今回のツアーで企画されたホテル外でのイベントをご紹介します。
1月15日
「The Crazy Ones」セット訪問とパネルインタビュー
広告代理店サイモン&サイモンの社内を見学し、シカゴの高層ビル(写真ですが、画面で観ると本物に見えてしまいます)を背景に、ロビン・ウィリアムス以下、4人の主要キャストとプロデューサー2人、クリエイターのデビッド・E・ケリーの計7人のパネルインタビューが行われました。シーズン1後半のゲストや今後の逸話について質問が出ました。いつもテンションの高いウィリアムスも、「笑いをとるのは、若者達に任せたので、のんびり楽しむ」と定年退職した年寄りのような口振りです。
3月30日現在、CBSから同作継続の発表がないので、皆慌てて次の仕事を探しているのでしょうか?ジェームス・ウォルク(ザック役)とアマンダ・セットン(ローレン役)は好演していたので、すぐに次が見つかると良いな〜と思います。
「ママと恋におちるまで」パネルインタビューとレセプション
シーリズ完結(3月31日放送)まで、6話の撮影を残すのみという時点でのパネルインタビューだったので、ここまで継続できると思いましたか?やパイロットを撮影した時にフィナーレを頭に描いていたのですか?など、過去を振り返る質問が矢継ぎ早に出ました。「これが最後のインタビューだと思うと....」と神妙になる一瞬もありましたが、クリエイター達は「パパと恋におちるまで」にかからなくては!と既に気持ちは次作にあり?
CBSから送られてきた「ママと恋におちるまで」の最終セット訪問の招待状。インタビュー後、仲良し5人組の行きつけのパブ「マクラレン」でレセプションが行われた。
1月16日
「HAWAII FIVE-O」の制作過程拝見
「The Millers」の本読み
CBS系列作品の制作陣を囲むカクテル・レセプション
1月22日
「Men at Work」セット訪問と個別インタビュー
TBSから送られてきた「Men at Work」のセット訪問招待状。背後に立っているのがクリエイターのブレッキン・マイヤー。前列左からアダム・ブッシュ、ダニー・マスターソン、ジェームス・レジャー、マイケル・キャシディー。
この日、TBSのコメディーの公開録画用セットを訪れた20人足らずの評論家。出版社で働く仲良し青年4人組のコメディーは、女性が観ても充分楽しい設定になっています。職場と青年達の居間/寝室などのセットを番組のクリエイター、ブレッキン・マイヤー(TNT「Franklin & Bash」に主演する俳優でもあります)が案内してくれました。
マイケル・キャシディー(「O.C.」シーズン2でザック・スティーブンスを演じた)に初めてインタビューできました。数年前、キャシディーが出演していたCWの「Privileged」のセット訪問がドタキャンになり、その後番組が打ち切られてしまったため、「やっと会えた!」と言う感じでした。このシリーズは年間13話ほど制作するだけなので、8カ月ほどはゲスト/映画出演の機会を探すのに忙しいと、なかなか大変な俳優の典型的ジプシー生活について語ってくれました。仕事がなくて落ち込んでいる時に、自信たっぷりの振りをしてオーディションを受けるのは、失業者が就職試験を受けるのと同じ心境なんですね。公開録画なので、「来シーズンが始まったら、是非観にきてよ」と招待されました。
「A Night of Comedy」
パサデナにあるディナー+映画を提供する超デラックスiPic劇場に、ワーナー系の番組に出演しているコメディアンが勢揃いしました。予想通り、「Mom」で好演しているアナ・ファリスが一番面白かったです。
1月23日
TV Land局主催
TVlandから送られてきたセット訪問招待状。左から「The Soul Man」のウェスリー・ジョナサン、ニーシー・ナッシュ、セドリック・ジ・エンターテイナー、「The Exes」のウェイン・ナイト、クリステン・ジョンストン、デビッド・アラン・ベイシュ、ドナルド・フェイソン、ケリー・ステイブルス、「Hot in Clevelan」からウェンディー・マリック、ヴァレリー・バーティネリ、ベティー・ホワイト、ジェーン・リーブス、「Kirstie」のマイケル・リチャーズ、リア・パールマン、カースティ・アレイ、エリック・ピーターセン。
「The Exes」の本読みと個別インタビュー
制作陣が総勢見守る中、キャスト10人余りとゲスト出演の俳優が長いテーブルに座って、脚本を通しで読む作業を見ました。コメディーなので、制作陣は笑いを提供する役目のようで、この逸話を書いたライターも控えていて、笑いの質や頻度を観察していました。
終了後、以前「スターター・ワイフ」でインタビューしたデビッド・アラン・ベイシュと再会し、今回のコメディーや役所について話を聞きました。
「Hot in Cleveland」録画見学
TV Land局初のオリジナル作品で、エンタメ業界で「過去の人」になった3人の中年女性がクリーブランドに不時着し、そのまま居着いてしまいます。カムバックのチャンスを虎視眈々と狙っている昼メロ女優ヴィクトリア(ウェンディー・マリック)や、何となくこのぬるま湯生活で歳をとっても良いかな?と思い始めたバツイチの元ライターのメラニー(ヴァレリー・バーティネリ)、まだ結婚を諦めていない美容師のジョイ(ジェーン・リーブス)に賃貸家屋の管理人で口やかましいエルカ(ベティー・ホワイト)が絡む、伝統的な公開録画シチュエーション・コメディーです。
昼食会でTV Land局オリジナルコメディーのキャスト個別インタビュー
92歳になったホワイトは、評論家の間では人気者ナンバー1です。高齢ながら矍鑠としている上、感謝とユーモアたっぷりのコメントは世の中が変わってしまって落ち込んでいるアナログ世代の励みになります。
「となりのサインフェルド」で奇人変人クレイマーを演じたマイケル・リチャーズにインタビューしようと思いましたが、ワケのわからない話にうんちくを傾けており、私が近づいて話が途切れるのを待っていることさえ気づきませんでした。どうもクレイマーは「地」だったようです。
ABC主催
「Marvel’s Agents of S.H.I.E.L.D.」セット訪問と個別インタビュー
「S.H.I.E.L.D.」のセット訪問で14年冬のツアーが完了となりました。極秘の場所にある撮影所のセットで待っていてくれたのは、制作陣とタレント6人。S.H.I.E.L.D.の空飛ぶ本部である専用機機内は、「星条旗をまとった女神」の大統領専用機を彷彿とさせる壮大なセットでした。
クロエ・ベネットは中国人とアメリカ人のハーフ。この日は体調が悪いのに、撮影後居残って、取材に応じてくれた。
取材に応じるブレット・ダルトンとミン・ナ・ウェン。ダルトンは、画面で観るよりカッコ良かった。
すっかり、キャラの仲間入りした「空飛ぶローラ」(右の赤い車)にも会ってきた。
↧
「ママと恋におちるまで」セット訪問、14年冬のTCAプレスツアー
↧
'リケジョの星'の先駆者?NYタイムズ紙の汚点ジェイソン・ブレア物語
遅ればせながら、3月末に'リケジョの星'小保方晴子氏のお騒がせ事件を知りました。早速、STAP細胞の論文疑惑事件の経緯を調べたところ、小保方氏は論文の画像流用やデータの切り貼りについて「やってはいけないとの認識はなかった」と発言しています。丁度、ドキュメンタリー「A Fragile Trust」が考察したNYタイムズ紙の汚点ジェイソン・ブレアを観たばかりで、業界こそ違え、「そっくり!」と仰天してしまいました。
ドキュメンタリー制作者サマンサ・グラントに小保方晴子を巡る大騒ぎをメールで知らせたところ、ブレア同様の事件と判断し、サイトで小保方晴子関連記事にリンクを張って、右コラムの最下段に紹介してくれた。
米国では5月6日にPBSで放送予定の「A Fragile Trust: Plagiarism, Power, and Jayson Blair at The New York Times」は、NYタイムズ紙の国内ニュース記者ブレア(当時27歳)が働いていた環境や背景、'でっちあげの天才'になるまでの経緯と波紋を考察します。
【動画】 「A Fragile Trust」トレーラー
事件後ブレアが応じた初めてのインタビューから「嘘をついて、ついて、つきまくってやった」「発覚を一日、一日後らせるしかなかった」などの口述を、ナレーション代わりに使用して真相分析/判断を視聴者に委ねている点が、サマンサ・グラント監督の才気です。また、ブレアが退職後に書いた自叙伝「Burning Down My Masters’ House」からの引用、2005年から始めたライフコーチ職や報道倫理講演「Lessons Learned」の映像からも、ブレアの人格が読み取れます。
地元ネタを丁寧に取材して執筆する'心ある'マカレナ・ヘルナンデスの記事をほとんど盗用したのが、ブレアの運の尽きでした。ブレアは、現場/現地に行って取材した振りをして、他紙の記事をオンラインで収集し、あちこちからコピペして、自分の名前で発表していました。2002年12月〜2003年5月の半年間に執筆した記事73本中、何と36本が捏造あるいは盗用でした。また、4年足らずの勤務期間中に、50本余りの訂正記事を出していますが、「自己申告」だったと指摘し、責任転嫁に余念が無いブレアの映像も含まれています。不正行為が発覚した後も、取材メモを操作して帳尻を合わせたり、当然のことながら、調査委員会にも嘘をついて窮地を逃れようとしました。
去る1月PBSパネルインタビューに登場した「A Fragile Trust」関係者。左からPBSシリーズ・プロデューサーのロイス・ヴォッセン、プロデューサー/監督のグラント、盗用発覚の発端となった記事を書いたヘルナンデス、ブレアが一目置いた(?)元スポーツ記者のリーナ・ウィリアムス。 Courtesy of Rahoul Ghose/PBS
タイムズ編集幹部に「ソシオパス(=反社会性人格障害)」と言わしめたブレアの言葉をいくつかご紹介しましょう。
「入念に記事を点検してくれたら、僕がよれよれになってるって気付いた筈だけどなぁ....」
「躁鬱病が、嘘八百を並べる訳じゃない」
「元々、タイムズ社は、タイプA人間*の巣窟じゃん?」
*出世願望や競争心が過度に強く、野心満々で負けず嫌いの性格を言う。
極めつけは、迷惑をかけた人に謝罪したか?と尋ねられ、「こういう形で教訓を学ぶ結果になったことは残念だね。周りに傷跡を残したことも...でも毎朝心痛で目が覚める訳じゃない。毎日、悔やんでも仕方ないでしょ。依存症のリハビリで、『きっと良心の咎めに押し潰される』ってカウンセラーに繰り返し言われたから、後悔先に立たずと信じて前進するっきゃない!...(中略)答えになってる?」と答えたブレアです。
高校時代、学校新聞記事の談話の改ざんで、ブレアの嘘の人生が始まった。それほど、でっちあげに長けているなら、小説を書けば良いのに....何故、ジャーナリストという職業を選んだのか?また、ライフコーチとして自称「200人もいるクライアント」に何を指導しているのだろう? Courtesy of Singell Angew
ブレア自身の「躁鬱病+アルコール+コカイン依存症だったから」なる責任逃れの他に、背景として、ドキュメンタリーはタイムズ紙の社風や社会環境にも言及します。
1)911多発テロ事件後の非常時で、誰もが神経ぴりぴりの状態だった
2)米国の一大事を報道することに専念しており、それ以外は些細な事で片付けられていた
3)デジタル化を目指した新編集幹部の管理が杜撰で、記者は野放し状態だった
4)「積極的差別是正措置」によるマイノリティー優遇で、仕事にケチを付けると人種差別と訴えられることを恐れ、幹部や管理職は弱腰になっていた
5)特ダネをつかんだり、独占談話をとってくれば、目に余るルール違反でさえ黙視される環境だった
ブレアから「もう、限界!」と告白されたと語ったウィリアムスだが、「未だに謝罪の一言もない」とパネルインタビューで述べた。ブレアの破廉恥な振舞いの波紋を、直接肌で感じたウィリアムスの発言には重みがある。 Courtesy of Scene from A Fragile Trust: Plagiarism, Power, and Jayson Blair at The New York Times
ブレアはメールで退職、自叙伝を書いて、ジャーナリズムの最高峰に後足で砂をかけましたが、「ブレアが残した傷跡は深く、広い」とリーナ・ウィリアムス(元タイムズ紙スポーツ記者)は、1月のプレスツアーで指摘しました。マイノリティー・グループに属するジャーナリストへの不信は一向に消えず、ウィリアムスが停年退職した2005年に及んでも、「ジャーナリストは皆一様に怪しい」と疑われ、厳しいチェックが重ねられたこと、インターン制度にも見直しが入り、多様性を謳っていた業界が根底から覆ったとも述べました。
捏造、盗用、改ざんは、デジタル時代にはお茶の子さいさいです。図書館まで出かけて何冊も専門書を調べてレポートを書いたアナログ世代と違って、幼い頃から万事オンラインのリサーチから開始するデジタル世代は、それほど悪いことをしたという意識はないのかもしれません。いとも安易に、机上に瞬時に現れる莫大かつ無料の情報を利用しない方がどうかしているという怠慢で勝手な言い分だとは思いますが、デジタル世代にとっては報道や論文発表倫理など古代の遺物なのかもしれません。小保方氏は。ブレア同様、デジタル時代の申し子なのです。
STAP細胞の論文疑惑事件が、今後どのような展開を見せるかは不明ですが、小保方氏の過去が掘り返され、事件に至った背景が明らかになれば、結末もブレアと同様になる可能性は高いのではないでしょうか?
↧
↧
ワン・ダイレクションもレコーディング!YouTube Space LA
去る3月7日、YouTube Space LAのハッピー・アワーに、テレビアカデミー(ATAS)会員が招待されました。海風がまだ肌に冷たく感じられる金曜日の夕方、プラヤ・ヴィスタ地区に新設された工業団地内の箱形社屋に、LA各地から三々五々ATAS会員が集まってきました。
ATAS会員に送られてきたハッピー・アワーへの招待状メール。
入口に向うと何とヘリコプターが目に飛び込んできました。施設内を案内してくれた従業員によると、元々この建物は格納庫だったので、ヘリコプターは建物の前身を象徴したものとか....
ハワード・ヒューズ空港の跡地にある社屋は、飛行機の格納庫を改造したもの。 (c) Meg Mimura
先ず、ロビーで毎週金曜日に開催されるハッピーアワーついて説明があり、30分ほど参加者と歓談後、従業員が10人ほどのグループに分けて、施設内を案内してくれました。二階にある事務所は、ツアーに入っておらず、ここだけは見ることも、撮影に使用することもできないと説明がありました。つまり、二階は立ち入り禁止なのです。
YouTube Space LAの内の見取り図。 Google Map
ロビーは、コンクリートの床でガラス張りのクールな空間。コンサートやプレミア試写会、撮影セットなど、多目的スペースである。 (c) Meg Mimura
流石、映像作りに携わっているATAS会員ですから、各自が携わっている/計画しているプロジェクトに、この無料のスペースをいかに利用しようかと思案している様子で、利用条件について次々と質問が飛び出しました。
翌日、撮影に入るミュージック・ビデオのセットは、オルゴールの仕掛け。建設真っ最中に、ビデオ監督が案内してくれた。 (c) Meg Mimura
YouTube側も、つい最近ワン・ダイレクションがここでレコーディングし、アルバムの発表を同ロビーで行い、ファンが殺到したと、販促に余念がありません。LAXに近いという地の利があるため、結構大物俳優や歌手などがYouTube Space LAでプロジェクトを制作すると言います。
ここでレコーディングしたアーチストの中で、今一番人気のワン・ダイレクションのポスターが廊下に飾られている。 (c) Meg Mimura
東京のスペースと似たり寄ったりの作りになっていますが、試写室や大道具/小道具などを集めた部屋、撮影に使用可能の広い屋外駐車場などが違いでしょうか?映像や音楽制作を大手スタジオから、一般人の手にという試みは制作の民主化に繋がりそうです。
収容数は少ないが、試写会にはもってこいの空間。ここを利用する資格は、ステージ同様、YouTubeのチャンネルに加入していて、視聴登録数が10万以上。 (c) Meg Mimura
大道具や小道具はここで借りることもできるが、まだまだ品数に限りがある。制作に必要なソフトは、最新バージョンを取り揃えている。 (c) Meg Mimura
備え付けの応接セットは、インタビューにもってこい!スーツケースは、翌日ここで撮影する人達が持ち込んだもの。 (c) Meg Mimura
こういうセットに、テレビ番組のクリエイターやキャストを招いて、インタビューやパネルディスカッションをできたら良いな〜と考えながら、我が家に向いました。でも、金曜夜のラッシュに引っかかり、現実に引き戻されてしまいました。
↧
'お客様は神様!'をロンドンで実践したハリー・セルフリッジ物語
この数年、米国ゴールデンアワーの激戦日は、木曜日と日曜日です。今春の日曜日午後9時枠は、地上波だけでもABC「Resurrection」対CBS「グッドワイフ」の対決でしたが、4月13日からPBSの連続時代劇「Mr. Selfridge」シーズン2が加わり、1週間のうち、私のDVRがフル回転する日になりました。
米国では、Masterpiece傘下のシリーズとして、世界的に絶好調の「ダウントンアビー」が終わると、「Mr. Selfridge」が始まるというスケジュールになっており、4月13日からシーズン2が再開されました。
伝記/歴史書「Shopping, Seduction & Mr. Selfridge」を参考に、20世紀初頭のロンドンで買物革命を巻き起した、高級百貨店セルフリッジの創業者ハリー・セルフリッジ(ジェレミー・ピヴェン)の波瀾万丈の生涯を描きます。
「アントラージュ*オレたちのハリウッド」のエージェント役で2年連続エミー賞助演男優賞を獲得。「母と祖母にマーシャル・フィールド店によく連れて行かれたから、今回演じているセルフリッジとは切っても切れない縁」とシカゴ育ちのピヴェンは述べた。 Courtesy of ITV for Masterpiece
1908年、ロンドンに敵情視察に出かけたハリーは、買物客には選ぶ権利を与えない、旧態依然とした殿様商売を体験しました。シカゴのマーシャル・フィールド店で叩き込まれた「お客様は神様!」をモットーに、必需品調達のみでなく、遊園地で1日を過ごすようなわくわく体験を提供する‘デスティネーション’百貨店をロンドンで立ち上げようと奔走します。新世界から乗り込んできた'よそ者'が、鳴り物入りで吹聴する前代未聞の百貨店など、ロンドンっ子には笑い種でしかありません。英国のしきたりや不文律に疎いことを逆手にとって、ハリーは1909年3月15日、遂に開店にこぎ着けます。
客足が減ると、早朝セールや独自ブランドの香水販売など、型破りな商法で集客するアイデアマンでしたが、英仏海峡横断飛行を果たしたルイ・ブレリオや‘瀕死の白鳥’アンナ・パブロワなど「時の人」を招き、一大販促キャンペーンを実施して世間をあっと言わせる興行師でもありました。奇抜で斬新な陳列やウィンドー・ディスプレーでファンタジーを演出して、財布の紐を緩めさせるコツを心得ていたハリーが、近代高級百貨店の生みの親と言われる由縁です。
シカゴから呼び寄せた妻ローズ(フランシス・オコナー)は、家事と子育てに献身する良妻賢母ですが、ロンドン探検中に、新しい‘興味の対象’を発見してしまいます。一方、仕事の鬼ハリーのガス抜きは、女遊びとギャンブル。店のイメージガールに雇った女優エレン・ラブ(ゾーイ・タッパー)に入れ揚げたものの、一旦エレンを囲ってしまうと、次々と新しいスリルに目移りします。
シーズン2の主要キャスト。前列中央がピヴェン。2列目ブルーのドレスがオコナー。
Courtesy of ITV for Masterpiece
シーズン2は、1914年に早送りされました。服装も店内装飾もカラフル、シンプルに近代化されましたが、第一次世界大戦が諸悪の根源となります。ハリーの相次ぐ浮気に愛想をつかし子供4人を引き連れて、シカゴに帰っていたたローズが、開店5周年記念式典でセルフリッジ夫人役を果たすために戻ってきます。15歳の長男ゴードンも、跡継ぎ修業のため、商品搬入係りとして働き始めます。戦争に突入して行くロンドンっ子の反応や、男手が足りなくなった百貨店での女性の活躍ぶりなどが描かれます。身の危険を感じて、帰国する米国人が後を絶ちませんが、ハリーは諜報活動に巻き込まれて行きます。
米国人のレンズを通して観る英国という異文化体験は言うまでもなく、近代高級百貨店の誕生は特に興味深いものがあります。例えば、香水売場がデパートの入口に設けられているのは?女性の既製服が生まれた背景などが描かれていて、目からウロコ体験満載のドラマです。
もう一つの楽しみは、清楚な美貌が目映い女優アッシュリング・ロフタスです。父親不在という境遇にありながら、騙され易い弟を守ろうと、逞しく生きる店員アグネス・タウラーを演じています。シーズン1では、ハリーがアグネスの境遇に同情するばかりか、才能を伸ばすため、装飾の修業にパリの百貨店に送り込みました。今シーズン、見違えるほど大人びたアグネスは、店内装飾チーフとして店に戻ってきますが、学歴がない才色兼備への風当たりは半端ではありません。
シーズン1で、旧式百貨店の手袋売場で働いていたアグネス(ロフタス)はハリーに引き抜かれて、セルフリッジで働くようになった。最初はアクセサリー売場にいたが、店内装飾に興味を持つようになり、ハリーに見込まれてパリで2年修業。100年前の才色兼備の台頭を好演している。 Courtesy of ITV for Masterpiece
10年に1回ほど、目が離せないほど美しい女優が彗星のように現れます。2013年は、春にロフタスに魅せられましたが、夏にはSTARZ Channelのミニシリーズ「The White Queen」でエリザベス・ウッドヴィル役を好演したレベッカ・ファーガソンに魅せられてしまいました。これほど清楚な美女がまだ存在するんですね?因に、ロフタスは英国人、ファーガソンは英国+スウェーデンのハーフです。いやはや、目の保養をさせていただきました!
「風車を修理していたのに、1週間後にはお姫様役を演じていた」とビデオ・オーディションからロケまでの話をしてくれたファーガソン。スターになりたいなど、これっぽっちも思っていない所が、美貌に益々磨きをかけている。 Courtesy of Starz
↧
NBC Universal Summer Press Day
もう1カ月余り前のことですが、例年のNBC Universal Summer Press Dayに参加しました。今年は、下記のパネルインタビューが実施されました。
「Sharknado 2」 (SyFy) — テレビ映画(新)
「Playing House」 (USA) — コメディー(新)
「Restaurant Kickstart」(CNBC) — リアリティー(新)
「Last Comic Standing」(NBC) — リアリティー
「Astroblast!」 (Sprout) — 子供用漫画(新)
「Botched」 (E!) — リアリティー(新)
「American’s Got Talent」 (NBC) — リアリティー
「The Night Shift」 (NBC) — 医療ドラマ(新)
「Defiance」 (SyFy) — SFドラマ
「Giuliana & Bill」 (E!) — リアリティー
「Undateable」 (NBC) — コメディー(新)
「Welcome to Sweden」 (NBC) — コメディー(新)
Universally Funny: Comedy Stars of Universal Television
5月27日放送開始のNBC「The Night Shift」は、サン・アントニオ・メモリアル病院ERの深夜勤医師、看護士、研修生を描きます。特に新鮮な切り口がある訳でもなく、この俳優が出ているから観ないと損する!と思わせるでもなく....夏の穴埋め番組として、最近めっきり少なくなった医療ドラマでも編成しておこう!と言う印象は否めません。
前列中央オーエン・マッケン、(右端)ジル・フリント。後列左からJR・レモン、ジーンアン・グーセン、ブレンダン・フェア。フリントは「グッドワイフ」の怪しい(?)FBI捜査官ラナ・デラニーとして活躍した女優だ。 (c) Meg Mimura
2012年夏のプレスデーで発表した「Saving Hope」(CTV制作)を継続して欲しかった!と遺憾に思います。カナダではシーズン3まで制作が進んでいる同作ですが、例によって例の如く米国では、生と死の世界を彷徨う外科部長と昏睡状態から蘇らせようとあの手この手を編み出す婚約者/外科医の涙と感動の人間ドラマは受けないと言うことです。新たに代わり映えのしない「The Night Shift」を制作するくらいなら、「Saving Hope」を復帰させて欲しい!と思うのは、私だけでしょうか?
12年、「Saving Hope」番宣に駆けつけたエリカ・デュランス。昏睡状態の婚約者チャーリー・ハリス外科部長(マイケル・シャンクス)を救おうと必死になる外科医アレックス・リードを好演。12年夏、11話で放送を打ち切られたが、続きが観たい涙と感動のドラマだ。 (c) Meg Mimura
今回はリアリティー番組が5本も登場しましたが、特記するほどの作品はありません。CNBCの「Restaurant Kickstart」は、最近米国がやっと「食べる」ことに目覚めた証拠で、毎週’美味しい’アイデアを投資家に提示し、2日間に7500ドルで簡易レストランを立ち上げ、試食してもらい、投資の是非を決めてもらう競争形式のリアリティー番組です。投資家の一人ティム・ラブにインタビューをする羽目になりました。「やっとアメリカ人が食文化に興味を示すようになって嬉しい」と番組を褒めたつもりだったのですが、何が気に入らなかったのか、揚げ足を取られるだけで、結局インタビューにはなりませんでした。しかも、ラブがベタ褒めの屋台ハンバーガーをパーティーの席で試してみましたが、「えー、これが美味しいの?!」が一口食べた感想。テキサス州でレストラン4軒を経営するオーナーシェフですが、やはりアメリカ人の‘味覚’はどうも信用できません。
USA局は、「ホワイトカラー」や「スーツ」など面白いキャラを巡るドラマを世に送り出すことで有名ですが、この日女性コメディアン・コンビが創作したコメディー「Playing House」 のパネルインタビューがありました。既にDVDで2話まで観て楽しみにしていましたが、舞台で繰り広げられるレノン・パーラムとジェシカ・セント・クレアの漫才には、お腹がよじれました。私生活でも親友と言うだけあって、二人の息はぴったり!USA局が探していた女性の、女性のための、女性によるコメディーの誕生です。都会に出て出世街道をまっしぐらに走っていたエマ(セント・クレア)が、出産間近の親友マギー(パーラム)のため帰郷。マギーが夫を追い出したため、二人で出産や子育てをする羽目になるという設定です。
パーラム(左)は、「フェリシティの青春」ファン。セント・クレアは、「ギルモア・ガールズ」から、台詞がすらすら出て来るほどのファンだが、共同創作のベースは「SATC」だと明かした。 (c) Meg Mimura
Universally Funny: Comedy Stars of Universal Televisionには、NBCユニバーサル系列が制作するコメディー5本のキャストを招いてのパネルインタビューです。
「The Mindy Project」ミンディー・ケイリング
「Brooklyn Nine-Nine」アンディー・サンバーグ
「About a Boy」デビッド・ウォルトン
「Growing Up Fisher」ジェナ・エルフマン
「Parks and Recreation」アダム・スコット
左から、サンバーグ、エルフマン、スコット。エルフマンは、数年前「Accidentally on Purpose」で、上記「Playing House」のパーラムと共演したことがある。 (c) Meg Mimura
2014年お薦め春の新番組としてご紹介した「Growing Up Fisher」(「久々の癒し系2作品!14年冬のTCAプレスツアー」2014年2月20日)で、母親ジョイス役を演じるジェナ・エルフマンが番組を代表して参加。日本でも「ダーマとグレッグ」でお馴染みのエルフマンは、パネル参加者の中でコメディー歴が最も長く、ドラマと違って「パイロットは絵の最初の一筆みたいなもの。全体像がぼんやり見えて来るのは六筆目(6話)辺りかな?」と、キャストの性格が見えてきて、しっくり来るまでに時間がかかるコメディーの体質を指摘しました。かつて木曜日のコメディー枠で高視聴率を誇っていたNBCも、最近は青息吐息で、特に次世代の「フレンズ」や「となりのサインフェルド」を目指す余り、初っぱなから視聴率がとれないとすぐに打ち切るようになりました。エルフマンの発言は遠回しに「地上波局は辛抱が足りない!」と批判しているかのようでした。「Growing Up Fisher」は継続されるでしょうか?
↧
↧
今年も進行中のエミー賞根回しイベント
今年も、ATASのレナード・H・ゴールデンソン劇場を会場に、地上波およびケーブル局が自慢の作品をひっさげて、根回しイベントが進行中です。
5月中旬までに参加して比較した2013年のイベントとの相違点を挙げてみました。
1)会場がFoxやユニバーサルなど、わざわざ出かけて行かなければならない日が増えて、参加を躊躇することが多々あった。
2)キャストはイベントが終わるとそそくさと退場し、レセプションで歓談する俳優が激減した。
3)番宣予算が激減したらしく、レセプションの食べ物の質/量ともにがた落ちした。(つまらない事と思われるかもしれませんが、食べるために参加する人も多いので、不平不満が聞こえて来ます)
4)招待状が葉書からメールに変身した。今年郵送されて来た招待状は8通のみ。
根回しイベントが、エミー賞受賞に繋がらないことは明白ですから、優秀な俳優に贈られるSAG賞の根回しイベントになってしまったように見受けました。
5月16日までに実施されたイベントの一覧表です。
2月6日 「ウォーキング・デッド」
3月26日 「Diners, Drive-ins, and Dives」
4月10日 「ブレイキング・バッド」
4月11日 「Turn」
4月15日 「ヴォイス」
4月28日 「Ray Donovan」
4月29日 「Masters of Sex」
「Louie」(NY)
5月1日 「Top Chef」
5月2日 「ホームランド」
5月6日 「Fargo」
5月8日 「New Girl/ダサかわ女子と三銃士」
5月12日 「Key & Peele」
5月13日 「Vikings」
5月15日 「アメリカン・アイドル」
5月16日 「Bonnie & Clyde」
今後、予定が入っているのは、
5月19日 「モダン・ファミリー」
5月20日 「Chopped」
5月22日 「Brooklyn Nine-Nine」
です。「マッドメン」は例年6月初旬と決まっていますが、今年で番組終了なので、最後のイベントを実施するのでしょうか?もう充分エミー賞を獲得したので、今年はパスするのでしょうか?キャストがまだ誰独りとしてエミー賞主演/助演男優、女優賞を手にしていないので、最後のイベントでアピールするに違いありません。
Food Networkの番組の中で、私が一番気に入っている「Diners, Drive-ins, and Dives (DDD)」の司会者ガイ・フィエリの裏話は充分に満喫しました。Food Networkの目玉番組は、局一番の人気者フィエリの全米食べ歩きシリーズです。ハンバーガー、バーベキューから、グルメ・ビストロ料理まで、国籍も由来も問わず、吟味した新鮮な材料を手間隙かけて調理し、安くて美味しい料理を提供する”庶民の味方”ダイナーやドライブインを紹介します。
左から進行役のシンシア・リトルジョン(ヴァラエティ紙編集責任者)、フィエリ、Food Network局長ボブ・トゥッシュマン。トゥッシュマン局長は「フィエリのオーディションテープを観た瞬間『スター誕生!』と直感」と語った。 (c) Meg Mimura
ブリーチブロンドのツンツン頭、半パンにゴム草履、だみ声、バイク野郎風の刺青と強面。初めてフィエリを目にした時は、「この人何なの?」と拒否反応を起しました。でも、毎週「DDD」を観るようになって、フィエリの無邪気さ、味へのこだわり、美味しい料理を口にした時の巧みな表現が、番組の心髄だと気がつき、以来、すっかりフィエリの大ファンになりました。
家族ぐるみで番組に出演するフィエリ(左)は、「10歳で焼いたステーキを父親に褒められて、シェフの道に入った」と業界入りの動機を語った。子供の夢を育むことに生き甲斐を感じているようで、参加した女の子にも丁寧にアドバイスをしていた。 (c) Meg Mimura
フィエリは、「DDD」で取り上げる自薦/他薦を問わないオーナーシェフへの深い思い入れを語りました。既に800軒のダイナーやドライブインを紹介していますが、「こだわりシェフにスポットライトを当て、全米に紹介できるなんて夢のような仕事!美味しいことは最低条件だけど、シェフになった動機や目標も選択要因。選り抜きのシェフしか取り上げない!」と登竜門を語りました。もっとも、列ができる店になって、対処できないところもあったらしく、「贅沢な悩みではあるけど...(笑)」とメディアの力を語るフィエリでした。
4月29日には、Showtimeプレミア局の自信作「Masters of Sex」にも参加して、裏話を聞きました。セント・ルイス市ワシントン大学で人間の性行動について共同研究し、報告書を発表した産婦人科医ウィリアム・マスターズと心理学者ヴァージニア・ジョンソンの公私を描く本作は、時代劇であり、人間ドラマでもあります。
土台になっているトーマス・マイエーの著書「Masters of Sex: The Life and Times of William Masters and Virginia Johnson, the Couple Who Taught America How to Love」(2009年)は、440頁もある伝記ですが、「脚本を読んでから、マスターズの人柄を勉強するために挑戦した」と述べたのはマイケル・シーン。一方、ジョンソン役を演じるリジー・キャプランは、「残念ながら、私は字が読めないのよ」と、開口一番のとぼけでした。
左からクリエイターのミシェル・アッシュフォード、キャプラン、シーン、リビー・マスターズ役ケイトリン・フィッツジェラルド。 (c) Meg Mimura
番組のクリエイター/ショーランナー/ライターであるミシェル・アッシュフォードと制作総指揮のサラ・ティンバーマンも同席しましたが、「女性が仕切っているから、ジョンソンとマスターズ夫人(フィッツジェラルド)の関係が現実的に描かれているわ」と奇妙な三角関係を指摘したのはキャプランでした。
左から制作総指揮ティンバーマン、スカリー学長役のボー・ブリッジス、マーガレット・スカリー役アリソン・ジェニー、ランガム医師役テディー・シアーズ、娼婦ベティー役アナリー・アッシュフォード。
(c) Meg Mimura
シーズン1は1956年から始まっており、家具も服装も「マッドメン」風です。内容もここまで遡ると、「へー、たった40年余りでこれだけ世の中が変わったのか?」と思うこともしばしばですが、毎シーズン卑劣度を増す広告マン達と比較すると、人間味たっぷりに描かれていて、共感できるキャラ満載の作品です。癌末期でありながら、パップテストを推奨することに命をかけるリリアン・ドゥポール婦人科医(医療界での女性の地位を象徴するための架空のキャラ)を好演したジュリアン・ニコルズに会えなかったのが心残りです。
シアーズは、丁寧に写真撮影やサインに応じた。右奥キャプランも同じくファンサービスに務めた。
(c) Meg Mimura
↧
エミー賞根回しイベント進行中
前回お知らせした根回しイベントは、下記のように引き続き進行中です。
5月20日 「Chopped」
Food Network局の人気番組「Chopped」パネルインタビュー。審査員はNYでレストランを経営するオーナー・シェフ達。左からアレックス・ガーナシェリ、スコット・コナント、アマンダ・フライタグ、マーク・マーフィー。 (c) Meg Mimura
「Chopped」パネルインタビュー後は、エミー像(中央紫の照明に輝く)を囲んで屋外でレセプションが開催された。今年の根回しイベントの中で、もっとも美味な料理がふるまわれた。ごちそうさま! (c) Meg Mimura
5月27日 「Derek」
5月28日 「The Trip to Bountiful」
Lifetime局のテレビ映画「Trip to Bountiful」パネルインタビュー後の記念写真撮影。左から進行役のショーン・ロビンソン(「Access Hollywood」レポーター)、ブレア・アンダーウッド、ヴァネッサ・ウィリアムス、シシリー・タイソン、マイケル・ウィルソン監督。 (c) Meg Mimura
5月29日 「The Americans」
FX局の「The Americans」パネルインタビュー。左からプロデューサーのジョエル・フィールズ、クリエイターのジョー・ワイズバーグ、ケリー・ラッセル、マシュー・リス。 (c) Meg Mimura
5月30日 「The 56th Grammys and Beatles Shows」
6月1日 「MAD MEN マッドメン」
6月2日 「スリーピー・ホロウ」
6月3日 「The Tanning of America」
6月4日 「Portlandia」
6月5日 「Women Ruling TV」
6月6日 「アメリカン・ホラー・ストーリー」
6月9日 「Fox Girls’Night Out」
6月10日 「Silicon Valley」
6月11日 「Resurrection」
6月12日 「The Red Road」
「MAD MEN マッドメン」は、番組放送日である日曜日の午後7時から、シーズン7の7話(「Waterloo」)の試写で始まりました。パネルインタビューに参加したのは、クリエイターのマシュー・ワイナーを始め、ジョン・ハム、ジャニュアリー・ジョーンズ、ヴィンセント・カーシーザー、エリザベス・モス、ジョン・スラッテリー、ジェシカ・パレ、ロバート・モース、キーナン・シプカの計8人のキャストです。
左からカーシーザー、モス、ハム、クリエイターのワイナー。カーシーザーには、もっとピートの役作りを語って欲しかった。 (c) Meg Mimura
シーズン7前半の最終話で、モース演じるバート・クーパーが姿を消したため、インタビュー前半はその話で持ち切りとなりました。ドン(ハム)とペギー(モス)の不可解な関係、ピート(カーシーザー)の人間性、ベティー(ジョーンズ)の居直りや、月面着陸という時代背景などが話題に上りましたが、進行役が番組の流れを把握しておらず、つまらないことに時間を費やし過ぎて、盛り上がりのないインタビューでした。翌日から最終話撮影に入るという事情もあって、何となく暗い雰囲気でした。いよいよ、来るべきものが来た!という、キャストの沈んだ面持ちが、制作発表の時とは対照的でした。
サインをせがまれるハム。これも今年の現象で、俳優組合の会員らしき人間が、サイン入りの写真を販売するために、最前列を陣取ってタレントに殺到する。何枚かは快く応じていたが、嫌気が差したのか、段々逃げ腰になっていくハム。 (c) Meg Mimura
↧
「スリーピー・ホロウ」ファンの集いに早変わり
去る6月2日、ハリウッド・フォエバー墓地敷地内の劇場で「スリーピー・ホロウ」のエミー賞根回しイベントが開催されました。番組のジャンル上、ふさわしい会場ではありましたが、通常のATAS向けイベント会場ではなかったからか、ATAS会員の参加は10人余りというお粗末さ。Foxは5月28日から参加を募っていましたが、会員の参加申し込み電話が少なかったため、何とフェイスブックで一般客を招待。お陰で、熱狂的なファンが押し掛け、エミー賞など何のその!一大絶叫ファンの集いに変身してしまいました。
到着した時は、ご覧のように明るかったが、午後9時半過ぎ、暗闇の中で車に向うのは、「行きは良い良い、帰りは怖い」体験だった。きゃーっ! (c) Meg Mimura
ファン/オタク優先のコミコン(毎夏、サンディエゴで開催されるコミック・コンベンションのこと)を彷彿させるパネルインタビューになってしまったことは遺憾ですが、昨夏のTCAプレスツアーの制作発表時に比べると、制作陣やキャストの自信度に雲泥の差が読み取れました。3話放送して、シーズン2継続が決まったこともさることながら、心身共に負担度の高い作品を13話完成させた!という達成感が自信に繋がっているのが一目瞭然でした。
呼び物は2メートル近い首無し騎士2名?2体?「ホラーや歴史ファンタジーは嫌い!と断言する視聴者をファンに転向させたことが、何よりの勲章だ!」と制作陣は語る。 (c) Meg Mimura
イカボッド・クレーン役トム・マイソンは、「4人の騎士の話にタイムトラベルとホラーが混じった....ユニークと言うか、何と言うか....(ごくっ)でも、すっごく面白いから....って説明してたんだけど、その必要がなくなったことが何より嬉しい!」と、厳しかった出だしを語りました。昨夏のプレスツアーに登場したマイソンの挙動に納得が行きます。笑顔で魅了してくれたものの、内心はおっかなびっくりだったんですね?
アビー役ニコール・べハーリーは、純白のボディコンドレスで登場しましたが、かなり控え目で無口でした。何かあったのでしょうか?今年1月のFox主催のパーティーで話した時は、「夜の長時間ロケで心身共に疲れ果てた」と打ち明けたべハーリーです。撮影再開に不安を感じているのかもしれません。何しろ、シーズン2は18話ですから、考えただけでも気が重いのに違いありません。
暗くて、風通しの悪い会場Masonic Theatreは、撮影には超不向き。その上、最前列は、ファンが陣取っており、写真撮影が困難だった。 (c) Meg Mimura
ベハーリーは、「スキャンダル」のケリー・ワシントンに続く、アフリカ系ヒロインだ。「複雑でリアルなアビーの役作りがとても楽しい」と語った。 Andrew Evans / PR Photos
「毎年米国のパイロット・シーズンの狂気の沙汰を俳優仲間から聞いていたので、勇気がなくて....ある雨の日、思い立ってオーディション・テープを作った」と明かしたマイソン。「スリーピー・ホロウ」は、マイソンのイカボッド以外想像できないので、ある雨の日に感謝しましょう。
最初はアメリカ人を配役する予定だったが、撮影開始が迫ってきて、急遽英国人に方向転換。オックスフォード大学で歴史を教えていたイカボッドを、「人を見下す学者肌」と定義するものの、マイソンは見知らぬ「異国」で違和感と恐怖を目一杯感じる人間をユーモアたっぷりに表現する。 (c) Meg Mimura
「テープを送ってから、できるだけ忘れようと努力した」と笑うマイソンですが、1週間後には、オーディションを受けにアメリカへ。「プロデューサー達とあ〜でもない、こ〜でもないと、アイデアを出し合うこと7時間、ニコールはそのうち5時間ほど付き合ってくれた」と、異常に長いオーディションだったことを指摘します。「ホテルに戻って1時間ほどしたら、電話があって登板が決まったんだ。運が良かった!ついてたんだね!!」と感謝の念を表現しました。
ロンドンにいる俳優友達(名前は明かしてくれませんでした)と、つぶやき交換するマイソンですが、「ロンドンで久し振りに会ったら、機嫌が悪いのなんの。『「スリーピー・ホロウ」の悪評だけツイートしてやろうと待ち受けていたのに、何もない!』って、すねてたよ」と笑います。
アメリカ生活について、「ティーバッグがまずい!」と一言。ごもっとも! (c) Meg Mimura
極度の崖っぷちで終わったシーズン1ですが、シーズン2から5分ほど未放送シーンが初公開されたものの、内容については一切明かされず、肩すかしを食わされました。インタビュー後は、ファンが殺到し、小柄なべハーリーとマイソンは人波に消えてしまいました。夏のプレスツアーでお目にかかれることを祈りつつ、レセプションには参加せず、帰途に着きました。
ガードマンに囲まれて、そそくさと退場を試みたマイソンですが、ファンを出し抜いてツーショット撮影に成功する人も。 (c) Meg Mimura
↧
14年エミー賞根回しイベントはモモアで終了
2014年度のエミー賞根回しイベントは、6月12日の「The Red Road」で締めくくられました。3月18日のブログ「スティングとジェイソン・モモアの共通点?14年冬のTCAプレスツアー」でご紹介した同作は、Sundance TVの名にふさわしい独立系映画の雰囲気を醸し出すオリジナル作品です。3話まで観ましたが、余りの暗さに4話以降観る気にならず、この日参加したのは、ATAS会員にどれほど受けているのか?をこの目で確かめたいという気持ちからです。
左からマーティン・ヘンダーソン、ジェイソン・モモア、アーロン・グジコウスキー。客席からの質問を聞き取ろうと身を乗り出すモモア。 (c) Meg Mimura
案の定、今年最後の根回しイベントにも関わらず、参加者はまばらで、かろうじてSAG会員が参加して質問が次々と出たおかげで、白けることはありませんでした。パイロットを試写後、パネルインタビューに登場したのはクリエイターのアーロン・グジコウスキーとトム・サイズモア、タマラ・チュニー、マーティン・ヘンダーソン、モモアのキャスト4人です。モモアは「サイズモアと共演できるなんて夢のよう!」と述べ、チュニーは「サイズモアもモモアも昔から知っている気心の知れた仲間!」と言い、ニュージーランド出身のヘンダーソンは、「名優達と仕事ができるなんて!」などと、一大賞賛大会でした。
この番組で、一番熱演しているジュリアン・ニコルズは、トラウマからアルコール依存症になったジーン役。ポスターのみの参加は残念無念。「Masters of Sex」でも好演したので、エミー賞ゲスト出演女優賞の候補に是非挙げてもらいたい。 (c) Meg Mimura
1月TCAツアーでの制作発表時には、モモアは寡黙な「男の中の男」でしたが、「The Red Road」のレナペ・インディアンの末裔でムショ帰りのフィリップ・コーパス役について、それは饒舌に語りました。「夜、すれ違いたくない奴」とはモモアの言葉ですが、サイズモアが演じるフィリップの父親ジャックの方が、真の極道です。モモアは「父ジャックの前では、借りて来た猫に変身するならず者役は面白い」と言いつつも、昔から師と仰いでいたサイズモアと共演できて、「心の中はうひうひものさ!」と尊敬の眼差しを向けます。
左からサイズモア、チュニー、ヘンダーソン。チュニーは画面で見るより、細身の長身。 (c) Meg Mimura
因に、モモアがこの役を受けたのは、「台詞は英語だし、衣装ありだからね!」とか。コナンやカール・ドロゴ役に比べて....と言うことですよね?シーズン2は1と同様6話仕立てで、2015年に放送予定です。
ゴールデンソン劇場の舞台脇に佇むエミー像(奥、金色の像)の前で、ファンと写真撮影するモモア。
(c) Meg Mimura
ヘンダーソンは根気良くサインに応じていた。 (c) Meg Mimura
↧
↧
秋の新シーズンが待ちきれない「Resurrection」
6月11日、ABCの「Resurrection」の根回しイベントが開催されました。パネルインタビュー参加者は制作陣4人とキャスト7人の総勢11人と、今年のイベントの中で最多数でした。最近、「LOST」風の群像劇がめっきり減ったため、11人が「大勢」に見えるのかも知れません。これが普通の時代もあったのです。
番組のタイトルカード。これを見て、謎の起源は水と推測している私だが、シーズン1で答えは出なかった。 (c) Meg Mimura
左からアーロン・ゼルマン、ミシェル・ファジーカス(プロデューサー)、カートウッド・スミス、フランシス・フィッシャー、ランドン・ヒメネス、オマー・エップス、デヴィン・ケリー、サメアー・アームストロング、マーク・ヒルドレス、タラ・バターズ(プロデューサー)、(椅子しか写っていませんが)ダン・アティアス監督。 (c) Meg Mimura
今春の新番組として8話限定で登場した「Resurrection」は、第一話で2千6百万人の視聴者を集めましたが、この日披露された第八話=シーズン1フィナーレ回が全米に流れた頃には、視聴者数は半減していました。私の期待度が高かったことは、2月20日の「久々の癒し系2作品!14年冬のTCAプレスツアー」に書きましたが、シーズン1フィナーレ回に及んでも何も謎が解けなかったことが、欲求不満に陥る最大の要因でした。「LOST」や「アウェイク〜引き裂かれた現実」のように、謎が謎を呼び続けると、最終的には安易な「死に落ち」で収拾を付けるしか手が無くなるのでは?と、ついつい懸念を抱いてしまいます。これだけ頭を使って謎解きをしているのに、又最後にずっこけるのかと、少々不安になってしまうのです。「えー、それでは癒しにならないじゃん!」と言われそうですね?
8歳の少年として蘇ったジェイコブ・ラングストンを演じるランドン君は、今年1月のプレスツアーには登場しなかったので、この日初めてお目もじしました。アトランタで行われたオーディションを受けるために、ステージパパが車を16時間とばしたと言いますから、余程この役をランドン君にやらせたかったに違いありません。熱心なステージパパを他所に、「目が覚めたら、ダンキン・ドーナツだったから、ラッキー!」とそれは嬉しそうに語るランドン君。まだまだ、幼くて....愛くるしい少年です。インタビュー中も、母親役フィッシャーと手をつないだり、こそこそと囁き合って、劇中親子は仕事外でも大の仲良しのようでした。年恰好から言うと、おばあちゃんと孫の関係です。
ラングストン一家は、左からヘンリー(スミス)、ルシール(フィッシャー)と息子ジェイコブ(ランドン君)の3人。母親は何の抵抗もなくジェイコブの帰郷を喜ぶが、息子を亡くした哀しみや心痛に正面から向って来なかったヘンリーは、シーズン1の3分の2は、懐疑心と良心の呵責、罪の意識に苛まれ、ジェイコブを拒否する。 (c) Meg Mimura
二話以降、好演で輝いているのは、ジェイコブの従妹で、ミズーリ州アーケディア市の町医者マギー・ラングストン役のデヴィン・ケリーと、自殺した恋人が蘇って、妻と元恋人の板挟みになるトム・ヘイル牧師を演じるマーク・ヒルドレスの2人。ケリーは「The Chicago Code」でも目立った俳優だったので、本作の町の要(かなめ)的存在は、適役です。一方、ヒルドレスは、カナダ人俳優で、アーケディア市の若きリーダー格の牧師を好演していますが、舞台や音楽活動もしている期待の星です。
左からベラミー移民局捜査官(エップス)、マギー(ケリー)、マギーの友人エレイン(アームストロング)、トム(ヒルドレス)。皆、何らかの形で蘇った人に関わることで、人生が大きく変わる。
(c) Meg Mimura
ランドン君(左)が、シーズン2も今の可愛さや無邪気さを維持してくれると良いが....レセプションで顔を合わせた時には、「大きくならないでね!」と言ってしまった。 (c) Meg Mimura
本作のクリエイター、アーロン・ゼルマン氏とは半年弱ぶりに言葉を交わしました。1月に「原作を読まずに観て欲しい」と言われたので、余計な雑音無しで充分に楽しむことができました。但し、シーズン2は9月に新作と並んで再開されることが決まったと、この日ABC広報に聞いたので、老婆心ながら「心の準備はできていますか?」と尋ねました。局側は22話制作して欲しかったようですが、「連ドラの性格上、15〜6話で何とか説得した」とゼルマン。それでもシーズン1の2倍、しかも全話収録してから放送する訳ではないので、きっと気が重いことでしょう。ファンとしては、「ワンス・アポン・ア・タイム」や「リベンジ」のように間を置かれて乗りが崩れることが何よりも心配です。過去の数々(?)の失敗を鑑みて、乗りを崩さないようにお願いします!
↧
豪邸でクリスマス!?アンディー・マクダウエル、ウィリアム・ホールドウィンに遭遇
7月8日から2014年度夏のTCAプレスツアーが始まりました。会場は例年の如く、ビバリーヒルトンが現在、改築中の上、隣の空き地にも高級ホテル建設中で、掘削機の騒音でインタビューを中断せざるを得ないこともあります。都会のど真ん中ですから、仕方がないとは言うものの、喧騒は好ましくありません。
初日は視聴率割り出しの革命を迫られているニールセン社が最新の視聴者データと分析を発表しました。
Ovation局は、オリジナル・ドラマ「A Young Doctor's Notebook and Other Stories」シーズン2のパネルインタビューに、NYで舞台に立っているダニエル・ラドクリフが、衛星放送ながら参加しました。1910年代のロシアの、ある医師の公私の葛藤を描きます。ラドクリフは、ジョン・ハムの青年時代を演じていて、2人で共演する場面が多々あるそうです。
ハム(右)は、モルヒネ依存症の医師役で、ラドクリフ(左)が演じる16年前の自分が、依存症にならないように、忠告を繰り返す一風変わったブラックユーモア劇。配役ミス?かと思いきや、2人とも番組の原作者ミハイル・ブルガーコフが大好きという共通点があって、プロデューサーでもあるハムがラドクリフを起用した。 Emiley Schweich, Solarpix / PR Photos
午後にぎっしり詰め込まれていたのは、ナショジオ局の新ドキュメンタリー8本。一番面白そうなのは「Sleepless in America」で、睡眠不足が引き起こすありとあらゆる問題を分析します。最低、8時間は睡眠をとらないと、支障を来すと発表がありましたが、ツアー初日はパーティーに参加したため、我が家に辿り着いたのは午後11時でした。2日目は開始が更に早かったため、5時間しか睡眠がとれず、少なくともツアー開催中は寝不足を覚悟しなければと、再認識しました。11月の放送をしっかりと研究して、睡眠8時間を取り戻そうと思います。
ここ4~5年、最もエレガントな晩餐会を開催することで、すっかり名を馳せたCrown Media Family Networksは、傘下のHallmark ChannelとHallmark Movie Channelの恒例のクリスマス番組/映画のプロモーションとして、「Northpole Christmas Celebration」と題して、イベントを開催しました。
豪邸の裏庭に、クリスマスツリーとテーブルが設置されていた。番組毎に、キャスト数人とプロデューサーが各テーブルの上座に据え、運が良ければ(?)面白い裏話が聞ける。 (c) Meg Mimura
ビバリー・ヒルズの北側に位置するベル・エア超高級住宅街にある豪邸で行われる、真夏のクリスマスパーティーです。5メートル以上もある玄関の分厚い戸を開けると、クリスマス・キャロルを披露するグループが....天井にはめ込まれたステンド・グラスが印象的な、これまで目にしたこともない豪邸です。
アンディー・ウォーホルの自画像や、著名なアーチストの美術工芸品が、家中に陳列されています。玄関右手の一角は、まるで美術館のように立ち入り禁止のロープが張られていて、照明が全て落とされていました。我々テレビ評論家などに見せる価値はないと判断してのことでしょうか?
この日、ケータリングに入っていたシェフやウエイター達には立ち入り禁止だった、豪邸のキッチンも参観しました。こちらもロープが張られていて、近寄れませんでしたが、器具は一流、デザインもなかなかですが....全く使っている気配がありません。これも、見せるだけのキッチンなのでしょうか?豪邸には、よく日常使うキッチンとディスプレー用があります。
ダイニング・ルームには、20人が会食できるほどの巨大なテーブルがありましたが、一歩足を踏み入れた途端、床がガラス張りになっており、目を凝らすと階下には室内プールがあることに気づき、階下のプールに目を凝らしてしまいました。テレビでは、何度かこのようなデザインを観たことがありますが、実際に体験するのは初めて!余りの美しさに、見入っていると、背後から「びっくりした?」と声がします。振り向くと、ウィリアム・ボールドウィンが、カクテル片手に「こんなダイニング・ルームは、初めて見たよ」と言います。「テレビでは観たことあるんだけど」と言うと、「いやはや、金持ちは考えることが違うなー」と変に感心しているボールドウィン。「お宅だって、こんな感じじゃないんですか?」と真摯に聞いたのですが、「そんな訳ないっしょ!」とにたりと笑っています。
ボールドウィンに会ったのは2回目。前回と同じく、「セレブじゃないよ!」と指摘されたが、「????」感しか残らないし、それ以上突っ込めないように牽制しているのか? Insidefoto / PR Photos
そう言えば、「ダーティー・セクシー・マネー」に出演していたボールドウィンにビデオインタビューした時も、この役を選んだ理由を尋ねたところ、「出演依頼がわんさと舞い込んでくると思ってるわけ?他の俳優と一緒にオーディションを受けたよ」と訂正された記憶があります。謙虚なのか?遠回しに「セレブです!」と主張しているのか?今回も「????」と首を傾げたままの私でした。
夕食を頂きながら、クリスマス放送を目指して、今月から撮影に入った番組と出演者の紹介がありました。3分の1以上が、Hallmark Channelの常連で、毎回顔を合わせるので、もう聞くことがなくなってしまった俳優ばかりです。往年の俳優に、昔の番組のことを聞くと、余り期待していた反応がないことが判明し、最近は現在の仕事のことしか口にしないことにしました。今年4月に始まった、私の大好きな番組「Signed, Sealed, Delivered」のエリック・メビウスに会えなかったのは残念です。カナダでクリスマス特別逸話を撮影中で、抜けられなかったそうです。
メビウスの新作は、何らかの理由で配達できなかった郵便物の発送人あるいは宛名を探し当てる、郵便探偵局員4人の心温まるドラマ。「アグリー・ベティー」のダニエル役とは異なり、オタク色の濃い、四角四面の役人だが、根は優しいオリバー役だ。 Janet Mayer / PR Photos
「Cedar Cove」というドラマに出演しているアンディー・マクダウエルも姿を現しました。「Jane by Design」というティーン向けの番組で怖〜いデザイナーを演じている時に、ビデオインタビューしたことがありますが、50半ばにして、相変わらずスタイル抜群!この日は、紫色に黒のレースをあしらったボディコン姿が素敵でした。
いつまでも、モデル時代の容姿が褪せないマクダウエル。食べっぷりはどうだったのか?テーブルで同席した人に、聞いてみよう。 Janice Ogata / PRPhotos.com
デザートは、1ダースのシャンデリアが天井を飾る宴会場に用意されていた。照明のおかげで、かまくらの中にいるような雰囲気だった。 (c) Meg Mimura
↧
原爆作りに携わった人達のドラマ
7月9日のハイライトは、WGN局のオリジナル作品第二弾「Manhattan」です。数ヶ月前から、このドラマについて情報は入っていましたが、局からパイロットも資料も送って来なかったので、いきなりパネルインタビューに参加する羽目になりました。内容が内容だけに、前以て視聴したかったのですが....
WGNから送られてきたパネルインタビューのお知らせ。プレスツアー開催中、この不気味な番宣広告をハリウッドの街中そこここで見かけた。
今春、テレビアカデミーの映画鑑賞クラブで、宮崎駿の「風立ちぬ」を観ました。一途に生きた堀越二郎の半生が美しくも哀しくも描かれていて、私は涙、涙で席を立ちました。多分、今年観た映画の中で、最も印象に残る作品になるだろうと思っていた矢先、「零戦の設計をしたエンジニアの物語を、テレビアカデミーが映写するなど以ての外!」と怒っている会員がいると知人から聞きました。
「Manhattan」について上記のお知らせが舞い込んだ時には、日本が零戦製作の映画を放つなら、アメリカは原爆製造のドラマで対抗するぞ!と挑戦状を突きつけられたような不安を覚えました。日本人の被害妄想でしょうか?単なる偶然だとは思いますが、映画「パールハーバー」公開時の記憶が蘇ってきて、何とも嫌な気持ちになりました。
左からオリビア・ウィリアムズ(ライザ・ウィンター役)、ジョン・ベンジャミン・ヒッキー(フランク・ウィンター役)、ダニエル・スターン(グレン・バビット役)、アシュリー・ザッカーマン(チャーリー・アイザックス役)、レイチェル・ブロスナン(アビー・アイザックス役)。 (c) WGN America
世界唯一の被爆国である日本で生まれ育った人間として、言いたいこと、尋ねたいことは山ほどありましたが、私的な質問は禁じられているため、パネルインタビュー中はどのような質問が出るか達観していました。日本の「に」の字も飛び出さず、マンハッタン計画=被爆の連想が、この国にはないのだと悟りました。
クリエイターのサム・ショウは、原爆投下が冷戦を引き起こし、21世紀に至ったことを指摘、世界を大きく塗り替えた原爆製造を、ロスアラモスで働いていた人達やツンボ桟敷に置かれていた家族の観点から描くと述べました。また、ロバート・オッペンハイマー以外は、架空のキャラでシリーズを創作したこと、シーズン1は13話仕立てになっていることを明らかにしました。2時間で完了しなければならない映画と違って、キャラの公私を時間をかけて描く予定だそうですが、シーズン1が歴史上のどの辺りまで進むのかは不明です。シーズン2の継続が決まったら(?)、目処がつくのかもしれません。
ヒトラーの原爆に追い付け追い越せ!と急かされつつも、戦没者をこれ以上出すまいと愛国心に燃える原子物理学者ウィンターを演じるのは、最近テレビでの活躍が目覚ましいジョン・ベンジャミン・ヒッキーです。舞台俳優にふさわしい選択かと...メキシコの砂漠で、6割がた野外撮影した体験について、「照明やスペースに縛られることなく、自由自在に動ける解放感を十二分に満喫した」と語りました。
ヒッキー(左)とスターン。ヒッキーは「The Big C」のヒッピー役や「グッドワイフ」のチャムハム社CEO役のような奇人変人の方がぴったり? (c) WGN America
パネル後、ショウに何故、今マンハッタン計画なのか?を尋ねましたが、グアンタナモ湾収容キャンプのことを書きたかったが、「現在進行形」はドラマにし難いので、近代社会の諸悪の根源であるマンハッタン計画に切り替えたと説明。ロスアラモスで生活する物理学者達の公私を描くドラマですが、原爆投下後の倫理上の葛藤は当然本作の目玉だとショウは確約します。とは言え、原爆の傷跡を未だに感じる日本人には、お薦めしにくい作品です。最も、第二次世界大戦ではアメリカが敵国だったと知らない若者は、客観的に視聴できるかも知れませんね?
7月27日のプレミアを視聴しましたが、ロスアラモスに移り住むことになった若夫婦チャーリーとアビー・アイザックスが水先案内人です。外からも内からも守らなければならない秘密の砦ロスアラモスは、日系人収容所と見紛うばかり....皮肉なものです。
↧
おとぼけニコール・リッチーと開き直りリアン・ライムスの新番組
7月10日は午後2時から6時近くまで、HBOがドラマ「The Knick」、コメディー「Getting On」シーズン2と「The Comeback」6話限定シリーズ、ミニ・シリーズ「Olive Kitteridge」、ドキュメンタリー「Foo Fighters: Sonic Highways」を発表しました。「The Knick」には、クライブ・オーウェンが、「The Comeback」にはリサ・クドローが駆けつけましたが、今夏はわくわくもどきどきもない、パネルインタビューに終りました。
翌7月11日、ケーブル最終日のハイライトは、VH1局のリアリティー新作2本でしょう。「Candidly Nicole」はリアリティー番組の先駆け「シンプル・ライフ」のニコール・リッチーが自作自演するコメディーです。ソーシャル・メディアでニコールをフォローしている人の数は、何と400万人!オンライン・シリーズで他人の世界を紹介していたニコールが、この番組では自分自身の日常を綴ります。
最近流行の紫色の髪で登場するニコール。拒食症は治らないのか、番組のプロモでメキシコ人に「鶏がら」と呼ばれている。 Piotr Sikora for VH1
パイロットを視聴したところ、既婚で子持ちのニコールが出逢い系サイトに独身の友人エリンに成り代わって登録し、揚句の果てにはニコールがデートに出かけるという”呆れ果てた”話です。エリンのプロフィールを登録する時の会話が、何ともニコールの常識を示唆していて、ずっと勘違いして生きてきたセレブを代表しているように思います。縦列駐車が死ぬ程嫌いなニコールに、父親ライオネル・リッチーと妹ソフィアが教える場面や、エリンの恋人候補をまるで自分の彼氏のように見せびらかして、友達の顰蹙を買ったり....笑えます。
左から妹ソフィア、ライオネル・リッチー、ニコール。「リハーサル無しで、興味の対象を飽くまで追いかける、リアル・ライフ・コメディーと呼んでるの」と説明するニコールだが、父親ライオネルのことは「目立ちたがりで、恥ずかしい!」と繰り返す。 Piotr Sikora for VH1
ニコールに引き続いて登場したのは、不倫と略奪結婚で世間から総スカンを食らったにも関わらず、時々思い出したようにメディアに登場しては、エディ・シプリアンとの不倫や結婚生活を弁護する、開き直りの女王リアン・ライムスです。オプラに出た時も、その後1年に1回くらいはテレビに登場して、お涙頂戴不倫劇を蒸し返し、それでいて「もう、結婚したんだから、そっとしておいて!」と締めくくります。叩かれるのが嫌なら、テキサスに帰って、ひっそりと暮らせば良いものを....
左からリアンとエディ。「散々メディアに叩かれて、じっと我慢の子だったから、この辺で言いたいこと言わせてもらう」と二人で制作したリアリティー番組。但し、前妻との間を行き来するエディの息子二人は、番組には登場させないと断言する。 Piotr Sikora for VH1
スキャンダルが悪化したのは、前妻ブランディがリアリティー番組や著書で、夫を寝取られた経緯を公表し、同情票が集まったからです。本作では、これまで叩かれっぱなしで捌け口がなかった二人が、ここぞ!とばかりに、本音を吐いて、吐いて、吐きまくります。
カントリー少女歌手も紆余曲折を経て31歳。すっかり尻に敷かれたエディは、リアンのどこに惹かれたのか?蒔いた種は、密かに自分で刈り取るべきでは? Vijat Mohindra/Artmix
「サード・ウォッチ」のエディは、現実と同じく女癖の悪い消防士を演じていましたが、演技だと思っていたファンも多い筈。その後、「インベイジョン」や「The Playboy Club」で善人役を演じていましたが、この日舞台に登場したエディは守りの姿勢を長く続けてきたからか、人相が変わっていました。
あのカップルは、もう沢山!と辟易している視聴者は、30分も付き合ってくれないと思います。同じように不倫、略奪結婚をした少数の(?)視聴者が、二人に同情するか、言い訳を勉強するために観るのでしょうか?それでも、何も得るものがないリアリティー番組は次々と登場します。情けない限りです。
↧
↧
14年夏のセット訪問「Brooklyn Nine-Nine」「Masters of Sex」
14年夏プレスツアー間に実施されたセット訪問は、ゴールデングローブ賞に輝いたコメディー「Brooklyn Nine-Nine」と今年のエミー賞主演/ゲスト出演の2部門にキャスト3人が候補として挙がったドラマ「Masters of Sex」の2件でした。
7月16日午前11時から行われた「Brooklyn Nine-Nine」には、プロデューサー3人とキャスト9人の大所帯によるパネルインタビューが行われました。その後、セット内にキャストやクリエイター達が散らばって、個別インタビューを行いました。
TCA歓迎のサインも用意され、公式訪問の雰囲気だったが、パネルインタビューが始まると、クリエイターのマイク・シュアーとダン・グアーが大いに笑わせてくれた。 (c) Meg Mimura
私はアンドレ・ブラウアーが署長室に入るのを目撃したので、後を付いて行き一番乗り。ブラウアーの真ん前の椅子に着席して、インタビューを実施しました。
ABCの「Last Ship」でインタビューした時より、ずっとリラックスした感じ。「まだ悪役をしたことがないので、今後の目標としている」と語る。 (c) Meg Mimura
セット内では、御多分に漏れず、細かい所にどれだけ気を遣っているかを探検するのが醍醐味です。セットをデザインするのにお金がかかる訳だ!といつも納得してしまうのは、絶対にそんなものシーンに映らないよと断言できる細部への異常なこだわりです。微に入り細を穿つとは、まさにハリウッドのセットのことです。
「微に入り細を穿つ」の一例。雰囲気作りだと言われれば反論はできないが、関係者だけが面白がっているとしか思えない。 (c) Meg Mimura
午後5時、ラッシュアワーのハリウッドを突っ切って、ソニー撮影所に向いました。「Masters of Sex」は、5月20日のブログ「今年も進行中のエミー賞根回しイベント」でご紹介した、セント・ルイス市ワシントン大学で人間の性行動について共同研究した産婦人科医ウィリアム・マスターズと心理学者ヴァージニア・ジョンソンの公私を描く時代劇/人間ドラマです。この日は、マスターズが妻リビーと暮らす、1950年代築の邸宅に招待されました。
この日のために、小道具担当者が、リビーの優しい心遣いをタイマーとメモで表現。夕食はツナキャセロールのようです。 (c) Meg Mimura
1950年代に建てられた家屋に足を踏み入れたことがあるだけに、本物以上!と感激する評論家が続出しました。裏庭に出て、50年代を代表するオードブル各種とカクテルを楽しんでいると、三々五々撮影を終えた俳優が姿を現します。
玄関に陳列されていた50年代の衣装の数々。奥は子供部屋。 Photo: Eric Charbonneau/Invision for SHOWTIME
エミー賞ドラマ部門の最優秀女優賞候補にあがったリジー・キャプランは、受賞できると思うか?という質問攻めにあっていました。今年の穴馬はキャプランではないかと、予想しています。女性プロデューサー2人とセットデザイナー、衣装担当者なども、レセプションに姿を現しましたが、顔見知りのプロデューサー以外は、誰が誰なのか不明で困りました。
マスターズ博士役マイケル・シーンを取り囲み、インタビューが行われる。 Photo: Eric Charbonneau/Invision for SHOWTIME
左からリビー役ケイトリン・フィッツジェラルド、ジョンソン役キャプラン、シーン。この3キャラの奇妙な三角関係がドラマの核となっている。 Photo: Eric Charbonneau/Invision for SHOWTIME
左から英国人ローズ・マッカイヴァー(学長の愛娘ヴィヴィアン・スカリー役)、エミー賞根回しイベントで最後まで気長にサインに応じていたテディー・シアーズ(オースティン・ランガム博士役)、舞台女優アナリー・アッシュフォード(ベティー・デマイロ役)。Photo: Eric Charbonneau/Invision for SHOWTIME
シーズン2開始が待ち遠しい「Masters of Sex」のセット訪問でした。病院や大学の研究室など、他の施設が見られなくて残念でした。
↧
キャサリン・ハイグル「私は気難しくなんてないわ!」の真相
7月13日、NBCが新作(ドラマ3本、コメディー3本)を発表しました。昨秋の新作「ブラックリスト」がヒットしたので、今年も同様のスリラー/ミステリー路線を続行します。9月17日に「The Mysteries of Laura」が、11月17日に「State of Affairs」がデビューします。
中でも、「State of Affairs」はキャサリン・ハイグルのテレビシリーズ復帰という点だけで、1年前から話題になっていました。題名を聞いた時点では、ABCのヒット作「スキャンダル」に追い付け、追い越せ!的なメロドラマを想像していましたが、パイロットを観ると「HOMELAND」70%+「リベンジ」30%の深刻なドラマです。
【動画】 キャサリン・ハイグル主演「State of Affairs」トレーラー
ハイグルが演じるチャールストン(チャーリー)・タッカーは、CIAアナリスト。毎朝、コンスタンス・ペイトン大統領(アルフリー・ウッダード)に、国家安全保障を脅かす可能性を秘めた内外の重大事件トップ10を提示し、政局への影響と対策を助言する「ブリーファー」です。チャーリーは、テロ襲撃で婚約者アーロンを亡くし、PTSD症状を仕事で覆い隠してはいますが、埋葬後、アーロンの母親ペイトン大統領に報復を誓います。
仕事は人並み以上でも、私生活は荒れ放題の「デキる女」チャーリーは、原因こそ違え「HOMELAND」のキャリー地上波局版と言えます。PTSD治療中ですが、襲撃の詳細が記憶になく、心痛に直面できないため、異常な行動に走ったり、何かに依存しなければ生きられない不安定な状況です。
この日、キャストとしてウッダードと二人で登場したハイグルですが、取り巻きは5人のエグセクティブ・プロデューサー(EP)です。ブッシュ、クリントン両政権で「ブリーファー」を務めたロドニー・ファロンがボブ・サイモンズに持ち込んだ企画で、ファロンの配役第一希望がハイグルだったと発表がありました。
チャーリー役ハイグル(左)と大統領役のウッダード。二人の嫁姑関係が本作の原動力だ。 WENN.com
経緯やドラマの内容などについて、インタビューはスムーズに進んでいたのですが、EPナンシー・ハイグルに矛先が向けらた瞬間に、会場のムードが一転しました。実は、朝一で実施されたNBCエンターテイメントお偉方のパネルインタビューで、’ステージママ’ナンシーについて、ジェニファー・ソルキー社長が「しっかりとした意見をお持ちですが、’付合せ’的存在でしかありません。ケイティー(キャサリンのあだ名)は、人生の先輩として完璧に頼っているようですし、’二個一’と考えれば問題はありません」と評しました。これまでに制作に支障は来していないと言いつつも、「ナンシーさんは、ケイティーにとっては『mom-ager(Mom+manager)』『親友』『腹心』『子育てパートナー』ですから、’二個一’で企画会議に来られたのも不思議ではありません」と、真綿で首を絞めるような発言をしたため、好ましからざる印象が前以て植え付けられていました。
ソルキー社長の意味深(?)なナンシー評を基に、見知らぬジャーナリストの質問の主旨は、「娘さんの映画制作に関わっているのは知ってますが、母親が地上波局番組のEPとしてパネルインタビューに登場するとは前代未聞!何をするんですか?」というもの。キャサリンが下手に「クッキーを焼いてくれるのよ」と、その場を濁そうとしたのが大間違い!「クッキーなんて言ってる場合じゃないでしょ。『グレイズ』で’ごねて’以来の問題児を守るためですか?今回も’ごねる’と予測して、楯の役目ですか?説明して頂きたい」と飽くまでも食いついて離れません。
会場はシーンと白け、キャサリンは完全に守りの姿勢に入りました。それでも、ナンシーさんは全く動揺せず、「State of Affairs」がハイグル親娘の制作会社に持ち込まれた経緯とシリーズ化過程を説明、「EP一年生ですが、毎日学ぶことが一杯!」とはぐらかしました。EPジョー・カーナハンは、「ナンシーは配役に貢献大」と付け加え、ショーランナーのエド・バーネロは、親娘プロデューサーの日々の仕事振りを賞賛し、サイモンズは「魔女ジニー」の映画化がうまく進まなかったので、良い脚本があがってくるまで、‘ケーブル質’の本作を薦めたと述べて、次々と援護射撃しました。
キャサリン(左)はプロデューサー兼主演、母親ナンシー・ハイグルはEPのタイトル付きで登場した(上の写真は2012年撮影)。主演女優がプロデューサーのタイトルをもらうことは、「グッドワイフ」以降、当たり前のようになりつつある。 WENN.com
それでも、執拗にキャサリンに矛先が戻り、過去の報道では「ハイグル親娘はごねるから大変!」「起用は薦めない」などのバッシングが続出する一方で、ハリウッドでは「‘物申す女’は干される」のが常と弁護する評論家もいたが、「やっと復帰できると決断してのシリーズ主演なのか?‘物申す女’だから干されたのか?」を本人から聞き出そうとします。躊躇するキャサリンを庇おうと、バーネロが3回に渡り、口を挟もうとしましたが、全て却下され「失礼じゃないか!」と啖呵を切り、気まず〜〜い雰囲気になりました。
ここでやっとキャサリンが重い口を開き、要は「ロマコメは卒業して、何か新しいことに挑戦したいと思い、本作を選んだ」と説明し、過去については、日本でも報道されている「私は気難しくなんてない!」の否定声明(?)で締めくくりました。母親が攻撃され、闘志に燃えた後のキャサリンの発言だったことを目撃した評論家達も、「さっさと謝ってしまえ!」派と、「‘物申す女’バッシングの実証!」派に分かれ、パネル後も討論が続きました。
6〜7年前の「グレイズ」制作陣との遣り取り以来、槍玉に挙げられるキャサリン。一方、出演契約更新後、「デレク役は適当にやって、ル・マン24時間レースで鬱憤晴らしするしかない!」と公言するパトリック・デンプシーは制裁を加えられた試しがない。矛盾ではないか? WENN.com
「ロズウェル」以来、キャサリンに何度も個別インタビューをした友人の評論家B氏でさえ、折角のチャンスだったのに、謝らなかったと憤慨しています。キャサリンと直に話してから結論を出すよう説得を試みましたが、驚いたことに、今夜キャサリンはとんずらを決め込むと決めてかかっていて、取りつく島もありません。温和を絵に描いたようなB氏が、こんなに怒っているのを見たことがありません。
私は個人的にインタビューした経験がなく、「グレイズ」を追い出された(?)後のロマコメ映画を何本も観て、ハイグル親娘が制作する映画には、必ず何か得るものがあると感心していました。軽〜いロマコメではなく、いつも人生の教訓が隠されているからです。勿論、制作現場にいた訳ではないので、キャサリンの立ち居振る舞いを目撃/体験したことはありませんが、仕事振りや作品を見る限り、妥協しない女優ではないかと傍観してきました。妥協しない→物申す=’ごねる’と解釈されるのではないでしょうか?しかも、物申すのが女だから、余計に叩かれるのです。
B氏の予想に反して、少々遅れてではありますが、NBC主催のパーティーにハイグル親娘が姿を現しました。気軽に応じたインタビューで、ユタ州に越して‘良妻賢母’に専念していたが、「クリエイティブな仕事に戻りたくなった」と、キャサリンは本音を語りました。それでも、共演女優ウッダードから「仕事と家庭を両立させる秘訣」を伝授してもらうまでは、登板するべきか否か随分悩んだと言います。えーっ!?「マッドメン」じゃあるまいし、この期に及んで女が仕事と家庭の両立を思案している?キャサリンの過去や復帰云々より、その方が社会問題だよ!!!と思ったのは私だけでしょうか?
インタビュー後、「昔の可愛いキャサリンのままだった!」とB氏は大喜び。7月16日に、記事「Katherine Heigl still interesting」を執筆しています。少なくとも、B氏の偏見を覆すことができて、良かった!と、胸を撫で下ろしている私です。報道とは言え、執筆者の世界観フィルターを通していますから、真に客観的な見解などあり得ません。「‘物申す女’バッシングの実証!」派の一員として、このドラマでキャサリンが見事復帰してくれることを祈っています。但し、自局で放送する番組のEPを「ステージママに毛が生えたようなもの!」呼ばわりする社長の統制下では、お先真っ暗かもしれません。番組の幸先の悪さに輪をかけるように、8月15日、ショーランナーのバーネロが降板しました。「ハイグルとは何の関係もない」と言い残して....
数年、’良妻賢母’をやっていれば、クリエイティブな仕事に挑戦したくなるのは当然のこと。妥協しない女優ハイグルは、前途多難である。優秀な広報を雇った方が良いのではないか? WENN.com
↧
「デキる女」早くも再来か?今秋登場する4キャラをご紹介
スパイ、吸血鬼や魔女の氾濫で、現実的な「デキる女」が画面から姿を消した昨今の風潮を、昨年9月2日の「デキる女はどこへ行ってしまったの?」に綴りましたが、早くも次の周期の到来でしょうか?今秋、2014年版「デキる女」4キャラがデビューします。
CBS「Madam Secretary」は、大統領のたっての願いで、国務長官の座についたエリザベス・マッコード(ティア・レオーニ)の公私を描くドラマです。政治家には真似のできない型破りな発想と、CIAアナリスト時代のコネ、直談判できる大統領との間柄をフルに活用して、世界を変えて見せるぞ!とワシントンに乗り込んだエリザベスですが、初っぱなから反感を買って四面楚歌になります。
「Madam Secretary」エリザベス・マッコード役レオーニ。12歳の息子に学校の送り迎えができなくなると説明したら、「最近、うざいと思ってたから、良いよ!」と言われて、女優業復帰を決めたと笑う。 WENN.com
「クローザー」のシーズン1を彷彿させますが、南部出身の淑女ブレンダ・ジョンソンはスカートひらり、「たかが女」を逆手に取って出世、夫フリッツ(ジョン・テニー)は二の次の「デキる女」でした。エリザベスは、パンツスーツを常用する男勝りの国務長官ですが、夫ヘンリー(ティム・デイリー)と十代の娘と息子を大切にする、公私のバランスのとれた「デキる女」を目指すそうです。
パイロットを観た限り、内容や設定は、ヒラリー・クリントンが初の女性大統領になるための根回しドラマ?と勘ぐられた「マダム・プレジデント〜星条旗をまとった女神」(05〜06年)に酷似しています。大統領から国務長官に格下げとなったものの、本作こそ、ヒラリーが次期大統領になるための布石でしょうか?
【動画】海外ドラマ「Madam Secretary」トレーラー
7月17日の制作発表会の席で、クリエイターのローリー・マクリアリーが、「ヒラリー・クリントンがベンガジ事件の公聴会で証言しているのを見て、これだ!と閃いた」と述べたように、第67代国務長官を務めたヒラリーがモデル。「男尊女卑がまかり通っている国に、女高官が乗り込んで行くって、どんな感じなんだろう?と想像し、CBSに持ち込んだところ、ベテラン放送作家バーバラ・ホールを紹介され、パイロットに至った」と経緯を説明しました。
ホールは同局で「Joan of Arcadia」(03〜04年)を創作した放送作家で、久々のテレビ復帰です。家族ドラマが得意なホールは、「結婚や家族を顧みない、離婚間際のデキる女はもう旧い」と指摘し、完璧ではないものの、家庭円満を目指すマッコード夫妻を描く抱負を述べました。ヒラリーの生き様は、女癖の悪い夫ビルなくしては考えられませんし、離婚率5割以上の米国で、結婚も家庭も仕事も満遍なく、そつなく「デキる女」を敢えて描くとは....例え、架空の世界でも、嘘っぽくならないでしょうか?
ホールが最早「旧い」とレッテルを貼った、公私のバランスがとれない現実的な「デキる女」一人目は、大統領のブリーファーです。前回、「私は気難しくなんてないわ!」発言の舞台裏を明かしましたが、キャサリン・ハイグルがテレビ復帰を賭ける「State of Affairs」(NBC)の主人公チャーリーです。婚約者を亡くした後のPTSDで私生活は荒れ放題ですが、CIAアナリスト/大統領のブリーファー職に没頭しています。毎朝、チャーリーが助言する女大統領との嫁姑関係が、このスリラー/ミステリーの原動力です。
「State of Affairs」の主人公チャーリーを演じるハイグル。才色兼備で、外見は完璧だが、婚約者アーロンの仇討ちを胸に秘めている点が、「リベンジ」のエミリーと同じだ。 WENN.com
【動画】海外ドラマ「State of Affairs」トレーラー
NBCから9月にデビューする「The Mysteries of Laura」のNYPD殺人課刑事ローラ・ダイアモンド(デブラ・メッシング)が、二人目の「デキる女」キャラ。バツイチ、シングルマザー振りを、ユーモアたっぷりに描く犯罪捜査ドラメディーです。やっと離婚にこぎ着けたと思ったら、元亭主ジェイク・ブロデリック(ジョシュ・ルーカス)が上司として転任してきたこともあって、久々の独身生活は筒抜け。おまけに、やんちゃ盛りの双子の子育て方針を巡って、どこまでも平行線のローラとジェイクなど、公私混同の複雑な設定です。しかし、中味は古典的犯罪捜査モノになっていて、充分に楽しめます。メッシングだから観たい!と思わせますが、バツイチ/シングルマザーの刑事なんて、それこそ旧くないですか?
「The Mysteries of Laura」ローラ・ダイアモンド刑事役メッシング。「家庭も職場も完璧に!がモットーなんだけど....」とローラの建前を指摘するが、仕事は子育てから逃避するための言い訳?的シーンが多々あって、大いに笑える。 WENN.com
【動画】海外ドラマ「The Mysteries of Laura」トレーラー
「ウィル&グレイス」で昔取った杵柄を十二分に発揮するメッシングですが、殺人課刑事という職業柄、「退かない、詫びない、媚びない」が三拍子揃った、等身大の女として描かれています。職場の男勝り振りを、そのまま結婚/家庭に持ち込むとこうなると言う、現代女性への警告なのかもしれません。
最後にご紹介するのは、ヴィオラ・デイヴィスの初の主演シリーズと言う理由から、今秋一番期待が寄せられている「How to Get Away with Murder」です。しかも、「グレイズ・アナトミー」「プライベート・プラクティス」「スキャンダル」に引き続いて、ABCのヒットメーカー=ションダ・ライムズが放つリーガル・サスペンス・ドラマです。
但し、著名なプロデューサーのお墨付きよりは、もう少し内容が濃く、クリエイターのピーター・ノウォークは、ライムズ将軍のお膝下で育った(=ションダランド制作会社で長年働いている)ライターです。「極めて平凡な人生を送ってきたので、凡人を突飛な状況に置くとどうなるか?を想像するのが大好き。法学部新入生が殺人事件に巻き込まれたら、どうなるか?を企画した」と、ノウォークは7月15日のパネルインタビューで述べました。
「How to Get Away with Murder」の看板女優デイヴィスは、「ダメージ」のパティー・ヒューズと同様の冷血漢として描かれている。キーティング教授の謎を紐解いて行くのが楽しみなシリーズだ。 WENN.com
デイヴィスが演じるアナリース・キーティングは、フィラデルフィアのカリスマ弁護士ですが、刑法の基礎講座「殺人罪を免れる法」で、刑事被告人弁護術を教える法学部のスター教授でもあります。「ダメージ」のパティー・ヒューズ(グレン・クローズ)と同じく、勝つためなら手段を選ばない冷血漢。ヒューズの生い立ちや過去が徐々に明かされたように、キーティングが今日に至った経緯も次第に判明しますが、「謎の女キーティングを受講生の眼から描くのがライムズ流」と、ノウォークは群像劇でありながら確固たる主人公を中心に世界が回る語り口を指摘しました。
毎年、受講生の中から数人をキーティング事務所のインターンとして採用する習わしで、名誉職を巡って、7人の新入生がしのぎを削ります。選ばれた5人の前途は有望かと思いきや....殺人事件に巻き込まれて、人生が狂い始めます。パイロットを一度オンライン視聴しただけなので、音声だけで画像が動かない時もあり、細部に偲ばせたヒントを多々見逃したかと思いますが、リーガル・サスペンス+謎が謎を呼ぶミステリー仕立て(「プリティ・リトル・ライヤーズ」風)のドラマです。但し、「スキャンダル」が政界ドラマからメロドラマに変貌を遂げたように、本作も大きく方向転換する可能性が無きにしも非ずです。
【動画】海外ドラマ「How to Get Away with Murder」トレーラー
個別ビデオ・インタビューしたデイヴィスは、息を呑むほどの迫力+近寄り難い尊厳+目映いばかりの美しさで、私はたじたじとなってしまいました。「縁の下の力持ち(助演)は卒業。演じたことのないキャラ、どう演じたら良いのか不安になるようなキャラに挑戦したかった」と、デイヴィスは登板について語りました。これまで大人しい役が多かったので、破廉恥で掴みどころの無い「デキる女」はデイヴィスにぴったりかも知れません。但し、「プリティ・リトル・ライヤーズ」ではなく、「ダメージ」になることを祈ります。
2014年版「デキる女」4キャラのうち、どのキャラが「グッドワイフ」のアリシア・フローリック(ジュリアナ・マルグリーズ)のように女として成長し、生きる知恵を授けてくれるでしょうか?
「グッドワイフ」アリシア・フローリック役で、8月25日エミー賞主演女優賞を受賞したマルグリーズ。マルグリーズこそ、今乗りに乗っている「デキる女」? WENN.com
↧
「フレンズ」同窓会が目玉のCBS/CW/Showtime合同パーティー
7月17日は午前9時のCBSエンタテイメント社のニーナ・タスラー会長の記者会見に始まり、下記の新番組制作発表のパネルインタビューが実施されました。
ドラマ
「Madam Secretary」
「NCIS: New Orleans」
「Scorpion」
「Stalker」
「Battle Creek」(2015年春プレミア)
コメディー
「The McCarthys」
夜、7時からパシフィック・デザイン・センターで、CBS/CW/Showtime局の新/継続番組の制作陣やキャストが一同に会して、パーティーが行われました。
デザイン・センターの名にふさわしく、カラフルで奇抜な建造物。ヤシの木の並木道(奥)沿いにレッドカーペットが敷かれ、スターが次々と到着する。 (c) Meg Mimura
屋外の真夏の夜のパーティーは、最高!食べ物は屋台形式になっているので、食べたいものを目指して、列に並ぶ仕組みだ。ハンバーガー待ちの列に、昨年7月12日、「House of Lies」の希望の星としてご紹介したドニス・レナード・ジュニアを発見、今シーズンのロスコーはどのように成長して行くのかを聞いてみた。 (c) Meg Mimura
今秋の新番組ではないので、「The Odd Couple」はパネルインタビューがありませんでしたが、マシュー・ペリーを含むキャストと制作陣が参加しました。Showtime局「Episodes」からはマット・ルブラン、「Web Therapy」のリサ・クドローが参加することになっていたので、「フレンズ」同窓生が三人集まる=「フレンズ」同窓会になると期待していたのですが....私は、「Web Therapy」のダン・ブカティンスキーに出逢ったのみでした。ネタバレになるので、内容は控えますが、「スキャンダル 託された秘密」シーズン2でのブカティンスキーの’好演’が眼を見張るばかりだったので、声をかけずにはいられませんでした。
「フレンズ」で有名になったマシュー・ペリー、リサ・クドロー、マット・ルブラン。クドローは、「Web Therapy」の他に、HBOで「The Comeback」(05年)の10年後版6話限定シリーズを制作する。 WENN.com
ペリー(左)とルブランが、レッドカーペット上で再会。ペリーは、「フレンズ」後、4~5本の作品に挑戦したが、いずれもキャンセルとなった。「ジョーイ」はキャンセルされたものの、ルブランは今年も「マット・ルブランの元気か~い?ハリウッド」で、エミー賞主演男優賞候補に挙がるほどの活躍振りだ。
放送開始は来春までお預けですが、パネルインタビューが実施された新作「Battle Creek」のクリエイター、デビッド・ショアに久し振りに再会しました。「HOUSE」時代に何度もインタビューをさせてもらった、私の大好きな放送作家の一人です。「HOUSE」終了後、初のシリーズはヴィンス・ギリガン(「ブレイキング・バッド」クリエイター)が、12年前に書いた脚本を手直ししたものです。ショアはカナダ出身、第三者的な視点からアメリカを描く放送作家ですし、「『HOUSE』は悲観的な世界だったから、『Battle Creek』は明るく、楽しく、笑える世界を目指す」と抱負を語りました。大いに期待できます。
「Battle Creek」では、モナコ生まれ、良家のオボッちゃまFBI捜査官ミルト・チェンバレンを演じるジョシュ・デュアメル。「ラスベガス」以来のテレビ復帰だが、なかなか良い歳のとり方をしているのが嬉しい。
今秋の新作「Stalker」は、ケヴィン・ウィリアムソンが創作しただけあって、パイロットは何とか観たものの、こんなドラマを夜遅く観たら、悪夢にうなされることは間違いありません。毎週、この手の身の毛のよだつものは観られない、観たくないと結論を出したのは、私だけではありません。それが証拠に....
パネルインタビューでは、ストーカーを自ら体験したウィリアムソンが、LAPD内に設けられたThreat Management Unit (TMU=嫌がらせ/ストーカー対策部門)に紹介されて、1998年以来興味ある分野だったことを意気揚々と語りました。2013年2月11日に「喉元過ぎて熱さを忘れた(?)局幹部」に記した通り、「ザ・フォロイング」のクリエイターでもあるウィリアムソンは、12歳からゴシック/恐怖小説の大家エドガー・アラン・ポーに憧れ、ポーの世界を映像化する’怪奇’ライター。現役のTMU刑事をコンサルタントとして雇ったことや、「ザ・フォロイング」と違って犯罪捜査もの仕立てになっており、「ストーカー心理をスリル満点に描く傍ら、ストーカー心理の情報満載の‘楽しい’番組になる」と真顔で発表しました。
蓼食う虫も好き好きとはよく言ったもので、ストーカー心理が面白い/楽しい/娯楽/為になると思う人もいるんですね?陰湿な変質者やストーカー行為から何を学べと?何が面白い/楽しいのか?等の意味合いの数々の質問に、「観たくないなら、チャンネル変えれば?」と切り返された日には....’異常’を’普通’に変えてしまったウィリアムソンは、サンディフック小学校乱射事件直後にも関わらず「ボクは捏造した世界の語り部に過ぎない」と「フォロイング」を弁明しましたが、「Stalker」への良識ある反発、批判を予想していなかった筈はないと思うのですが....インタビュー終了後、ウィリアムソンがエージェントに、「『ストーカー行為の何が面白い?』ってか、べらんめえ」と憤慨を吐き出しているのを小耳に挟みました。子供の頃から怪奇の世界に浸っている井の中の蛙らしい発言ではありませんか?いと、おどろおどろしく、私はそそくさとウィリアムソンの世界を去りました。
「Stalker」のジャック・ラーセン刑事役ディラン・マクダーモット(中央左)とベス・デイヴィス警部補役マギーQ。ラーセン自身ストーカー行為の真っ最中、デイヴィスはストーカーの被害者だった私的背景が味噌らしい。
↧
↧
21世紀の結婚を考察する「Satisfaction」「The Affair」
去る7月17日に、USA局でデビューした新番組「Satisfaction」は、倦怠期を迎えた21世紀のアラフォー夫婦を通して、結婚のルネサンスを考察する示唆に富んだドラマです。一夫一婦制の結婚制度の崩壊が叫ばれて久しい米国でも、不倫や男娼を吊るし上げず、冷静な目でユーモアたっぷりに描くドラマは珍しく、今シーズン残り2話になり、「えー、始まったばかりなのに?!」と不満が聞こえてきます。
【動画】 「Satisfaction」トレーラー
トルーマン一家は、ニール(マット・パスモア)を筆頭に、妻グレース(ステファニー・ショスタク)と16歳の娘アニカ(ミシェル・デション)の三人家族。プール付きの夢のようなマイホーム、自家用車2台、大型3Dテレビと、欲しいものは何もかも手に入れたアラフォー夫婦です。ニールは高給取りの投資アドバイザー、グレースはインテリアデザイナー、アニカは私立高校に通っていて、何の不自由も無い、幸せな一家のように見えますが....
「Satisfaction」ショスタク(左)は、所帯臭さの全くない妻グレースを演じているが、時々地に足が着いていないな〜とがっかりする。今時のアラフォー良妻賢母はこんなものなのか?一方、パスモア(右)は、普通の男ニールを見事に演じている。 WENN.com
子育ても終わり、そろそろ向き合って生きていかなければならない時期に差し掛かったニールとグレースですが、忙しさにかまけてすれ違いを繰り返してきた結果、夫婦の会話はゼロ。倦怠期真っ最中に、‘中年の危機’に突入したのか、ニールは社会に何の貢献もしていないと、仕事に愛想を尽かして退職。意気揚々と報告に出かけたグレースの職場で、ニールが目にしたのは、昼下がりの情事!悟りを開くべくニールが自分探しの旅に奔走している間に、刺激を求めたグレースが、バーで知り合ったジゴロと密会を楽しんでいたのです。
18年連れ添った妻の背進を責めるどころか、降って湧いたチャンスを利用して、ニールは男を買う主婦の本音を聞き出すことに成功します。そっくりそのままグレースに適用して、消えかかった情熱の炎を再燃させようとしますが....背中合わせのまま、仕事や子育てが降り掛かってきて、夫婦の間にできた溝は広がる一方です。
09〜11年に、HBOで放送された「Hung」というドラマを彷彿させます。このドラマは、バツイチで薄給の高校のバスケ/野球のコーチが、有閑マダムのお相手をして生計を立てている内に、女/主婦の愚痴を聞いて、再婚してしまった元妻の気持ちを悟るという内容でした。主人公が男性だったことが、「Satisfaction」とは異なります。
「Hung」で有閑マダムの相手をして生計を立てるようになったレイ・ドレッカー役のトーマス・ジェーン(左)と、ぽん引きタニア役ジェーン・アダムス。見かけよりずっと濃い内容にびっくりした視聴者も多い。 Chuck Hodes/HBO
一方、10月19日に始まるShowtime局の「The Affair」は、ミステリー仕立てで、二組の夫婦の結婚を描くドラマです。ロングアイランド州モントークという海辺の小さな町で繰り広げられるウェイトレスのアリソン(ルース・ウィルソン)と、妻の実家に避暑にやって来た教師/作家のノア(ドミニク・ウエスト)の不倫が両家族に投ずる波紋を描きます。シーズン1は10話で、ある事件を黒沢監督の映画「羅生門」のように、アリソンとノアの視点から描くのが味噌です。共演は、アリソンの夫コールにジョシュア・ジャクソン、ノアの妻ヘレンにモウラ・ティアニー。
「The Affair」でウィルソン(左)は「ルーサー」の精神異常者とは似ても似つかぬ、苦しみに耐える女アリソンを演じる。一方、悪役が多かったウエストは、妻の家柄に押しつぶされそうな繊細な男ノア役に挑戦。但し、パーティーで会ったウエストは冗談で固めたような人で、番組の宣伝にも長けていた。 WENN.com
【動画】 「The Affair」トレーラー
クリエイターは、HBOで3シーズン続いた「In Treatment」(08~10年)のハガイ・リーヴィーとサラ・トリームです。人間の心理を描かせたらこの二人の右に出る放送作家はいません。男女作家コンビであることを利用して、男と女では見方、感じ方が異なる上、生い立ち、文化、階級、教養等で形成された各人のフィルターを通して見る結果、同一の出来事でも大きく異なるという’核心’を描きます。
また、「不倫相手が普段どのような体験をしているのかは、謎でしょ?逢瀬の時に、二人の世界が一時的に生まれるけれど、結局、夫々が別世界へ帰って行く訳だから....二つの世界を行き来している男女、しかも男と女はものの見方も感じ方も違うし、そこが面白いと思ったの」とトリームはパネルインタビューで述べました。階級や階級の差から生まれる偏見も極めて重要な波紋の要素となると付け加えました。
今夏、FXが男女関係、結婚を描くコメディー「Married」と「You're the Worst」を発表しましたが、明らかに若い男性視聴者向けで、いずれも観るに耐えません。もう1本、期待できるのは、デビューは12月2日というBravo局初のドラマ「Girlfriends' Guide to Divorce」です。同作も、タイトルに反して結婚とは何かを探ります。まだパイロットを観ていないので、どのような作品に仕上がっているかは疑問ですが、1)クリエイターがマーティー・ノクソン(「マッドメン」でマシュー・ワイナーから訓練を受けたライター)で、ノクソン自身の離婚やバツイチデート体験を元に書いたこと、2)主演がリサ・エデルシュタイン(「HOUSE」)と、脚本も手がけるポール・アデルスタイン(「プライベート・プラクティス)」であること、3)助演にもなかなか個性的な女優が配役されていることの3点からだけでも、かなり期待できます。
「Girlfriends' Guide to Divorce」のアビー役エデルシュタイン(左)、元夫ジェイクにはアデルスタインが登板。「名字が一字違いだから、親戚かも?」と、初対面から意気投合したと声を揃える二人。 WENN.com
【動画】「Girlfriends' Guide to Divorce」トレーラー
但し、今年何故5本も男女関係を考察する作品が登場したのか?と言う、疑問は残ります。アクション、スパイスリラー、アニメの実写化などが横行して、そろそろ違うものを観たいという視聴者が増えたのでしょうか?不況の風が収まって、結婚や不倫について考える余裕ができたからでしょうか?大型の劇場用映画しか制作できない現環境で、男女関係は完全に映画から弾き出されていますから、感情の起伏、人間の成長過程などを細やかに、長期に渡って描けるテレビに移行せざるを得ないと言うことかも知れません。「Satisfaction」や「The Affair」を満喫できるのなら、原因はどうでも良いのですが....
因に、TCA会員が今秋の期待作に投票、結果が9月9日に発表されました。通常、おじさん評論家達が忌み嫌っている男女関係を描くドラマ「The Affair」が、期待の新作3位と期待のドラマ2位に挙がりました。ウッソー!と目を疑って、何度も読み返した私!どこかどう受けたのでしょうか?それとも、女性会員が増えたと言うことなのでしょうか?分析の要ありですね....
↧
「スリーピー・ホロウ」に追い付ける?「Gotham」「Red Band Society」
7月20日は、FOXが下記の新作を紹介しました。
ドラマ
「Gotham」
「Red Band Society」
「Gracepoint」
この日の目玉は、「スリーピー・ホロウ」のパネルインタビュー。もう、制作が始まって1カ月余りになりますが、制作陣5人とキャスト3人がLAに駆けつけました。シーズン2について、アビー(ニコール・ベハーリー)とイカボッド(トム・マイソン)の絆を恋心に変える予定は?イカボッドの「異文化体験」発言は今後も楽しめるのか?などの核心に触れる質問が次々と出ました。
ベハーリー(右)は、「長年、疑心暗鬼で生きてきたアビーにとって、イカボッドは心を許せる貴重な存在。家族みたいな...」と二人の関係を説明。一方、マイソンは、「世の終わりに、好きも嫌いもないよ!」と笑わせてくれた。でも、こんな仲睦まじい写真を見ると、ついつい番組の中でもくっつけたくなってしまう。 WENN.com
【動画】「スリーピー・ホロウ」トレーラー
6月にハリウッド・フォーエバー墓地で行われたエミー賞根回しイベントに参加したものの、ファンの集いに変身してしまったことは、6月18日付けの「『スリーピー・ホロウ』ファンの集いに早変わり」に綴りました。この日も、評論家に囲まれて、トム・マイソンにはなかなか近付けません。
でも、諦められません。今晩のパーティーに、必ずしも現れるという保証がないので、今しかないのです!広報が連れ去ろうとしたところを見計って、6月の発言について質問してみました。「イカボッドを『人を見下す学者肌』だと言ってましたが、知識をひけらかす人間は鼻持ちならぬ輩が普通。イカボッドからは、一切驕りを感じないのは何故?」と尋ねたところ、途中何度も茶々が入ったにも関わらず、最後まで真摯に答えてくれました。「礼儀作法を弁えた人間は、知識をひけらかさないよ」と、流石英国人の答えです。ごもっとも!私の周辺に出没する鼻持ちならぬ輩は、礼儀作法を教わっていないからなんですね〜〜。
マイソンから聞き出した私的な情報は....1)ウィルミントンの海辺に住んでいて、独立記念日には両親と一緒に花火を楽しんだこと、2)米国南部名産のバーボンやプルドポーク(手で裂けるほど、柔らかく焼き込んだ豚の肩ロース料理)を満喫していること、3)今年に入ってやっと免許をとって、ミニクーペで町を乗り回していること。但し、ベハーリーが「トムの運転は危なっかしくて、怖い怖い!」と、パーティー席上でこっそり教えてくれた。 WENN.com
夕方、パーティー行きのバスに向っていた私とすれ違った際、「トムに声をかけてくれて、ありがとうございました」と言う女性が。名札から「スリーピー・ホロウ」の東海岸の広報担当者だと判明!番組の共演者や無名のタレントにインタビューして、広報から大いに感謝された経験はありますが、マイソンは今一番ホットな番組の看板俳優です。近寄るだけでも良いという人がわんさといるのに、真摯な感謝の意に開いた口が塞がらず、辛うじて「とんでもない!こちらこそ、光栄の至りです」と言葉を返しました。こんな謙虚な広報がまだ存在しているとは....久々の感激の一瞬でした。
9月9日に発表された、TCAの今秋の期待の新作、期待のドラマ部門いずれも1位だった「Gotham」は、ゴッサムシティーでバットマンが誕生する経緯を、ジェームズ・ゴードン刑事(ベン・マッケンジー)の視点から描く、今秋のFOXのイチ押しドラマです。ワーナー撮影所の試写室で観た同作は、お馴染みのキャットウーマン、ペンギン、ジョーカー、リドラー、ミスター・フリーズ、ポイズン・アイビー等の若かりし頃を目にできる楽しい作品です。
ゴードン刑事役のマッケンジーは、「『Southland』の警官役が今回の準備だったような気がする」と述べた。 WENN.com
【動画】「Gotham」トレーラー
「Red Band Society」は、小児科病棟を出たり入ったりを繰り返す十代の子供達の友情を描くブラック・ドラメディーです。医師アンドリューにデイヴ・アナブル、口やかましいが、心優しい看護婦ジャクソンにオクタヴィア・スペンサーの二人を核に、シーズン1で活躍する6人の患者の群像劇。お涙頂戴は間違いなく、観たいような、観たくない様な....
「Red Band Society」ジョーディ役ノーラン・ソティーリョは、キューバ+イギリス+ドイツの混血。ジョーディは、ソティーリョの「地」なのか?繊細な青年という印象を受けた。 WENN.com
「Red Band Society」レオ役チャーリー・ロウは、この役のためにスキンヘッドにした。まだ慣れないらしく、帽子を被って登場したが、お似合いだと褒めると、脱帽してにんまりする純情な一面を見せた。この若さでスキンヘッドは辛いに違いない。 WENN.com
【動画】「Red Band Society」トレーラー
午後7時から、サンセット大通りにあるソーホー・ハウスという会員制クラブでパーティーが開催されました。残念ながら、会場内では写真撮影が許可されず、何度も悔しい思いをしましたが、屋上階から見渡すLAの黄昏時は最高!です。スターにうっとりすべきか、夜景に見入るべきか.....何と言う、贅沢な悩み!
目当てのタレントやプロデューサーにインタビューして、帰途に着こうと、出口に向ったところ、インタビューを受けているマイソンを見かけました。通り過ぎようとしたところ、「声をかけてくれてありがとう」とお礼を言われてしまいました。本当に英国人って、礼儀正しいんですね?真夏の夜の夢のような一日でした。
↧
異色作「Black-ish」が予言する人種差別のない米国
今秋、ABCにお目見えする「Black-ish」は、ビバリーヒルズの一角に豪邸を構えるジョンソン家三世代の異色コメディーです。家長ドレ(アンソニー・アンダーソン)は、LAの広告代理店の上級副社長に昇進したばかり、出世街道をまっしぐらに走っています。しかし、ドレはUrban Departmentという新部門命名にこだわり、昇進を手放しでは喜べません。嘗て、白人の中流層が郊外に移り住んだ後、都会のドーナツ化現象を埋めたのが低所得の有色人種で、大都会の人口過密地帯をurbanと総称します。従って、代理店で初めてアフリカ系重役が管理する部門にドレが育った環境を示唆する言葉を使ったことを、身の程を知れ!と言われたように感じ、人種差別と受け取ったのです。
黒人文化や伝統にしがみつくジョンソン家の家長ドレを演じるアンダーソン。当時12歳だった息子が「黒人を自覚できない」と告白したことに端を発するコメディーで、「息子の’黒人体験’とボク自身の生い立ちに雲泥の差があることを説明したら、『解った。誕生日は、バル・ミツヴァーにしてね!』と来たんだ」とネタの出所を披露した。 WENN.com
【動画】「Black-ish」トレーラー
麻酔医として活躍する妻レインボー(トレシー・エリス・ロス)は、白人と黒人のハーフ。見た目は黒人ですが、生い立ちも経験もドレとは異なり、夫が人種差別の壁を打ち破る先駆者であることが自慢です。両親より遥かに豊かな環境で、我がまま一杯に育った4人の子供は、昇進=昇給=欲しいものがもっともっと手に入る!と喜び、ご先祖様の苦難を聞かされていないからか、白人社会に溶け込み過ぎたためか、父親の憤りが全く理解できません。
レインボー役エリス・ロスは、ブラックミュージック界の大御所ダイアナ・ロスとロバート・エリス・シルバーシュタインの二女。「初めてのハーフ役は地で行ける!」と大はしゃぎだが、本作に関わって「人種を意識したのは大学以来よ」と告白した。ハーフ本人は黒人だと信じていても、肌の色が薄ければ逆差別され、黒人社会からも、白人社会からもつまはじきにされる。 WENN.com
15歳の長女ゾーイ(ヤラ・シャヒディ)は、インスタグラムのフォロワー10万人が自慢の典型的な現代っ子。長男アンドレ・ジュニア(マーカス・スクリブナー)は、アンディー(黒人の名前らしくない)と呼んで欲しい、13歳の誕生日には同級生のようなユダヤ教徒の成人式バル・ミツヴァーを豪勢に開催して欲しい等と要求が絶えません。アンドレ・ジュニアが選んだ陸上ホッケーに猛反対するドレは、バスケットボールに執着するのは、自分の好みを押し付けているのか?それとも、「黒人らしい」スポーツ=バスケという固定観念に捕われているため?と、息子に’期待’する気持ちを分析するようになります。
ドレの実父パップス(ローレンス・フィッシュバーン)は、競馬で余生を楽しんではいますが、黒人差別撤廃運動世代なので、何の遠慮も躊躇もなく差別用語を口にする、気難しい頑固親爺です。
ジョンソン家初代のパップスを演じるのは、「マトリックス」のモーフィアスで名を馳せたフィッシュバーンだ。本作の制作に関わり、同時にゲスト出演している。 WENN.com
「黒人らしい」とは、どういう意味なのか?何をもって黒人と定義するのか?と考えていく内、これは黒人に限ったことではなく、移民で成り立って来た米国では、普遍的な課題であることに気が付きました。更に、歴史を語り継ぐこと、ある民族のルーツを遡ることは、本当に必要なのだろうか?とまで考えてしまいました。これほど深く考えさせられるコメディーは珍しいので、’異色作’として注目しています。
米国に住むようになって、日本人=卑怯者という米国人の固定観念が、真珠湾攻撃に由来していると悟りました。真珠湾で攻撃を受けた軍人やその家族、友人などが、この世に存在しなくなれば、固定観念は自然消滅するのでしょうか?それとも、文献や映像などで永久に語り継がれて行き、日本人への偏見を拭い去ることは不可能なのでしょうか?どうか、前者でありますように....嘗て日本が米国と戦争したことを知らない若者が増えているではありませんか?
米国初の黒人大統領が就任したのは、2009年1月。以降、これまでとは異種の差別/偏見が生まれ、法律上の平等とは裏腹にヘイト・クライム(憎悪犯罪)が後を絶ちません。本作のクリエイターは、「人種よりも社会経済階級のギャップの方が大きい」と語りました。黒人大統領の任期が残り2年となった今だからこそ、「人種のるつぼ」から「人種のサラダ」を経て、今米国はどんな国に移行しつつあるのか?を考察する時期なのかも知れません。
とは言え、一見しただけでは人種が解らない所謂’混血’が増えました。例えば、「プリズン・ブレイク」で一世を風靡したウェントワース・ミラーは、ジャマイカ+イギリス+ドイツ系ユダヤ+黒人+ロシア+フランス+オランダ+シリア+レバノンの血が混ざった、神秘的な性格俳優です。「ハイスクール・ミュージカル」でデビューしたヴァネッサ・ハジェンズは、アイルランド+アメリカ・インディアン+フィリピン+中国+スペインの混血です。そして、今後このような混血は増え続け、○○系アメリカ人と一言で分類することが不可能どころか、無意味になるに違いありません。
髪を見ると黒人の血が入っていることは確かなミラー(左)、最近、デビュー当時の可憐さがすっかり失せてしまったが、初対面のハジェンズは、「一体、何系なんだろう?」と見入ってしまうほど美しかった。 WENN.com
数カ国の料理や食材を融合させて、これまで存在しなかった料理を創作する動きフュージョン・キュイジーヌをご存知でしょうか?ファッションや音楽業界で旋風を巻き起こした動きが料理界でもトレンドになっているように、「Black-ish」は異文化融合が進み、まだ誰も見たことのない新しい米国が生まれつつあることを予告する番組かも知れません。但し、その使命が視聴率に繋がるかどうかは、別問題ですが....
↧