今秋もスーパーヒーローや世の終わり/大惨事に纏わる被害妄想アクションモノが目白押しで、同じようなパイロットを続けざまに観ると、どれがどれだったか?訳が分からなくなるほどです。
数ある似たり寄ったりの新ドラマの中で、CBSの「Limitless」はキャラの動機に惚れて’続きが観たい’と思った作品です。映画「リミットレス」(2011年公開)の続編をテレビシリーズ化したもので、新しいキャラが水先案内人をしてくれます。
【動画】「LIMITLESS」トレーラー
ブライアン・フィンチ(ジェイク・マクドーマン)が、FBIが支給するNZT(神経昂揚剤)を服用して、12時間強化版ブライアンに変身、脳機能を100%活用して事件解決に協力するテクノスリラーで、CBS局お得意の一話完結型犯罪捜査モノでありながら、筋は1本通っている連続ドラマ仕立てです。
続編の主人公ブライアンに抜擢されたマクドーマン。「Manhattan Love Story」で好演していたが、ABCが容赦なく打ち切り、画面から姿を消してしまっただけに、期待のドラマで復帰は大歓迎。 WENN.com
ミュージシャンとして大成できなかった負け組ブライアンのリベンジや野心からではなく、強化版ブライアンになって得た知恵を生かして、難病にかかった父親を救うことが目的なのです。今時珍しい親孝行なダメ息子です。降って湧いた第二の人生を、身内とは言え、人のために使うとは…何と殊勝な青年ではありませんか?
左からヒル・ハーパー(ボイル捜査官役)、マクドーマン、メアリー・エリザベス・マストラントニオ(プロジェクトを仕切るプーラン捜査官)。ハーパーは、どんなキャラを演じても、いつも暗~い....WENN.com
ブライアンの浪花節的行動に惚れて、’続きが観たい’と思ったのは私だけではありません。評論家仲間の間でも、今秋の期待できるドラマトップ5位に必ず上がります。しかし、8月10日に実施されたパネルインタビューでは、映画で主人公エディ・モーラを演じたブラッドリー・クーパーの’シリーズ関与度’が論点となりました。大統領選に出馬したモーラ上院議員=政界の黒幕として、映画撮影の合間に、時折出演する他、創作からキャラ設定まで深く関わっているなど、微に入り細に入り説明がありました。続編ですから、「エディ以外の人間に、NZTは効き目があるのか?’負け組’ブライアンに戻った時、どのような副作用があるのか?などを探りたい」とクリエイターのクレイグ・スウィーニーが述べました。
一方、ソニー系列のオンライン放送局Crackleの初のオリジナル作品「The Art of More」は、未知の世界を垣間見ることが大好きな好奇心満々の方にお薦めしたいドラマです。ブルックリンのブルーカラー社会で育ったグラハム・コナー(クリスチャン・クック)が、米陸軍兵士としてイラクで関わった骨董品窃盗団とのコネを利用して、NYの著名なオークションハウス、パーク・メイソン社に殴り込みをかけ、叩き上げのアカウント・エグゼクティブとしてのし上がって行きます。
【動画】「The Art of More」トレーラー
グラハム・コナーを演じる英国人俳優クック。ブルックリン出身の青年を演じるにあたり、「富裕層と接する時は、お里が知れないようにNYアクセントに切り替える知恵があり、密輸など違法行為に関わっている時は、荒っぽいブルックリン訛りに戻ってしまう柔軟なペテン師」と語った。英国北部出身のクックは、ロンドン生活7年にして、よそ者扱いされないために、地元人と同じ話し方をするようになった体験をそのまま活用。WENN.com
美術工芸品、骨董品、クラシックカーなどを収集する億万長者の物欲や自己顕示欲が描かれると同時に、競売会社間のクライアントの争奪戦や社内の蹴落とし合い、更に盗作、偽造などが描かれます。
裕福に育った不動産業界の大物サム・ブルックナーを演じるデニス・クエイド。物欲に目が眩んだ収集家と違う点は、「美術工芸品を使って権力を手にいれることが目的」とブルックナーを解説した。WENN.com
競合オークションハウスCEOの令嬢ロクサーヌ・ウィットニーを演じるケイト・ボスワース。グラハムとのクライアント争奪戦が見もの。WENN.com
最近は、中東のテロリスト団が骨董品を盗んで高値で売る=つまり世界中の大金持ちが美術工芸品と引き替えに、テロ活動を支援していると言う恐ろしいケースが増えており、本作は一般には知られていないオークションハウスの舞台裏を赤裸々に描きます。シーズン1は10話で綴る興味津々の豪華絢爛で、同時に醜い世界を暴くユニークなドラマです。
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