者でもない、私とは全く違う女」とアリシアを定義する。 Bob Charlotte / PR Photos
CBS好みの一話完結型にするために、‘良妻賢母’アリシアの職場を法律事務所に設定、夫ピーターは政界復帰から、イリノイ州知事候補、果ては大統領という野望まで臭わせて、現在シーズン4が進行中です。ピーターの選挙運動や遊説に加担せず、思春期の息子と娘をメディアから守り抜こうとしますが、常にスキャンダルが追いかけてきて、政界に引きずり込もうとする....アリシアの葛藤は尽きません。政治家一家のドラマが根底に流れていることが、「グッド・ワイフ」をジャンルを越えた秀作にしています。
「グッド・ワイフ」ピーター役 クリス・ノース。未だに母親に振り回されるマザコンのカリスマ政治家として描かれている。 richard shotwell / PR Photos
「グッド・ワイフ」が引き金となったのか、今秋の期待作「Nashville」も同様の設定になっています。主人公レイナはピークを過ぎたカントリーの女王で、留守宅を守ってきた夫テディーがナッシュビル市長に立候補します。レイナの必死の抵抗も虚しく、財界のドンとして君臨する父親ラマーとの確執やバンドリーダーとの過去などが明るみに出てしまいます。
「Nashville」レイナ役 コニー・ブリットン。女性の権利が見直された今回の大統領選だが、カントリーのメッカはまだ21世紀に到達していない? Izumi Hasegawa / PR Photos
アリシア同様、政界には全く興味がないにも関わらず、レイナも良妻賢母の義務と、女王の地位を支える為に自分の夢を犠牲にしてきた夫への罪悪感に苛まれて仕方なく支援...と言うことです。政界に足を突っ込むと、公私が世間に曝され、ガラス張りの家に住んでいる様な状態になります。政界に自分の意のままに動かせる人材が欲しいラマーは、たかが(失礼!)市長候補なのに、自分の息がかかった弁護士に、テディー、レイナ共々、過去を根掘り葉掘り聞かせるシーンが書き込まれています。100%清廉潔白な人間など存在しないのに....秘密を握ればこっちのもの!が財界のドンの信条です。
秘密は必ず露見する!がテーマの「Scandal」(現在、シーズン2進行中)は、スキャンダル揉み消しの精鋭達を描くドラマです。元大統領付報道官オリヴィアが、危機管理会社を開業して間もなく、大統領の不倫揉み消しに駆り出され、元の木阿弥という展開がシーズン1でした。
「Scandal」オリヴィア役 ケリー・ワシントン。クライアントのスキャンダルは見事に解決するのに、いざ自分のこととなるとからっきし意気地なしのオリヴィア。 Emiley Schweich / PR Photos
危機管理コンサルタントが、事件を解決したり、揉み消したりの一話完結型作りにはなっていますが、根底を流れるのは、オリヴィアの「紺屋の白袴」的生き方です。オリヴィアは、ホワイトハウスと縁を切ろうとしますが、そうは問屋が卸しません。大統領の周辺にいる側近や取り巻きが、実は国を動かしているという恐〜い展開が満載の上、アリシアやレイナと異なり、ヒラリー・クリントン張りの大統領夫人メリーの政治的野心がシーズン2ではクローズアップされていて、目が離せません。‘心ここにあらず’の大統領を操っているのは?
ヒラリー・クリントンの生きざまをそのままドラマにしたような「Political Animals」は、今夏6話で完結したUSA局の限定シリーズです。 昨日、シーズン2は継続されないと発表がありましたが、シガニー・ウィーバーがテレビ番組に初主演することで、今夏の話題になりました。クリエイターの一人がグレッグ・バーランティなので、私の必見作品でした。バーランティが関与した、革新派の大学教授が育てる兄弟が、いかに政界に足を踏み入れて行くかを描いた「Jack & Bobby」(2004〜5年)が大好きだったからです。今回はどんな政界ドラマなのか、楽しみにしていましたが、「Jack & Bobby」のような夢と希望に満ちたものではなく残念です。
「Political Animals」エレイン役 シガニー・ウィーバー。ヒラリーから文句が出なかったの?と聞きたくなるほどのエレイン。 Glenn Harris / PR Photos
夫の不倫に愛想を尽かして離婚に踏み切ったこと、二人の息子がいる設定を除くと、正にヒラリーの自叙伝です。ウィーバー演じる元ファースト・レディーのエレインは、大統領に指名されず、国務長官として奔走しますが、どうしても大統領になる野心を捨てきれません。政治家一家のドラマではありますが、政界でのし上がるためのあらゆる策略や駆け引きが描かれた、内幕暴露モノと言って良いでしょう。こういうドラマを観て、政治家になろう!なりたい!と思う人がいるのでしょうか?
米国にまだ希望の光が差していた頃に制作された「ザ・ホワイトハウス」(1999〜2006年)や、ヒラリーが初の女大統領になるための根回し作品?と勘ぐられた「マダム・プレジデント〜星条旗をまとった女神」(2005〜6年)以降、政界内幕暴露モノは陰を潜めていました。しかし、2008年の大統領選が従来の常識を塗り替えてしまうほど、エンターテインメント化した選挙だったため、選挙運動の舞台裏(特にサラ・ペイリンの指名)を赤裸々に描いた「ゲーム・チェンジ」が制作されました。9月に数々のエミー賞を獲得した秀作でした。このテレビ映画放送1カ月後、HBOは女副大統領セリーナと仕事のできない側近が巻き起こす騒動を描いた「Veep」を開始しています。セリーナ役のジュリア・ルイス・ドレイファスは、コメディー部門の主演女優を受賞しました。
「Veep」セリーナ役 ジュリア・ルイス・ドレイファス。「私が副大統領なんて、コメディーじゃなくて、ホラーだと思わない?」と笑うドレイファス。 Albert L. Ortega / PR Photos
「ゲーム・チェンジ」の主演女優賞を獲得したジュリアン・ムーアは、「サラ・ペイリンご本人には、こき下ろされたから、ATASに認めていただいて最高!」と述べ、HBOの勇気を讃えました。同作で監督賞を受賞したジェイ・ローチが、政治談義は誰でもするものの、「政界を描く作品を作るのは、至難の業!それを敢えて、見事にやってのけるがHBOです。」と感謝の意を表したことが印象的でした。「受信料さえ入ってくれば、誰ひとり作品を観ていなくても成り立つ」と妬まれるプレミア・ケーブル局HBOの実力を見たり!
「ゲーム・チェンジ」サラ・ペイリン役 ジュリアン・ムーア。ムーアの演技力を再度実証したペイリン役、特に話法はコーチをつけて特訓を受けた。 Sylvain Gaboury / PR Photos
プレミア・ケーブル局Starzも、本年のゴールデン・グローブ賞最優秀作品賞にノミネートされた「Boss」というオリジナル作品に力を入れています。禁酒時代からギャングの街として悪名高いシカゴで、不治の退行性神経障害を隠し通すことにエネルギーを注ぎ、飽くまでも市長職にしがみつくトム・ケイン市長の物語です。シカゴを牛耳るためには、汚職など朝飯前!裏切り者は消す!勢いの、マフィアまがいの市長。アンチヒーローもここまで来ると、観るに耐えず、余り好きな作品ではありませんが、政界内幕暴露モノの1本であることは確かです。妻メレディスは前市長の娘=政治家二代目で、トムとの政略結婚は明らかですが、本人の野望もしっかり描かれています。私は、「Scandal」のメリー同様、実はメレディスの方が一枚上手と読んでいます。問題は、善良な市民の不在です。強欲で傲慢な人間しか登場せず、弱味など見せようものなら即弾き出される凶暴な社会として描かれています。政界に飛び込むなんて、とんでもない!と思うのは私だけでしょうか?
「Boss」メレディス役 コニー・ニールセン。外見は上品でしとやかだが、夫の陰に隠れて、腹黒さを発揮する女傑だ。 J. Bailey / PR Photos
今回の選挙が余りにも面白くなかったので、今後、政界内幕暴露モノが減少するのでしょうか?「Nashville」のように背景としてだけ、登場するようになるのでしょうか?但し、「グッド・ワイフ」シーズン4ではイリノイ州知事選が控えているので、益々政界に引き込まれて、面白くなることは間違いありません。楽しみです!
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2012年大統領選勝敗が決まる前に
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今年も、感謝祭4連休はテレビ三昧
明日から、感謝祭(Thanksgiving Day)の4連休が始まります。普通(?)の家庭では、木曜日に家族や親戚一同が集まって、七面鳥が主役のディナーを楽しみ、フットボールを観戦するのが習わしです。そして、翌日は早朝(私の感覚では、午前2時や3時は、真夜中ですが....)から、クリスマス商戦に突入!です。先着10名に、大型テレビをタダ同然で提供したり、限定商品を定価の5割、6割引にするなど超安値で集客するため、普段ガラガラのショッピングセンターもこの日ばかりは、警備員を倍増して群衆整理にあたります。
今年はウォールマートが、早朝の開店を前夜から並んで待つ「血眼の買い物客」を先取りしようと、感謝祭当日の午後8時からセールを始めると発表し、物議をかもしています。感謝祭というアメリカ人にとっては、極めて貴い祝日に、商魂を発揮するなど不届き千万!と憤慨している人もいますが、ウォールマート店員を祝日に働かせるとは何事ぞ!と労働者の立場を代弁する人もいます。でも、どうせ3000キロカロリーをお腹いっぱい詰め込み、テレビの前で居眠りしているなら、特別手当をもらって働く方が余程ましだと思うのは、私だけなのでしょうか?
私は11〜12月の所謂ホリデーシーズンには、冬眠したい人間です。日本の嘗ての師走からお正月を想像してください。あの気忙しさが何と2カ月続くのですから、堪りません。とにかく、食べることにまつわる女の仕事が普段の3倍にも4倍にもなります。感謝祭は建国にまつわるお祭りなので、仕方がないとしても、クリスチャンではない私には、クリスマスは鬱陶しい!一言に尽きます。
ところが、去年私が加入しているケーブル会社が、感謝祭4連休に全局視聴可能出血サービスを始めて、ホリデーシーズンに明るい材料が出現しました。プレミアケーブルどころか、プレミアのオンデマンドも無料なのです!去年は、シーズン途中までしかDVDが送られて来なかったShowtimeの「ナース・ジャッキー」「The Big C」「The Borgias」の3作と、HBO「Hung」をオンデマンドで満喫しました。
「ナース・ジャッキー」は泣けて笑えるブラックコメディーだったが、クリエイター・コンビの降板で、次シーズンはカラーが変わるのではと、懸念を抱いてしまう。 (c) Showtime Networks Inc. and Lions Gate Television Inc. All Rights Reserved. SHOWTIME is a registered trademark of Showtime Networks Inc.,a CBS Company.
夏に始まるプレミアケーブル局のオリジナル作品は、11月末には終了しているので、オンデマンドでしか視聴できない仕組みになっています。逆に残念だったのは、AMC、TNT、USAの作品がオンデマンドにアップロードされていなかったことです。視聴者を増やす機会だと思わないのか?HuluやNetflixと取り決めがあって、無料で観てもらっては困るのか?きっと、経済的な理由があるに違いありません。それでも、寝てはテレビ、食べながらテレビ視聴に明け暮れ、何度も「こんな幸せな感謝祭は初めて!」と感謝感激雨霰の4日間でした。もっとも、家庭を持っていたら、こんなテレビ三昧など絶対にできないので、独り暮らしの醍醐味でもあると言えます。
そして、今年も待ちに待った至福の4連休が始まろうとしています。但し、6月から9月までプレミアケーブルを無料サービスしてもらったため、「ナース・ジャッキー」「The Big C」「The Borgias」は視聴済みです。明日から何を観るべきか?と作戦を練ろうとしていたところ、昨日USA局広報から吉報が舞い込みました。シーズン2前半まで「SUITS/スーツ」のパイロットから22話までをオンデマンドで観られるというのです。
クリエイターのアーロン・コーシュの実生活を基に創作した「SUITS/スーツ」。努力せずに法界に迷い込んだマイクは、コーシュ自身に繊細さを加味した(大量に)キャラだとか。 Season 1: © 2011 Universal Television. All Rights Reserved.
やったー!USA局広報は、通常シーズン開始前に2〜3話、シーズン終了前にも2〜3話のDVDを送って来るのが習わしなので、どの作品も真ん中がすっぽり抜けてしまいます。しかも、私の常套手段である図書館のレンタルDVDには、USAやTNTの作品がないという情けなさ...「リガールに恋して」「Necessary Roughness」「Perception」「Major Crimes」を徹底的に観ようと、今から意気込んでいます。トーク番組の女王オプラの局OWNもチェックしなければ!さー、明日から、忙しくなります。
オプラ・ウィンフリーは、アフリカ系女性の実業家として尊敬されている。それでも、OWNの開局以来、視聴率獲得に四苦八苦。 Billy Bennight / PR Photos
2010年1月のTCAプレスツアーで、開局記念パーティーが開催された。
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感謝祭4連休のテレビ三昧叶わず....
前回、わくわくしながら、感謝祭4連休に臨んだことをお知らせしましたが、去年ほどの満足感がなく、肩すかしを食らった感じです。
先ず、「SUITS/スーツ」22話をオンデマンドで観ようと、22日午前7時から視聴開始!とテレビの前に座り込みましたが、どこをどう探しても「SUITS/スーツ」は、私が加入しているケーブルU-Verseの世界に存在していない!のです。2時間ほど、あーでもない、こーでもないと検索を繰り返しましたが、この日は開始日を間違えたのだろうと勝手に解釈して、他を当たることにしました。
「SUITS/スーツ」主演 パトリック・J・アダムス(左)、ガブリエル・マクト(右)。2011年夏にインタビューした俳優の中で、唯一アダムスが、東日本大震災の被害者へのお見舞いと励ましの言葉をくれた。何と優しい青年ではありませんか? Charles Norfleet / PR Photos
残念なことに、正午までに「ホワイトカラー」「リーガルに恋して」「Necessary Roughness」「Perception」「Major Crimes」「Southland」のいずれもがオンデマンドで視聴できないことが判明しました。とほほ。当て外れも良いところです。
連休初日に「いざ!出陣」の勢いをくじかれましたが、23日は午前10時頃から「SUITS/スーツ」22話を執拗に探すこと1時間。諦めて、普段気になっていて観られないケーブル局の23日の編成をチェックしましたが、これ!と思う作品は見事に省かれているのです。「CSI」3作、「クリミナル・マインド」、「LAW & ORDER」4作など、一話完結型の犯罪捜査モノばかり。
USA広報に電話しようかとまで思ったのですが、こんなつまらない(私には一大事でも!)ことで、4連休を台無しにしては、「リーガルに恋して」の推薦振りに「各作品にメグのクローンが欲しい!」とまで喜んで頂いた理想の評論家像に傷がつくと、泣く泣く諦めました。
「リーガルに恋して」主演のサラ・シャヒにインタビューして、益々気に入って書いた番組評論。打ち切られて、がっかりしているのは私だけではない筈だ。 Emiley Schweich / PR Photos
24日はBravo局で「The Millionaire Matchmaker」5シーズンのハイライト12話を午後12時から真夜中まで、テレビ三昧しました。 ‘仲人のプロ’パティー・スタンガーがLAやNYの独身富豪の婚活を指導するリアリティー番組です。
スタンガーが、箸にも棒にもかからない独身貴族を辛辣に批判する様子が痛快なのと、他人事なので大いに笑えるし、勉強にもなります。ちなみにLA=ハリウッド文化では、1)若さが全て、2)野性的な男の不在から、30過ぎの女性にとって最悪の婚活環境だそうです。石を投げれば、美男美女に当るLAは、観るだけの世界ですよ、確かに!な〜んて、変に納得した私です。
「The Millionaire Matchmaker」パティー・スタンガーは、婚約破棄して、懲りずに結婚相手を探しているとか....あの毒舌にめげない男性はいるのだろうか? Albert L. Ortega / PR Photos
無料視聴最終日にやっと出逢った秀作は、私が師と仰ぐオプラ・ウィンフリーの「Super Soul Sunday」でした。25日は哲学者/学者/作家ジーン・ヒューストンを迎え、オプラお得意のインタビュー形式でしたが、思わずう〜んと唸るほどの名言がヒューストンの口から次々と飛び出し、これは後で繰り返し観て書きとめなければ!と録画したほどです。
20年余り前、一度、オプラのトーク番組がスピリチュアルな世界に迷い込んだ(?)ことがあり、私は癒されましたが、賛否両論が対立して、視聴率が低下したのか、オプラは不本意ながら元のフォーマットに戻しました。その再来か改良版とも言える「Super Soul Sunday」は、宗派を越えた大宇宙、霊、魂、人類の潜在能力、神秘論などが3時間に渡り、多種多様なフォーマットで討論、提示される番組です。目からウロコの瞬間、士気を鼓舞すると同時に示唆に富んだ内容が盛り沢山の、正にオプラにしか手がけられないユニークな時間帯です。自局OWNでターゲットを絞れるからこそ放送できる番組と言えます。
試行錯誤の末に、オプラ・ウィンフリーが行き着いたのが「Super Soul Sunday」なのか?それとも、開局した時から、この企画を温めていたのか?是非、オプラに聞いてみたい。 Daniel Locke / PR Photos
2007年のエミー賞授賞式のオープニングで「テレビほど、人と人を繋ぐ媒体は他にはありません」と賞賛したのは、他でもないオプラでした。テレビの威力を最大限に活用して、四半世紀にわたり「生来の自分に目覚めて、幸せに生きる旅」を支援する情報を提供して来たオプラならではの発言です。日本では、トーク番組の司会者/資産家/慈善家として知られていて、実体は謎に包まれているようですが、トーク番組という表現が、オプラの格を下げているように思います。最初は、トーク番組レベルだったことは否めませんが、オプラが人間として成長して行くに連れ、年々、啓蒙番組にレベルアップしました。ですから、私はオプラを「この業界で最も進化した、悟りを開いた賢人で、世界で最も影響力のあるアフリカ系女性実業家」と定義します。
‘普通の人’の体験談から、「苦しんでいるのは私だけじゃないんだ!」と閃き、助けを求める勇気が湧くような番組を作るのが、オプラの若い頃からの夢だったそうです。1999年、私の人生最大の壁=離婚にぶつかった時、オプラが「失敗なんて存在しないわ。単なる方向修正よ!」と言っているのを耳にして、肩に重くのしかかっていた荷物が一瞬にして消え去る思いがしました。僅か8語のオプラの信条で、パラダイム・シフトが起きたのです。以降、「なるほど!そういう考え方もあったのか?」の瞬間、幸せに生きる知恵や心の糧を求めて、毎日欠かさずオプラの番組を観るようになりました。私にとって、オプラの番組は自己啓発の場であり、天職や生きる使命を探索する機会であり、悟りを開く=心の扉を開き、好奇心と冒険心を育む、実にありがた〜い1時間でした。自称、‘魂の物理学者’ゲーリー・ズーカフや神秘論者エックハルト・トールなど、オプラが取り上げてくれなかったら、存在さえ知らなかった偉人の教えは、不信心者の私の心を揺さぶりました。誰も教えてくれなかった、人生教育は、挫折した私に希望の光を与えてくれました。
辛抱強く待つこと、40分。大勢の中から、あえて私に声をかけてくださったのは、波長がぴったり一致したから?それとも、畏敬の念が通じたのか?師と仰ぐ賢人に会えた至福の数秒だった。 Photo: Will Harris
オプラのトーク番組から自分の番組を持つようになった医療、心理学、経済学の専門家や、ライフ・コーチは星の数ほどいますし、ブック・クラブで取り上げられた作品は必ずベストセラーになりました。オプラの推薦する有名人、政治家、作家などありとあらゆる業界の「時の人」には、必ず一目置くようになりました。何度インタビューを観ても、どうしても好きになれない人物も多々いますが、食わず嫌いを止め、必ず一度は視聴するようになりました。その好例が、オバマ大統領です。オプラが支持を発表した時、オバマ氏に何故‘師’がここまで惚れ込んだのかを自分の目で確かめなければ!と思いました。今年11月の再選には、オプラの「オ」も聞きませんでしたが、陰で選挙資金集めに奔走したのではないかと思います。
オプラ教信者の女性票をしっかり掴んだお陰で、大統領に初当選したと言われるバラク・オバマ氏。ホワイトハウスでの初クリスマスには、オプラ自らインタビューに出向いたほどの仲良しだ。 Erik Kabik / PR Photos
私の最近の目標は、「オプラに追い付こう!」です。途轍も無い野望だと思われるかもしれませんが、オプラのお陰で「意識して生きる」人間になれたし、天職に出逢い「今を生きる」ことができるようになりました。その恩返しに、一人でも多くの人に「元気、やる気、勇気」をお裾分けしたい、それが私の今生の使命だと信じるようになったからです。地位、名声、富などはオプラが天職を実現した努力の賜物。私の天職とは無縁かも知れませんが(そのマイナス思考が良くない!と言われそう)一人でも多くの人(特に女性)に、手を差し伸べ、魂の願いや夢の実現のお手伝いをしたいと思っています。
小難しい話になりましたが、オプラが2011年にOWNを開局した際、「多数の新作を企画中なので、『これ!』という番組に出会うまで、じっくりとお付き合いください」と発言した通り、テレビ三昧は叶わずとも、私の『これ!』が見つかったと言うお話でした。
何故、日本ではオプラの番組が放送されないのか?幸せに生きる知恵や心の糧を求めている人は少なくないと思うのだが.... Chris Hatcher / PR Photos
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オーディオ・ジャンケットとは?
TCAプレスツアーに年2回参加して、新番組や継続番組の情報収集することが我々テレビ評論家の仕事の大半であると記しましたが、時々「オーディオ・ジャンケット」を利用することもあります。主に、LA外で撮影していて、スケジュールや広報予算の関係上、クリエイターやキャストをプレスツアーに集めるのが困難なケーブル局が開催する電話インタビューのことです。お誘いは開催の1週間ほど前に、メールで送られて来ます。参加したい場合は登録する必要がありますが、指定された時間にフリーダイアル番号に電話して、質問を投げかける仕組みです。会場へ出かける手間隙要らずで、パジャマ姿でコーヒーを飲みながらでもできる'お手軽'インタビューです。年間、最も開催回数が多いのはUSA局で、TNTとFXが年に数回、地上波ではNBCとFoxが過去数年に数回開催しました。
広報担当者が撮影の合間に控え室に来てもらった等、手の内を明かす場合もありますが、インタビューの対象がどこにいるのかは不明です。同時に、ジャンケット参加者が何人いるのかも不明ですが、質問する際に「次の質問は、○○紙/誌の○○さんからです」と紹介があるので、同じ人が何度も質問すると、参加者がいかに少ないか想像がつきます。
「TOUCH/タッチ」が始まったばかりの頃、キーファー・サザーランドのオーディオ・ジャンケットへのお誘いが入って、びっくりしたことがあります。参加者が多過ぎて、制限時間(平均45〜60分)内に収まるのだろうか?などと、要らぬ心配をしましたが、空けてびっくり玉手箱!質問するつもりは毛頭なく、サザーランドの対応を観察する絶好のチャンス!と達観していたのですが、3〜4人が代わる代わる「24」の映画についての質問で攻めるので、思わず「TOUCH/タッチ」について聞く人はいないの?と#ボタンに手が出ました。ABCディズニー作品番宣用の個別インタビューをさせていただくようになって学んだ鉄則です。「TOUCH/タッチ」という作品のインタビューですから、例え同局の作品とは言え、「24」の質問で時間を無駄にすることは御法度なのです。さすがに、広報が時間の無駄と判断したのか、15分ほどで呆気なく終了してしまいました。
キーファー・サザーランドAlbert L. Ortega / PR Photos
USA作品は、大多数がLA外で撮影されており、数年前からプレスツアー時は、朝食/昼食をしながら、各作品のキャストがローテーションを組んで、評論家が待ち受けているテーブルを回って、カジュアルな会話を楽しむ方式を採用しています。但し、この方式はキャストに重きが置かれているため、クリエイターの話を聞けないという難点があります。
その盲点を知ってか知らずか、今年は「ホワイトカラー」のジェフ・イースティン、「SUITSスーツ」のアーロン・コーシュ、「リガールに恋して」シーズン2で制作を引き継いだピーター・オッコにインタビューすることができました。「SUITSスーツ」のコーシュは、今回が初めてだったので、制作の動機から、マイクの人柄、ドナの人気など、普段疑問に思っていたことを尋ねる絶好のチャンスでした。やはり、クリエイターとの会話は刺激的です。世の中には、賢い人がいるもんだ!と、畏敬の念で一杯になります。
今年インタビューできた俳優は「SUITSスーツ」のドナ役サラ・ラファティー、「Political Animal」のダグラス役ジェームス・ウォルク、「ホワイトカラー」のモジー役ウィリー・ガーソンでした。他にもUSA局の「サイク/名探偵はサイキック」「バーン・ノーティス 元スパイの逆襲」「救命医ハンク セレブ診療ファイル」「ザ・プロテクター/狙われる証人たち」「コバート・アフェア」「Necessary Roughness」のお誘いが来ましたが、スケジュールが合わなかったり、特に聞きたいこともない作品や俳優のジャンケットには参加しませんでした。
サラ・ラファティーWinston Burris / PR Photos
「Glee」が始まった年に、主要キャスト数人を世界各国のジャーナリストが国際電話でインタビューする異例のオーディオ・ジャンケットがありました。この時ばかりは、人の質問とキャストの答えを聞いて重複しないようにぴりぴりし、すぐに回って来る自分の番には、面白い質問をしなければ!と気を遣って、くたくたになりました。通常、インタビュー記録を局がデジタル配信してくれるのですが、「Glee」の記録は一切もらえず、苦労と努力が水の泡になってしまいました。後日、使おうにも、答えはうろ覚えです。英語が母国語ではないジャーナリストの意味不明の質問に、訳の解らない答え(質問が理解できないのでは、答えようがないのは当然ですが)のやりとり、答えを書き取っていると、質問を考えることができない!このような、大混乱のオーディオ・ジャンケットに参加したこともあります。
来年も、クリエイターの話を聞く機会を設けて欲しいものです。この2週間、1月のプレスツアー用に2013年春の新番組のパイロットが続々と到着していますが、どれも似たり寄ったり!毛色の違う作品を創作するのは、年々至難の業になっているのでしょう。それにしても、「Last Resort」はもう少し長い目で見て欲しかった....心残りです。
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TCA冬のプレスツアー、わくわく度は低い?
Television Critics Association (TCA)プレスツアーに、お正月早々4日から16日まで参加しました。会場はパサデナの高級住宅街にあるランガム・ホテルです。クリスマス前から毎日のように届いたパイロットをしっかり観て臨みましたが、「これ!」と思う新番組がなく、わくわく度の低いプレスツアーでした。
敢えて選ぶとしたら、「今更、医療/刑事ドラマ?」とは思ったものの、DVDに入っていた数話を観るうちに、どんどんハマってしまったTNTの「Monday Mornings」とCBSの「Golden Boy」の2作でしょうか?
「Monday Mornings」はデビッド・E・ケリー初のケーブル作品、「Golden Boy」はグレッグ・バーランティが制作に携わっている点が鍵でしょう。但し、ケリーやバーランティのファンではない視聴者をパイロットだけでつなぎ止めることができるのか?切り口/語り口を替えただけで、視聴者が付いて来るのか?と不安になります。TNTはケーブル局なので、数シーズンは我慢の子でいてくれるかも知れませんが、視聴率の高い作品を多数抱えている地上波局CBSは辛抱も愛着もないことで有名です。これまで、何本の秀作を早々に葬ったことでしょう!視聴者の平均年齢が56.4歳のCBSは、相変わらず若者の視聴者を獲得できる作品を模索しています。但し、昨秋デビューした「Elementary」はテレビ視聴者の平均年齢が57歳に対して、オンライン視聴者は36歳という面白い統計も出ています。
【動画】「Monday Mornings」予告編
【動画】「Golden Boy」予告編
もう1作、私が気に入ったのは、SyFy局の「Continuum」です。SFモノは大いに苦手な私ですが、2077年から2012年にタイムトラベルする女刑事のドラマは見応えがあります。但し、カナダの作品なので、今回のプレスツアーでは取り上げられず、残念無念と言うしかありません。
【動画】「Continuum」予告編
キャストの知名度と作品の話題性で毎プレスツアー必ず満席になるのが、HBO新作発表枠です。今回はテレビ映画「Phil Spector」のアル・パチーノ、ヘレン・ミレン、ミニシリーズ「Behind the Candelabra」のマイケル・ダグラス、マット・デーモンの大物映画スターが登場しました。
無口で悪名高きアル・パチーノ(左)、ヒッチコック夫人役で好演した記憶がまだ新鮮なヘレン・ミレン
Daniel Locke, Andrew Evans / PR Photos
2009年以来、禁固刑に服している音楽プロデューサー、フィル・スペクターを演じるのがパチーノです。スペクターの弁護士リンダ・ケニー・ベイデン役がミレンですが、実はベット・ミドラーが降板した後、引き継いだ役だとか。パネルインタビューで隣に座っているケニー・ベイデン本人を見る限り、ミドラーの方が適役だったのに.....と残念に思いました。ミレンは品が良過ぎて、ドスが利かないのでは?が理由ですが、もっとも名優ですから、完成したものを観るまでは何とも言えません。
癌を克服して益々活躍のマイケル・ダグラス(左)、マット・デイモンは「衣装合わせにこれほど時間をかけたプロジェクトは初めて!」と告白
Janet Mayer, Izumi Hasegawa / PR Photos
私のお薦めはドキュメンタリー「Mea Maxima Culpa: Silence in the House of God」です。カトリック教会が何世紀も揉み消してきた、性的虐待を暴露した勇気ある聴覚障害者4人の体験談です。バチカンの庇護の基、聖職者という立場を利用して200人の性的倒錯犠牲者を出したマーフィー司祭に立ち向かう葛藤は、カトリック教会の内情を知らなくても共感できます。米国だけではなく、アイルランドやイタリアの訴訟にも触れており、今や世界中で司祭の性的倒錯が注目されています。米国だけでも、カトリック教徒は660〜780万人おり、組織化された宗教団体への風当たりがきつい今、このような作品を放送するHBOの勇気に驚きます。もっとも、プレミア局HBOは、誰も番組を視聴していなくても、受信料だけで成り立つわけで、スポンサーにおもねる必要がないからこそ、本作や「ゲーム・チェンジ」「Too Big to Fail」などが生まれるのでしょう。
【動画】「「Mea Maxima Culpa: Silence in the House of God」予告編
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TCA冬のプレスツアー、地上波局番宣あの手この手
Television Critics Association (TCA)プレスツアーでも、嘗ては、映画のジャンケット並みの付け届け合戦が華やかで、それは手厚い持て成しを受けていたと、ツアーのベテラン選手から聞かされてきました。TCAの会則で、高価な付け届けが禁じられるようになり、更に昨今の不況の影響でマーケティング予算が削られたため、局名入りペン1本にもケチケチぶりが顕著に現れます。今ツアー、NBCの六色のプラスチック製ボールペンが、重厚な金属製に戻ったことは、景気回復より、NBCの自信度の現れのようで喜ばしい!などど悦に入っているのは、私だけでしょうか?
地上波局で、唯一番宣に力を注いだのは、CWの「The Carrie Diaries」のみ。世界的大ヒット「SATC」の主人公キャリー・ブラッドショーの高校時代を描くシリーズで、主役に選ばれたアナソフィア・ロブの愛くるしさと80年代のニューヨークが売物です。「10歳で初めて行ったNYを思い出しながら演じてるの。デンバーではほとんど見かけないタクシーを数えたり、ホテルのロビーのシャンデリアに見入ったことを覚えているわ」と、ロブ自身のNY初体験をキャリーの視点にダブらせていると披露しました。
デンバー育ちのアナソフィア・ロブの視点=憧れのマンハッタンでおっかなびっくりのキャリーとして演じる Marco Sagliocco / PR Photos
ロブは、「フェリシティの青春」のフェリシティ役で一躍名を馳せた、ケリー・ラッセル風の可憐さです。
ベンを追いかけてNYUに進学したフェリシティ役でブレイクしたケリー・ラッセルも37歳! Marco Sagliocco / PRPhotos.com
数日前、FXの春のイチ押しドラマ「The Americans」でKGBスパイ役について語ったラッセルも、もう37歳!なのです。光陰矢の如しと言いますが....、フェリシティのデビュー時を彷彿させるロブは、きらきら輝いていました。でも、「この可憐な小顔がどこでどうサラ・ジェシカ・パーカーになるの?」という質問が飛び出しました。意味不明?ご存知ない方は、Sarah Jessica Parker Looks Like A Horseというホームページを参照してください。私は、ロブのO脚と声が決め手だったのではないか?と見ています。
番宣用紫のビニール小袋に入っていたのは、キャンディス・ブッシュネルのサイン入り「The Carrie Diaries」の原本とレコードジャケットに入った逸話DVD、大袋には当日のNY Times日曜版の全面プレミア広告と1984年1月13日付けのパロディー版とキャスト5人の白黒ポスターが入っていました。会場のロビーに用意されたコーヒーとクロワッサンには、番組に因んだ名言(?)を刷り込んだナプキンが添えられました。高価な番宣商品とは言えませんが、昨秋「Arrow」に因んだ商品が皆無だったことを考えれば、CWのエネルギー/予算配分は一目瞭然です。但し、大人の観賞には耐えられない少女向けシリーズなので、私は3話で放棄してしまいましたし、残念ながら視聴率も芳しくありません。
全く経費はかかっていないものの、大いに宣伝になったのは「アメリカン・アイドル」シーズン12でしょう。ご存知、審査員同士の小競り合いです。Fox担当日のまばらなスケジュールの中で、唯一満席となったのは、「アメアイ」のパネルインタビューだったのがその証拠です。この手のリアリティー番組は、例えFoxの看板を背負っている「アメアイ」と言えども、視聴率が下がってくると審査員を替えて、話題作りに励みます。キース・アーバンが間に座ってつかみ合いの喧嘩にならないように見張ってはいるものの、R&Bの歌姫マライア・キャリーとR&B/ヒップホップ歌手ニッキー・ミナージュの水と油的「確執」劇が目前で繰り広げられました。
(左より)マライア・キャリー、キース・アーバン、ニッキー・ミナージュは、正にこの順番でステージに登場した Andrew Evans / PR Photos
ミナージュは膨れっ面で登場、このまま一言もしゃべらずにインタビューが終わってしまうのだろうか?と思うほど。一方、キャリーは、実は高級ブティック製なのかもしれませんが、安っぽい緑色のチューブドレスに、ダイヤ(まさか偽物ではないですよね?)のイヤリング、ネックレス、ブレスレットがちぐはぐな程キラキラ輝く姿で登場。産後は下半身太りが気になるらしい(?)のに、キャリーの上半身はチューブドレスから溢れまくり、ビーチでインタビューと聞いてたの?と思うほどの露出度。今に始まったことではありませんが....
後半、何故か饒舌になったミナージュは、「大先輩だから、尊敬しているのよ。確執なんて、ある訳ないでしょ!」とキャリーに胡麻をすったつもりが、歌姫は「あら、あら、殊勝なこと!」と鼻の先であしらいます。評論家からの確執の真偽に関する再三の質問は、パネル参加者の無関係/無意味な発言で完全に誤摩化されましたが、二人のボディーランゲージを読めば、犬猿の仲は明らかです。ミナージュに尊敬の念がないと、評論家仲間は読み取ったようですが、「歌姫」の座に鎮座ましますキャリーの態度にも問題があるのではないかと思います。お互いに尊敬の念がない、ベテラン対新人の確執は、全世界の視聴者の目前で繰り広げられますが、どうやら米国の視聴者は辟易し始めたようで、シーズン12は視聴率低下しています。
マライア・キャリー(左)、ニッキー・ミナージュの確執劇で「アメアイ」の視聴率は降下を続けている Chris Hatcher, Andrew Evans / PR Photos
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TCA冬のプレスツアー、喉元過ぎて熱さを忘れた(?)局幹部
サンディフック小学校銃乱射事件から、約3週間後に始まった地上波局の新作発表。大惨事の記憶が生々しく、再発防止にバイデン副大統領が任命されたばかりだと言うのに、NBCは6日「Do No Harm」、Foxは8日に「The Following」、13日CWは「Cult」のパネルインタビューを実施しました。当然のことながら、多数の評論家から「このご時世にマジですか?」的批判を受けました。1カ月も経たないうちに、実しやかに屁理屈を並べる地上波局のお偉方は、喉元過ぎて熱さを忘れたのでしょうか?それとも、ほとぼりがさめるのを息を潜めて待つつもりだったのでしょうか?
ケヴィン・ベーコンは、奥方キーラ・セジウィックのシリーズ「クローザー」が完了したので、「The Following」の主役を引き受けたと語った。 Andrew Evans / PR Photos
NBCエンターテインメントのロバート・グリーンブラット会長は、「心理学者ではないので、テレビで殺人鬼を観ると、実行に繋がるとは言えない」と初っぱなから逃げ腰。テレビが発明されて以来、映像と非行/犯罪の相関関係を実証する試みがなされてきましたが、未だそのようなデータがない(?)ことを理由に、「科学的に実証されるまでは、こちとらも商売だし....」という屁理屈です。
今秋か、早ければ夏に放送予定の「Hannibal」も、会長は「凶悪行為そのものは見せない。死体が転がっているだけ」と、真顔で述べました。更に、NBCドラマ制作部長は、「「The Following」のパイロットは確かに面白かったけれど、「Hannibal」の主人公はFBIプロファイラーで、捜査に行き詰まった時にハンニバル・レクター博士に相談するだけだから、「Following」ほど残虐なドラマではない!」と大量殺戮や異常犯罪への感度が完全に麻痺している人間の発言です。言い訳している本人達もきまり悪くなるほど、押し問答が繰り返されましたが、地上波局が若年層の視聴者獲得に躍起になっているからこそ、この手の殺人鬼養成的作品を自粛して欲しいと言う我々評論家のメッセージには、聞く耳持たぬお偉方達です。
「Hannibal」でFBIプロファイラーを演じるヒュー・ダンシー。「Do No Harm」が早々に打ち切られたため、予定を繰り上げて、4月放送開始が発表された。 Janet Mayer / PRPhotos.com
グリーンブラット会長は、Showtime局のドル箱作品「デクスター」の制作に関わった張本人なので、言葉を濁しているのかと思いきや、殺人鬼の極み作品を棚に上げて、「「Following」や「クリミナル・マインド」の方がもっと残忍」と引き合いに出す始末です。更に、テレビより、映画やビデオゲームに難ありと責任転嫁まで。昔から尊敬に値する数少ない良心的な局幹部の一人と尊敬していただけに、のらりくらり質問をはぐらかすグリーンブラット会長には大いに失望しました。
昨秋から話題の「The Following」は、連続殺人鬼を養成する教授に立ち向かうFBI捜査官のドラマです。前評判とプレスツアーであれだけ話題になれば、Foxはしめしめと思っているに違いありません。私はトレーラーさえ直視することができず、パイロットは異例のパス!!ジキル博士とハイド氏21世紀版ドラマ「Do No Harm」でさえ、暴力や血腥さ度が高くて観られなかったので、「Following」をパスしたのは大正解だったようです。
放送作家ケヴィン・ウィリアムソンは、エドガー・アラン・ポーのファンだと告白。血腥い作品が次々と生まれる訳だ。 Alan Hess / PR Photos
クリエイターのケヴィン・ウィリアムソンは、ゴシック/恐怖小説の大家エドガー・アラン・ポーの世界に12歳から浸っていることを告白した上で、「ボクは捏造した世界の語り部に過ぎない」と守りの姿勢を貫きました。Foxエンターテインメントのケヴィン・ライリー会長は、「乱射事件と映像の関係は、様々な要素が絡んでいるので、テレビだけが悪いとは言い切れない。放送するからには、責任を追う覚悟はある」と強気です。但し、「何の規制もかからない過激なケーブル作品に対抗するには、午後9時の放送枠にケーブルを上回る作品をぶつけるしかない」の言い訳も付け加えました。嘗てNBCで、秀作「Friday Night Lights」を世に出したこのお偉方も、弁護士並みの切り返しを準備して、質疑応答に臨んだものと思われます。極めつけは「視聴者のニーズを察して、作品を提供するのが我々の仕事だから」と、「番組にどっぷりハマるから、余計に残忍さを強烈に感じるでしょう」のコメント。はー?若年層の繊細な目や脳に曝すべきではない映像/内容がある筈。自主規制するほどの良心を持ち合わせていないのでしょう。
質問をはぐらかすことにかけては業界一のCBS社長ニーナ・タスラーは、犯罪捜査局CBSで「放送中のドラマに大満足している」としらじらしくコメント。他局のお偉方が引き合いに出しただけでなく、全米で乱射再発防止や、何故このような事件が尽きないのか、何が引き金となっているか等の討論で必ず槍玉にあがる同局の「クリミナル・マインド」について、「万人受けする番組ではありませんし、大人向けという表示もしています。私は楽しんで観る番組よ」と笑みを浮かべて語ります。レッテルを貼れば良いと言うものでは....しかも、「CBSの犯罪捜査ドラマでは、異常犯罪者や連続殺人鬼は必ず捕まります。正義が勝って、悪は滅ぼされます」と付け加えました。どんな残忍な犯罪を犯しても、CBSのドラマでは「捕まる」から良いという、またまた異種の屁理屈が飛び出しました。
槍玉に挙がった「クリミナル・マインド」でFBIプロファイラーを演じるトーマス・ギブソン。 Izumi Hasegawa / PR Photos
唯一、良心的な答えが出たのは、過激な描写で名を馳せたFX局のジョン・ラングラフ社長からでした。毎プレスツアー、この社長の率直な対応を楽しみにしている評論家が多いので、ますます期待が募っていました。私好みのドラマは制作しない局にも関わらず、社長の業界への情熱の籠った思慮深い発言はいつも有難?く拝聴します。今回は、今後映像と乱射事件の相関関係を研究して行く必要性を強調し、同局で高視聴率を誇る「Sons of Anarchy」がイギリスでもヒットしているものの、規制の差で銃を使った殺人件数は、「英国1に対し米国は90」なる統計を指摘しました。
しかし、「Sons of Anarchy」も「アメリカン・ホラー・ストーリー」も放送は午後10時枠=大人の時間と決めていること、また3人の息子(15歳、12歳、9歳)にはXboxやプレイステーションで、一人称視点のシューティングゲーム(FPS)はさせない方針であることも述べました。長男は友人宅でビデオゲームを体験しており、「食べ物を探して狩りをしているワケじゃなくて、視野に入るものは何でも撃ち殺すって尋常じゃないよ」と嫌悪感を述べたそうです。さすが!
「Sons of Anarchy」の主人公ジャックスを演じるチャーリー・ハナム。 Tina Gill / PR Photos
ラングラフ社長は、確かに銃管理やビデオゲームを引き合いに出しましたが、今後業界として相関関係の研究に協力していくとも述べました。今ツアーで、唯一の良心的な回答だったと思います。人間は生活環境の中で頻繁に目にするものには、慣れっこになり、感度が薄れるもの。中でも映像は、「異常」を「普通」に変える力を持っています。更に、近年の脳科学の発達で、発光体(映画、テレビ、コンピュータ、携帯)に刺激された脳は、睡眠や思考を変えていることも実証されています。私は己の敏感さをよく知っているので、自分で管理できますが、判断力がつく前から若年層を過激な映像に曝すことには反対です。残念なことに、「The Following」は好調です。映像による暴力や残忍な描写は、今後もますますエスカレートしていくのでしょう。いと悲し!
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TCA冬のプレスツアー、PBSのドキュメンタリーは粒ぞろい
2013年冬のプレスツアーで発表された、地上波やケーブル局の新作。残念ながら、わくわく度が低かったことは、TCA冬のプレスツアー第一回でお話しましたが、その分公共放送PBSが用意しているドキュメンタリーが輝いていました。ここ数年、ドキュメンタリーの威力を身に沁みて感じているからでしょう。
前回指摘した、サンディフック小学校銃乱射事件など、「どこ吹く風?」的地上波局のお偉方に是非観ていただきたいドキュメンタリーがPBSで放送されます。
2月19日午後09時 「After Newtown: Guns in America」
2月19日午後10時 「FRONTLINE “Raising Adam Lanza”」
2月20日午後09時 「NOVA “Mind of a Rampage Killer”」
2月20日午後10時 「The Path to Violence」
さすがに公共放送だけあって、サンディフック小学校銃乱射事件を1)銃規制、2)証拠隠滅後自殺したアダム・ランザの生い立ちと銃規制で二分するニュートン市民、3)乱射魔の心理と動機(自殺願望、メディア、ビデオゲームなど)、4)学校警備の盲点、乱射事件の波紋など、あらゆる角度から考察します。喉元過ぎて熱さを忘れてしまったアメリカにも、まだ真剣に再発防止に時間と労力を注いでいる人達がいる証拠です。数ある起因を挙げて、優先順位をつけたり、責任のなすり合いをしている場合ではありません。映画「ボウリング・フォー・コロンバイン」でマイケル・ムーア監督が漫画で面白おかしく綴った「米国の歴史要約」(=銃社会の悪循環)を観て銃規制を再考し、オバマ政権下で、最初の一歩が踏み出されることを期待しています。
米国社会の汚点を記録映画で綴るマイケル・ムーア。皮肉にも、全米ライフル協会(NRA)の会員だとか.... Sylvain Gaboury / PR Photos
「ヘー!度」の高い粒ぞろいのドキュメンタリーの中で、女性解放運動50年の歴史を綴る「Makers: Women Who Make America」は女性視聴者にお薦めです。1月15日に行われたパネルインタビューに登場したのは、米国の女性解放運動の‘顔’と言っても過言ではないグロリア・スタイナム、米史上初の炭坑婦バーバラ・バーンズ、NOW(全米女性同盟)のアイリーン・ヘルナンデスと制作陣3人でした。私のお目当ては、1966年24歳の若さで、NYで女優業を目指す独り暮らしの女性アン・マリーを自作自演したマーロ・トーマスでした。「That Girl」を観て女の自立を学び、日本脱出を果たした私にとって、アンは英雄、お手本、目標でした。
私の英雄/お手本/目標アン・マリーを生み出したマーロ・トーマスに会って、お礼を言えるなど、想像したこともなかった。私の人生を大きく変えた人に会えるのが、この仕事の醍醐味! Andrew Evans / PR Photos
パネル後に、「That Girl」が私の人生を変えたと自己紹介したところ、「あら、ご両親に恨まれそうね!」とトーマス。最近、懐かしい古典番組ばかりを放送するMeTV局で「That Girl」を観ているだけに、ご本人にお目にかかった感慨はひとしお!でした。逆にスタイナムは、HBOのドキュメンタリーで以前にもツアーに登場しましたが、女性評論家仲間がアイドル視するほどの偉大さを全く感じません。スタイナムが活躍していた頃を見ていないから?とは思いますが、後光が差していないと言うか、カリスマがないと言うのか....
左から3人目がヘルナンデス、中央にスタイナム、右隣がキャリアウーマンの走りを自作自演したトーマス。右から2人目は米史上初の炭坑婦バーンズ。
「Makers: Women Who Make America」を観て驚いたのは、ウーマンリブでは世界の先端を行っていると信じていたにも関わらず、1972年に議会で可決された女性差別撤廃憲法修正案(ERA)は、1982年までに成立に必要な38州に満たず(3州不足)、不成立のまま、2013年まで来ているという事実でした。レーガン政権下で、保守派議員フィリス・シュラフリーが「男女の差異は当たり前、専業主婦のどこが悪い?」と居直り、男女同権を飽くまで主張すれば女性も兵役に服す義務が発生すると世の親たちの恐怖を煽った結果です。言論の自由は認めますが、女性への差別を撤廃する法律に反対するなんて、どういう神経なんでしょうか?折から、女性兵士に前線で戦闘任務を解禁すると発表があり、米軍内で性別を理由に特定の職種から女性兵士を排除することが原則として不可能になったと騒がれています。憲法上は男女同権ではないのに、軍規では女性だからと言って差別しない?変ですよ。この発表に対して、現役の軍人女性は「解禁されたからと言って、前線に飛び込む女性は僅かだと思います。男性だって、前線志願する人の数は限られていますから....門戸が開いただけですよ!」とコメントしていたのが印象的でした。
他に「ヘー!」度の高いのは、20世紀の革新家ヘンリー・フォードの摩訶不思議な人生感を描いた「American Experience: Henry Ford」や‘コメディ映画の巨匠’メル・ブルックスの公私を綴ったドキュメンタリー「Mel Brooks: Make a Noise」、「さようならコロンバス」で作家デビューしたフィリップ・ロスの80年を探る「Philip Roth: Unmasked」、1989年セントラルパーク・ジョガー事件で7〜12年の有期刑を終えた非行少年(当時)5人の苦闘から真犯人自供までを5人の視点から描く「The Central Park Five」など、見応えのある粒ぞろいのドキュメンタリーが待ち構えています。
「The Central Park Five」制作の動機を語るプロデューサーのケン・バーンズ、娘サラ・バーンズとドキュメンタリーで取り上げたレイモンド・サンタナ。NYPDの横暴な振舞いの犠牲者サンタナに思わず謝罪したくなった。
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TCA冬のプレスツアー、映像インタビューで光っていたのは?
1月10日、中国、オーストラリア、メキシコ、ベルギーなど世界12カ国から、レポーターがパサデナに集合しました。今回は、春の新作4本「Devious Maids」(「デスパレートな妻たち」のクリエイター、マーク・チェリーの新作)「Mistresses」米国版、「Red Widow」「Zero Hour」と、継続番組6本「Army Wives」「ボディー・オブ・プルーフ 死体の証言」「The Neighbors」「Perception」「リベンジ」「Switched at Birth」の計10本、俳優24人の映像インタビューを実施しました。
もうかれこれ8年ほど前から知っている「ボディー・オブ・プルーフ」のダナ・デラニーが、今回も最も楽しいインタビューでした。才色兼備で、完璧なプロ、上品でしかも気さくなデラニーとは、生き方や信条が似通っていて、久し振りに幼馴染みに会ったような感じです。毎回、映像インタビューする度に、デラニーの衣装と私が当日選んだ衣類の色がばっちり!という、摩訶不思議な現象が....今回も、デラニーの真ん前に座った途端、お互いに深紅色に身を包んでいるのを見て、吹き出してしまいました。「霊感かしら?」とデラニー。
独りでないと道は極められないと独身を貫く才色兼備ダナ・デラニー!ジャズシンガーになるのが密かな(?)夢だとか。 Andrew Evans / PR Photos
そして、「ボディー・オブ・プルーフ」シーズン3について、どこがどう変わったかを話してくれました。キャストの入れ替えはリスク大!特に、私はシーズン2までのキャストや、シリーズ開始前にデラニーが語ってくれた本作の霊的なテーマが気に入っていたので、犯罪捜査アクションものに変身してしまったことが残念でたまりません。
2011年7月に「ボディー・オブ・プルーフ」のセット訪問をした際には、デラニーの衣装デザイナーが、‘オシャレ’検死官の衣装と靴を披露してくれました。ほとんどがプラダ!譲り受けたい逸品ばかりでした。但し、桟橋や公園の芝生をミーガン・ハントが10cmのハイヒールで歩き回るのが不自然と指摘したところ、「そうなの。何度も文句言ってるんだけど...」とハイヒール廃止を申し出ると述べていましたが、‘オシャレ’にはハイヒールとブランドバッグは無くてはならない必需品なのでしょう。アクション=外回りの捜査に、‘オシャレ’の象徴はちぐはぐも良い所!
因に、「リゾーリ&アイルズ」のモーラ・アイルズ検死官も、ハント同様に‘オシャレ’が売物です。アイルズを演じるサーシャ・アレクザンダーは、かつて「Presidio Med」という女医5人のドラマでデラニーと共演したことがあります。ほとんど同時期に、デラニーとアレクザンダーが同じ様な‘オシャレ’ 検死官を演じるのは、奇遇と言えば奇遇?「不思議な巡り合わせね」と、「Presidio Med」以来大の仲良しのデラニーとアレクザンダーは話したそうです。
サーシャ・アレクザンダーも、頭が良過ぎて、空気が読めない、アスペルガー症候群を示唆する、アイルズ検死官を演じる。 Martin Campanile / PR Photos
久し振りにお目にかかったユンジン・キムは、米国版「Mistresses」の番宣にかけつけました。韓国でも良い作品に出演して大いに活躍していたキムに何故、この作品を選んだのか聞いてみました。「「LOST」は韓国人だから意味のある役だったけど、「Mistresses」は国籍とか文化を背負う必要がゼロの役だから」と語ってくれました。キムが演じるカレン・キムだけが、きらきら輝いている「Mistresses」。米国での受けはどうでしょうか?
前に座った途端「あなたのヘアスタイルを見ると、いつも私もカーリーにしたい!!って思っちゃうわ」とキムにコツを聞かれました。私が愛用しているカーリーヘア用ヘアケア製品を推薦しましたが、キムは断然ストレートの黒髪がお似合いだと思います。
アジア系女優の中で、最も親しみ深い人柄のユンジン・キム。とにかく、素敵!の一言に尽きる。 Albert L. Ortega / PR Photos
今ツアーで参加したセット訪問は、「Scandal」(大統領執務室で大統領役のトニー・ゴールドウィンと写真撮影、ホワイトハウスのあちこちで出演者インタビュー)、「Switched at Birth」(セットでお昼、各テーブルに座った俳優と歓談、俳優インタビュー、1シーンの撮影見学)、「The Bachelor」(嫁/婿選びのリアリティー番組の宿舎に使われる丘の上の大邸宅を訪問、過去の参加者にインタビュー)、「Vegas」(1960年代のラスベガスのセットで、パネルインタビューとレセプション)でした。
「グレイズ・アナトミー」の逸話監督を務めた功績を買われて、ションダ・ライムズから「Scandal」に抜擢されたトニー・ゴールドウィン。ケリー・ワシントンと共演できると聞き「一も二もなく引き受けてから、台本を読み、大統領役と判明した」と言う。 Andrew Evans / PR Photos
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ATAS「リベンジの夕べ」に参加
3月4日、テレビ芸術科学アカデミー(ATAS)のレナード・H・ゴールデンソン劇場で、会員向けに「リベンジの夕べ」が開催されました。
会場入口にはレッドカーペットが敷かれ、お馴染みのキャストがインタビューに応じています。私は既に映像インタビューやセット訪問で、ほとんどのキャストにお目にかかっていますが、いつもガブリエル・マンにインタビューしそびれています。毎回、大勢のジャーナリストに取り囲まれて、近寄れないと言う方が正しいかもしれません。レッドカーペットの反対側では、金色のピカピカドレスに身を包んだクリスタ・B・アレンがファンにサインをせがまれています。
ウィンドブレーカーを役所のトレードマークに使って、オーディションに受かったガブリエル・マン(左)、「コールドケース」にもゲスト出演したクリスタ・B・アレン Andrew Evans / PR Photos
午後7時30分、パネルインタビューに登場したのは、番組関係者11人+進行役の総勢12人です。
バリー・スローン(エイダン役、シーズン2から登板)
クリスタ・B・アレン(シャーロット役)
コナー・パオロ(デクラン役)
ニック・ウェクスラー(ジャック役)
ガブリエル・マン(ノーラン役)
マイク・ケリー(クリエイター)
エミリー・ヴァンキャンプ(エミリー/アマンダ役)
マデリーン・ストウ(ヴィクトリア役)
ヘンリー・チャーニー(コンラッド役)
ジョシュ・ボウマン(ダニエル役)
アシュリー・マデクウ(アシュリー役)
エミリー・ヴァンキャンプは、白の簡素なシャツに黒のパンツ姿で登場。清楚、清純が売物だったヴァンキャンプは「イメージを打破しようと思って、オーディションを受けた」と登板の動機を語りました。更に、復讐の‘竜巻’のように周囲の人間を吸い上げてしまう「ソシオパスを演じるのは楽しいけど、時々情にほだされないと視聴者がついて来てくれないでしょ?」と善悪のバランスを指摘しました。
「エバーウッド」で清楚な乙女を演じたエミリー・ヴァンキャンプ。カナダの農家で育った四姉妹の一人で、11歳でモントリオールの夏期ダンスキャンプに参加して、芸能界入りを決めた。 Emiley Schweich / PR Photos
ソシオパス=後天的反社会的人格障害という臨床的な表現を耳にしたのは初めてでした。私は単に父親の遺志をついで、復讐に乗り出した殊勝な娘だとばっかり....但し、復讐はいずれ我が身に返ってきますから、自分の人生はないものと諦めなければなりません。美貌も若さも資産もあるうちに、過去を捨ててどこか遠くで幸せに暮らした方が良いのに....と、シーズン1開始時の映像インタビューでヴァンキャンプと話したことを思い出しました。勿論、それではドラマになりませんが....最近、25人に1人の割で巷に潜むソシオパスに関する本を読んで、理解を深めただけに、ヴァンキャンプの口から出たのが衝撃的でした。
左からマデクウ、ボウマン、チャーニー、ストウ、ヴァンキャンプ。
「ハンプトンズを舞台に『モンテ・クリスト伯』風のメロドラマを書いて欲しい」というABCの要望に応えたと語るクリエイターのマイク・ケリー。「女性が主人公の方が断然面白い!」と信じて止まないケリーですが、エミリー/アマンダには復讐のターゲットに絶対に手をかけさせないと決めているそうです。その‘一線’がヴァンキャンプの言うバランスを維持する秘訣かもしれません。
逆に「やりたい放題!させてもらえて楽しい」と発言するのは、エミリー/アマンダの唯一の腹心ノーランを演じるガブリエル・マンです。飽くまでエミリーの味方という忠実さが視聴者に受けていると思っていましたが、マン自身は「ノーランの曖昧さが好き」だとか。
左から進行役スタイナー、ケリー、マン、ウェクスラー、パオロ、アレン。
シーズン1でキャラが設定されたため、「今シーズンはキャラ同士の絡みが少なくて寂しい」と言うマンは、出番が終わった後、1時間でも2時間でもセットに居残り、仲間と‘おしゃべり’を楽しむそうです。人懐っこいマンは、本イベント終了後も、握手、サイン、写真撮影に快く応じていました。道理で、キャスト中一番の人気者です。
快く写真撮影に応じるマン。ファンサービスに長けているというよりも、人懐っこい性格と、ノーラン役への情熱を感じた。
現在、シーズン2が進行中の「リベンジ」は、昼メロがどんどん打ち切られて行く中で、夜メロの成功例として評価されていますが、視聴率低下は否めません。ここ2〜3年、ケーブル作品も含めて’必見ドラマ’が日曜日に集中し、激戦日となっていますが、水曜日に視聴率が良かった本作を日曜日に移動したことが、視聴率低下の一大要因として報道されています。私は、TCAプレスツアー時に行われた映像インタビューの準備をしている際に、ストーリーが余りにも複雑になり、誰が誰に何をしたのか?覚えきれず、ついて行くのが困難になったことをひしひしと感じました。
舞台からサインに応じるウェクスラー。背後に手持ち無沙汰そうなボウマンとパオロ。
パネルインタビューでケリーに、「視聴者は話の流れについてきていると思いますか?」という進行役の質問に、「ついて来てくれることを祈るのみ」とかなり不安な答えだったのが良い証拠です。連続ドラマが大好きな私でさえ、最近人間は一体何本まで、この手の複雑なストーリーを追っていけるのだろう?記憶の許容量はどれくらいなのか、脳科学の専門家に聞いてみたいと切望するようになりました。
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「ギルモア・ガールズ」カリフォルニア版?
昨年末、映像インタビューする予定の作品として送られてきたリストに「Bunheads」が挙がっていました。1月中旬にシーズン1後半が再開されるからですが、慌ててパイロットから10話までを通しで観たところ....ご存知、「ギルモア・ガールズ」のエイミー・シャーマン・パラディーノが創作しただけあって、「女の世界」第二弾と言っても過言ではない、ハマってしまう作品です。
元バレリーナのミシェル・シムズ(サットン・フォスター)は、ラスベガスでコーラスガールとして働いていますが、公私ともお先真っ暗。このまま歳をとって行くのか....と落ち込んでいた矢先、花束や贈物を携えて1年通い続けた、冴えないハブル・フラワーズ(アラン・ラック)に求婚され、酔った勢いでべガス式‘超特急’挙式してしまいます。ハブルは、ミシェルをめとり、故郷へ錦を飾りますが、きらびやかな生活に慣れたミシェルは、映画館もない、ひなびた海辺の町にがっかり。
何でもそつなくこなす万能女優サットン・フォスター(左)、靴のセールスマン、ハブル役を演じたアラン・ラック Laurence Agron, Emiley Schweich / PR Photos
ハブルが約束した、海を一望に収める寝室だけが取り柄のこんな田舎で生きていけるのだろうか?結婚なんて、早まったかな?と疑い始めたミシェルに、とんでもない災難が降り掛かり....結局、姑ファニー(ケリー・ビショップ)とバレエ教室を経営する羽目になってしまいます。教室に通ってくる、バレエで身を立てようと励む4人の女子高生サシャ(ジュリア・ゴルダーニ・テレス)、メラニー(エマ・デュモント)、ジニー(ベイリー・バンテイン)とブー(ケイトリン・ジェンキンズ)を支え、キャリア/人生の先輩として生きる知恵を伝授していくミシェルを描きます。
フォスターとバレエ教室に通う仲良し女子高生4人以外は、ほとんどが「ギルモア・ガールズ」に出演した、一癖も二癖もある俳優の面々です。ビショップは、ローレライ(ローレン・グラハム)のお高くとまった母親エミリーを演じていました。また、中盤から登場するライザ・ウィールは、ローリー(アレックス・ブレデル)の親友パリスを演じていた私の大好きな役者です。パリスがあのまま実業家に成長したら、こんな感じだろうな〜と思わずにんまりしてしまいました。「Scandal」で、政界の餌食になるか弱いインターンを見事に演じていましたが、私はパリスの成人版ミリセント役が、ウィールらしくて好きです。主人公の‘友達母娘’が‘先生と愛弟子4人’に変化しただけではありますが...逆に、「ギルモア」ファンには溜まらない、独特の雰囲気、ペース、会話の再来という見方もできます。
(左から)ケリー・ビショップはブロードウェーの大ベテラン。サシャ役のジュリア・ゴルダーニ・テレス、メラニー役エマ・デュモント、ジニー役ベイリー・バンテイン、ブー役ケイトリン・ジェンキンズの4人。典型的なバレリーナ体型ではない、メラニー、ジニー、ブーキャラのキャスティングは至難の業だったとクリエイターは告白。 Scott Alan, Janet Mayer / PR Photos
「ギルモア」は東海岸コネチカット州ハートフォードから30分ほどという設定のスターズ・ホローなる架空の町が舞台でしたが、「Bunheads」は西海岸の海辺の町パラダイスです。カリフォルニア州オーハイという実在の町から、50キロ弱南下した所にある町という想定です。因に、オーハイはLAから北東に車を走らせると、2時間半ほどで到着する田園風景の美しい田舎町です。
主役ミシェルに起用されたフォスターは、ブロードウェーで活躍する舞台女優で、クリエイターに「こんなに何でもできちゃう人は初めて!もう二度と他の女優は使えない!」と言わしめたデキる女優です。「ギルモア」のグラハムと比べると、少々男勝りではありますが、庶民的でさばさばしたフォスター。主人公を演じる役者に魅力がなければ、勝手に苦しめば?と投げ槍な気持ちになり、毎週キャラの旅路に同行する気が失せてしまいますよね?その点、ちょっと危なっかしいけど、憎めない、一生懸命生きているミシェルは、ついつい応援したくなります。フォスターの人柄なのでしょうか?
ついつい応援してしまうミシェルを演じるフォスター(左)、「ギルモア」で大人になりきれないローレライを演じたグラハム。 Laurence Agron, Albert L. Ortega / PR Photos
「ギルモア」ファンではなかった方でも、試しにパイロットをご覧ください。昨今、珍しい手作り感たっぷりのほんわかドラメディーは、意外と新鮮かもしれません。
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2013年テレビ・サミットーレポート(1)
2010年、ヴァラエティー誌と米国テレビ芸術科学アカデミー(ATAS)がテクノロジーの変化で混沌としているテレビ業界の将来を予測するべく、各分野の首脳を集めてパネルディスカッションで綴るテレビ・サミットを共催しました。テレビの編成、制作、配信、マーケティング、デジタル化、海外市場動向など、各分野の首脳が現状分析し将来を語る、興味津々の首脳会議です。今年は3月21日に開催され、午前9時から午後6時近くまで、10グループのパネリストが専門分野を語りました。今回から数回に渡り、同サミットで学んだ事をレポートします。
シェラトン・ユニバーサル・ホテルで開催されたテレビ業界の首脳会議。会場入口で写真撮影。
昨年、初参加したサミットですが、余り画期的なことを耳にせず、まだまだ暗中模索なのだ!が感想でした。今年は、真っ暗なトンネルの遥か先に、一抹の光が差しているような感じがしました。インターネット中心に世界が動き始め、'テレビ離れ'が進むと長年言われてきましたが、そんな懸念など、どこ吹く風!的データの発表が光源だったに違いありません。
ニールセン社が3月に纏めた「クロス・プラットフォーム・レポート」を、クライアント・ソリューション部門のシンシア・アイデル上級副社長が発表しました。ケーブル加入者は僅かながら減少しましたが、配信形態の増加で、視聴時間を自由自在にシフトできるため、テレビ視聴時間が増加を続けていると言うデータは、「誰もテレビなんか観ていない!」と取りつく島がない米国の日系媒体に利用できそうです。
又、インターネットが何もかも吸収するネット中心社会に移行すると言う、従来の恐怖感を吹き飛ばす発言として、「コンテンツを太陽と見なすと、テクノロジーが可能にした配信デバイスやスクリーンは、周囲を公転する天体のような存在」が印象的でした。ニールセン社は飽くまで、コンテンツ中心論を主張しています。但し、問題はどこまでを「テレビ」と括るのか?です。「テレビ」の定義を新たにしなければならないこと、またテレビ無しでコンテンツ(=同社ではこれをビデオと括っています)を消費している'ゼロ・テレビ世帯'が同社のデータに加えられたことも注目に値します。
昨年は、同上級副社長がソーシャルメディアの功罪についてデータを発表し、ツイートなどの所謂「雑音」によるネタバレを避けるため、敢えて放送時間にテレビの前に座って観るようになった視聴者が2010年の20%から27%に増加したというデータが、最も興味深かったと記憶しています。特に佳境に入った、込み入った連ドラは、DVR録画しておいても、翌日風の便り(?)で、ネタバレ発生しがちです。又、日本ではあり得ませんが、時間帯を4つに分けている米国大陸では、東海岸で放送済みのものは、以西の時間帯でネタバレの可能性が高くなります。従って、ツイートなどを読まない‘消音状態’で観ない限り、視聴体験が損なわれると言う視聴者が増えています。ミステリーの結末を知ってしまうと、読書を続ける気がしなくなるのと同じです。「グッド・ワイフ」や「Scandal」など、複雑で一瞬たりとも目を離せない番組放送中に、ツイートしているファンは、それほど真剣に観ていないのでは?と思うのは、私だけでしょうか?つまり、ツイートでファンをつなぎ止めておくことはできても、番組を観ていない人には、マーケティングのツールにはならないと言うことです。
ジュリアナ・マルグリーズが演じるアリシアの一挙一動を見守っていると、「グッド・ワイフ」放送中にツイートする暇などない筈だが.... Andrew Evans / PR Photos
新番組の本数が2002年の90本から、10年後200本になったことからも、視聴時間シフトが自由自在になればなるほど、「もっと観たい!」という視聴欲を煽っていることは明らかです。放送時間に逸話を見逃したら、二度と視聴できなかったVCR普及前の暗黒時代に比べると、今はヒット作の裏番組としてぶつけても、秀作であれば、DVR録画、VOD/SVOD、DVDや他の配信形態で、視聴者が発見して、追いかけ/追い付くことが可能になりました。そういう意味では、黄金時代になったと言えます。しかし、次々と新しい刺激を求める視聴欲を煽れば煽るほど、視聴者の‘目’が1作に釘づけになり、大ヒットとなる可能性は薄れ、釘づけになっている期間も、どんどん短縮して行くと言う陰の部分もあります。それが証拠に、毎年視聴率は5〜10%余り減少するのが、昨今の業界の常識。毎年、視聴者が増えて行く嬉しい現象は、古代の遺物になってしまいました。
この日の呼び物は「チャック・ローリーとの対話」でしたが、今のような混沌状態になる以前から放送作家をしているローリー(「ビッグバン☆ セオリー ギークなボクらの恋愛法則」や古くは「ダーマ&グレッグ」に関与)が、「コンテンツとか製品って言う表現、辞めて欲しいな〜。ヒット作に不可欠の’魔法の粉‘の部分を無視した言葉だよ」と抗議しました。流石、アナログ人間!デジタル世代のコンピュータおたくやマーケティング人間が使う用語は、アナログ世代のクリエイター連中には、喉越しの悪い言葉です。
アナログ人間を代表して、「コンテンツ」と言う表現に物申すチャック・ローリーに拍手喝采!
Barbara Henderson / PR Photos
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2013年テレビ・サミットーレポート(2)
今年の基調講演は、AMC Networksの最高執行責任者エド・キャロルとヴァラエティー誌編集長シンシア・リトルトンの対談形式で行われました。キャロルが統括するのは、AMC, IFC, Sundance Channel, WeTVの計4局。AMCは元々名作映画劇場局でしたが、2007年「MAD MEN マッドメン」、翌年「ブレイキング・バッド」のオリジナル作品で一躍名を馳せ、2010年「ウォーキング・デッド」で、'三種の神器'を完成させたケーブル局です。
対談では、Sundance Channelのオリジナル作品「Rectify」の放送開始戦略について、キャロルが手の内を明かしました。Sundanceは、名前通りサンダンス・インスティテュートを設立したロバート・レッドフォードをクリエイティブ・ディレクターに迎え、1996年にShowtime Networksとユニバーサル・スタジオが協力して始めたケーブル局です。サンダンス映画祭などに出品された、インディー系の映画を放送する局でしたが、2008年AMC Networks傘下に入って以来、ミニシリーズやリアリティー番組制作に乗り出しており、中でも「Rectify」は同局初のテレビシリーズとして期待が寄せられています。
「Rectify」で、兄の釈放に尽力したアマンサ・ホールデンを演じるアビゲイル・スペンサー
Tina Gill / PR Photos
AMCと同様のパターンで、名を上げたいという野望を抱いてのことです。鳴り物入りでジャーンと登場するだけでは、完全に埋もれてしまう、騒音に満ち満ちた昨今の世の中なので、「筋はシンプル、キャラは複雑」をモットーに、シーズン1はブルドーザー式に突き進む作戦です。プレミアの1週間前から、テレビ上VOD、オンラインやテレビ以外のデバイスで、3話まで無料視聴を可能にするのは、新作に飢えている視聴者が食いつき、ハマってくれれば、口コミでプレミア日に集客できると読んでのことでしょう。「初っぱなから込み入った伏線を盛り沢山にすると、視聴者が付いて来ない。シーズン1は、2に継続するための、序論のようなものだ」とキャロルは定義します。
6話しかないシーズン1の半分を無料配信して、番宣に使うという発想ですが....強姦殺人罪で、19年独房監禁され、死刑執行日を待っていたダニエル・ホールデン(エイデン・ヤング)が解放され、南部の田舎町ポーリーに帰郷してからの6日間を描く、極めて暗〜いドラマです。監禁されていた時の禅や悟りも、デジタル社会には太刀打ちできず、次々と災厄が降り掛かり、心が痛みます。パイロットだけは観ましたが、内容が内容だけに、2話以降に手が出ませんでした。無料だからと言って、3話まで「一気観」したくなるタイプのドラマではないだけに、この型破りな戦略は吉と出るか凶と出るのか?業界が見守っています。今月22日、午後9時からの2時間のプレミア時に、シーズン2継続の発表があったりして.....
左からヴァラエティー誌リトルトン、MTV編成局長スザンヌ・ダニエル、BETネットワーク・オリジナル編成局長ロレサ・ジョーンズ、truTV最高執行責任者マーク・ジュリス、TNTライト編成局長
一方、2005年「クローザー」でケーブル局の首位に躍り出たTNTのマイケル・ライト編成局長は、「視聴者好みのドラマを次々と放出するのは当然ですが、ヒット作に、がんじがらめにならないように気を付けています」と語りました。つまり、柳の下の泥鰌狙いは、局内でもしたくないと言うのです。「視聴者が求めているドラマを作ると同時に、意表を突いた作品、TNTらしくなくても、面白い!と唸らせるドラマを生み出すのが醍醐味」と、流石に数々のヒットを生み出した実績に基づいた編成方針です。まだヒットシリーズが1本も出ていないSundanceと異なり、「ドラマはキャラと視聴者との関係が鍵」が信条のTNT。キャラの身に降り掛かる災難を自分のことのように感じ、辛苦を共にしよう!放っておけない!と思わせなければ、誰も付いて来ないと言うことです。納得!コンセプトは斬新でも、キャラ/役者に何の魅力も感じず、パイロットのみでおさらばした作品は数え切れません。
TNTを一躍有名にした「クローザー」は、キーラ・セジウィックが「デキる女」ながら、私生活では弱点だらけのジョンソンLAPD本部長補佐を描いた秀作。現代女性の鑑だったので、画面から消え去ったのは寂しい限りだ
Bob Charlotte / PR Photos
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2013年テレビ・サミットーレポート(3)
レポート初回、「チャック・ローリーとの対話」で、ローリーが「コンテンツ」とか「製品」と言う表現に抗議したことをお伝えしましたが、今回はローリーが明かしたコメディー創作、執筆、制作のコツをレポートします。
CBS月曜日のコメディー枠はバトンタッチし、映画、ドラマ、ケーブル作品まで企画する契約を結んだチャック・ローリー。 Emiley Schweich / PR Photos
現在「ハーパー★ボーイズ」「ビッグバン★ セオリー ギークなボクらの恋愛法則」「Mike & Molly」の3本を制作しているローリー。「ハーパー」はシーズン10、「ビッグバン」は6、「Mike & Molly」3が現在進行中で、放っておいても制作は充分に機能しているため、現在は創作にエネルギーを費やしています。昨年、ワーナーと契約し、劇場用映画、ドラマ・シリーズ、ケーブル用のプロジェクトを何本も抱えているようです。
「ハーパー★ボーイズ」アシュトン・カッチャーは、チャーリー・シーンの後を継いだ。出だしは好調だったが、番組自体の老朽化は否めない。 Barbara Henderson / PR Photos
パイロット撮影シーズン真っ最中に開催されたサミットだったので、CBS月曜日のコメディー枠用に「Mom」のパイロット撮影に忙しいのか、対談に遅れてきたローリー。「セラピーを受けてからでないと、人前に出られない」が言い訳で、開口一番笑いをとりましたが....
セラピーを受けていて遅刻したと言い訳するローリー(左)とUTA専務ジェイ・スリスとの対談
番組の制作後記に書かれているローリーの胸の内を読んでも、いつお目にかかっても、暗〜〜いという印象しか受けず、この人のどこからコメディーが生まれるのだろう?と思っていましたが....「優秀な人材で周囲を固め、できるだけ邪魔しないように、専門職を全うしてもらうことだと、スティーブン・ボチコ(「シカゴ警察ヒルストリートブルース」「NYPD BLUE〜ニューヨーク市警15分署」制作)から学んだコツ」を肝に銘じているそうです。な、る、ほ、ど。理想ではありますが、絵に描いた餅では?と勘ぐってしまいます。’重箱の隅を楊枝でほじくる’タイプに、散々泣かされてきた人間に言わせて頂くなら、実行できる人は数えるほどしかいません。
スティーブン・ボチコは、「マダム・プレジデント〜星条旗をまとった女神」を女大統領の家族ドラマから単なる政治ドラマに豹変させてしまった張本人。「オリジナル・クリエイターのビジョンが全うされないと、こうなる!」の好例だ。 Glenn Harris / PR Photos
コメディーは、視聴者と交わした’笑いの契約書’と信じて止まないローリーは、「スクリーンタイムは1秒も無駄にしない」モットーを守り続けていると言います。笑いがとれなければ、制作する意味がないと言うことです。シーズンを重ねる毎に、視聴率が下がって行くのが常識になったにも関わらず、先シーズン辺りから益々好調の「ビッグバン」については、女性キャラが加わって奥が深くなったこと、シンジケーション(第二次配給)のご利益、ストーリー編集を優秀な放送作家にバトンタッチしたこと、の三要因を指摘しました。「シリーズの最高のコマーシャルは、再放送を繰り返し観てもらうこと」とシンジケーションのご利益を語ります。特に、現在制作/放送中の作品だと、過去の逸話にハマり、追い付く視聴者が増える=視聴率増加に繋がります。
私は、パイロットから惚れ込んだ「ビッグバン」ファンの先駆者を自負していますが、シェルドンの人となりを知る事が'冒険'だったシーズン1と2しか太鼓判を押せません。最近、すっかり輝きを失ってしまったと思います。キャラが多過ぎるのと、シェルドンが心底意地悪になったことが要因です。昔のように、DVRに録画して、落ち込んだ時に観ようと思うカンフル剤的逸話が登場しません。1月に映像インタビュー時に会った、中国人レポーターも、ある地上波局の広報担当者2名も同意してくれました。「感情移入できるキャラかどうか?が鍵」と言うローリーは、シェルドンが年々意地悪になっていることに気付いておられないようです。
「ビッグバン★ セオリー」シェルドン役ジム・パーソンズは、天才にありがちな傲慢さや社交性ゼロを見事に演じて、オタク文化の心理的背景をあらわにする。シーズン1、2の'どこか憎めない'シェルドンに戻ることはないのだろうか? David Gabber / PR Photos
新作を生み出すには、飽くまでも自作を死守する’尊大な戦士’であると同時に、周囲の人間のインプットや支えを素直に受ける謙遜さが必要だと学んだローリー。100年後に「チャック・ローリーって、まだ生きてるんだっけ?」と言われたいそうです。今のペースで、秀作を残し、シンジケーションでいつまで経っても放送が続けば、何の問題もなく「生きてるんだっけ?」と言われるに違いありません。
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2013年テレビサミットーレポート(4)
2013年度テレビサミットの最終パネルディスカッションは、ケーブル局の番組プロデューサー6人を集めて、ヴァラエティー誌のコラムニスト、ブライアン・ロウリーが質問する形式でした。
左からマーフィー、ヨースト、タマロ、ダフ、サッター
6人は、現存の番組を制作するエグゼクティブ・プロデューサーであると同時にショーランナーでもあります。ケーブル局から視聴率を獲得できる秀作が続出する理由について....
SyFy局で「Defiance」を開始したばかりの、ケヴィン・マーフィーは、
1)企画から制作までのリードタイムが充分にある
2)伝統的に地上波局がパイロットを制作する時期を外すことができるため、タレント(放送作家、俳優など)の争奪戦を回避できる
3)故に大物スターを配役することができる
と指摘しました。
但し、TNT「リゾーリ&アイルズ」を仕切ってきたジャネット・タマロは、「予算が地上波局より低いことは否めない」と付け加えました。1話に8〜9日かけて制作する地上波に対して、ケーブル局作品は7日分の予算しかないため、「複雑なストーリー展開やロケにかける時間も予算もない」と述べました。
タマロが制作する「リゾーリ&アイルズ」で主役を務めるアンジー・ハーモン(左)とサッシャ・アレクサンダー。ロケや複雑な展開ができない分、行動派女刑事+理論派検視官コンピの面白さを前面に出すしかない。 Emiley Schweich, Andrew Evans / PR Photos
FX局で「Sons of Anarchy」を創作/制作するカート・サッターは、
1)企画を持ち込んで話し合う時点でケーブル局幹部と直接交渉できる
2)数少ないオリジナル作品を育む温かい環境がある
3)手作り感たっぷりの良い作品に仕上げる努力が報われる
の3点を強調しました。これは、ケーブル局で秀作を制作している多数のプロデューサーから頻繁に聞く「ビジョンを死守できる」という意味です。口出しする局幹部の数が多ければ多いほど、クリエイターのビジョンは豹変するもの。「MAD MEN マッドメン」のクリエイター、マシュー・ワイナーがエミー賞受賞スピーチで、「ビジョンを貫き通せるのは、業界でも私だけかもしれませんが....」と公言したことは余りにも有名ですが、妥協を迫られない=ビジョンがブレないの公式を楽しんでいるクリエイターは多々存在します。
ワイナーは、「MAD MEN マッドメン」を、主役ドン・ドレイパー同様の暗い過去を引きずる俳優ジョン・ハムに託した。 Izumi Hasegawa / PR Photos
2013年TCAプレスツアーのレポート2月11日掲載ブログで、私が尊敬するジョン・ラングラフ社長に言及しましたが、FX局で才能豊かなクリエイターを大切に育て上げている張本人です。局の限界を弁え、マーケティングにかけられる予算も考慮して、本数を抑え、大切に育んでいる社長がいてこそFXが存在します。更に、同局の「Justified」と新作「The Americans」に関与するグラハム・ヨーストは、「独創性が高く、撮影が短期間という二点が俳優受けする点も秀作に繋がる」と付け加えました。大物スターが、敢えてケーブル作品を選ぶ理由はこの辺りにあるのでしょう。
ヨーストは2003年、NBCで画期的な「Boomtown」を試みましたが、結局視聴率が獲れず、キャンセルの憂き目に。FXの制作発表で、二度と地上波局と仕事はしないと何度も公言しています。タマロは、「恐怖感を礎に、秀作は築き上げられない」と地上波局の時代の流れに逆らう制作方針に問題があることを指摘。
ヨーストの自信作「Boomtown」で、LAPD刑事役を務めたドニー・ウォルバーグ。現在は、「ブルーブラッド」でNYPDの刑事を演じている。 robert mulrenin / PR Photos
ソーシャルメディアの使用法について....
この日、地上波局への面当てを矢継ぎ早に述べたのは、TNTの看板娘「クローザー」のクリエイターであるジェームス・ダフ。「クローザー」に行き着くまでに、15本のパイロットがポシャったと、6年前笑いながらインタビューに応えたダフとは大違い!「クローザー」のスピンオフ「Major Crimes」が好調なのに、いつもになく、ご機嫌斜めでした。何かあったのでしょうか?ソーシャルメディアは「番組ファンの共同体なので、即かず離れず」をモットーとしていると語りました。まるで、蜂の巣を遠巻きにしているような発言でした。
「クローザー」でブレンダの宿敵として登場したメアリー・マクドネル。「Major Crimes」では、ブレンダが去った後、元部下達を率いて日夜捜査に余念がないレイダー警部を演じる。 Andrew Evans / PR Photos
ヨーストも、「フォーカス・グループとして充分利用できる」と言いつつも、単なるフィードバックの位置づけで、ダフ同様距離を置いていることが読み取れました。
オートバイ無法地帯のハムレット的ストーリー「Sons of Anarchy」の性格上、サッターは「遠慮したい不逞の輩も結構いるよ。但し、何がファンに受けているのかを知るには恰好の道具だね」と発言しました。それでも、ソーシャルメディアに番組の舵はとらせないとも。読んではいるけれど、それでどうこうする訳ではないという扱いのようです。
「Sons of Anarchy」チャーリー・ハナム。シーズン2辺りまでは、プレスツアーに必ず登場したが、最近すっかり音沙汰がない。 PRN / PRPhotos.com
ソーシャルメディアに何か良案が書き込まれていても、放送された時点では、3〜5話先を撮影しているので、反映する時間がないというタイミングの問題もあります。手紙を書いていた時代と比べると、「即時性」は高まったものの、特に10〜13話でシーズンを終了するケーブル作品には、余り役に立たないということです。
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開いた口が塞がらないキャラ満載!NBC系列局の新作発表会
「ザ・ヴォイス」シーズン1〜3の審査員兼コーチは、左からブレイク・シェルトン、アダム・レヴィーン、クリスティーナ・アギレラ、シーロー・グリーンの4人。右端は、司会のカーソン・デイリー。 Andrew Evans / PR Photos
4月22日、NBCのサマー・プレス・デーがパサデナで開催されました。何か面白い作品があるかな?どの継続番組の、誰が姿を現すのだろう?と、多いに期待して参加しましたが…
2012〜13年シーズン中、NBCの視聴率上昇に貢献したのは、オリンピックと「ザ・ヴォイス」のみ。継続が決まったドラマは「Chicago Fire」と「Revolution」で、「Hannibal」はヒット不足の恩恵を受けて、視聴率が低かったにも関わらず、継続が決まってしまいました。「スマッシュ」シーズン2は、まるで気の抜けた炭酸水か、空気の抜けた風船のように消え去った上、12年に登場したコメディー新作は全滅しました。
「Revolution」の主人公を演じるトレイシー・スピリダコス(左)と叔父役のビリー・バークは、撮影中なのか、不参加だった。 Andrew Evans / PR Photos
このような厳しい状況にもめげず、サマー・プレス・デーを開催してくれるだけでも有難いのですが....NBC本局が番宣に紹介したのは、夏恒例のタレント発掘番組「America’s Got Talent」と、視聴率維持のため「ザ・ヴォイス」の審査員の面々。更に、冒険心を競う新番組「Get Out Alive with Bear Grylls」と、NBCもリアリティー番組の花盛りです。
「ザ・ヴォイス」パネルインタビューに登場した、シーズン4の審査員兼コーチ。左からレヴィーン、シャキーラ、アッシャー、シェルトン。
継続が決まったドラマの中で、唯一参加したのは、「Chicago Fire」でした。但し、タイトル通りシカゴで撮影しているため、主人公を演じるテイラー・キニーとジェシー・スペンサーのみの参加で、助演キャストには今回も会えず仕舞いでした。番組に「お墨付き」を出した、「Law & Order」フランチャイズのベテラン・プロデューサー、ディック・ウルフもパネルインタビューに登場しましたが、「Chicago Fire」のクリエイターではないため、スピンオフ「Chicago PD」の宣伝に余念が無い様子でした。
スペンサーが演じるケイシーが「Chicago Fire」の道徳羅針盤で、迷いはあっても、最終的には正しい道に進む、誠実で温かい消防士として描かれています。昨今横行していたアンチヒーロー礼賛に終止符を打ってくれた、私のヒーローと言っても過言ではありません。
「Chicago Fire」でテイラー・キニー(左)は、鎮痛薬依存症を必死で隠す51分署の精鋭セヴェライドを、ジェシー・スペンサーは、誠実で高潔な消防士ケイシーを演じる。 Janet Mayer, Andrew Evans / PR Photos
NBC系列局からサマー・プレス・デーに参加したのは、
Bravo局
リアリティー番組「Princesses: Long Island」「Newlyweds: The First Year」
映画「The Queen of Versailles」
Oxygen局
リアリティー番組「Find Me My Man」「Best Ink」
Style局
リアリティー番組「XOX Betsey Johnson」「Resale Royalty」
SyFy
ドラマ「ウェアハウス13」
リアリティー番組「Exit」
に、子供番組「The Chica Show」とニュース局のリアリティー番組「Crowd Rules」でした。
リアリティー番組はほとんど観ない私ですが、昼食時に紹介された「Find Me My Man」は興味を引かれました。Bravoで高視聴率を誇る「The Millionaire Matchmaker」の’仲人のプロ’パティー・スタンガーを、マイアミ在住のナタリー・クラリースに差し替え、箸にも棒にもかからない独身女性の婚活に手を貸す仲人業です。先ず、デート・コーチと偽デートをお膳立てし、男の視点から、デート時のクライアントの言動を分析/評価します。結果に基づいて、クラリースのお目に叶った男性とクライアントとがご対面、交際を続けて行くかどうかを決めるという段取りです。個人の好みやこれまでのパターンを打ち破るため、本人の好みはほとんど無視されます。つまり、結婚に至らなかったのは、選択の段階で間違っているということなのです。
昼食会で、クラリースは「崇拝してくれる男が出て来るまで、気長に待ちましょう!」を始め、婚活ルールを読み上げ、女性から拍手喝采を受けた
「The Millionaire Matchmaker」は、大金持ちの嫁/婿探しですが、「Find Me My Man」は結婚適齢期の庶民が対象という点も違います。いずれにしても、他人事だから多いに笑えます。何しろ、リアリティー番組は、「この人、何を勘違いしてるんだろう?」と思わず感心(?)してしまう、奇人変人の宝庫ですから。
同様に、「マジ?!」と開いた口が塞がらないのは、Bravo局の「Princesses: Long Island」とドキュメンタリー映画「The Queen of Versailles」の2本です。ニューヨーク州南東部に位置するロングアイランドに住むユダヤ系富豪の箱入り娘6人の婿探しを記録したのが「Princesses: Long Island」。'お嬢様方'の高望みと我がままぶりに、「マジ?!」を繰り返すこと間違いなしです。
一方、インディー系映画「The Queen of Versailles」は、米国最大の豪邸「ベルサイユ」建設中に破産したディベロッパー、デヴィッド・シーゲル一家を記録したものです。妻ジャッキーと7人の子供が貧乏にどう立ち向かうのか?が記録されています。
「グリム」の主人公役はさて置き、ロマコメ「Privileged」のプレイボーイ役が印象的だったので、自然に会話はその方向に。クリエイター、リーナ・ミムーンが好きで登板した役だと語ったジュントーリ。
夜、ホテルの庭園では、カクテルパーティーが開かれました。「グリム」のデビッド・ジュントーリが手持ち無沙汰な様子だったので、シーズン2校半にして、やっと!ではありますが、インタビューしました。数年前、ジュントーリが出演していたロマコメ「Privileged」の話が弾み、楽しいひと時となりました。
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6月はケーブル作品が目白押し
地上波局のシリーズが5月3週目辺りまでに完了し、今は夏場の穴埋め作品ばかりが放送されていますが、6月に突入して、ケーブル作品が俄に活気を帯びてきます。
TNTから送られてきた継続/新番組のスクリーナーの数々。つい最近までは、趣向を凝らしたパッケージに入っていたが、スクリーナーとプレスリリースが、番組写真を貼付けた封筒で届いた。新番組以外は、段々、お粗末になっていることは否めない。
手元に届いたTNTの継続番組の第一話、新番組のパイロットを楽しんでいます。
6/9 「フォーリング スカイズ」シーズン3
6/10 「Major Crimes」シーズン2
6/10 「King & Maxwell」新番組
6/19 「Franklin & Bash」シーズン3
6/25 「リゾーリ&アイルズ」シーズン4
6/25 「パーセプション」シーズン2
「パーセプション」は、ピアース博士(エリック・マッコーミック)の妄想にひねりが利いていて、思わず「さすが!」と唸ってしまいました。「Major Crimes」は、ご存知「クローザー」のスピンオフですが、ジョンソン本部長補佐(キーラ・セジウィック)が画面から姿を消した後、居残り(失礼!)キャラで維持できるのか?と心配していましたが、視聴率も高く、住み慣れた我が家に帰るような'居心地'の良さを発揮しています。
「クローザー」のキーラ・セジウィックが画面から姿を消して1年。TNT以外で再放送されているので、LAでは毎週土曜日午後5時から2時間、ブレンダを楽しむことができる。 Sylvain Gaboury / PR Photos
一方、「Major Crimes」シーズン1で時々顔を見せていたフリッツ役のジョン・テニーも新居を見つけました。同局の新番組「King & Maxwell」は、元秘密諜報員ショーン・キング(テニー)とミシェル・マックスウェル(レベッカ・ローミン)が私立探偵として活躍するアクション捜査ものです。デヴィッド・バルダッチの同名の小説のキャラを土台に創作されたシリーズです。私立探偵の男女コンビは、新しいアイデアではないので、テニーとローミンが視聴者を惹き付けられるかどうかにかかっています。
USAから送られてきた継続/新番組のスクリーナーの数々。TNT同様、パッケージに凝る余裕がないようだ。去年は番組名入り、ケーキが届いたような記憶が....
USAから届いたのは、
6/6 「バーン・ノーティス 元スパイの逆襲」最終シーズン
6/6 「Graceland」新番組
6/12 「救命医ハンク セレブ診療ファイル」シーズン5
6/12 「ダニーのサクセス・セラピー」シーズン3
「ダニーのサクセス・セラピー」は、精神衛生臨床医サンティーノ博士(キャリー・ソーン)の職場がスポーツ選手のエージェントに替わり、会社社長コナー・マクレイン(ジョン・ステイモス)が上司になりました。ステイモスとの関係はどうなるのでしょうか?楽しみです。
「ダニーのサクセス・セラピー」で紅一点のサンティーノ博士を演じるキャリー・ソーン(左)と、シーズン3からサンティーノ博士の上司+??を演じるジョン・ステイモス。男運の悪いサンティーノ博士は、自らカウンセリングに通うべき! Charles Norfleet, Emiley Schweich / PR Photos
新番組「Graceland」は、ユニークなキャラの集合体を誇ってきたUSA局の異端児(?)と言えるでしょう。「ホワイトカラー」のクリエイター、ジェフ・イースティンが創作した、極めて暗〜い捜査ドラマです。南カリフォルニア(ヴェニス・ビーチらしき?)の海辺の豪邸に同居するFBI、DEA (麻薬取締局)、ICE(出入国関税管理局)の諜報活動員6人の嘘で固めた公私を描きます。
一方、地上波局の夏の穴埋め作品の中で、CATVの新作「Motive」、シーズン3再開の「ルーキーブルー 〜新米警官奮闘記〜」、米国版「Mistresses」など、ABCは相変わらず突出した努力をしています。元々、カナダで制作されたものが大好きな私は、「Motive」と「ルーキーブルー」を多いに楽しんでいます。昨年は、NBCが放送していた、生と死の世界を彷徨う医師と恋人、元妻の複雑な関係を描く「Saving Hope」に甚く入れ込んでいたのですが、フィナーレに行き着く前に放送を打ち切られてしまい、悔し涙を流しました。
カナダの評論家仲間に言わせると、「The LISTENER」「Saving Hope」「ルーキーブルー」など、「カナダの作品を観ているのは君だけ!」とか。カナダ人は自国で制作したものは観ないし(ダサイと思っているようです)、米国には面白い作品が山とあるので、「君独りで頑張っても、継続されないのは当然!」と言われてしまいました。外国人の目には、情緒深く、馬鹿馬鹿しくなく、過激でもない’中庸‘をまっしぐらの所が大好きなのですが....それに、哀愁漂うカナダ人俳優は、貴重な存在です。
HBOは、「トゥルーブラッド」シーズン6が再開される6月16日を前に、14〜16日まで、無料視聴を可能にすると発表しました。シーズン6プレミアまでに、過去のシーズンを観て、すっかりハマったら、加入者が増えるという計算です。今週末は、HBO三昧を決め込みました。何か、観ておく番組があったかしら?Showtimeと異なり、パイロットさえ送って来ないので、記憶が全くありません。マット・デイモンがリベラッチの恋人役を演ずる「Behind the Candelabra」は観られるでしょうか?昨年11月のがっかり体験の後なので、余り期待しないことにします。
リベラッチの恋人役を演じたマット・デイモン。「衣装合わせを満喫しすぎて、怖くなった」と1月のTCAで告白。 Landmark / PR Photos
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エミー賞根回しイベントと納得いかないTCA賞
昨年7月にブログ2本目で、エミー賞根回しイベントについてお話したのを覚えていらっしゃいますか?あれから1年が経ち、今年も4月から6月まで、地上波2局、ケーブル局8局、PBSとNetflixの計12局がテレビ芸術科学アカデミー(ATAS)会員をパネルディスカッションに招待しました。
今年は計15回イベントが開催された。去年より減少していることは、散財しても受賞に繋がらないと結論が出たからだろうか?先細りの恐れが....
昨年、放送局主催の根回しイベントが功を奏したのは、「アメリカン・ホラー・ストーリー」「New Girl 〜ダサかわ女子と三銃士」「MAD MEN マッドメン」の3作のみだったとご報告しましたが、いずれもノミネートのみで、受賞にいたらなかったことは、特記に値します。イベント主催局も、エミー受賞に繋がらないのなら、浪費はすまいと判断したのか、今年は22作品から15作品に減少しました。先細りの悪い予感がしてなりません。
「MAD MEN マッドメン」は、TCA賞最優秀ドラマ候補にも挙がっている唯一の血腥くない作品ではあるが....アンチヒーローに辟易する視聴者も増えてきた。 Janet Mayer / PR Photos
会場は、今年もATAS所有のレナード・H・ゴールデンソン劇場。
4月13日 「ブレイキング・バッド」
4月25日 「House of Cards」Netflix初のオリジナル・ドラマ
4月26日 「The Americans」
4月29日 「The Following」
4月30日 「New Girl 〜ダサかわ女子と三銃士」
5月16日 「スキャンダル」
5月22日 「Top Chef」
5月29日 「Food Network Star」
6月4日 「Shameless」
6月5日 「Veep」
6月6日 「House of Lies」
6月7日 「Vikings」
6月9日 「MAD MEN マッドメン」
6月10日 「ダウントン・アビー」
6月13日 「ニュースルーム」
去年のイベントとの相違点は、
1)シリーズ再開の第一話の試写があり、その後パネルディスカッションが行われたこと。
2)パネルディスカッション後、プロデューサーやキャストがレセプションに姿を現し、票に繋がるように積極的な働きかけがあったこと。
3)レセプションでは、少なくともデザートかオードブル+ワインが振る舞われ、去年より明らかにマーケティング費用がつぎ込まれていたこと。
の3点です。
そんな中、去年と同じくTCA賞の投票をするように、お知らせがありました。つい1ヵ月ほど前、ノミネートしたい人/作品のリストを送ったのですが、その累計が出て、最終投票をしろと言うことなのですが....。昨年、ブログに書いたように、私の好みはメジャーではないので、ほとんどノミネートされていません。私って本当に、地上波局が好きなんだ!と、今年もドラマ部門作品賞候補「The Americans」「ブレイキング・バッド」「ゲーム・オブ・スローンズ」「ホームランド」「MAD MEN マッドメン」を見て、がっかり!!!更に、2013年度最優秀作品は、「The Americans」「ブレイキング・バッド」「ゲーム・オブ・スローンズ」「House of Cards」「ウォーキング・デッド」から選べと言われてもね....
「ゲーム・オブ・スローンズ」リチャード・マッデン、エミリア・クラーク、キット・ハリントン。今シーズンは初っぱなから、惨殺シーンが延々と続いたとか。 Izumi Hasegawa, David Gabber / PRPhotos.com
唯一の救いは、ブログでご紹介したPBSのドキュメンタリー「Central Park Five」と「Bunheads」が候補作に挙がっていたことだけです。昨年は、受賞者/作のリストを見て、授賞式に参加しなかった私です。今夏も、去年の二の舞?になりそうな気配です。
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エミー賞根回しイベント「スキャンダル 託された秘密」
4月13日の「ブレイキング・バッド」を皮切りに始まった、2013年度のエミー賞根回しイベントは、6月13日の「ニュースルーム」のパネルディスカッションを以て完了しました。
今年のイベントのぴか一は、5月16日に開催された「スキャンダル 託された秘密」です。シーズン2のフィナーレ回を本読みすると招待状に明記されていましたが、同夜午後10時からの生放送を意識して、他のイベントより30分遅い、午後8時に始まりました。つまり、参加者は「スキャンダル」の熱狂的ファンですから、皆DVR録画予約をして、イベントに足を運んだことになります。
この日は、朝からいくつか仕事をこなし、夕方我が家に戻った頃には、もうすっかり疲れきっていました。会場まで30分足らずですが、良い席を確保するには、開場1時間ほど前から並ぶ必要があるため、出かける準備をする頃には、「あー、面倒!もう辞めようかな〜〜」と思いました。
しかし、15イベントの中で、私がハマっている作品はわずか。しかも、数少ない地上波局の作品を見逃す手はないと思い直し、重い腰をあげて会場に向かいました。もし、あの時’出不精の怠け虫‘に負けていたら、貴重な体験を逃すところでした。
最終話本読みに登場したのは、ハリソン役のコロンバス・ショートのみ不参加のキャスト17名。ステージに所狭しと椅子が並べられ、エクゼクティブ・プロデューサーのベッツイー・ビヤーズがト書きと端役の台詞を担当して始まりました。リハーサルと違って、もう何度も口にした台詞だけに、モノトーンの長台詞が猛烈な勢いで飛び交い、ト書きを理解し、頭の中に映像を描いているうちに、どんどん話が進行!脚本を読むより、耳で聞いて理解/想像することが、いかに難しいかを体験しました。
前列左からビヤーズ、ベラミー・ヤング、ジェフ・ペリー、トニー・ゴールドウィン、ケリー・ワシントン、ギレルモ・ディアズ。
後列左からトム・アマンデス、マット・レッシャー、ジョージ・ニューバーン、ジョシュア・マリーナ、スコット・フォーリー、ジョー・モートン。
これでもか!と言わんばかりにどんでん返しが続き、最後のひと言がオリヴィア(ケリー・ワシントン)の口をついて出た瞬間、満場総立ちに!なりました。日本では、8月からシーズン2が始まるようですが、シーズン1は7話しかなかった「スキャンダル」がどのような展開を見せるか、乞うご期待!と言うしかありません。
パネルディスカッションでは、私が一番聞きたかった台詞のペースについて質問が出て、クリエイターのションダ・ライムズは、通常のドラマ脚本より10〜15頁は多いことを認めましたが、何故モノトーンの長台詞を独特のペースにしたのかについては説明がありませんでした。一番早口で捲し立てられるのは?との質問に、クィン役のケイティー・ロウズが名乗りを挙げました。
番組の起源は、実在の危機管理コンサルタント、ジュディー・スミスの体験ですが、スミスと会って1年、ライムズの頭の中で渦巻いていたのは、ハリソンの「スーツを着た剣闘士」スピーチと、犬を散歩させているアマンダ(ライザ・ウィ−ル)にアプローチするオリヴィアだったそうです。
キャラの中で、最も人気を博したハック(ギレルモ・ディアズ)の役柄について「計り知れないほど複雑怪奇で、謎だらけのキャラが土台の作品。ディアズを観察しているうちに、剥いても剥いても芯に行き着かないタマネギ的キャラが生まれた」とコメントしました。やはり、役者自体が持ち合わせている特色を引き出すことが大切なんですね?
ファンとの写真撮影に気軽に応じるディアズ。「スキャンダル」一番の人気者なので、順番を待つファンの長い列ができた。
レセプションで、久し振りにスコット・フォーリーと言葉を交わすことができました。「グレイズ・アナトミー 恋の解剖学」シーズン7〜8の15話にヘンリー・バートンとして出演したフォーリー。健康保険料の高騰について行けず、保険更新できない人が続出していた時のことでした。入退院を繰り返して保険を維持できなくなったヘンリーがテディ・アルトマン医師(キム・レイヴァー)に、保険目的の偽装結婚で救ってもらい、視聴者の心をしっかりと掴みました。私自身、ヘンリーに共感できる立場だったので、心を打たれる好演だったと述べたところ、「僕もあの役がとても気に入っていた」と話してくれました。余談ですが、現在放送中のコメディー「The Goodwin Games」で、フォーリーはナルシシストながら、決して憎めない外科医キャラを演じています。あの役をさらっと演じられる役者は他に何人いるでしょうか?
「グレイズ・アナトミー 恋の解剖学」スコット・フォーリー(左)、キム・レイヴァーの保険目当ての結婚は、日本では考えられない米国の悲惨な現状を物語る。 Andrew Evans, David Gabber / PRPhotos.com
翌日、録画しておいたフィナーレ回を観ましたが、本読みでは意味不明?のシーンや台詞が映像化されると、一目瞭然。とは言っても、繰り返し観ても飽きないから不思議です。貴重な体験をした根回しイベントでしたが、果たしてエミー賞に繋がるでしょうか?
今年1月にグラント大統領と写真撮影してもらったので、この日は、副大統領サリー・ラングストン(バートン)と。
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エミー賞根回しイベント「Food Network Star」のおもてなし
毎年、6月に始まる「Food Network Star」は、歴代のFood Network局のスターシェフを選ぶ勝ち抜き戦番組です。今年で8代目になるスターシェフは、全米から応募した素人、玄人12人の中から選ばれます。カメラテストあり、ストレス対処テストあり、料理の腕前だけでなく、料理番組のユニークさから、自分ブランドを生み出す売り込み力や、美味しそう!作ってみよう!と思わせる表現力の豊かさまでを巧妙に試す仕掛けになっています。毎年、ハードルの数が増える上、高さもどんどん上がって行きます。料理の腕前だけではなく、料理番組の顔となる人柄と魅力がないとカメラの前には立てないからです。
5月29日に開催された「Food Network Star」のイベントは、局の名に恥じない美味しいイベントでした。先ず、局のマーケティング部長の挨拶に始まり、6月9日放送開始のスターシェフ勝ち抜き戦2013年度の第1話を試写、その後審査員兼コーチを務めるアルトン・ブラウン、ボビー・フレイとジャダ・デ・ラウレンティスが、番組や局の裏話を披露しました。昨年、単独で舞台に立ち、ウィットに富んだ受け答えで、会場を笑いの渦と化したブラウンですが、今年は後輩の美形カリスマ・シェフのデ・ラウレンティスにたじたじの態でした。
左からモデレーターのピート・ハモンド、フレイ、デ・ラウレンティス、ブラウン。「局まで地下鉄で通える'安い'人材だったから白羽の矢が立った」と告白したフレイ。今年の勝ち抜き戦に参加していたら、魅力不足で早々に退場を命じられる?
ちなみに、ブラウンはFood Network局の米国版「料理の鉄人」の実況/解説を担当しています。ボビー・フレイは、「料理の鉄人」で森本正治と対戦したことがある、ニューヨーク出身の料理人で、「Iron Chef America」の鉄人の一人でもあります。「24時間、食べ物のことばかり放送する局?」と、1993年の開局後も、いつまで続くことやら?的非難を浴びたものの、数年前からエミー賞のリアリティー部門に出品が許され、視聴率も確実に伸びています。
デ・ラウレンティス(右)と写真撮影するファン。美形カリスマ・シェフの売りは、ライト・イタリアンと祖父(ディノ・デ・ラウレンティス)の撮影現場で育った思い出話。役者をかじったこともあるが、本局のフード・スタイリストから一躍カリスマ・シェフに昇格したシンデレラ・ガール。
この日までに、「Food Network Star」は三話までしか録画が終わっておらず、誰が今年のスターにのし上がるのか、毎週日曜日午後9時の放送を楽しみにしているファンが集まりました。私も毎夏、楽しみにしている番組で、5、6代目と続けて誰が優勝するか私の予想が的中しました。今年はベトナム系二世のヴェットを応援しています。何しろ、このシェフは「Iron Chef America」でフレイに勝った凄腕の持ち主ですが、アジア人の控え目や謙遜が災いして、'芸人'になりきれないため、四苦八苦しています。
レセプション会場の中庭では、エミー像の下にある水が流れる壁に、局のロゴが大々的に表示されていた。
パネルディスカッション後、鱸の香味野菜焼きやマッシュルームのカヴァテッリ(芋虫形のパスタ)、牛肉煮込みソース+ラビオリ、アンティパスト、サラダ、デザート各種など、局の名に恥じない美味しい料理が振る舞われました。しかも、お土産まで出て、ここ4〜5年のケチケチイベントと比較して、票獲得に熱心なことが一目瞭然でした。但し、エミー賞をねらっているリアリティー部門もリアリティー・コンペ部門も番組の数が山ほどある上、リアリティー番組を忌み嫌っていて、いやいや投票しているATAS会員が、シェフ選びに「アメイジング・レース」並みの意義を見いだすでしょうか?
帰りに手渡された、投票前に視聴すべき番組の数々を収めたDVD2枚。
お土産はカップケーキ型ラザーニャ2個。箱の上にも、投票を促す番組とホストの一覧表がしっかりと貼付けられていた。
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