昨年HBOで始まったコメディー「Veep」の根回しイベントが、去る6月5日に開催されました。シーズン2が終盤に差し掛かっていたので、イベントではシーズン2の最終回を試写して、キャストのパネルディスカッションという運びになっていました。
お気に入りのポスターの前で写真撮影。
昨年11月のブログで、政界内幕暴露モノの唯一のコメディーとしてご紹介しましたし、マイヤー副大統領を演じるジュリア・ルイス・ドレイファスが、昨年のエミー賞コメディー部門の主演女優賞を受賞したことを覚えていらっしゃるかもしれません。もっとも、日本ではドレイファスが出演するコメディーは、「となりのサインフェルド」と「ラリーのミッドライフ・クライシズ」が放送されたのみと理解していますので、知名度は今一つかもしれません。コメディアンとしては、「間」が最高です。
バツイチの狂気の沙汰を描いた前回のコメディーと比べると、演技力が要求される副大統領役に挑戦したジュリア・ルイス・ドレイファス。 Billy Bennight / PR Photos
「Veep」は、刺身のつまにもならない、いと哀しき副大統の日々を描くブラック・コメディーです。いずれは大統領と期待されたカリスマ上院議員セリーナ・マイヤーが、何の因果か副大統領に就任してしまいます。女性票を獲得するために利用されたと知りつつ、「大統領から電話あった?」と、ことある毎に秘書に確認するマイヤー。副大統領執務室は、ホワイトハウスから道を隔てただけと言うのに、大統領との接触は皆無、離れ小島できりきり舞いするような疎外感を感じています。大統領からお声がかかるのは、どうでも良い(失礼!)イベントでの大統領代行業務のみです。しかも、'でくの坊'ジョナ(ティモシー・C・サイモンズ)がホワイトハウスから伝書鳩のように飛んで来て、「今日は大統領と4回も接触(?)した」などと、副大統領執務室の神経を逆撫でします。
左からケヴィン・ダン、リード・スコット、アナ・チョムスキー、アルマンド・イアヌッチ。
所詮、副大統領職は、米国初の副大統領ジョン・アダムズに「人類が造り出した最も不要な職」と言わしめたほどの閑職なのです。ツンボ桟敷に置かれたマイヤーは、何とか軌跡を残すべく、使い捨てフォークやスプーンをコーンスターチ製に切り替えようと提案しますが、プラスチック業界=石油産業に吊るし上げられそうになり、あちらを立てれば、こちらが立たぬ、こちらを立てれば、自分の地位が危うくなる....我々庶民には想像もつかないジレンマに陥るマイヤーです。
ジョー・バイデン米副大統領とお目にかかった時の話をドレイファスが嬉々として語った。ひと言多いことで有名だが、苦労人として人気は高い現副大統領。 Paul Froggatt / PR Photos
更に、仕事のできない側近が、恥の上塗りを繰り返すマイヤーを深みに追いやります。’牛目’とけなされる、記憶力抜群のゲーリー(トニー・ヘイル)はマイヤーの右腕兼頭脳でもあります。口の悪さでは誰にも負けない、ヒステリックな首席補佐官エイミー(アナ・チョムスキー)、借金だらけなのに新車を買ってしまう、おとなしそうなのに大胆極まりない報道官マイク(マット・ウォルシュ)、ルックスを利用して出世を試みる報道補佐官ダン(リード・スコット)、唯一まともな秘書スー(スーフィー・ブラッッドショー)が、職場での火事(=混乱)に油を注ぎます。誇張されているのは承知で観ても、ドレイファスの指摘通り「ホラー」。それでも、事実に近いに違いない!と、爆笑してしまう怖?い世界です。
左からドレイファス、マット・ウォルシュ、トニー・ヘイル、スーフィー・ブラッッドショー。
本作の実力とタイトルに入れたのは、撮影7週間前にリハーサルを行い、7人の放送作家が現場で役者のやりとりを観察/記録し、即興で出た台詞の方が面白ければ、自然な会話になるように、書き直しを4回も繰り返すと聞いたからです。完璧な脚本を2度撮影し、更に編集時に最終の手直しをすると、クリエイターのアルマンド・イアヌッチが説明しました。手作り感を出すための手法とは言え、HBOならではの余裕たっぷりの制作には、開いた口が塞がりません。
ローラ・リニー主演の「The Big C」で誠実な担当医を演じたスコット。「Veep」のダンは、チャランポランで、出世のためには何でもする政界を泳ぎまくるサメ的存在だ。
あっぷあっぷもがきつつも、何とか威厳を保とうとするマイヤー役について、「特に誰かをモデルにした訳じゃないけど、仕事一途の、寂しくて哀しい人」と分析するドレイファス。「副大統領って、緊急時を想定して生まれた地位。通常は必要ない人間でしょ?哀しい訳だわ」とも。大統領にしてみれば、自分の後釜に座る人間など、そうそう目にしたくない!と言うことなのでしょう。
6月14から16日のHBO無料視聴日に、「Veep」シーズン2を通しで観ることができました。シーズン1も上出来でしたが、特殊な制作法が功を奏して、キャストの息がぴったりになり、ますます磨きがかかってきました。今後、何シーズンも継続して欲しい作品です。
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エミー 賞根回しイベント「Veep」の実力見たり!
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エミー賞根回しイベント「House of Lies」の希望の星は?
かれこれ1ヵ月強になってしまって恐縮ですが、エミー賞根回しイベント特集は、昨年Showtime局で始まった「House of Lies」で締めくくります。6月6日イベント開催時には、シーズン2は既に完了していたので、マット・デイモンがゲスト出演した第4話を観賞した後、キャスト5人とクリエイター、プロデューサーの計7人でパネルディスカッションが実施されました。
左からマシュー・カーナハン、ドン・チードル、ベン・シュウォーツ。
「デクスター 〜警察官は殺人鬼」や「WEEDS〜ママの秘密」「カリフォルニケーション」など、一連の過激なアンチヒーローを描いた作品で名を馳せたShowtime局が生み出した職場ブラック・コメディーが「House of Lies」です。
クリエイターのマシュー・カーナハンのお兄さんがコンサルタント業を営んでおり、コンサルタントの信じられない話をよく聞かされていたため、3年前からシリーズにしようと売り込みを開始。但し、マーティー・キーン氏の著「House of Lies: How Management Consultants Steal Your Watch and Then Tell You The Time」で紐解かれた、難解/意味不明の業界用語が土台になっていると言いますから、骨組みも筋もない用語解説本からこのシリーズが生まれたことになります。
私事で恐縮ですが、嘗て経営コンサルタントを営んでいる際に、カリスマコンサルと崇められる数人に遭遇したことがあります。取締役会や経営陣を相手にカリスマコンサルが捲し立てる有難?い(時給と有難味は当然比例)プレゼンに、外国語で話を聞いているような、「何のこっちゃ?英語で説明して!」と、不満を覚えたものです。
実在のフィクサーを基に創作されたものではありますが、「スキャンダル」がとんでもない(?)方向に進んでいるのと同じく、キーン氏の解説書をテレビ化した「House of Lies」も、チードル演じるマーティー・カーンの職場ブラック・コメディーに豹変したという訳です。制作発表の時に同席していたキーン氏ご本人は、過激でも、破廉恥でもなく、普通の人でした。名前を貸したことを後悔しているのではないでしょうか?今度、お目にかかることがあれば聞いてみたいと思いますが、本が売れれば別に....の口かもしれませんね。
ドン・チードルに話をしたくて近寄ったら、広報のおばさんに「インタビューしに来た訳ではない」と追い返された。それでは、エミー賞の根回しになりませんから...悔しいから、写真だけ撮ってさっさと退散した。
中には、真摯で誠実なコンサルタントもいますが、カーンが代表するのは、クライアントを煙に巻き、問題を捏造した上で、救世主はこの人しかいない!この人を雇わなければ、会社の先行きが危うい!と思わせるタイプです。意味不明の業界用語は煙に巻き、恐怖心を煽る手段なのです。
毎日、はったりをきかした世界にどっぷり浸かり、クライアント獲得に躍起になっていたマーティーと子分3人ですが、シーズン2では、マーティーに真っ向から挑戦するビジネススクールの同級生タマラ(ニア・ロング)が登場して、4人の結束が崩れ始めます。マーティーは人間として、父親として、成長するでしょうか?
ロスコー役で最も光っているレナードは、お母さんと来場。サインや写真撮影にも気軽に応じ、「これからも観てくださいね」と自己PRにも長けていた。守備を固めていない駆け出しの俳優は、誰かさんと違って、成果をあげた筈。
経営コンサルタントと接触したことがある方は、思わずニンヤリしてしまう狂気の沙汰が描かれていますが、この作品で私が気に入っているのは、マーティーの独り息子ロスコー(ドニス・レナード・ジュニア)です。ロスコーは、狂気の沙汰のど真ん中に存在する'台風の目'のような存在です。このイベントに参加したのは、この少年に会いたかったからと言っても過言ではありません。
ロスコーの母モニカ役のドーン・オリヴィエリ。
くっついたり離れたりを繰り返す父マーティーと母モニカ(ドーン・オリヴィエリ)の間で、早々に大人にならざるを得なかった14歳のロスコーは、両親を穏やかに、温かい目で見守ります。化粧したり、ドレスで登校したり、その日の気分によって男の子になったり、女の子になったり、周囲の目を全く気にせず、gender fluid(=性分類流動性と訳すのでしょうか?)を体現して、ストレスを解消しているように見受けます。
レナードは「ロスコーが何の抵抗もなく、あるがままに生きているところが、大好き」とパネルディスカッションで述べました。レナード自身、14歳の中学生。未成年に聞かせたくない台詞やシーンは、本読み中に「ヘッドフォーンをつけさせて、聞こえないようにしている」とチードルが語りました。キャストからも、観客からも、大切にされている様子が伺えました。
レセプションでも、サインや写真撮影をせがまれているのは、レナードでした。シリーズ自体はそうそう長続きしないような気がしますが、ロスコー=レナードは、充分注目に値します。
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Hallmark Channelのトーク番組「Home & Family」の録画風景
2001年、グリーティングカードの老舗ホールマーク社が、ケーブル局Odysseyを買い取り、Hallmark Channelと命名しました。Odysseyは、家族向け番組、料理番組、美容体操などを放送する局で、前身は1990年代初頭に開局した、様々な宗派の説教や子供向け番組を放送する局VISN/ACTSでした。
Hallmark Channelは、宗教色を完全に消し去り、家族ぐるみで楽しめる番組や映画の専門局。親会社であるホールマーク社と同様、季節やお祭りに沿って編成するようになり、社のイメージと同じくほんわか、ほんのりを目指しているため、昔のディズニーを思い出させる制作/編成となっています。
対象は団塊の世代で、品行方正を目指す余り、パンチに欠ける点は否めませんが、親子三代で安心して観られる作品が売りです。開局初期は、他局から購入したコメディーやドラマを放送していましたが、今ではほとんどがオリジナル作品です。ちなみに2013年には、30本のオリジナル映画を放送します。また、懐かしい俳優を起用することでも有名で、同局が開催するエレガントで豪華なTCA晩餐会で、「あー、『ER』のあの人だ!」など、久し振りに目にする往年の俳優とのご対面を満喫させていただいてます。
同局で2012年10月から始まった平日の朝(LA地域では午前10時から)2時間のトーク番組が「Home & Family」です。ユニバーサルスタジオの一角、西部劇用の街並セットの突き当たりに、突如現れる瀟酒な一軒家があります。ここが知る人ぞ知る「Home & Family」のセットです。
LAの高級住宅街の一軒家風に建てられたセット。庭の手入れも行き届いていて、とてもセットとは思えない。
ユニバーサルスタジオのツアーに参加された方は、カリフォルニアの地震を体験する乗り物(?)を覚えていらっしゃるかと思いますが、この一軒家は乗り物の入口に隣接しています。但し、公開録画に参加した人かスタッフでなければ、この家の存在さえ知り得ない、ひっそりとした佇まいです。
公開録画は先ず、裏庭から始まった。この日は、一般参加者も20人ほどかき集められていた。
招待された6月末日は、完全な夏日でした。京都のような盆地バーバンク=日本の夏並みの猛暑の中で、8月初旬まで公開録画が続きます。司会を務めるのは、モデル出身、女優業を経て料理本を何冊も出版しているクリスティーナ・フェラーレと、「Entertainment Tonight」で8年レポーター/キャスターを務めたマーク・スタインズのコンビです。
ロレアル社の「顔」を務めたこともあるフェラーレ(左)と、トム・クルーズ風のスタインズ。フェラーレはイタリア系アメリカ人で、「美味しい料理でもてなすことを幼い頃から叩き込まれた」と言う。
Andrew Evans / PR Photos
この日は、ラジオパーソナリティー/作家アダム・カローラのインタビュー、リアリティー番組「The Real Housewives of New Jersey」の出演者キャロリン・マンゾの著書紹介、心理療法士ステイシー・カイザーが兄妹のライバル意識を分析しました。司会者クリスティーナは、ステーキ・ファヒータを調理、結婚式シリーズでは引き出物のヒント、工芸コーナーでは、夏至を祝うスカンジナビア風花飾りが紹介されました。この日の呼び物は、「ザ・ヴォイス」シーズン4の出場者アンバー・キャリントンがカントリーからポップ・ロックへの転身について語り、歌声を披露してくれたことです。
心理療法士カイザー(中央白いシャツの女性)のセグメントの録画風景。右手奥のブルーのシャツがフェラーレ、手前(カメラマンに近い)がスタインズ。
ちなみに、2時間分の録画が終了した後、クリスティーナが作ったステーキ・ファヒータのお相伴にあずかった上、マークとクリスティーナのインタビューまで実施することができました。また、クリスティーナご自慢のキッチンの案内もしてもらいました。ほとんど自分でインテリアをデザインしたというクリスティーナでしたが、DIYに長けているマークは、徐々にキッチンをアップグレードして行く計画と語りました。
クリスティーナは、1996年から2年余り続いた初代の「Home & Family」の司会を務めており、2代目「Home & Family」にも起用されるほどの人気です。料理上手な友達の家に招待され、台所や居間でおしゃべりしている感じの、同局ならではの生活情報番組です。御馳走さまでした!
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TCA夏のプレスツアーその1
2013年夏のプレスツアーは、7月24日から8月7日まで、例年の如くビバリー・ヒルトンで開催されました。まるで、真夏の夜の夢を見ていたようなきらびやかな2週間でしたが、あっと言う間に過ぎてしまいました。
Showtime主催のランチ会場の片隅。「デクスター」フィナーレシーズンに因んで、関連グッズを釣り上げてもらうという趣向だが....プラスチックのパッケージは、掴みどころがなく、ゲーム開始前に欲しいものを伝えて、掴み損なったら裏から商品を手渡すという馬鹿馬鹿しさ。誰が考えたのだろう?
毎夏、地上波局は2日間に新作や継続番組のパネルインタビューを行いますが、今年はABCとNBCが2日目をどたキャンし、全米/カナダ各地から集まって来る評論家の逆鱗に触れました。経費削減としか考えられませんが、割引料金と言っても、ホテルに泊っている会員にとっては良い迷惑です。
今年のShowtimeの新作「Masters of Sex」のテーブルには、「快楽」としか言いようのないお菓子が20種類余り並べられ、砂糖にたかる蟻の如き評論家が後を絶たなかった。
スケジュール
7月24日 ケーブル局
ナショジオ、Hallmark Channel、ESPN、Ovation、TV One、Turner、TNT開局25周年記念パーティー
7月25日 ケーブル局
BBC America、ディスカバリー、HBO、BBC Americaイベント
7月26日 ケーブル局
Viacom、STARZ、AMC、Pivot、Lifetime、Lifetimeカクテル・イベント
7月27日 NBCユニバーサル
7月28日 急遽穴埋め
Reelz局番組紹介、プロデューサー・パネル「From TV to the Web」、FX局逸話監督パネル、「Lost Television Found」、午後2時からユニバーサルスタジオへご招待
7月29日 CBS
7月30日 The CW/Showtime
7月31日 「The Mindy Project」、「Queen Latifah」、「Mob City」、「Bethenny」のスタジオ見学
8月1日 Fox
8月2日 FX
8月3日 TCA賞授賞式
8月4日 ABC
8月5日 午前「アメリカン・ダンスアイドル」スタジオ見学、午後PBS
8月6日 PBS
8月7日 PBS
TCA会員のみ参加できるイベントやスタジオ見学があるので、会員になった当初は、無差別に参加していましたが、最近は興味のない作品や観ていない番組には足を運ばないことにしました。お陰で、2週間の所々に中休みが入って、体力的にも結構楽なツアーとなりました。
「デクスター」がテーマのランチとスケジュールにあったので、どんな食べ物が出るのか恐る恐る行ったが、写真が会場を囲んでいるだけだった。あー、良かった!
地上波局のパーティーには全て参加して、目当ての俳優やクリエイターにインタビューしました。とは言え、どの会場でもパーティーを盛り上げる効果音量が半端ではなく、大声で質問しなければ相手に聞こえません。1時間余り経つと、喉が痛くなってしまうので、早々に退散することも多々あります。それに、最近はパーティーとは言え、おつまみ程度しか振る舞われないので、お腹は空く、喉は痛い、1日中履いていたハイヒールが痛いなど、這々の体で退散せざるを得ないようになっています。名目はパーティーでも、我々評論家は仕事しに来ているんですが....毎年、文句を言っているのですが、一向に改善されません。
次回から、真夏の夜の夢を綴って行きたいと思いますが、今秋も新番組はわくわく度が低く、局の期待度と反比例しています。
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TCA夏のプレスツアー2、真夏の夜の夢
真夏の夜の夢は、ツアー初日のTNT開局25周年パーティーで始まりました。ビバリー・ヒルトンのプールサイドには、TNTオリジナル作品15本のキャストや制作陣が集合し、ベランダから見下ろしているホテル宿泊客の妬みの眼差しを背に感じながら、プールに落ちないように人ごみを縫って、目当てのスターを探しました。
尊敬する同局のマイケル・ライト編成局長にお祝いの言葉を述べたくて近づくのですが、お祝いに駆けつけた俳優や制作陣が後を絶たず、この日は諦めました。後日、新作「Mob City」のセット訪問があるので、その時に挨拶すれば良いと思ったからです。
会場入口に設けられた写真撮影用のセット。ここで、スターの写真を撮ることになっているのですが、誰も来てくれない。余りにも奇麗だから、被写体無しで1枚パチリ!
TNTの看板娘「クローザー」から、スピンオフ「Major Crimes 重大犯罪課」を展開させて大成功を収めたジェームス・ダフを発見!ブレンダが画面から姿を消した後、「Major Crimes」が何の違和感もなく後釜に座ったことをダフに伝えたところ、「あー、良かった!スピンオフにすると決まってから、面白くなかったらどうしよう?と随分悩みました」と告白。それだけ、看板娘ブレンダの印象が強いからですが、ここ2〜3年の「デキる女」減少について、「何でも周期があるから、次の波が来るまで待つしかない」と哀しいお言葉でした。
「Major Crimes」のマスコット的存在になったラスティー役のグラハム・パトリック・マーティン、タオ刑事役のマイケル・ポール・チャン、サンチェス刑事役のレイモンド・クルズ、バズ役のフィリップ・P・キーンとも歓談。
母親を探すことを条件に捜査に協力したが、どんどん深みにハマって行く少年ラスティーを演じるマーティン。好演を褒めたところ、「評論家に褒められるのは何より嬉しい!」と飛び上がって喜んだ。
Samuel Mora / PRPhotos.com
「クローザー」からの居残り組(失礼!)は、今回も「仕事に溢れなくて良かった!」と口を揃えて感謝していました。
空気が読めないテクノロジー/知識オタクのタオを演じているが、実際には寡黙なチャン。
Samuel Mora / PRPhotos.com
ブレンダの物語だった「クローザー」では、部下の私生活には余り触れない展開になっていましたが、「Major Crimes」になってから各キャラに肉付けがされ、「へー、この人はこんなこともできるんだ!」「こんな面があったのか?」などの新たな発見が盛り沢山になっています。
「クローザー」時代は、身を以てブレンダを守るサンチェス刑事を演じたクルズ。「重大犯罪課」では、ラスティーを守る熱血刑事だ。Samuel Mora / PRPhotos.com
キーンは、テクノロジーやビデオ記録係バズ役ですが、容疑者にスペイン語で尋問するシーンがあり、「もう何度も会っているけど、スペイン語がしゃべれるなんて知らなかったわ」と述べたところ、「4歳まで英語がしゃべれなかった」と意外な事実を明かしました。名字からも外見からもスペイン語には無縁のように見受けましたが、宝の持ち腐れだったんですね。余り台詞のない役だったことも事実ですが、「Major Crimes」になってからは、「台詞も増えたし、活躍の場をもらって、嬉しい」と語りました。
キーンは、やっと活躍の場ができたと大喜び。4歳まで英語がしゃべれなかったとは、意外だった。 Andrew Evans / PR Photos
ちなみに、ブレンダの夫フィッツ役だったジョン・テニーは、本年6月からレベッカ・ローミンとコンビを組んで「King & Maxwell」に転居(?)しました。「グッドワイフ」でブローディー検事を演じたクリス・バトラーも、「King & Maxwell」でFBI特別捜査官カーターを演じていますが、「グッドワイフ」復帰については「現時点では、不明」だそうです。「良い役だったので、復帰して欲しい!」とお願いしましたが、こればっかりはクリエイターのキング夫妻が決めることですから....ケイトリンを演じたアナ・キャンプも他局でシリーズに出演したばかりに、アリシアからウィルを奪い取る美味しい役を逃してしまいました。しかも、シリーズは打ち切りの憂き目に!後悔先に立たずとはこのことです。
「パーセプション」のエリック・マッコーマックには、1月冬のツアー中、ABC 撮影所の絡みで、レイチェル・リー・クックと映像インタビューしましたが、あっと言う間に5分が過ぎて、痒い所に手が届きませんでした。シーズン2で主治医キャロリン・ニューサム(ケリー・ローワン)との関係が意外な展開を見せたことについて尋ねようと近づいたのですが、2〜3秒で広報に連れ去られてしまいました。マッコーマックは、主役でありながら、番組のプロデューサーでもあるので、今後の方向を聞きたかったのですが....
同様に、「リゾーリ&アイルズ」のサーシャ・アレクザンダーには、同局で「ボディー・オブ・プルーフ」の継続が検討された点について聞きたかったのですが、こちらも広報に連れ去られて願い叶わず。
アレクザンダーも、広報に連れ去られ、友人デレニーの作品の結末について感想を聞く事ができなかった。「オシャレ検視官」は、アイルズのみになってしまった。 Andrew Evans / PR Photos
「ボディー・オブ・プルーフ」のミーガン・ハント(ダナ・デレニー)が、モーラ・アイルズとほとんど同一のキャラなので、TNTが継続する筈がないと思っていました。やはり、キャストの入れ替えや検視室からミーガンを外に出し、犯罪捜査アクションモノに替えてしまったのは、大失敗だったと思います。途中で番組のカラーを塗り替えると、パイロットから入れ込んでいた視聴者の期待を裏切ることになるからです。
他に、挨拶を交わしたのは、エリック・デイン(来年夏の新番組「The Lost Ship」の主役)、ノア・ワイリーとドリュー・ロイ(「フォーリング・スカイズ」)の3人ですが、インタビューはしませんでした。
2011年、制作発表の取材時に登場したロイ、ムーン・ブラッドグッド、ワイリー。シーズン3では、皆かなり逞しくなっている。
7月31日には、TNT期待の新作「Mob City」のセット訪問とパネルインタビューに招待されました。こちらは、今年12月プレミア予定なので、既に撮影が始まっており、キャストとクリエイター、フランク・ダラボン(「ウォーキング・デッド」)が仕事の合間に制作発表をしました。
左からエド・バーンズ、ロバート・ネッパー、ジェレミー・ルーク。フィルム・ノワールへの思い入れ、ネッパーの役のみ実在の人物ではないことなどを発表した。
フィルム・ノワールに精通しているライト編成局長の強力な後押しでシリーズ化された「Mob City」は、シカゴや東海岸から集まってきたギャング対LAPDの死闘を描く1940年代末の暗いドラマです。時代は違いますが、「サウスランド」を打ち切ってまで、新たなシリーズを創作する意味があるのでしょうか?ライト編成局長の鶴の一声でしょうか?それとも、ダラボンを口説くためのプロジェクトなのでしょうか?
LAPD署内のセットには、LAを牛耳ろうとしているバグジー・シーゲル(バーンズ)と幹部シド・ロスマン(ネッパー)やミッキー・コーエン(ルーク)のギャング相関図があった。
マイロ・ヴィンテミリアの久々のシリーズなので、観たいとは思うのですが....血腥い作品が大いに苦手な私は、ヴィンテミリアが出ていない血腥いシーンを早送りして観るしかありません。TNTは魅力的なキャラを集めれば、女性ファンの心も掴めると言いますが....
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TCA夏のプレスツアー3、デキる女はどこへ行ってしまったの?
プレスツアーが始まる前に、今秋の地上波局の新作を観ましたが、またしてもな〜んか納得できない、わくわく度の極めて低いシーズンです。「グッドワイフ」出現以来、唸る程の秀作は陰を潜め、更に「デキる女」がどんどん減少しています。'敢えて選ぶなら'新作は、後日局毎にご紹介しますが、この現象を何と解釈すれば良いのでしょう?
ジュリアナ・マルグリーズが演じる「グッドワイフ」のアリシアは、近年最もリアルな「デキる女」。シーズン4最終話で、遂に古巣を飛び立つ画策が暗示され、シーズン5は「内乱」がテーマで、アリシアの底力と過去4年に培った世渡り術が試される。 Andrew Evans / PR Photos
今夏、ツアーで久し振りにお目にかかった、嘗て「デキる女」のドラマ絶頂期に貢献したクリエイターに聞いてみましたが、誰からも納得の行く答えが出ませんでした。ジェームズ・ダフ(「クローザー」)からは、前回「次の周期まで待つしかない」と言われたと書きました。メレディス・スティーム(「コールド・ケース」「ホームランド」)は、現在「ブリッジ ~国境に潜む闇」に関わっているので、自閉症でありながら(自閉症であるからこそと言えるのでは?)、仕事一筋に生きるソニア・クロス(ダイアン・クルーガー)が「デキる女」だと言いますが....「ホームランド」のキャリー・マティソン(クレア・デインズ)の役作りに手を貸した張本人ならではの発言です。
「ブリッジ」でクルーガーが演じるソニアは、「自閉症」のレッテルを貼ってはいないが、誰でも遭遇したことがある「変人」として描かれている。空気が読めない故に、何もかもがぎくしゃくする世界に生きるソニアは、私が定義する「デキる女」ではない。 Andrew Evans / PR Photos
「グッドワイフ」のアリシア(ジュリアナ・マルグリーズ)や「クローザー」のブレンダ(キーラ・セジウィック)など、自立の道をまっしぐらに走る「デキる女」のお手本は、克服しなければならない「障害」は持ち合わせていません。
「クローザー」のセジウィックは、「デキる女」の最たる好例ブレンダを演じた。結婚はしたものの、飽くまで親になることを拒否したブレンダと、それでも去って行かなかった夫フリッツに乾杯!!! Bob Charlotte / PR Photos
女性向けドラマで名を馳せたABCでさえ、お伽の世界「Once Upon a Time in Wonderland」の主人公アリス(ソフィー・ロウ)を「デキる女」だと主張します。マジですか?ファンタジーの世界では、どうとでもなりますよ。お伽話を書き替えれば良いってものではないと思いますが.... ABCエンタテインメントグループ社長ポール・リーの発言だけに、開いた口が塞がりません。
「Once Upon a Time in Wonderland」でアリスを演じるロウ。アリスが2013年の「デキる女」だとABCは主張する。失踪した婚約者を探すためなら、逞しくなるのは当然では?「デキる女」の定義がかなり歪んでいる。 Andrew Evans / PR Photos
ケーブル局の新作は?と見渡したところ、今シーズンのヒロインは、遠い昔かファンタジーの世界の女性です。STARZ Channelの時代劇「The White Queen」は、英国の薔薇戦争の裏で「御家」を守るために画策したエリザベス・ウッドヴィル、マーガレット・ボーフォート、アン・ネヴィルの三女性を描きます。実在の三人は、女三界に家なしを絵に描いたような波瀾万丈の人生を送っていますが、美貌と画策で男/夫を操ります。中でも、唯一の平民エリザベス・ウッドヴィルは、母親が伝授した妖術まで駆使して、女王の地位を死守しようと試みます。女性に腕力/権力/財力もなかった15世紀、「御家」が力を得るための貢ぎ物あるいは道具として使っていた訳ですから、王家に嫁いで権力を手に入れたと思いきや....実は、単なる将棋の駒でしかありません。御家を守るためには、信仰か呪いをかけて邪魔者を蹴落とすしかありませんが、運命を左右するのは所詮男なのです。現代社会で役に立つような、お手本となる女性とは言い難いキャラです。家系や財産など、死守するものがある人は、大変ですね....21世紀になっても、富豪の世界では、同様の闘いが繰り広げられているのでしょうか?平民には、とても理解できない、油断も隙も無い人生です。
Lifetime局で10月から始まる「Witches of East End」は、不死身の魔女と魔女であることを知らない娘2人の複雑な関係を描くドラマです。こちらは超自然/ファンタジーの世界です。まだ、パイロットを観ていないので何ですが、男性受けするスーパーヒーローに対抗できるのは魔女しかないと言うことでしょうか?
「Witches of East End」原作本と、幻想的なカクテルが配られ、パネルインタビューのムード作りに加担した。
男性視聴者受けするオリジナル作品を次々と発表してきたHBOの編成のお偉方でさえ、女性受けするドラマが欲しいと公言しました。へー!?「Enlightened」を打ち切ったばかりだと言うのに?言う事と、やる事が相反していませんか?本音は、内容はどうであれ「SATC」に替わる作品=世界規模のヒット作が欲しいと言うことなのでしょう。
唯一の救いは、公共放送PBSの有名人の人生を綴るドキュメンタリー「American Masters」9月10日放送分のプロモーションに駆けつけた、70年代のテニス女王ビリー・ジーン・キングでした。運動神経に恵まれながら、女がトップに躍り出る可能性のあるスポーツを模索。テニスを発見し、「このスポーツならトップになれる!トップになったら、男女同権の旗を振ることができる!」と思ったのが12歳と言いますから、我々女性にとっては、舞い降りた天使としか言いようがありません。1973年、ボビー・リッグスとの男対女の試合を受けて立ち、全米が見守る中、完勝の快挙を果たし、女だってやってやれないことはない!と証明したあのキング夫人です。69歳ながら、女性の経済的自立を謳い、「まだまだやることは山とある!」と発言しました。「特に、日本は女性が自立しなければ、他国にどんどん遅れをとりますよ」の有難いお言葉。昨夏の「Half the Sky」のアーミ・バスと同レベルのパワーをもらいました。もっと、ゆっくりお話したかった....
「最近のテニスプロは見上げるほど長身で、首が痛くなっちゃう!」と何もかもが面白くて仕方がない口振り。「女性の選択肢と男女同権を守るためには、経済的自立が基礎」と、今後の活動の抱負を語る70年代のテニス女王キング。
更に、PBSでは、平日のニュース番組「PBS Newshour」のアンカーをベテラン女性キャスター二人に任せ、歴史上初の女性コンビが選んだ話題を女性が報道することになりました。やったー!!!!
グエン・アイフルは、アフリカ系+ラテン系を代表する、政界に詳しいニュースキャスター/ジャーナリスト。昨年、大統領選のオバマ対ロムニの討論会の進行係を務めた功績は大きい。
ジュディー・ウッドラフも、アイフル同様、政界に詳しいニュースキャスター。オクラホマ州タルサ出身の「アメリカ」を代表するにふさわしいベテランだ。
最早、女性は刺身のつまでも、職場に色を添えるお飾りでもありません。現実に女性の進出が目覚ましいと、自立の険しい道を描くドラマは消えていくのでしょうか?まだまだ、男女同権にはほど遠いと思いますが....
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TCA夏のプレスツアー4、ABCは数で勝負?
今シーズンの新作ドラマ「Betrayal」「Lucky 7」「Marvel’s Agents of S.H.E.I.L.D.」「Once Upon a Time in Wonderland」、コメディー「Trophy Wife」、継続番組「グレイズ・アナトミー」「リベンジ」「スキャンダル」「クリミナル・マインズ」に加え、ABC Family局の「Switched at Birth」「Twisted」「Baby Daddy」の計12作=30人の映像インタビューを実施しました。
TCA用には、上記のコメディーに加えて、「Back In The Game」「The Goldbergs」と「Super Fun Night」の制作発表のパネルインタビューが実施されました。つまり、ABCは計8作を今秋発表する訳で、地上波局の中では最多数を誇っています。
今回は、パイロットで観て良いなと思った俳優が、映像インタビューしてみると、
1)好感度がた落ちで、シリーズを観る意欲を削がれた
2)画面で観るよりぐ〜〜んと背が低くてがっかりした
3)逆も真なりで、実物の方が断然魅力的で、シリーズの続きを観る気になった
の3点を体験しました。
ABCに限ったことではありませんが、どの新作にも少なくとも一人は、英国/アイルランド/スコットランド/オーストラリア/ニュージーランドの若手(=米テレビ市場では比較的ニューフェース)が起用されています。「Wonderland」の主要キャストは、現在LA在住のナヴィーン・アンドリュース(「LOST」)以外は、全て外国人です。アンドリュースも、元はと言えば英国育ちですし、アリス役のソフィー・ロウの言葉を借りれば、「古巣イギリスで、劇団仲間と仕事をしている感じ」で、単に撮影やマーケティング/広報などの「規模が大きくなっただけ」とか。「Once Upon a Time」だけでもお伽の世界と現実を行ったり来たりで目が回りそうなのに、魔人サイラス(ピーター・ガディオット)を探す旅に出る、スパイ並みの逞しいアリスの冒険に便乗したい人がどれほどいるのでしょうか?柳の下にいつも泥鰌はいないと思いますが....
【動画】 「Wonderland」トレーラー
8月4日、姿を現した「Once Upon a Time in Wonderland」のキャスト5人。左からアンドリュース、ロウ、エマ・リグビー、マイケル・ソチャ、ガディオット。 Andrew Evans / PR Photos
鳴り物入り、通常のTCAツアーの10倍の厳しい警備体制の中で観た「Marvel’s Agents of S.H.E.I.L.D.」は、このジャンルに全く興味が無い私には、あくび続出もの....主役ウォード捜査官を演じるブレット・ダルトンに「続きを観よう!観なければ!」と思わせるほどの魅力が無い上、はみ出し野郎の集団は、ヒーローとしてはカッコ良くても、人間として魅力がありません。「毎回、事件を解決して行く中で、キャラ6人の生きざまを描くドラマだ」とクリエイターのジョス・ウィードンは、TCAのパネルインタビューで強調しました。これなら、「アルファズ」の方がどれだけ面白いことか!?
【動画】 「Marvel’s Agents of S.H.E.I.L.D.」トレーラー
また、メイ捜査官はミン・ナ・ウェン(「ER」のジン・メイ・チェン医師)と、スカイを演じるクロエ・ベネットが2人とも中国系という点が面白いと思いました。S.H.E.I.L.D.は、宇宙ステーションのように、世界中から多種多様の人間が集まってくる国際機構であるとは言え、白人男性3人+白人女性1人+中国系女性2人がドラマの核とは、ちょっとびっくりです。余談ながら、今年は脇役と言えども、驚くほど中国人が急増しました。世界放送権を売る関係上、中国人をキャストに入れておく必要があるのに違いありません。
「Marvel’s Agents of S.H.E.I.L.D.」の(左から)ベネット、ダルトン、クラーク・グレッグ、ウェン、エリザベス・ヘンストリッジ、イアン・ディ・カスティカー。 Andrew Evans / PR Photos
今年もこれを観ないと損!損!的秀作は皆無ですが、「敢えて言うなら」ドラマは、オランダのドラマを基に、21世紀の「リア王」もどきのメロドラマ兼スリラーに書き替えた「Betrayal」と、英国の同名の作品をブルックリン版として制作した「Lucky 7」の2作です。
「Betrayal」は、13話限定シリーズ=英国方式です。最初に結末を見せて、そのシーンに行き着く過程、つまり人妻の不倫がもたらした波紋と悲劇を描きます。特に斬新なアイデアではありませんが、STARZ局のオリジナル作「Boss」で、エマ・ケインを好演したハンナ・ウェアが、人妻サラを演じているので楽しみにしています。
【動画】 「Betrayal」トレーラー
モデル出身の英国女優ウェアは、今回もシカゴが舞台のドラマに出演していることについては、「まだシリーズは2本目だから、選んで頂いたら、どこにでも行く覚悟」とか。「Boss」では、マフィアまがいのシカゴ市長である父親と父親以上に冷たい政治家二代目の母親を嫌い、出家したものの、薬物依存症や男漁りを繰り返す娘を演じていただけに、俳優としては駆け出しという低姿勢にびっくりしました。米国でのデビュー役は、「薬物依存とか、男漁りとか、自分では体験したことのない複雑な役柄は、チャレンジだらけでした。でも、今回は恋に落ちて、夫と愛人の板挟みでしょ?人を好きになった経験はあるから、このドラマの方が演じ易いわ」と語ってくれました。
「Betrayal」で、シカゴが舞台のドラマに再び起用された英国人ウェア。「Boss」の倒錯した市長の娘エマより、不倫に身を滅ぼしそうになるサラの方が演じ易いと言う。 Andrew Evans / PR Photos
パイロットを観て、凄い!と思った新作「Resurrection」と春に交代するペア放送ですが、視聴率が高ければシーズン2もあり得ると、プロデューサーは自信無げな(?)発言でした。視聴者の判断に任せるということですが、打切りになった時に、最初から13話限定だからと切り返す準備でしょうか?やっと、英国方式に切り替える姿勢を見せたABCです。
「Lucky 7」は、宝くじで巨額の富を手に入れた7人の自動車修理工やコンビニのレジ=ブルーカラーのドラマで、こちらも斬新なアイデアではありません。2006年に「Windfall」(NBC)と題したドラマが登場し、クリエイターのローリー・マッカーシーにインタビューしたことを思い出しました。こちらは中流階級のドラマでしたが、私は巨額の富を手にしても変わらない自信があると述べたところ、「周辺の人間があなたを見る目が変わるから、金持ちになる前の状態には絶対に戻れない」と指摘されました。な、る、ほ、ど。
宝くじが当った新米パパ役マットを演じるマット・ロングの久々のシリーズなので、惹かれた作品ですが、何よりも私好みの数少ない人間ドラマの1本であることは確かです。ロングは、「Jack & Bobby」でデビューし、2010年「The Deep End」(ABC)という弁護士1年生組の熾烈な闘いを好演しましたが、いずれも打ち切りの憂き目に会いました。
【動画】 「Lucky 7」トレーラー
夜パーティーで、ロングと話をすることができました。結婚8年目にして、ロング自身にも第一子が生まれる予定で、「シリーズ登板は何よりラッキー!」とか。奥様は獣医で、産後すぐに職場に復帰する予定だったそうですが、今回の「就職」でしばらくは子育てに専念できるなど、一家の大黒柱として責任感を感じていることがひしひしと伝わってきました。
「Lucky 7」ブルックリン版も13話限定シリーズ。左からルイス・アントニオ・ラモス、アイゼア・ウィットロック・ジュニア、ロング、アナスタシア・フィリップス、ロレイン・ブルース、プロデューサーのジェイソン・リッチマン。ブルースは、オリジナル(英国版)にも出演した英国人俳優だ。 Andrew Evans / PR Photos
「The Deep End」が好きだったことを伝えると、とても面白い裏話が飛び出しました。「グレイズ・アナトミー」の弁護士版と言われていたハチャメチャドラマは、デビッド・ヘミンソン(「ライ・トゥー・ミー」にも関与していた)が弁護士事務所に入社した当時の体験をもとに書き上げた作品です。私は気に入っていたのに、6話で打ち切られ、残念に思ったことを覚えています。
「SUITS/スーツ」のマイク役パトリック・アダムズ。ロングが主演した「The Deep End」打切り後、「スーツ」が生まれた。ロングがオーディションを受けていれば.... Janet Mayer / PRPhotos.com
同作で主役を務めたロングによれば、「あの後、スタッフライターだったアーロン・コーシュが良いとこ取りをして、「SUITS/スーツ」を創作したって知ってた?マイク役のオーディションを受けるべきかどうか随分悩んだけど、打ち切られた直後だったから....」と教えてくれました。そう言われてみれば、マイクを演じるパトリック・アダムズはロングと同様の清潔で、誠実な好青年タイプです。大いに納得してしまいました。ロングがマイク役を勝ち取っていたら、今こんな話をすることはなかったんですね?残念、無念。「SUITS/スーツ」は、よくよく観れば、本当によく出来たドラマで、シーズン2は「グッドワイフ」の男性版と言っても過言ではないと感心していた矢先の興味津々の裏話でした!
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プレスツアー5、コメディーに賭けるCBS
相も変わらず視聴率最高を誇るCBS故に、今秋用の新作はドラマ2本「Hostages」「Intelligence」と、コメディー4本「The Crazy Ones」「The Millers」「Mom」「We Are Men」の計6作品ですが....継続番組の放送枠を空け渡すほど画期的な作品は今年も見当たりません。
敢えてお薦めするなら、コメディー3作「The Crazy Ones」「Mom」「We Are Men」です。
「The Crazy Ones」は、ロビン・ウィリアムズの約30年振りのシリーズ復帰作です。ウィリアムズが演じるのは、シカゴの奇才広告マン、サイモン・ロバーツで、ロバーツ&ロバーツの共同経営者である娘シドニー(サラ・ミシェル・ゲラー)との父娘関係を面白おかしく描く職場コメディー。クリエイターがあのデビッド・E・ケリーであること、サイモンを師と仰ぐ青年ザックをジェームズ・ウォルク(「Lone Star」「Political Animals」)が好演しているのもお薦めの理由です。
【動画】 ロビン・ウィリアムズ、約30年振りのシリーズ復帰作「The Crazy Ones」トレーラー
番組の最後に追加されているNGシーンを観ていると、あんな職場で働きたい!と思うほど、皆抱腹絶倒しています。本当に楽しそう!若かりし頃のウィリアムズは、こんな人と1日も一緒に過ごせないと遠慮してしまうほどテンションの高い人でしたが、パネルインタビューでも独りで笑いを獲ろうとせず、歳相応の落ち着いた対応ができるようになりました。シカゴで活躍した広告マン自らが持参したアイデアをケリーがテレビ化しましたが、この手の作品は、毎回広告キャンペーンを創造するのが一苦労だとTNTの「Trust Me」(1シーズンで打切り)のクリエイターが告白したことを思い出しました。ストーリー展開だけでも大変なのに、架空の会社の広告キャンペーンを創造するなんて、確かに至難の業ですが、そこは天下のケリーですから、何とかするに違いないと期待しています。
「The Crazy Ones」で、奇才広告マンを演じるロビン・ウィリアムズ。即興か台詞か全く区別がつかないのは、天才コメディアンの証拠に違いないが、最近は歳相応の落ち着きが出て来た。 Landmark / PR Photos
一方、「Mom」はチャック・ローリーの最新作です。「アナ・ファリスが主役クリスティーを射止めた瞬間にシリーズは完成した」とローリーに言わしめるほど、期待が寄せられるファリスです。
「Mom」のダメ女クリスティー役を射止めたアナ・ファリス。ローリーのお眼鏡にかなったのは、まともに生きようとする健気な努力が共感を呼ぶからだ。演技ではなく、ファリス自身の持ち味と観た。 Andrew Evans / PR Photos
バツイチのクリスティー(ファリス)は、学歴がないばかりにウェイトレスをして十代の娘ヴァイオレットと小学生の息子を育てています。母親ボニー(アリソン・ジェニー)譲りの依存症から立ち直ったばかりで、何とかダメ女から脱却しようと試みますが....親として失格だったボニーは一切非を認めないどころか、子育てに茶々を入れ、クリスティーの神経を逆撫でします。上(母親)からも下(娘)からも突き上げられるダメ女ではありますが、こんな筈では!何とかしなきゃ!と必死で変わろうとする姿は、共感度抜群で、思わず応援したくなるキャラです。
【動画】 アナ・ファリス主演コメディ「Mom」トレーラー
「We Are Men」はタイトル通り、失恋/別居/離婚など人生の岐路に立った男が集まってくるLA(厳密にはターザナという北西の町)の「仮住まい」を舞台に、世代を超えた男の友情を描きます。「モンク」以来初のシリーズに挑戦するトニー・シャルーブは「バツ四」のフランク、「ディフェンダーズ」以来のジェリー・オコンネルは、二度目の離婚訴訟真っ最中のスチュアート、「HOUSE」を降板してホワイトハウス公聴局副局長を務めるカル・ぺンは別居中のギル役です。テレビではすっかりお馴染みの「顔」が、挙式中に新婦を奪われた情けない青年カーターに、独身生活の楽しみ方を指導(余計なお世話!?)します。
【動画】 世代を超えた男の友情を描く「We Are Men」トレーラー
「We Are Men」で、「バツ四」フランクを演じるトニー・シャルーブ。アジア系女性が好みの自称プレイボーイは、モンクとはほど遠い役所だ。 Steve Solis / PRPhotos.com
CBS/CW/Showtimeのパーティーでは、「グッドワイフ」のクリエイターであるキング夫妻をインタビューしましたが、残念ながらネタバレになるので、内容を明かすことはできません。シーズン5は9月29日開始、100話が丁度12月上旬にあたるので、シーズン後半に向けて崖っぷち的逸話を予定しているそうですが、まだ内容は固まっていないとか。
シーズン4でアリシアが人間として、弁護士として大きく成長した素晴らしい展開に感謝し、最も胸を打たれた逸話や、ピーターへの懐疑心を180度転換した人物と出来事について尋ね、今後ザック(息子)とグレイス(娘)をもっと起用して欲しいとお願いしました。どんな職業、地位であれ、シーズン4のフィナーレ回は、「働く女性」にとって、大いに納得の行く展開になっており、「グッドワイフ」が視聴者の知性を尊重する貴重な作品であることを実証しました。
「グッドワイフ」クリエーター、ロバートとミシェル・キング。過去に制作した「In Justice」も秀作だったが、「グッドワイフ」で夫妻のチームワークが大きく開花したことが何よりも嬉しい。 Tatiana Beller / PR Photos
政治家の失態/スキャンダルは尽きず、特にニューヨーク市長立候補を飽くまでも諦めないアンソニー・ウィーナーを支える妻ウマ・アベディンに宛てて、「アリシアからのアドバイス」と題して新聞記事が出たことについて、「テレビ番組のキャラが、同じ立場に追い込まれた女性に力と勇気を提供できたのは、光栄の至りだわ!」とジュリアナ・マルグリーズが述べました。本当に、良く書けた、学ぶこと満載の秀作です。
「グッドワイフ」ジュリアナ・マルグリーズは、「シーズン4フィナーレ話のアリシアの『選択』の重みを満喫している」と語った。 Andrew Evans / PR Photos
「デキる女」の急減について質問しましたが、「『Hostages』は?」と切り返されました。状況が現実的ではないことを指摘すると、逆にロバート(・キング)から、「今シーズン、何が面白い?」と尋ねられました。今、一番乗っている放送作家に私の意見を聞かれるとは、光栄の至りですが....即答できません。来春までお預けの「Resurrection」に期待していると答えましたが、30年前に死んだ息子が10歳の少年として両親の元に戻ってくる神秘的なドラマは、一般受けしないからと、すぐ打ち切られるに違いありません。私好みのドラマは、何しろ一般受けしないのです。大人の鑑賞に耐える「グッドワイフ」を、「少なくとも後4〜5年は続けてください」とお願いしておきました。ちなみにロバートのお薦めは、Netflixのオリジナル作品「Orange Is the New Black」ですが、女囚拘置所が舞台のドラメディーなので、余り視聴意欲が湧きません。
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プレスツアー6、前途多難を棚に上げるFOX
7月27日にNBCが発表した統計によれば、先シーズンの視聴率は軒並み降下しており、FOXは21%減、ABCで13%減、CBS8%減だそうです。確かに、あれだけ視聴率の高かった「アメリカン・アイドル」が審査員同士の確執で大幅減、期待の「Xファクター」も思ったほど視聴率がとれませんでした。
5日後、FOXエンタテイメントのケビン・ライリー会長は、放送翌日の視聴率だけを取り上げて、ヒットか駄作かを決めるのは止めて欲しいと、質疑応答の4分の1余りの時間を費やして説明しました。従来の「視聴率」に問題があることは、配信形態が増え始めたここ10年ほど誰もが指摘しており、放送翌日、放送後+DVR再生3日まで、放送後+7日までなどが、現在指標として使われています。しかし、ライリー会長は、30日あるいはシーズン単位に引き延ばさない限り、真の「視聴回数」は見えてこないと主張します。昨年、ケーブル局が放送したオリジナル作品は何と1、050本ですが、地上波局環境の中で生き残れる視聴率を獲得できたのは4作品であることを指摘した上で、1シーズンの累積視聴回数は「ニューガール」が1億8500万回、「ザ・フォロイング」は2億8300万回、「アメアイ」5億6000万回だったと発表しました。FX局を初めとするFOX系列会社は、何故かNetflixが視聴者数を明かさないことを目の敵にしています。自局に秀作が出ないことを棚に上げて、今回もNetflixは「誰が観ているんだか?」とあてこすりを言います。エミー賞候補に上がった「House of Cards」への面当てでしょう。
更に、今回の方針は、
1)シーズンを9月〜5月に限定せず、年間を通じて新作を発表して行く
2)放送曜日を限定せず(現在、激戦日は木曜日と日曜日)、特にすっかり忘れ去られた金曜日にもオリジナル作品を放送する
3)1シーズン=22話は過去の遺物。起承転結が明白な「イベント・シリーズ」を増やして行く
4)海外放送権を先に販売して、制作費に回す
と発表しました。
1)は、FOXが数年毎に持ち出す謳い文句ですが、これまで長続きした試しがありません。3)の「イベント・シリーズ」とは、所謂ケーブル方式です。それが証拠に、ライリー会長は、シリーズが映画並みの映像を誇ると言う意味で「HBO方式」と称しましたが、要するにプレミアケーブル局だけでなく、ほとんどのケーブル局が実施している、13〜15話を制作してしまって、中断せずにシリーズを一気放送する方法を指します。ABCは限定シリーズと呼んでいますし、ライブ放送を観る必要がある盛り上がり性の高いリアリティー番組を「イベント・シリーズ」と呼ぶ局もあり、各地上波局が21世紀の制作/放送システムを暗中模索していることが明らかです。但し、口が裂けてもケーブル方式に切り替えるとは言えない、言いたくないのでしょう。
今秋の新作は、ドラマ「Almost Human」「Sleepy Hollow」2本と、コメディー3作「Brooklyn Nine-Nine」「Dads」「Enlisted」の計5本です。
他局同様、敢えてお薦めするなら...と極めて消極的ではありますが、FOXの新作の中では「Almost Human」が、面白そうです。人間より繊細なアンドロイドのドリアン(マイケル・イーリー)と、長年感情を押し殺して働いてきたケネックス刑事(カール・アーバン)の近未来の刑事コンビドラマです。
「Almost Human」でアンドロイドを演じるイーリー(左)、殻に閉じこもったジョン・ケネックス刑事を演じるアーバン。 Glenn Harris, Andrew Evans / PR Photos
基本的にSFモノは大いに苦手な私ですが....護身用の武器として刑事に与えられたアンドロイドが、人間の何倍も繊細だったらと言う仮定は、斬新で興味津々です。「人間味とは何なのか?を探ることが大好き」と語るクリエイター、J.H.ワイマンと、イーリーとアーバンのコンビが探るテーマに惹かれました。人間に近づきたいと努力した「スタートレック」のミスター・スポックやデータと異なり、繊細で、気を遣い過ぎて廃盤になったドリアンが4年振りに、憧れの職業に就いたら....という、極めて斬新な切り口が光ります。能面に改善された最新版アンドロイドに、感情で捜査する劣等品とドリアンが誹られるなど、近未来の会話が想定されている点も極めて面白いと思います。但し、「フリンジ」に関与していた放送作家がクリエイターですし、J.J.エイブラムスが関わっているだけに、テクノロジーや神話に凝り固まって行く可能性は大です。故に、少々控え目の「お薦め」作で、2話以降もワイマンが初心を忘れないことを祈ります。
【動画】 「Almost Human」トレーラー
夜、パーティーで、イーリーと歓談しました。USA局の「Common Law」のインタビューしたことがありますが、数日後「グッドワイフ」でのボンド役だったと気が付いたほど、役によって七変化できる役者です。今回の役所について、「人間としての履歴がないアンドロイドですから、どう演じたものか....人情、思いやりとは何か?などを模索する面白い作品です」と強調しました。この役を演じるようになってから、周囲の人間を注意深く観察するようになったそうです。人間性を探求するひねりの利いたドラマにして欲しいものです。
一方、コメディー「Enlisted」は、久々の軍隊モノです。フロリダ州にあるマッギー常設駐屯地に配属されたピート・ヒル二等軍曹(ジェフ・スタルツ)は、弟デリック伍長(クリス・ロウェル)とランディー二等兵(パーカー・ヤング)と久し振りに再会。駐屯地の留守番役を授かった箸にも棒にもかからない小隊に活を入れようとしますが、弟達が足を引っ張ることになります。かなり非現実的なドタバタ喜劇ですが、コメディーは初めてのロウェル(「プラプラ」)と、山椒は小粒でもぴりりと辛いを体現するタニア・グナディ(「アーロン・ストーン」)が好演しています。
「Enlisted」で初めてコメディーに挑戦するロウェル(左)、ジェットコースターのCFから芸能界入りしたインドネシアからの移民グナディ。 Tina Gill, Koi Sojer / PR Photos
【動画】 「Enlisted」トレーラー
新作のパイロットだけは観るをモットーにしてきた私ですが、正直なところタイトルや前評判から判断して、悪夢にうなされそうな作品は最近パスしています。「ザ・フォロイング」「Hannibal」に引き続き、「Sleepy Hollow」もパスして、プレスツアーに臨んだのですが....
8月1日、朝一番のパネルインタビューに登場したトム・マイソンにすっかり魅了され、早速パイロットを観るという前例のない結果となりました。しかも、同作はホラー+サスペンス+ファンタジーのジャンルに属し、血腥いシーンが多々あり、観たくない作品なのです。ワシントン・アーヴィングの怪奇小説「スリーピー・ホロウ」のイカボッド・クレーンが「リップ・ヴァン・ウィンクル」のように、250年の眠りから覚め、現代のスリーピー・ホロウで起こる怪奇事件解決に乗り出すドラマです。奴隷解放など「自由」を求めて独立戦争で闘ったクレーンが、250年後のアメリカの現状をどう見るか?がとても興味深い点です。ホラー+サスペンス+ファンタジーですが、マイソンは「英国人の観点は、僕自身の観点でもあるので、地で行けます」と語り、第三者の視点からアメリカを描く私好みのドラマになる可能性を示唆しました。
「Sleepy Hollow」で英軍から寝返り、ジョージ・ワシントン将軍に仕えたイカボッド・クレーンを演じるマイソン。250年前に離ればなれになった妻カトリーナを救うのもイカボッドの使命だが、夢の中で魔女だと判明する。 Landmark / PR Photos
実際にパイロットを観ると、首無し騎士、死神、魔女などが登場する反面、クレーンの台詞や女性への対応がユーモアたっぷりに書かれていて、恐いけれど、マイソンの出ているシーンは観たい!と思いました。TNTの新作「Mob City」と同様、ほとんど早送りして、お目当ての俳優のシーンだけを観ることになりそうです。プレスツアー4で述べた「実物の方が断然魅力的で、シリーズの続きを観る気になった」の最たる俳優が、マイソンでした。パーティーでお目にかかれなかったのが、残念です。
【動画】 「Sleepy Hollow」トレーラー
ABCの「S.H.E.L.D.」発表にあたり、警備が通常の10倍と述べましたが、FOXは「アメアイ」のサイモン・コーウェルと出産したばかりの不倫相手ローレン・シルバーマンを、まるでシークレット・サービス気取りで守る警備員軍団が評論家の神経を逆撫でしました。プレスツアーを何だと思っているのでしょう?我々、プロは、コーウェルの不倫など、面白くもおかしくもありません。第一に、そんなにぴりぴりするのなら、シルバーマンなど連れて来ないでください。それを、まるでパパラッチから身を守るかのように、防衛態勢に入るから、余計に人目につくのです。「隠密」の概念を知らないのでしょうか?それとも、注目を浴びたいから、金魚のふんのように、警備員を従えて登場するのでしょうか?ったく!迷惑も良い所です。誰も、興味ありませんから....
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プレスツアー7、屁理屈と神頼みのNBC
前回、先シーズンの地上波局の視聴率が軒並み降下している事実を、7月27日にNBCが発表したと書きましたが、実はこの数字は、地上波4位から這い上がれないNBCの屁理屈を裏付ける材料だったと付け加えなければなりません。NBCエンターテイメント会長ロバート・グリーンブラットは、「他局の視聴率が下がっているから、NBCの横這いはある意味で上昇」と真顔で述べました。ブルータスよ、お前もか!やはり、Showtime局にいた時のように、視聴率などどこ吹く風では済まなくなったようです。
従って、今シーズンはイベント・ビジネスに賭けると発表した会長。NBCがイベントと称するのは、1)オリンピック、フットボールなどのスポーツ試合、「ザ・ヴォイス」などリアリティー勝ち抜き戦やクイズ番組など実況中継、2)「レボリューション」に代表される、地球規模の大型ドラマ、3)起承転結が明らかなミニシリーズ、あるいは限定シリーズ、4)時代劇のリメイクです。そして、今秋から向こう1年に放送開始するドラマ「ブラックリスト」「Believe」「Crisis」「Dracula」は、全てイベントであると定義します。
更に、NBCエンターテイメント社長ジェニファー・ソルクは、ケーブルと比べて画期的/斬新な作品ができないのは何故か?と言う質問に、「巷に溢れる企画の中から厳選して、面白いと思う作品を制作しているので、後は運を天に任せるだけです」と何とも的を得ない答えでした。はー???この期に及んで、神頼みですか?お願いしますよ。
咋秋、発表したドラマ「Chicago Fire」「レボリューション」の継続及び「Chicago Fire」のスピンオフ制作が決まりましたが、コメディー4本は全滅しました。今秋は、ドラマ「ブラックリスト」 「Ironside」の2本、コメディーは「Sean Saves the World」「The Michael J. Fox Show」「Welcome to the Family」の3本、計5本で勝負します。
消極的にお薦めするのは、ドラマ「ブラックリスト」と、コメディー「Sean Saves the World」の2本です。「ブラックリスト」は、ジェームズ・スペイダーの久々のシリーズで、指名手配中のレイモンド・レディントンを演じます。FBIと協力して、「悪」の根源を根こそぎ退治しようと申し出ますが、唯一の連絡係として白羽の矢を立てたのは、FBIの新米プロファイラーのエリザベス・キーン(メーガン・ブーン)。レディントンの真の目的は、自らの罪の償いなのか?それとも、FBIへの復讐なのか? 「秘密を抱えて生きているキャラが好き」と言う、ジョー・ボーケンキャンプ創作の「羊たちの沈黙」風ドラマになるのでしょうか?パイロットからだけでは、判断できません。
極度の近眼だが、撮影時には眼鏡をかけないので、独特の雰囲気を醸し出すスペイダー(左)も50代のおじさんになり、貫禄が出てきた。ブーンは、アクの強いスペイダーといかに共演して行くのか? Emiley Schweich, Albert L. Ortega / PR Photos
【動画】 「ブラックリスト」トレーラー
「Sean Saves the World」は、最近プロデューサーとして活躍しているショーン・ヘイズの久々のコメディー・シリーズです。「ウィル&グレイス」のジャック・マクファーランドに14歳の娘がいたら的設定です。シングル・ゲイ・ファーザーとして、家庭をとるか?仕事に生きるか?の狭間で揺れ動くショーンを描きます。パイロットには出演していませんが、ショーンの親友リズとして登板した、メーガン・ヒルティがパネルインタビューに姿を現しました。「『スマッシュ』とは、全く逆の役だし、踊らなくて良いから嬉しいわ」とコメント。どうも、「スマッシュ」のダンス部分がとても苦手だったようです。ウィルとグレイスの様な、楽しい関係になるのでしょうか?ショーンは、母親や上司など、マイナス思考の人間に囲まれているので、リズだけでも心が休まるキャラにして欲しいと思います。
「Sean Saves the World」のタイトル通り、ヘイズ(左)はNBCを救えるのか?「スマッシュ」の好演が認められたのか、ヒルティが起用された。グレイスの役所か? Andrew Evans / PR Photos
【動画】 ショーン・ヘイズ主演コメディ「Sean Saves the World」トレーラー
本年初頭から話題になっていたマイケル・J・フォックスのコメディー「The Michael J. Fox Show」は、持病を自虐的に描いているだけに、笑っても良いのだろうか?と気兼ねしてしまうので、個人的には遠慮してしまいます。22話も撮影できるほど体調が回復したのでしょうか?陰険な弁護士役で、時々、「グッドワイフ」に顔を出すだけで良いのではと思うのは、私だけでしょうか?フォックスのコメディー復帰そのものが「オリンピック級の『イベント』!」であると、イベント・ビジネスに賭けるグリーンブラット会長は指摘しました。そんなプレッシャーをかけるのは、酷だと思いませんか?と尋ねたくなりました。
「イベント」扱いされていることへの反応を聞いてみたいフォックス。「The Michael J. Fox Show」では、ニュース界で昔取った杵柄を発揮できるかが試されるマイク・ヘンリーを演じる。 Andrew Evans / PR Photos
【動画】 マイケル・J・フォックス復帰作「The Michael J. Fox Show」トレーラー
昨夏、「スマッシュ」は、「ハリーズ・ロー 裏通り法律事務所」と年間平均視聴者数がほぼ同数で、順位は195作品中、「スマッシュ」は51位と「ハリーズ・ロー」が52位だったにも関わらず、グリーンブラット会長がShowtimeから手土産に持参した「スマッシュ」に押しつぶされた感じだったと書きましたが、今回のツアーで、キャシー・ベイツが公にNBCを批判しました。
今シーズン、「アメリカン・ホラー・ストーリー」に出演するベイツは、FX局担当日の同作のパネルインタビューに参加。「ハリーズ・ロー」について、最初は「コメントする時間が勿体ないわ!」と言っていましたが、結局、不平不満を吐き出すかのように「最悪!小突き回されて、捨てられたって感じよ。大勢のファンにも、失礼じゃない?あんなことするから、未だに4位。ざまあ見ろ!あー、すっとした!」と述べました。友人ジェシカ・ラングの口利きで、今回の登板が決まったそうですが、悔し紛れに泣きつく友人が大物女優だと、即就職に繋がって良いですね?さ、す、が!
「ハリーズ・ロー」を打ち切られてベイツ(左)が泣きついたのが親友ラングだったので、「アメホラ」登板となった。ここまでベテランになると、公に批難しても報復はないのだろう。頭から湯気を立てて怒っていたベイツ。 Barbara Henderson / PR Photos
「ハリーズ・ロー」で共演したネイト・コードリーは、今シーズンCBS「Mom」に出演しており、パネルインタビューの後、打切りについて聞いてみました。「セットに行ったら、打ち切られたって聞いて、皆愕然としました。全く前触れも何もなかったし....あれじゃ、諦めきれないですよ。」と本当に悔しそうでした。「スマッシュ」のシーズン2が気の抜けた炭酸水のようだっただけに、「ハリーズ・ロー」を続けていれば....と思うと、また悔しさがこみ上げて来ました。「グッドワイフ」と同じく視聴者の年齢が高いことを忌み嫌う地上波局のジレンマ、ここにあり!
CBS「Mom」で、アナ・ファリスの上司/愛人ゲイブリエルを演じるコードリー。「ハリーズ・ロー」で等身大の役所を演じていただけに、今回の役にどう肉付けして行くか?が課題だろう。 Albert L. Ortega / PR Photos
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地上波局2013年秋の新番組の成績表
9月23日から追々始まった地上波5局の秋の新番組26本。今年は、私的事情で9月末から約3週間、テレビを観る事ができませんでした。従来なら、DVRに予約録画しておいて、一気観をするところですが….今年は嬉しいことに、「アロー」以外はV.O.D.(ビデオ・オン・デマンド)で視聴できると判明、繰り返し観たい「グッドワイフ」と「スキャンダル」と「アロー」の3作のみを録画予約しました。
10月下旬に、上記3作を観て大いに満足した後、V.O.D.に移行して新番組をチェックしましたが、何しろ、13年秋の新番組放映開始後1ヵ月強経っていたため、状況はすっかり変わっていました。各局の成績表は....
ABC
「Marvel’s Agents of S.H.I.E.L.D.」シーズン1(20〜23話?)は確約
「The Goldbergs」シーズン1は確約
「Trophy Wife」シーズン1は確約
青息吐息は、
「Super Fun Night」2〜3話ずつ更新だが、危ない
「Once Upon a Time in Wonderland」シンプルな筋が意外と新鮮なのに、視聴率は低い
「Betrayal」この手の夜メロは現代人にはかったるい?
打ち切りの憂き目に遭ったのは、
「Lucky 7」タイトルに反して、2話放送後打ち切り、残念無念
「Back in the Game」13話消化して完了
好調「Marvel’s Agents of S.H.I.E.L.D.」で、主役を演じるクラーク・グレッグ。以前、コメディー「The New Adventures of Old Christine」でジュリア・ルイス・ドライファスの元夫=ダメ男だったので、今回のヒーロー役はとってつけたような感じが.... Glenn Francis / PRPhotos.com
CBS
「Mom」シーズン1(20〜23話?)は確約
「The Millers」シーズン1確約
「The Crazy Ones」シーズン1確約も、既にネタ切れ感無きにしも非ず
「ホステージ」「ブラックリスト」の裏番組で青息吐息。13話完了になる筈
「We Are Men」2話で打ち切りは、ちょっと残念
「The Crazy Ones」では、究極の宣伝マンを演じるロビン・ウィリアムズ。やはり、歳には勝てないのか、ガス欠気味?!共演の若手勢の活躍を期待したい。 Landmark / PR Photos
CW
「The Originals」シーズン1確約
「The Tomorrow People」シーズン1確約
「Reign」シーズン1確約
「ヴァンパイアー・ダイアリーズ」の起源3人に遡る「The Originals」で、ジョセフ・モーガンはクラウス役。 Glenn Harris / PR Photos
FOX
「Sleepy Hollow」シーズン2確約。FOX希望の星!とにかく面白い
「Almost Human」11月4日プレミアで好調
「Dads」シーズン1確約
「Brooklyn Nine-Nine」シーズン1確約
彗星の如く登場したトム・マイソンは、FOXの期待通り「Sleepy Hollow」をヒット作にした。来年1月のシーズン1フィナーレ回は2時間に延長されるほどの人気だ。 Landmark / PR Photos
NBC
「ブラックリスト」シーズン1(20〜23話?)は確約
「Dracula」「グリム」とペア放送で好調
「The Michael J. Fox Show」シーズン1(22話)は最初から確約も、見直し要
「Sean Saves the World」5話更新なるも、青息吐息
「Ironside」10月23日に最終話放送して打ち切り
「Back in the Game」13話消化して完了
「The Michael J. Fox Show」は、マイケル・J・フォックスの私生活をコメディー化したもの。シーズン2は危ないかも? Debby Wong / PR Photos
そして、今回初めてVODというテクノロジーの賜物を利用した感想は、
ライブ放送の翌日には視聴できるもの
いつまで経ってもどこにあるか不明の作品
何故か絶対にVOD一覧表にあがってこない作品
など、まだまだ使い勝手が良いとは言えません。
DVRに録画したものであればコマーシャルをすっ飛ばしたり、逃した箇所に戻ったりが自由自在ですが、VODでは早送りや早戻し機能は使えないように操作されています。しかも、コマーシャルは1本と短く、下手に用事にでも立とうものなら、戻って来た時には、番組が始まっています。また、居眠りでもしようものなら、最初に戻って繰り返し同じものを観ない限り、見逃した部分に行き着かない工夫が凝らされています。あー、面倒臭い!ま、見逃すよりは良いと諦めるしかないのでしょうね?
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ジュリア・ロバーツは噂通り!14年冬のTCAプレスツアー
2014年冬のTCAプレスツアーは、パサデナのランガム・ホテルで1月9日〜23日まで開催されました。昨年12月から完全に凍結していた米国中西部や東部、更にカナダから、200人足らずの評論家が、連日25〜7度の「地上のパラダイス」に集まってきました。
1月9日〜11日の3日間は、ケーブル26局がパネルインタビューやプロモーションイベントで新作を紹介、継続番組の方向性や撮影状況などを発表しました。
初日、HBOが新作5本、「Girls」シーズン3、ニュース番組1本で3時間を埋めました。殺人犯を追う刑事コンビの17年間の公私を描く「True Detective」主演のマシュー・マコノヒーとウッディ・ハレルソン2人が、「The Normal Heart」のジュリア・ロバーツ、マット・ボマー、ジム・パーソンズ、テイラー・キッチ、マーク・ラファロの豪華キャストが登場しました。トニー賞を受賞した同名の芝居をライアン・マーフィーが演出したこのテレビ用映画は、1980年初頭、HIV感染者の急増に震え上がったニューヨークのゲイ社会と先見の明のあるブルックナー医師(ロバーツ)に支えられたゲイ活動家を描きます。
「True Detective」でテキサス出身の根暗一匹狼ラスト・コール捜査官を演じるマコノヒー(左)、ハレルソンは、地元ルイジアナの所帯持ち、社交的なマーティン・ハート捜査官役。 Landmark, Andrew Evans / PR Photos
初めて拝むロバーツでしたが、登場して開口一番「あら、そんなに拍手喝采していただかなくても...」と厭味たっぷり。HBOと非会員のぱらぱら拍手がお気に障ったようです。会場の半分以上を埋め尽くすTCA会員は、会則に従って行動しているので、すっかり白けてしまいました。これがロバーツの常套手段と、業界の大先輩達から聞いてはいましたが....
ロバーツは、小児まひで車椅子生活を強いられた医師を演じる。「通常のきらびやかな役ではありませんが....」の質問に切れて、雷を落とした。クワバラ、クワバラ! Andrew Evans / PR Photos
ボマーはこの役を演じるために18キロも減量し、舞台では演じきれない現実味を加味したようです。それにしても、刈り上げもげっそりも全くお似合いではありません。「ホワイトカラー」の覇気はどこへ行ってしまったのでしょう?マーフィーは、この作品を通じて1)環境は変われども、人間は変わらないこと、2)人間は恐怖にどう対処するかを伝えたいと発言しました。
「The Normal Heart」では、ラファロの相手役フェリックスを演じるボマー。14歳で、隠れてこの戯曲を読んで、HIVの実体を初めて把握したと告白。 Andrew Evans / PR Photos
期待できそうなHBO新作「Silicon Valley」は、1980年代、ハイテク・ゴールドラッシュのシリコンバレーで一攫千金を夢見たベンチャー投資家とアスペルガー症候群風コンピュータ・オタク達を描くコメディーです。コンピュータの構造や理論などが解らなくても、大丈夫というクリエイターのお墨付きです。3分ほどのトレーラーは確かに面白そうですし、試写を観たサンフランシスコの評論家が、当時のバレーの雰囲気を的確に描写していると絶賛しています。「アントラージュ 俺たちのハリウッド」のシリコンバレー版と局は称しているので、内容は自ずとお判りになるのでは?
奇しくも、「ブレイキング・バッド」が完了し、「マッドメン」も最終シーズンを迎えるAMC局も、「Halt & Catch Fire」と題したシリコンバレーを舞台にしたドラマの制作を発表しました。1980年初頭PC時代の幕開けに加担した、夢想家、エンジニア、神童がシリコンバレーで繰り広げるドラマです。但し、こちらも3分ほどのトレーラーしか観ていませんし、AMC局はパイロットを送って来ないので、6月の放送を観るまでは何とも言えませんが....
1980年代がテーマのドラマやコメディーが続々と登場するのは、何故なのでしょうか?この頃から、世の中が大きく変わり始めたのでしょうか?
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「お騒がせ」ペイリン再登場、14年冬のTCAプレスツアー
1月10日、早朝8時、まだネボコ眼の評論家集団に殴り込みをかけたのは、他でもない元共和党副大統領候補のサラ・ペイリン!!!旦那が出演したリアリティー番組「Stars Earn Stripes」のプロモーションに駆けつけ、NBCのプールサイド・パーティーを独占したあの「お騒がせ」ペイリンです。写真を撮った撮らないで、プロにあるまじき行為と会長のお叱りを受け、TCA内乱が勃発した2年前の夏以来の登場です。
Sportsman Channelから盛んに送られてきたペイリンを囲む朝食会のお知らせ。番組自体への関心は薄く、国粋主義を絵に描いた様なブロガー軍団が最前列を占拠してはしゃいでいた。早朝からきんきんした声で意味不明の番宣をまくしたてられても....
今回は、Sportsman Channelと言う誰も聞いたことのない局の「Amazing America with Sarah Palin」なる野性的ライフスタイル番組を紹介するためなのです。トレーラーを見ても、ペイリンの説明を聞いても、一体どんな番組になるのか不明なのですが、局のお偉いさんがペイリンを「The First Lady of Wild Lifestyle」と称したので、間違いないと思います。
作り笑いときんきん声で、意味不明、間違いだらけの発言を連発しました。アメリカの開拓精神を蘇らせ、若い女性に狩猟や釣りなどの醍醐味を伝えたいと息巻いた上、評論家をアラスカに招待、「我が家で野性的ライフスタイルを体験してください!」と煙に巻きました。
パネルインタビューはない上、質疑応答は何故か(?)速記されませんでしたが、朝食を口にしながら、評論家達はツイッターでコメントを交わしました。後から、これを読んで、局側が記録を残さなかった意味がよ〜く解りました。
また、同局のサイトを覗いた所、右寄りの番組だらけです。「Dead Meat」「Bowhunter TV」「YoungWild」「Maximum Archery」等々、ぎょっとするタイトルが並んでいるではありませんか?そして、極めつけは「NRA News」(全米ライフル協会ニュース)です。
そそくさとテーブルを離れようとすると、近くに座っていた右翼派の新聞記者にペイリンと写真を撮ってくれと頼まれてしまいました。えー!ペイリンと写真の組み合わせは、やばい!と説明する間もなく、カメラを突きつけられ、そこへ運良く(?)ペイリンが現れて、ハイポーズとなりました。TCA会員権を剥奪されるのではないか?と心配する一方、ペイリンとのツーショットを確認して感涙にむせぶ青年に、胸騒ぎを覚えました。
マッケイン/ペイリン共和党候補が当選しなかったからこそ、また無知文盲が何をほざいている!と笑っていられますが、次回の大統領選で共和党員の中でも最右翼がのし上がってきたら、一体どうなるのでしょう?
2日後、WGN局が初のオリジナル作品として「Salem」の制作を発表しました。集団ヒステリーとしてアメリカ史の汚点とも言われるセイラムの魔女狩りを描いたホラー/スーパーナチュラル系ドラマです。「17世紀には魔女が魔女狩りをしていた」とクリエイターが発言し、下手をすれば21世紀に魔女狩りされるのは、ペイリンをバカにしつつも、恐れてきた常識人かもしれないなーと変な想像をしてしまいました。
WGNから送られてきた初のオリジナル作品制作発表への招待状。パイロットを観た仲間は、「アメリカン・ホラー・ストーリー」など目じゃないほど恐い!と言う。
クリエイターは、「トニー・ソプラノやウォルター・ホワイトのような、美味しいアンチヒーロー役を女優にもと思って書いた」と述べました。主役メアリーを演じるジャネット・モンゴメリーは、「テレビ史上初の、極悪女を演じられて嬉しいわ」と清々しい笑顔で語りましたが、実は最初に登板したのは「リベンジ」のアシュリー・マデクウェだったと聞き、大いに納得しました。遂にアンチヒーローの波は女性にまで及んだため、最近魔女ものが多いのでしょうか?
「Salem」でテレビ史上初(?)の極悪女を演じるジャネット・モンゴメリー(左)。「Dancing on the Edge」のサラ役が良かっただけに、イメージを崩して欲しくない。
「リベンジ」で打算的な小悪魔を演じたアシュリー・マデクウェ。ティトゥーバ役の予行演習だったのか? Andrew Evans, Janice Ogata / PRPhotos.com
WGNからのお土産は帽子、膝掛けとTシャツ。アクセントの首縄に竦んだの私だけ?
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久々の癒し系2作品!14年冬のTCAプレスツアー
冬のTCAプレスツアーは、前年秋に始まった新番組の方向修正を発表することが主目的ですが、ABCとNBCは視聴率の獲れない番組を潔く打ち切る決断を飽くまで渋りました。そして、このブログを書いている間に、打切りのニュースが次々と飛び込んできます。オリンピック終了直後から、次々と春の新番組を開始するため、どさくさ紛れに駄作を打ち切ってしまう策略のようです。
ドラマの陰湿度や過激度競争が激化してきましたが、嬉しいことに今ツアーでは、昨今貴重な癒し系ドラマとコメディー各1本が登場しました。
「LOST」と「デスパレートな妻たち」が画面から消えた後も、毎年、あーでもない、こーでもないと、試行錯誤を繰り返してくれるABCが放つドラマ「Resurrection」が、その1本です。昨年5月初旬にABCから早々に送られてきた2013〜14年シーズンのパイロットを観て以来、放送を待ちわびてきた魂に語りかける期待作です。
中国の田んぼで目を覚ました少年ジェイコブが、故郷ミズーリ州のアーケディアという町に、戻ってきて目にしたのは、年老いた両親。ジェイコブ同様、次々と蘇るアーケディアの元住人は、何故かこの世を去った当時の姿で、家族のもとに戻ってきます。素直に受け入れる人、飽くまでも信じない人、何故自分の愛する人が蘇らないのか嫉妬する人、更に奇跡を信じるように説いてきた牧師でさえ、どう受け止めるべきか悩み、町中が混乱の渦に巻き込まれていきます。
「Resurrection」でカートウッド・スミス(左)は、ジェイコブの父ヘンリー・ラングストンを、フランシス・フィッシャーは、母ルシールを演じる。 Janice Ogata, Andrew Evans / PR Photos
ジェイソン・モットの著書「The Returned」の映像化ではなく、「登場人物の半数余りは創作、原作とは違う方向に展開した」と、脚本を任されたアーロン・ゼルマンが語りました。最近流行の「○○にヒントを得て」と言う感じでしょうか、「原作は読まずに、全く新しいドラマとして観て欲しい」とは、ゼルマンのたっての願いです。
まだ二話以降を観ていない私の最大の不安材料は、視聴者に散々結末を推測させた挙句の果てに、宇宙人の地球攻略の手だった!の如きSF的結末とか、実はゾンビだった!的ホラーで締めくくられることです。しかし、ゼルマンも原作の途中まではSFだと思って読んでいたところ、「喪失、嘆き、癒しの考察なのだ」とはたと気付いたと言います。「生きるとは、どういうことなのか?という、人間の永遠の謎に正面から立ち向かう姿勢を核にしました」と創作の経緯を語り、安心させてくれました。
「Resurrection」で、オマー・エップス(左)は移民局のベラミー調査員を、デヴィン・ケリーはジェイコブの従弟マギーを演じる。 Andrew Evans / PR Photos
但し、プレスツアーが終わってから、本作に「Imagine the Impossible」という副題がつけられました。タイトルだけで、内容やジャンルが把握できないからでしょうか?だとしたら、先行きが心配です。とは言え、シーズン1は8話を撮影済みで、仕上がりや結末に、「大いに満足している」とゼルマンは言います。癒し系ドラマは大ヒットした例がありませんが、今度こそ!と期待を寄せています。
一方、嘗てコメディーに強かったNBCが放つ心温まる「Growing Up Fisher」は、異色作です。「Resurrection」同様、コンセプトを文書で読んだら、絶対に「そんなアホな!」と切り捨てたと思いますが、パイロットは何度観ても、「やる気、元気、勇気」の宝庫で、希望の光に満ち満ちています。
クリエイターDJナッシュの生い立ちを描いたこのシリーズは、盲目の弁護士と妻の離婚を機に、意外にも家族の絆が強まるフィッシャー一家を描く、嘘の様な本当の話。盲導犬エルビスにとって替わられ、父親に見捨てられたような寂しい思いをする11歳の息子ヘンリー。高校生の娘ケイティーは、青春を謳歌し損ねた母ジョイスにつきまとわれ、役割が逆転。離婚や盲目など難題を扱う割には、明るく、楽しく、心温まるコメディーに仕上がっているから不思議です。
【動画】 「Growing Up Fisher」トレーラー
成功の秘訣は、盲目の弁護士メル役に登板した、他ならぬJ.K.シモンズ(「クローザー」のポープ役)です。「絶対に読まない!」と決めた脚本の山に入っていたにも関わらず、本を読んだ後、ナッシュのお父さんに会いに行って、惚れ込んだ役。シモンズだから、嘘の様な話が心温まるコメディーとして成立します。障害をものともせず、やってやれないことはない!的楽観的な生き方が、視聴者に希望の光を与えてくれます。
「Growing Up Fisher」のメル役J.K.シモンズ。ジャンル、拘束時間、盲目役が避けていた三大理由だったが、エージェントに説得されて読んでみたところ、すっかり気に入った。 Andrew Evans / PR Photos
また、メルを慕う息子ヘンリー役に起用されたイーライ・ベイカーは、こまっちゃくれた子役ではなく、どこにでもいそうな普通の少年で、父子関係を巧みに表現します。また、母親ジョイス役は、パーカー・ポージーからジェナ・エルフマン(「ダーマとグレッグ」)に交替し、明るさが何段もアップしました。
パイロットの最後に、メルがヘンリーにアパートの鍵を渡し、二人の住まいであることを示すジーンと来るシーンがあります。クリエイターのナッシュに、「この春一番の元気をくれるイチ押し作!」と感想を述べたところ、「父がくれた鍵だよ!」とそれは嬉しそうに、ポケットから取り出して見せてくれました。こんなに父親思いでいられるなんて、本当に素敵なことだし、その気持ちをテレビシリーズで表現できるなんて....再度、感涙してしまいました!最近、涙腺が緩んでいて困ります。
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カンバーバッチは普通の人?14年冬のTCAプレスツアー
1月19日にアメリカでシーズン3が再開された「シャーロック」ですが、翌20日PBSのパネルインタビューに、ベネディクト・カンバーバッチとワトソンの妻役に登板したアマンダ・アビントン2人が登場しました。
「長年参加してきたけど、前夜からファンがテントをはって待っていたなんて、初めて!」と仰天するプレスツアーのベテランに応えて、「そうなんだよ。なのに飛行機が遅れて、ここに飛び込んだから、また3時間余り待たせてしまうのが申し訳なくて....」とファン想いの発言をしたカンバーバッチ。
ホテル内でのスケジュールをこなし、やっとファンサービスに専念するカンバーバッチ。今一番ホットな俳優なのに、一人ずつ、丁寧に対応して行く姿は新鮮だ。
「昨晩から待ってくれたファンの期待に添えるか?と、一種の責任感を感じる」とまで言います。本当に、ファン想いなんだな〜と感動した瞬間、すかさず「ファンは概ね聡明で、中には『まともな人』もいるからね」と落ちがつきました。
ツーショットにも気軽に応じる。長時間待った甲斐があった!と大喜びのカンバーバッチ・ファン軍団の女性。
プライバシーを死守し、雑音の入らない環境を作らないと仕事ができないタイプの俳優と見受けました。「特に落ち込んでいる時に、見ず知らずの人にカメラを向けられるのが苦痛」だと明かしました。何もかも付人任せのセレブではなく、「どこへ行くにも地下鉄やバスを利用する『普通の人間』だし、いつまでもそうありたい」と言いつつも、顔を知られてしまったおかげで、買物もおちおち出来なくなった話もしてくれました。
自らの誕生日を楯に取って、何かを要求するファン軍団の一人。サインはしてもらったものの、願いは叶ったのだろうか?
有名になってしまった!ヤバい!と思う反面、ハリソン・フォードに褒められた天にも昇る心地を味わったと、フォードの物真似を交えて語ります。
因に、「シャーロック」はカンバーバッチが有名になり過ぎて、時間がないと降板しない限り、何シーズンでも続けるとプロデューサーが発表し、会場に居合わせたPBS局長が承認する場面もありました。
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「パーセプション」女医版?14年冬のTCAプレスツアー
2007年以降、漸く市民権を得たかのように見えた心の病や神経疾患を取り上げたドラマでしたが、今や2012年に始まった「パーセプション」のみになっていました。諜報員、吸血鬼や魔女、漫画のヒーローがこれでもか!これでもか!と登場する中、今春、ABCで始まる「The Black Box」は大いに期待できそうです。
4月24日、「スキャンダル」のシーズン3終了翌週から始まる同作は、1月17日のABCのスケジュールに挙がっていたものの、誰もパイロットを観た事がなく、ほとんど白紙状態でインタビューに臨みました。
参加者には、パイロット第4幕まで(約50頁)の脚本が配られましたが、直前だったため、読む時間はありませんでした。約3分ほどのトレーラー上映後、インタビューが始まりました。
クリエイターは、「ミスティック・ピザ」や「幸福の条件」を書き下ろしたエイミー・ホールデン・ジョーンズで、世界有数の神経科学者キャサリン・ブラック(ケリー・ライリー)の公私を、脳機能への理解が日進月歩の21世紀の神経科学研究最前線を背景に描きます。脳は人間のブラック・ボックスと呼ばれ、キャサリンは未知の世界に誘う水先案内人ですが、本人が躁鬱病の「躁状態」依存症であることが本作の味噌です。神経疾患の中で、投薬による治療率が最も高いにも関わらず、一旦「躁状態」の天にも昇る気分を味わってしまうと、薬を拒否する患者が多い事実をジョーンズが指摘しました。
「The Black Box」の主人公キャサリン・ブラックを演じるケリー・ライリー。躁鬱病のジェットコースター人生をリアルに描きたいと抱負を述べた。 Andrew Evans / PR Photos
「躁うつ病を生きる」で自らの体験を記した、躁鬱病の権威=ケイ・レッドフィールド・ジャミソンがキャサリンのモデルとなっており、父親の躁鬱病と35年付き合ったジョーンズ自身の「天才と狂人は紙一重」体験が加味されています。「21世紀の脳概観」が背景で、毎話、聞いた事もない神経疾患を取り上げますが、患者への理解と共感は、「パーセプション」のダニエル・ピアース博士と同様です。但し、本作は犯罪捜査ドラマではありません。
「パーセプション」で、エリック・マコーマックが演じるピアース博士は、妄想型統合失調症と付き合いながら、FBIの犯罪捜査に手を貸す大学教授だ。 Andrew Evans / PR Photos
私はこの5〜6年「脳」にまつわる本を読みあさっているので、この手のドラマは大歓迎ですが、大多数の評論家は本作がパイロット制作をすっ飛ばして、いきなり13話制作のシリーズ直行形態をとったことに注目しました。今ツアーで、FOXエンタテインメントのケビン・ライリー会長がパイロットシーズンの狂気の沙汰を廃止し、1年を通じて新番組を制作/放送開始すると1月13日に発表したばかりだったからです。伝統的なパイロットシーズン(1月〜4月)は、放送作家/制作陣/タレントの争奪戦になるので、圧力鍋状態で、良いものができないと言うのが理由です。英国方式1シーズン13話を提唱し始めた昨夏から半年も経たないうちに、10話あたりが適当かと....と言う局まで出て来ました。一体、どこまで落ちて行くのでしょうか?
今回、FOX エンタテインメントのライリー会長が唱えるのは、「パイロットシーズンよ、安らかに眠れ!」だ。新番組放送開始を秋と春に限定せず、1年52週間を通じて随意に始めるなど、次々と型破りな案を発表しては、すぐに挫折する悪い癖がある。 Izumi Hasegawa / PR Photos
本作が何故、シリーズ直行になったかは明かされませんでしたが、伝統的な時間や人材の束縛がない分、クリエイターのビジョンを守るために、関係者全員がベストを尽くせる環境なので、良いものができるとプロデューサーが語りました。唯一の欠点は「通常パイロットを撮影してシリーズになるかどうか半年くらい時間があるので、反省したり、二話以降を練ったりできるけど、シリーズ直行では息つく間が一瞬もないこと」と、ジョーンズは指摘しました。
前以てDVDを送ってきたりはしてくれそうにない「The Black Box」。開けてびっくり玉手箱とは正にこの作品のことです。
【動画】「The Black Box」プロモ映像
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エリック・デインの名誉挽回作?14年冬のTCAプレスツアー
今夏、TNT局で始まる「The Last Ship」は、謎の細菌で人類壊滅の危機に瀕する地球を救おうと奔走する、米海軍駆逐艦ネイサン・ジェームズ号を描くポストアポカリプス・ジャンルのドラマです。2012〜13年シーズンにABCが放った「Last Resort」と類似していますが、本作は生存者にワクチンを届けなければ人類が滅びるという、更なるプレッシャーがかかっています。
プレスツアーに駆けつけた(左から)サム・スプレル、チャールス・パーネル、デイン、ローナ・ミトラ、クリスティーナ・エルモア、マリッサ・ニートリング、トラヴィス・ヴァン・ウィンクル、アダム・ボールドウィン、ジョン・パイパー=ファーガソン John Sciulli/WireImage
演習に出ている間に海上の孤島と化した駆逐艦を率いるのは、トム・チャンドラー艦長で、勇ましい海軍大佐チャンドラー役に登板したのは、「グレイズ・アナトミー 恋の解剖学」でマーク・スローンを演じたエリック・デインです。
スキャンダルを知らずにマーク・スローンを観ている限り、「グレイズ」のキャラの中では、人間として成長した稀少な存在だった。デインが心配するほど、イメージは落ちていないと思うのだが、心の痛手は明らかだった。 Andrew Evans / PR Photos
悪名高きスローンから誇り高き将校への180度転換について、「スローンは楽しい役だったけど、今回の役の方がしっくり来る。いつまでも、悪ガキの役はやってられないからね。チャンドラーは誠実で、高尚な人物。嘘のない演技でこのキャラを演じられるか不安だけど、スローンとはたっぷり『間』置いたつもり」とデインが答えました。
スローン時代に、スキャンダルが勃発したことは周知の事実なので、「間」は意図的だったのか?スローンの強烈なイメージを打ち破ることができなかったため仕事がなかったのか?など意味深の質問が続きました。「乗り越えられたかどうかは、まだ解らない。乞うご期待!と言いたい」と答えたデインの表情に翳りを読み取ったのは私だけでしょうか?
とは言うものの、「グレイズ」降板2〜3週間後には本作パイロットの撮影に入った、シリーズ化が決まるまでに1年かかった経緯を指摘されると、デインの意図的な「間」ではなかったことが明らかです。脚本を任されたハンク・スタインバーグ(「FBI失踪者を追え!」のクリエイター)は、「勇壮な軍人姿が、スローンと重なることなど絶対にない」と助け舟を出しました。パイロットを観た限り、デインの名誉挽回作になるのでは?と思いました。
もう1本、夏の新番組「Murder in the First」で輝いているのは、イアン・アンソニー・デイルです。「THE EVENT/イベント」のサイモン・リー役が頭にこびり付いていて、てっきり中国人だとばかり思っていましたが、パネル後に歓談する機会に恵まれました。
プレスツアーに駆けつけた(左から)スティーブン・ボチコ、エリック・ローダル、ロンバルド・ボイヤー、トム・フェルトン、ベス・ルー、テイ・ディグス、キャスリーン・ロバートソン、ミミ・カークランド、デイル、ラファエル・スバージ、リチャード・シフ、スティーブン・ウェバー
John Sciulli/WireImage
お母さんが神戸出身と聞き、話が弾みました。お父さんが、フランス人とイギリス人のハーフということ、ミネソタ州出身で、アジア人特有のアクセントがない英語を話すこと、180センチ余りの長身で細身のモデルっぽい体型であることなどが、余り出番は多くなかったにも関わらず、輝いていた理由でしょう。
本作では、サンフランシスコ市警察殺人課のジム・コト警部補を演じますが、元々50歳近い白人男性キャラとして描かれていたそうです。それでもオーディションを受けて、アジア系人口の割合から見れば、いずれ市長になる野望を抱く、出世街道まっしぐらの若き日系青年の方がふさわしいキャラだと説得に成功したと打ち明けてくれました。
部下思いのコト警部補(デイル)がシーズンを通じてどのように変わって行くかが大いに楽しみだ。 Andrew Evans / PR Photos
主役はテリー・イングリッシュ刑事(テイ・ディグス)とヒルディー・マリガン刑事(キャスリーン・ロバートソン)のコンビですが、1人の容疑者を10話で追い、逮捕、起訴、裁判までを描く形態になっています。パイロットでは、臨終の床に伏した妻を抱えるイングリッシュ刑事を思いやる、優しい上司として描かれていますが、今後コト警部補がどう変わって行くのかがとても楽しみです。
イングリッシュ刑事役はテイ・ディグス(左)、マリガン刑事はキャスリーン・ロバートソンが演じる。 MJ Photos, Andrew Evans / PR Photos
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スティングとジェイソン・モモアの共通点?14年冬のTCAプレスツアー
ブルー・カラーの故郷を捨てた叩き上げのスティング(左)だが、知性が魅力だった。一方、ジェイソン・モモアの魅力は、昨今希少価値になりつつある精悍で、不敵な面構え。 Andrew Evans, Marco Sagliocco / PRPhotos.com
前回のブログでご紹介した新ドラマ「The Last Ship」(TNT)と、奇しくも同一同名のアルバムを2013年に発表したスティングが、PBS(公共放送)の「Great Performances: Sting: The Last Ship」のパネルインタビューに登場しました。7年前、「Great Performances: Songs from the Labyrinth」のミニコンサートで評論家を魅了したスティングですが、残念ながら今回はニューヨークからの衛星中継インタビューでした。手が届く距離に本人がいるのとは大違いですが、それでも一問、一問、考えながら丁寧に答える様子と知性にうっとりしてしまいました。
NYでポール・サイモンとリハーサル中のスティング(左、画面)は、穏やかな面持ちで、丁寧に質問に答えた。演台で質問の交通整理を務めるのは、WNET局スティーブン・セガラー番組編成部長。 Courtesy of Rahoul Ghose/PBS
約10年振りのアルバムは、ミュージカル「ザ・ラスト・シップ」のためにスティングが書き下ろした楽曲です。WNET局がニューヨーク市パブリックシアターで開催されたコンサートを録画し、写真や映像を加えて、PBS系列局で放送する演芸録画番組「Great Performances: Sting: The Last Ship」に加工したものです。
ミュージカルは、スティングの故郷ウォールズエンドを舞台に、造船業の結末を父子の観点から描きます。自叙伝ではありませんが、「造船中の大型客船の陰で暗〜い少年時代を過ごし、3Kの造船を忌み嫌って故郷を捨てたことへのうしろめたさが基になっている」と、スティングは創作の動機を語りました。仕事/失業、器としての地域社会についての考察でもあります。
「脚光を浴びたのは、27歳だったから舞い上がったりしなかった。18歳で一躍スターになっていたら、話は別だけど...」と、どさ回りの下積み時代が長かった分、一人前になってから有名になったことを指摘します。これほどユニークな声の持ち主でありながら、土方、牛乳配達、教員などを試したスティングですが、「公務員の仕事が最も苦痛だった!」と笑います。クリエイティブな人種は、大いに納得した筈です。年の功で、声にも人柄にも磨きがかかって、実に素敵なスティングでした。いつか、実物にお目にかかりたいものです。
スティングとは全く異質の魅力を持っているのが、Sundance Channelの自信作「The Red Road」のパネルインタビューに登場したジェイソン・モモアです。人間ドラマや癒し系に配役されるタイプではありませんし、「The Red Road」のパイロットを観た際も、特に目を凝らした俳優ではありません。どちらかと言うと、ケーブル作品の共通点である田舎特有の陰湿さが重く充満していて、「観たくないドラマ!」の箱に突っ込んでしまったほどです。同局の初のオリジナル・ドラマ「Rectify」のパイロットを観た時と同じ感触だったので、特に期待せずにパネルインタビューに臨みましたが....
異文化が顔に深く刻み込まれているが、ぱっと見はサモア人だ。クリエイターがアメリカ・インディアンの血に目を付け、コーパス役のオーディションを受けるよう説得した。 Courtesy of Sandance Channel
「男の中の男!」が不足している昨今、頑強男キャラにはオーストラリア人が配役されていますが、モモアは「男の中の男!」を絵に描いたような残り少ないアメリカ人(?)俳優です。 ハワイ原住民+アメリカ・インディアン+ドイツ+アイルランドの血を引くモモアが、今回演じるのは、NYハドソン河向岸の山間部に人知れず群集するレナペ・インディアンの末裔フィリップ・コーパスです。地元住民を震え上がらすならず者ですが、高校時代に付き合った白人女性ジーン(ジュリアン・ニコルズ)がアキレス腱のようです。ジーンの当て逃げをあばこうとするレナペ族と、握り潰そうとするジーンの夫や家族との対立が発端となり、醜い過去が発覚します。
2011年、ピープル誌が選んだセクシー男優トップ10の第9位に挙がっただけあって、2メートル近い長身、鍛えられた身体、寡黙で勇敢な騎士のような魅力とでも言いましょうか、人を引きつける力は充分です。今回のならず者キャラについて「ファンタジーやSFモノは、何でもありだから面白いけど、自分とは全く違うキャラをリアルに演じるのは初めて。生まれも育ちもこれだけ違うと、毎日が挑戦!」と、モモアは述べました。
モモア自身、ハワイ生まれでありながら、アイオワで育った根無し草的存在なので、「故郷に戻っても、居心地が悪い、根無し草の一匹狼の部分は地で行ける」と興味深い発言も飛び出しました。それにしても、ケーブル局は何故、こういう暗〜い作品を好んで制作するのでしょうか?
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「スーツ」キャスト勢揃い!14年冬のTCAプレスツアー
シーズン3で実父と共演した体験を語ったハーヴィー役ガブリエル・マクト(左)、回を重ねる毎に、持ち前の同情心を捨て、ハーヴィー二世になって行くマイクを演じるパトリック・J・アダムス Emiley Schweich / PR Photos
去る3月6日からシーズン3の後半6話が始まった「SUITS/スーツ」。遂に、来るべきものが来てしまいました!と言えば、「スーツ」ファンには明らかですが、マイク・ロスの秘密がどうなったかについては、敢えて明かさないことにします。後半6話を通じて、マイクの運命が描かれます。
USA局は通常、朝食か昼食を頂きながら、テーブルに俳優が回って来て、インタビューを実施するというカジュアル=和気あいあい方式です。東海岸で撮影している作品が多いので、ほとんど主役キャストにしかインタビューできない訳ですが、「スーツ」の人気に応えて、今年1月のプレスツアーには主要キャスト6人とクリエイターが勢揃いし、パネルインタビューが行われました。
タイトル入りのバッグには、シーズン1と2のDVD、目覚ましドリンク、弁護士コンビの写真付きの充電機Powertripが入っていた。
弁護士を装うマイクを演じるパトリック・J・アダムスが、全米のトップ弁護士が集まるイベントに招待された時の話。「表彰された弁護士の紹介文を読み上げる役を仰せつかったんだけど、会場を見回したら法界の選り抜きの集団なんだよ、これが!その瞬間、いつ化けの皮を剥がれる?というマイクの恐怖を痛いほど感じたよ。まともな弁護士役やってても、びびる場なのに、何しろ僕はにせ弁護士役だからね。きっとバカにされるんだろうな〜と、怖々近づいた弁護士さん達は、『ハートがあって、人間らしさが良い番組』と褒めてくれたよ」とアダムスが語りました。
逆に、レイチェル役のメーガン・マークルが「『パラリーガルの給料じゃ、あんな服装は無理、無理!』って、必ず指摘されるわ!」と不平を言うと、アダムスは「弁護士事務所はスカートの丈までしっかりと規定するから、あんな服装で出勤できないでしょ?」と追い打ちをかけます。クリエイターのアーロン・コーシュがすかさず「そこはドラマだから....」と間に入りましたが、確かに弁護士や銀行員など、堅い仕事に携わる場合、米国でもミニスカートやジーンズ、オープントゥなどは御法度です。
「私は、『ジェシカは色物を着ているから、自分の事務所を開いたら、真似しようと思うの!』とよく言われるわ」と、ジーナ・トレスが女性弁護士の反応を披露しました。シーズン3で、長身やスタイルの良さを強調するボディコンのドレスが増えました。ファッションセンスの良いジェシカが経営する事務所だから、レイチェルやドナ(サラ・ラファティー)の露出度の高い服装がまかり通っているのかも知れません。それに、何と言っても「スーツ」の青年視聴者層が最近急増したことを考えると、ジェシカ、レイチェル、ドナの3人にはそれなりの服装が不可欠なのでは?
(左から)「デキる」パラリーガル、レイチェルを演じるマークル、姉御肌が青年に大受けのドナ役ラファティー、女性なら誰でも憧れるパワフル兼セクシーなジェシカ役のトレス。 Courtney Vaudreuil / PRPhotos.com
形から入ると言う意味では、アダムスもマクトも、「ほとんどパジャマ姿で出勤して、スーツに着替えた途端、背筋が伸びて弁護士に変身する」と意見が一致しました。アダムスは、「鎧兜に身を包んで、いざ出陣!感覚が3シーズン目でやっとしっくり来るようになったかな?鎧兜で15時間歩き回るのは、きついけどね」と告白しました。
トレスは、ホワイトハウスのクリスマスパーティーに招かれた時のことを嬉々として語り、寡黙なマクトは、些細なことで笑い出したら1時間撮影を中断するほどの、悪名高き'ガブリエル笑い'を説明しました。
インタビュー完了直前に、ルイス役のリック・ホフマンが、「解散する前に、一言良いですか?プレスツアーに参加させてもらって、取材して頂いたことに感謝したいと思います。継続番組でもこんな機会に恵まれることは稀ですから。」と、殊勝にも挨拶をしました。ラファティーが「ね、嫌な奴じゃないでしょ?」と会場を湧かせて終了しました。
ホフマンは、嫌われ役専門の俳優。御多分に漏れず、誰よりも腰が低く、真摯なお礼の一言でイメチェンに成功した。お陰で、ルイスを憎めなくなってしまった? Emiley Schweich / PR Photos
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火の海と化した「グッドワイフ」 [注意:重要ネタバレあり]
※【ご注意ください】下記記事には「グッドワイフ」シーズン5に関する重大なネタバレが含まれます。
3月24日午後10時(太平洋時間)、「グッドワイフ」シーズン5の第15話で信じられない出来事を目撃、私はショックで動けなくなっていました。ウィル・ガードナー(ジョシュ・チャールス)が射殺されてしまったのです。普通に始まった「Dramatics, Your Honor」を観ていたのに、何の前触れもなく、最後の5分ほどの間に衝撃の展開が詰め込まれていたのです。
画面で繰り広げられる惨事を観ながら、
まさか...
大丈夫、怪我で済むに決まってる
マジ?
ウッソー!
信じられない!
何で????
と、刻々飛び出す感情的な言葉の数々!
ジョシュ・チャールスは、「僕だって、ドラマやキャラにのめり込むことがあるから、気持ちは有難く頂戴した」と、トーク番組でファンに感謝の意を表した。チャールスの降板から今回の衝撃的展開が生まれたとは、少々興醒めでもある。 Sylvain Gaboury / PR Photos
「聞いてないから!」と自分の目を疑うことから始まり、放送が終了した時点では、「よく秘密を守り通せたな!」と感心に変わりました。そして、夜が更けて行くにつれて、アリシア(ジュリアナ・マルグリーズ)の立場になって考えるようになりました。「ある程度仲直りできて良かった....」と思うと同時に、「いや待てよ、ウィルを撃った青年は、元々アリシアに弁護を依頼してきたのに、ウィルが横取りしたクライアントだ。アリシアは自責の念にかられるだろうな...」など、様々な思いがかけ巡って眠れなくなってしまいました。
翌25日、まるで現実に起きた惨事のように、CBS系列局のニュース番組放送の度に、予期せぬウィルの死が報道されました。月曜日午後の報道では、マルグリーズが「1年も前に決まったことだけど、ジョシュの口から聞いた時は悲しかったわ。毎日、大の仲良しと仕事してきたんですもの」と寂しさを語りました。
マルグリーズが演じるアリシアは、おっかなびっくりの良妻賢母から、ウィルやダイアン・ロックハートと同格の弁護士に成長した。各シーズン、天と地がひっくりかえるような「爆弾」を体験、その度に蘇る不死鳥として描かれている。現代女性の鑑だ。 Andrew Evans / PR Photos
業界人は電話やメールで追悼し、まるで友人の突然の死を悼むように嘆きました。当然のことながら、ウエブサイトはこの話で持ち切りでした。丁寧に読んでいると、クリエイターであるロバート&ミシェル・キング夫妻の声明書に到達しました。
CBS広報は、逸話放送10分後に掲載したと言うが、CBSオンラインのサイトでは、掲載は3月22日午後9時55分となっている。何故、声明文を発表したのか、キング夫妻に聞きたかったが、インタビューできなかった。
「『グッドワイフ』のファンの皆さんへ
我々もウィル・ガードナーの死を悼んでおります。ウィルは亡くしましたが、ジョシュ・チャールスは健在で、今後も『グッドワイフ』ファミリーの欠かせない一員であり続けます。
『グッドワイフ』の心髄は、『アリシア・フローリックの鍛錬』です。ウィルとアリシアの仲は、常にタイミングの悪さという悲劇を軸に回って来ました。ですから、1年余り前にジョシュが降板を決めた時、我々は選択を迫られました。
以下略」
死と言う決定的な終止符を打つことで、アリシアを始め、登場人物が如何に変化に対処し、成長して行くかを描くことができると言うのです。そう言えば、2011年に開催されたテレビ科学技術アカデミー(ATAS)の「グッドワイフ」の舞台裏パネルディスカッションで、「天と地がひっくり返った時こそ、人間が成長するまたとない機会」を信条としているとキング夫妻が明かしました。不死鳥アリシアを蘇らすため、繰り返し「爆弾」を投下して火の海にしてきました。前代未聞の大型爆弾=ウィルの死で、正に今「グッドワイフ」は火の海と化しています。
劇的な死を選んだのは、ある晴れた何の変哲もない日だと思って過ごしていたら、突然何の前触れもなく惨事が降り掛かると言う人間の現実を描きたかったからとも説明しています。取り返しのつかない人間の終止符「死」は、人間ドラマにとって不可欠の要素でありながら、テレビでは避けて通りがちだからです。
月曜日の深夜、トーク番組に登場したチャールスは、「契約を更新しなかったから、1年前からこの日が来るのは覚悟していた。身内は知っていたけど....」と語りました。既に映画の撮影に入ってはいるものの、特に次のプロジェクトが決まっている訳ではなく、「潮時だと思ったから」とも述べました。壮絶な死を選んだのは「キャラに相応しい旅立ちだから」と、意外に冷静な答えでした。何とも、興醒めなインタビューでした!?
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