※この記事には「MAD MEN マッドメン」と「スキャンダル」シーズン4最終話のネタバレがあります
「どんな終わり方をしても、視聴者全員に喜ばれることはない。怒らせようとか、がっかりさせようとか、そんな意図はない。唯、単にこれまで観たことも聞いたこともないドラマにしたいだけ!」とは、去る1月の「MAD MEN マッドメン」最後のパネルインタビューでのマシュー・ワイナーの言葉でした。
この言葉を真に受けて、5月17日(日曜日)午後10時から画面に釘付けになりましたが、ほとんどハッピーエンドと言っても過言ではない安直な結末に、がっかりしました。「えー?!それはないよ。そんなのあり得な~い!」と、期待し過ぎたことを大いに反省した私です。
ジョン・ハム(左)は、マシュー・ワイナーが頭に描いていた「イメージそのもの」とシリーズ開始時に語った。又、ある業界誌でも「ジョンの翳りが正にドン・ドレイパー!」とまで絶賛。 WENN.com
生意気で卑怯な男として叩かれ続けたピート(ヴィンセント・カーシーザー)が、仕事より家庭を選んだのが唯一の救いと言えますが、ペギー(エリザベス・モス)、ジョーン(クリスティーナ・ヘンドリックス)、果ては何の役にも立たない飲んだくれロジャー(ジョン・スラッテリー)までもが、一応欲していたものを手に入れました。貧乏くじを引いたのは、元ドレイパー夫人ベティー(ジャニュアリー・ジョーンズ)とサリー、ボビー、ジーンの3人の子供達です。
ドンが目の敵にしていたのは、ピート(カーシーザー)の育ちの良さへの嫉妬と思われるが、ドンの秘密を武器に仕返ししなかったのは、ピートの品格を物語っている。紆余曲折を経て、人間として成長した故のハッピーエンドには、大いに納得が行く。 WENN.com
主人公ドン・ドレイパー(ジョン・ハム)は、シーズン7後半が始まってすぐ、会議の最中に席を立ったまま放浪の旅に出て、大陸横断を果たし、カリフォルニアでヒッピー達と隠遁生活をした挙句、都合良く(?)悟りを開きます。放浪の旅に出て、どれ程の時間が経過したのか、何を学習したのかは不明です。反省しない’劣等感の塊’人間が、短期間に悟りを開くことなどあり得ませんが、残り時間3分ほどの時点で、太平洋を背後に座禅を組むドンの姿が映し出されます。暗転して....世界中の若者が丘の上に集まって、「愛するハーモニー」を歌うコカコーラのCF(1970年)が流れ、「完」となりました。つまり、悟りを開き、丸くなったドンがNYの大手広告代理店に戻って、あのCFを作ったことを暗示しています。
あれだけ多くの人を傷つけた卑劣人間/女の敵/飲んだくれ/変化を飽くまで拒否していた中年男が、又もや再出発の機会を与えられたのです。因果応報なんて、何のその!4月30日に公開した『「ナースジャッキー」も完了』でジャッキーとドンの違いを分析しましたが、シリーズの結末としては似たり寄ったりです。ジャンキーに、又もやり直しのチャンスが到来し、ジャッキーは人助けに、ドンは広告作りに復帰して「完」となるからです。
翌18日、CBSの夏の新番組を紹介するCBS Summer Press Dayに参加しましたが、早朝から「マッドメン」のフィナーレの話で持ちきりでした。「期待外れ」「ドン・ドレイパーに宛てた恋文だから、当然の終わり方」「安直すぎる」など、評論家からは賞賛の声は上がりませんでした。4月15日の『夢落ち?死に落ち?「マッドメン」完結間近』で私が提案した復讐エンディングを披露したところ、ドンの生き様に相応しいエンディングだと大いに絶賛を博しました。
ジェームス・ウォルクは、2013~14年「マッドメン」12話に、不可解なボブ・ベンソン役で出演した。夏のプレミアを控えて、CBS Summer Press Dayに参加したウォルクにフィナーレの感想を求めたところ、「最高!感激した!」とコメント。 WENN.com
5月14日にシーズン4を終了した「スキャンダル」も、結局オリヴィア(ケリー・ワシントン)と大統領(トニー・ゴールドウィン)がよりを戻し、真剣に観ていた私はすっかり興醒めしました。その3日後に、納得できないドン・ドレイパーの結末を目の当たりにしました。アンチヒーローの度重なる復活劇は、もう沢山!です。
オリヴィア(ワシントン・左)とグラント大統領(ゴールドウィン)は、「スキャンダル」シーズン4の最終話で、漸くよりを戻す。ここに至るまでに、何人の人間が殺され、傷付き、職を奪われ、追放されたか?を考えると、実に虚しい。しかも、シーズン4は、残虐度が跳ね上がり、目も当てられないシーンが激増した。 WENN.com
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えー、あり得ない!で終わった「マッドメン」
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気になる英国人俳優達...マシュー・グード、トム・オースティン、ヴィンセント・レーガン
4月27日の「トム・マイソンに追いつけ、追い越せ!」で新星ジョー・ドイルをご紹介しましたが、何故か最近気になる役者は英国人なのです。
先ず、「グッドワイフ」でウィルが打たれた時に、看取ってくれた心優しいフィン・ポルマー検事を演じているマシュー・グードです。最近、ベネディクト・カンバーバッチと「イミテーション・ゲーム/エニグマと天才数学者の秘密」で共演したり、どんどん名を揚げつつあるグードですが、2013年Starz局のオリジナル・ミニシリーズ「Dancing on the Edge」での好演が最も印象的でした。
「Dancing on the Edge」のパメラ役ジョアンナ・ヴァンダーハム(左)とスタンリー・ミッチェル役マシュー・グード。1930年代のイギリスで、黒人のジャズバンドに肩入れする音楽雑誌記者スタンリーを好演。 Courtesy of Starz
今シーズンの「グッドワイフ」は、アリシアがイリノイ州最高法務官に立候補し、選挙運動から結果までを描きました。法曹界はバックグラウンドとなり、弁護士としては自信をつけたアリシアが、政界の信じられない駆け引きに戸惑う様子が描かれました。政界が嫌いな私としては、「グッドワイフ」のわくわく度の極めて低いシーズンでしたが、救いはアリシアとフィンの絡みでした。
飄々としたスタンリーがそのまま「グッドワイフ」にフィンとして登場したようなグード。お目にかかるチャンスにはまだ恵まれていないが、是非会いたい役者のリストに追加済み! WENN.com
この記事も完成間近の本日、グードが出演しているCFを初めて目にしました。早速、読者の皆さんにご紹介します。コマーシャル起用=好感度が高い証拠だと勝手に解釈して喜んでいます。
【動画】マシュー・グードがPRする米シーゲイト・テクノロジー社のCM映像
二人目は、「The Royals」(3月11日、『スキャンダル満載!英国王室を描く「The Royals」』を参照してください)で、エレノア王女のガードマン、ジャスパーを演じるトム・オースティンです。2012年「ボルジア家 愛と欲望の教皇一族」で、ルクレツィアが一目惚れする美青年ラファエロを演じていましたが、本作でも息を呑むほど美しい謎の青年を演じます。目の保養になることこの上無し!です。
「The Royals」でジャスパーを演じるトム・オースティン。本番前、ヘア、メイクのチェックを受けているところ。 (c) Jim Marks Photography
「The Royals」シーズン1後半には影を潜めてしまいましたが、シーズン2では、ジャスパーの出番をもっともっと増やして欲しいものです。主役のリアム王子をオースティンが演じた方が良いと思うのは私だけでしょうか?
トム・オースティンのこの青い瞳には吸い込まれそうになる。今後の活躍が大いに期待される。 WENN.com
最後に、決して新星ではありませんが、同作のサイモン国王を演じるヴィンセント・レーガンも、とても魅力的です。この作品の中で、唯一の誠実で、穏やかなキャラを演じているからということもありますが、4月にNBC Summer Press Dayでお目にかかったレーガンは、サイモン国王そのものでした。
「The Royals」では、破廉恥な妻ヘレナ女王や娘、息子、弟家族に囲まれ、王位を放棄すると宣言するサイモン国王(レーガン)だが.... (c) James Demmock/E!
レーガンは、ミニシリーズ「A.D. The Bible Continues」の番宣に駆けつけ、イエス・キリストの処刑に踏み切ったローマ帝国の第5代ユダヤ属州総督ピラトを演じた体験談を語りました。今月16日に50歳になったばかりですが、ロマンス・グレーの穏やかな英国紳士です。
NBC Summer Press Dayのガーデン・パーティーで歓談するジェシー・スペンサー(「Chicago Fire」・中央の黒い背広姿)とレーガン(ブルーのシャツ、黒縁メガネ)。 (c) Meg Mimura
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シリ・アップルビーの新作「UnReal」はリアル過ぎて辛い!
6月1日に放送開始となるLifetime局の新作「UnReal」は、嫁選び合戦リアリティー番組の醜い舞台裏を描くブラックユーモア劇です。リアリティー番組の醜い舞台裏を暴露した短編映画「Sequin Raze」を制作したサラ・ガートルード・シャピロが、マーティ・ノクソン(2014年12月31日の『Bravo局初のオリジナル作「Girlfriends’ Guide to Divorce」はドラメディー』で言及したクリエイター)と共同創作/制作しました。ドラマの中で制作される架空のリアリティー番組「Everlasting」は、シャピロがうん十年前(?)働いていたABC局の「The Bachelor」と酷似しています。但し、去る1月に実施されたパネルインタビューでは、シャピロもノクソンも声を揃えて、「嫁取り合戦は、どれも似たり寄ったり。パターンが決まっているから、避けられない」と否定しました。
精神的に耐えられる自信がないまま、職場に舞い戻ったレイチェル(シリ・アップルビー)は、罵詈雑言は朝飯前、仕事のためなら何でも平気でやってのけるやり手プロデューサーのクィン(コンスタンス・ジマー)にこき使われる。 ©2015 Photo by Joseph Viles
CWの「Life Unexpected」(2010~11年)以来、主演は久しぶりのシリ・アップルビーが演じるのは、リアリティー番組「Everlasting」で出場者を操る係レイチェルです。職場のストレスに押しつぶされて切れまくり、前シーズンに解雇されたにも関わらず、プロデューサーのクィン(ジマー)が、フリーランスとして雇い直すという役所です。無防備な出場者と懇意になり、あの手この手で操ってドラマ作りをするレイチェルがいないと、’良い番組作り’ができないからです。
日本でも「ロズウェル 星の恋人たち」で人気が出たアップルビーも、36歳の子持ち。1月に番宣に駆けつけたアップルビーは、憔悴した顔で覇気がなく、「レイチェル役は地で行けそう!」と思ってしまった。 WENN.com
レイチェルは、公私共どん底!番組の車で逃亡したため、裁判沙汰になっており、罰金、弁護料、家賃稼ぎのため、’キチガイ’扱いされることを承知の上で、元の職場に戻るしかありません。カメラマンのジェレミー(ジョシュ・ケリー)とNYに行って、独立系でも良いから映画作りに関与しようと話し合ったこともありますが、レイチェルがいない間に職場のメイク嬢と婚約してしまいました。
左からジェレミー(ケリー)、アンナ(ジョアンナ・ブレイディ)、クィン(ジマー)、レイチェル(アップルビー)、アダム(フレディー・ストロマ)、メアリー(アシュリー・スコット)、グレース(ナタリー・ケリー)。 ©2015 Photo by Joseph Viles
重い足を引きずって、撮影現場に戻ってきたレイチェルを待ち構えていたのは、此の期に及んで出演を躊躇しているホテル王の御曹司アダム(フレディー・ストロマ)や、訳ありの花嫁候補達です。結婚する気などさらさらないアダムを遺産相続で釣って、出演契約書にサインさせることに成功!一方、再婚して娘を育てたいと参加したアラフォー(=最年長)でシングルマザーのメアリー(アシュリー・スコット)は、ピチピチギャル達に圧倒されているので、もっと積極的にアダムに迫るようアドバイスしますが、アダムが目をつけたのは、当然’すれっからし’グレース(ナタリー・ケリー)なのです。アンナ(ジョアンナ・ブレイディ)が、花嫁候補ナンバーワンにのし上がると、撮影に支障をきたさないよう、アンナの父親が倒れたことをひた隠しに隠します。良心の呵責を感じながらも、出場者の優越感を噂にして女同士の敵対心を煽ったり、劣等感を引き出して失態を演じるように仕向けるのが、レイチェルの仕事なのです。
1990年代に台頭したリアリティー番組は、呼称とは裏腹にリアリティー(現実)ではなく、脚本、筋、キャラ(善人、悪人、犠牲者)などがあり、映像や出場者の発言を操作して、次回を観なければ!と思わせます。それが証拠に、悪者に仕立て上げられた’素人’出場者が、編集がクセモノだと繰り返し指摘してきました。但し、初期の単純な番組と比べると、最近のものは一捻りも二捻りもあり、それなりに女同士のつかみ合いの喧嘩、救急車出動、きわどいシーンなどが増え、スキャンダル度が上昇を続けています。「視聴者の期待に応えるべく」とプロデューサー達は言いますが、現場の撮影班や制作陣が、同じことの繰り返しに飽き飽きし、もっと!もっと!ドラマを!と煽っているのではないかと疑ってしまいます。
「UnReal」1~3話まで観ましたが、この手の番組を制作する方もする方なら、単なる操り人形で「○○役」に仕立て上げられることを承知で出場する方も出場する方なのかな~~と思いました。又、ストレス源だと解っているにも関わらず、元の職場に舞い戻るしかない、二進も三進も行かない状況で生きている若者には共感できるドラマではないでしょうか?私なら、先ずあのように罵倒される環境の中に長時間浸かってなんかいません。多分1日目に辞めているに違いありません。第3話に、レイチェルが味方の振りをして接近し、相手の気持ちを武器に操作/攻撃する方法をどこで誰から学んだのかが明らかになります。
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2015年6月のエミー賞根回しイベント
2015年6月には、下記の根回しイベントが開催されます。
【6月スケジュール】
6月1日「Transparent」(トランスジェンダーの父親と家族を描くコメディ)
6月2日「The Comeback」(リサ・クドローが盛りを過ぎた女優を演じるコメディ)
中年女優が遭遇するあらゆる障壁、差別などをブラック・ユーモアたっぷりに描くが、「哀しさ」はシリーズを通じて漂う。ハリウッドでは、年をとることはタブーなのだ。
6月3日「The Comedians」(ビリー・クリスタルとジョシュ・ギャッド主演のコメディ)
6月4日「The Mindy Project」(ミンディ・カリング自作自演のコメディ。番組の衣装デザイナーを迎え、ニーマン・マーカス・ビバリーヒルズ店で行われる)
6月5日「The Being Mary Jane」(ガブリエル・ユニオン主演のドラマ)
6月6日「ダウントンアビー」
6月7日「Unbreakable Kimmy Schmidt」(ティナ・フェイ制作の底抜けに明るいキミーを描くコメディ)
最近、画面から姿を消したティナ・フェイは、Netflixオリジナルコメディを制作。主人公は極端な楽観主義者キミー。
6月8日「Chrisley Knows Best」(リアリティー番組)
「Younger」(NY)(詳細は3月27日の「サットン・フォスターのTV復帰作は『Younger』」を。流石、「SATC」のダーレン・スター作!楽しくて、次回が待ちきれないコメディ)
送られてきた招待状に思わず、狂喜したが、よくよく読んでみると、NYのイベントでがっかり!LAでも開催してくれないかなぁと思っていたら、6月2日に招待状が舞い込んだ。
6月9日「ジミー・キンメル・ライブ!」(ジミー・キンメルの深夜のトーク番組)
6月10日「Veep」(2013年7月10日「『Veep』の実力見たり!」で絶賛したジュリア・ルイス=ドレイファスの政界内幕暴露コメディ。)
今年もTCA賞のコメディ部門にノミネートしようかと思ったが、シーズン3はまだ観ていないので、遠慮した。セリーナ(ドレイファス)が、大統領に再選されたかどうかも不明。
6月11日「アメリカン・ホラー・ストーリー」
6月15日「Younger」(LAで開催)
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「殺人を無罪にする方法」根回しイベント
5月28日、ABC2014年の看板ドラマ「殺人を無罪にする方法」に参加しました。サンセット大通りに入口を構えるサンセット・ガウワー撮影所に行くのは今回が初めて。入口がどこにあるのか判らず、何度もクルクル周辺を走り、途中で嫌気がさして、帰ろうかとまで思ったほどです。駐車場への道順の指示が曖昧で、ギリギリセーフの滑り込み?と思い、駐車場からステージまで走って行ったのですが....
パネル後のレセプション会場の壁に映し出された番組のロゴ。 ©Meg Mimura
パネルインタビュー会場は、「殺人を無罪にする方法」(タイトルが長いので、原題の頭文字で「HTGAWM」と省略します)の主人公アナリーズ・キーティング教授(ヴィオラ・デイヴィス)が講義する階段教室。震え上がるほど冷房が効いたセットで、待たされること1時間半。何度、嘆願しても冷房は切ってもらえず、少しでも温度の高い席を探して流浪の旅に出る始末です。それだけ、時間を持て余したという証拠です。
左からマーシャ・ゲイ・ハーデン、トム・ヴェリカ、ビリー・ブラウン。背後は階段教室の黒板。この日、初顔合わせしたのは、ハーデンとヴェリカ! ©Meg Mimura
この日登場したのは、キャスト7人+制作陣3人の計10人でした。
ヴィオラ・デイヴィス(アナリーズ役)
トム・ヴェリカ(サム)
マーシャ・ゲイ・ハーデン(ハナ・キーティング役。日本では未登場?)
ビリー・ブラウン(ネイト)
チャーリー・ウィーバー(フランク)
カーラ・ソウザ(ローレル)
アルフレッド・イーノック(ウェス)
ピーター・ノーウォーク(クリエイター)
ベッツィー・ビアーズ(プロデューサー)
ビル・デリア(2、6、12、15話演出)
モデレーターは、「グレイズアナトミー」以来、ションダ・ライムズ作品の演出を手がけるデビー・アレンです。「HTGAWM」の第8話を演出したので、内幕を熟知しており、通常の業界誌の編集長やジャーナリストなどとは違った観点から、インタビューを進行しました。アレンは、ノーウォークに創作の動機を尋ねたり、シーズン1後半に登板したハナ役のハーデンに映画とテレビの演技の違いを質問しました。2月26日のシーズン1最終話で、誰がライラを殺害したかが明かされたので、インタビューの大半はその話で持ちきりでした。ネタバレは避けますが、「撮影の1時間ほど前にこのキャラで行こう!と決め、俳優に電話で知らせた」とノーウォークが明かしました。へー、意外!ミステリーって、犯人を決めて逆算して書くものとばかり....
前列左からデイヴィス、ノーウォーク、ビアーズ。後列左からウィーバー、ソウザ。最前列の席に陣取れず、かなり遠方から撮影したので、あまり良い写真ではないが、ご容赦を。 ©Meg Mimura
この日、アナリーズの愛弟子は、イーノックとソウザの2人。「HTGAWM」では、米国人の役なので、「24時間米英語で貫き通したけど、今日は英国人’訛り’だよ!」と笑うイーノック。また、ウェス役以外に演じてみたい役については「四六時中戯けているマット・マクゴリー(アッシャー)のようになりたいけど、絶対に無理!」と、控えめで真面目な英国人らしい返答でした。
イーノックが演じる煮え切らないウェスにイライラした視聴者は多いが、アナリーズの弱味につけ込む大胆不敵なウェスは取って付けたような不自然さを感じる。大人しそうな顔して実は....のキャラなのか? WENN.com
ソウザは、本作では唯一の良心的なローレルを演じていますが、「絶海の孤島になったような気がするわ。みんなの狂気の沙汰が大波で押し寄せて来るみたいで、仕事が終わったからって、簡単にスイッチ切れなくて困った」と、グループの力関係を明かしました。ヴェリカは、「スキャンダル」の演出を多々手がけているので、「血の海にうつ伏せになっている時に、『スキャンダル』の制作から電話がかかってきて、翌日の撮影の打ち合わせをする羽目になった」と舞台裏を披露しました。
スペイン語圏では押しも押されもせぬ大スターのソウザも、ハリウッドでは未だ無名。私はソウザ演じるローレルにしか共感できないので、無理を承知で「’悪’に染まらないで!」とお願いしてしまった。 ©Meg Mimura
主役を演じるデイヴィスは、「これまでお母さんとか、おばさん役しか回って来なかったから、脚本を読んだ時に、感情の起伏が激しくて、キレる、デキる、’セクシャル’な生身の女を演じる最初で最後のチャンス!だと思ったの」とノーウォークの等身大のキャラを絶賛しました。
レセプションに参加したデイヴィスは、気さくに写真撮影に応じ、一人一人に丁寧に対応。「天下の名優」の素振りなどかけらも感じなかった。 ©Meg Mimura
「スキャンダル」と異なり、「HTGAWM」のキャストも制作陣もレセプションに顔を出しました。皆、サービス精神旺盛で、好感度がグンとアップしました。シーズン1だからでしょうか?いつまで続くことやら....
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USA局の新作「Complications」と「Tyrant」に相通じる父親像
6月18日に2時間のプレミアで放送開始する「Complications」。「TERRA NOVA/テラノバ」「VEGAS/ベガス」などでお馴染みのジェイソン・オマラが、救急医ジョン・エリソンを演じるアクション医療ドラマです。アトランタを舞台に、愛娘を亡くして間もないジョンとサマンサ(ベス・リースグラフ)が、心痛をいかに処理するかが描かれます。ジョンは医師という仕事柄、人助けに生き甲斐とスリルを求め、サマンサはサポートグループや信仰に癒しを求めます。
ジョンを演じるジェイソン・オマラ。初めて会ったのは、10年ほど前「In Justice」に出ている時だった。以来、「Men in Trees」「Life on Mars」「TERRA NOVA/テラノバ」「VEGAS/ベガス」などの番宣イベントで、その時点での役柄について語ってくれた。残念ながら、今回の役は数年前Foxでポシャッタ「Mob Doctor」になる可能性が.... WENN.com
【動画】「Complications」トレーラー映像
瀕死の黒人少年を救うため、とどめを刺しに車で疾走して来る男を射殺したことから、ジョンは黒人対メキシコ人のギャング抗争に巻き込まれて行きます。パイロットを観た時点では、「久しぶりの正義の味方だ!」と喜んだのですが….
メキシコ人殺し屋からアントワン(11歳)を守ろうと、ジョンが白羽の矢を立てたのは、無鉄砲な看護婦グレッチェン(ジェシカ・ゾア)。カルテをすり替えて、近くの手術センターにかくまったのが運の尽き!アントワンの父親に刑務所から脅される、深夜チンピラが押し入ってエリソン一家を巻き込む、果てはアントワンの隠れ家探しの責任まで押し付けられるジョン。少年の命を救おうと拳銃を拾って発砲したばかりに、まるでドミノ倒しのように、ジョンを取り巻く家族や職場の仕事仲間に連鎖反応が止め処もなく広がって行きます。更にグレッチェンの’怒り’が火に油を注ぎます。一体、ジョンはどこまで深みにはまって行くのでしょう?
DVの犠牲者なのか、目的の為には手段を選ばない向こう見ずなグレッチェンを演じるジェシカ・ゾア。職業を間違えていませんか?と尋ねたくなるが、ゾアが演じる役はいつもブレーキが効かない疾走車を想像させる。 WENN.com
病院内で人命救助するのは、医師の仕事であり、全能の神になりきることも止むを得ませんが、一歩外に出ると普通の人に戻らなければ紛糾の種を蒔くことになると、職場の心理学者がジョンに注意します。人助けに生き甲斐とスリルを求めるのは、ジョンの心痛処理法だとしても、もう少しサマンサや長男オリバー(10歳)のことを考えて欲しいと思うのは私だけでしょうか?もっとも、人命救助のプロにとって、家族は二の次。911多発テロ後、家族を残して、ツインタワーに向かい、殉死した消防士や警官の話を多々耳にしたのが良い証拠です。
夫との心の狭間を埋めようとする良妻賢母サマンサを演じるベス・リースグラフ。「レバレッジ」のパーカー役とは似ても似つかぬ大人の役で、がっかり! WENN.com
楽しみにしていた「Complications」ですが、家族を顧みないジョンが毎回、グレッチェンの尻拭いをすると同時に、底なし沼の深みに嵌って行くのを目撃するのは、辛くて....躊躇してしまいます。オマラの長年のファンとしては心外ですが、子供の立場から「それはないよ!お父さん」と物申したくなる’パンドラの箱’ドラマです。4話で、蓋を閉めることにしました。
「Complications」に失望した後、FX局の「Tyrant」シーズン2のメディアキットが届いたので早速視聴しました。不思議な巡り合わせですが、「Complications」と同じ「それはないよ!お父さん」と抗議したくなってしまいました。
「Tyrant」は、昨年6月24日から始まった家族ドラマです。シーズン1は10話で、小児科医バリー・アル=ファイード(アダム・レイナー)が、妻モリー(ジェニファー・フィニガン)、十代の息子サミー(ノア・シルバー)、娘エマ(アン・ウィンタース)を引き連れて、20年前に捨てた祖国アブディン(架空の国)に向かうところから始まりました。バリーの甥の結婚式に参加するためですが、一家が到着して間もなく、中東の独裁者として悪名高き父カリードが突然死去。民主化革命運動を押し切って、大統領の座に就いた兄ジャマル(アシュラフ・バローム)の暴君振りを目の当たりにして、バリーは密かにクーデターを企てます。独裁者の世継ぎとして育て上げられた兄ジャマルの側近的立場に置かれたバリーは、米国に逃げて自由を満喫して大人になったため、兄弟とは言え、今更溝を埋めることはできないと悟ります。そして、ジャマルを失脚させ、民主国にしようと策略を巡らしますが....
モリー役ジェニファー・フィニガン(左)とバリー役アダム・レイナー。現在、シーズン2を撮影中で、インタビューはできなかったが、フィニガンはドラマでもコメディでも実力を発揮する役者。シーズン2の活躍が楽しみだ。 WENN.com
6月16日から再開されるシーズン2は、反逆者として投獄されたバリーの運命は?が、13話で綴ります。バリーが絞首刑に処せられる直前、アブディンに残って釈放活動を組織していたモリーは米国に強制送還されます。学校で’英雄’扱いされる父に対する気持ちをサミーが母親モリーに訴えるシーンがあり、正に「それはないよ!お父さん」です。バリーも人命救助のプロ!何の関連もない、2本のドラマに相通じるのは、目的の為なら手段も影響も顧みない無鉄砲な父親像です。何もしないゴキブリ亭主よりマシ???
【動画】「Tyrant」シーズン2 トレーラー映像
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凛々しいエイダン・ターナーにうっとり!真の英雄「Poldark」放送開始
アンチヒーローの横行で、真の正義の味方、常に正しい決断をしようと努力する英雄キャラが画面から弾き出されて久しい今日、この頃、こんな英雄を待っていた!と思わずウットリするドラマが、いよいよ開始されます。
BBCで既に放送済みの新「Poldark」で、米国ではPBS(公共放送)のMASTERPIECEシリーズの1本として6月21日から放送開始となります。ウィンストン・グラハムの小説を基に、約40年前にMASTERPIECEシリーズとして高視聴率を記録した「Poldark」のリメイクです。今回は、テクノロジーの進歩のおかげで、三方を海に囲まれた英国南西部コーンウォール地方の絶景が画面から飛び出してくるかのような鮮やかな映像です。HDテレビで観ることをお勧めします。
グレートブリテン王国のロス・ポルダーク大尉(エイダン・ターナー)は、アメリカ独立戦争で戦い、負傷して帰郷。’弱い者イジメ’は、人間の風上に置けぬと戦争体験で学び、故郷では平等な社会を築こうと心身を傾ける。 Courtesy of ©Robert Vigiasky/Mammoth Screen for MASTERPIECE
【動画】ドラマ「Poldark」メイキング映像
とは言え、「Poldark」の魅力は、何と言っても主役ロス・ポルダークに抜擢されたエイダン・ターナーです。映画「ホビット」やBBCの「ビーイング・ヒューマン」1~3に出演していたので、お馴染みの方もあるのではないでしょうか?私はいずれも観ていなかったので、今年1月のプレスツアーでお目もじした時には、「2015年の新星はターナー!」と瞬時に決めたほど、魅了されてしまいました。
このツアーでは、他にも4月27日に「トム・マイソンに追いつけ、追い越せ」でご紹介したジョー・ドイルが好感度も高く印象的でした。更に、5月26日の「気になる英国人俳優達」では、今が旬のマシュー・グード、トム・オースティン、ヴィンセント・レーガンをご紹介しました。しかし、一昨年メディアを騒がせたトム・マイソン(「スリーピーホロウ」)も色褪せるほどの新星は、間違いなくターナーです。
【動画】ドラマ「Poldark」EP1からのシーン映像
ターナーの凛々しい姿と緑が美しいコーンウォールの景色さえあれば、ストーリーなどさほど気になりませんが、小説が土台になっているので、筋や展開はしっかりした歴史ロマンです。1781年バージニア植民地のアメリカ独立戦争で負傷し、帰郷したグレートブリテン王国のポルダーク陸軍大尉。戦いで負った顔の傷は、誰が見ても明らかですが、心の傷に更に塩を塗るような出来事が、勇んで戻った故郷で待ち受けています。父ジョセフは、勇敢に戦った息子ロスの帰りを待たずに他界し、土地は荒れ放題、鉱山は廃坑となり、立て直そうにも、銀行から借金する抵当もありません。3年前、ロスと将来を誓ったエリザベス(ハイダ・リード)は、従兄弟フランシス(カイル・ソラー)と婚約してしまい、最早取り返しがつきません。
バージニアに向かう前に、将来を誓い合うロス(ターナー)とエリザベス(リード)。ロスから3年も音沙汰がなかったことを理由に、ポルダーク本家の長男フランシスと婚約したエリザベスだが.... Courtesy of ©Robert Vigiasky/Mammoth Screen for MASTERPIECE
コーンウォール地方の名家ポルダーク本家は、ロスの叔父チャールズ(ウォーレン・クラーク)が仕切っており、息子フランシスの幸せを守るため、ロスをロンドンに追放しようと試みます。しかし、ロスは嘗て父親に仕えていた使用人達の手を借り、家財を売っては分家の再建に心身を注ぎ込みます。ある日、町で苛められていたデメルザ(エレノア・トムリンソン)と野良犬を助けたロスは、この家出少女が美しい娘になることなど予知する術もありません。
ロス(ターナー)は、デメルザ(トムリンソン)を育てる羽目になるが、エリザベスは最初から三角関係を見通している。英雄の恋もドラマの必須要素だ。 Courtesy of ©Robert Vigiasky/Mammoth Screen for MASTERPIECE
アイルランド人のターナーは、パネルインタビューの後、「都会育ちなので、コーンウォール地方でのロケはまるで夢の中にいるような美しさだった」と語りました。また、今回の役については、「ホビットや吸血鬼役をやってきたから、人間の役だけでも最高なのに、英雄だからね」と感謝の気持ちを表明します。ターナー自身の英雄を尋ねたところ、「うーん、やっぱり両親かな….平凡な答えだね?」とニッコリ。百万ドルの笑顔とは、正にこの事です。久しぶりに、胸がドキドキ!しました。
米国の植民地時代を思わせる服装のロス(ターナー)。250年余り昔の時代劇キャラは、実に凛々しくて爽やかだ。トム・マイソンのクレーン(「スリーピーホロウ」)とつい比べてしまう。 Courtesy of ©Robert Vigiasky/Mammoth Screen for MASTERPIECE
久々の真の英雄伝「Poldark」の制作について話しを聞いてから、待つこと半年近く!今週日曜日(6月21日)のプレミア放送を心待ちにしています。ワクワク、ウキウキ、ドキドキ!
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待望の「Veep」根回しイベントに参加
去る6月10日、2015年根回しイベント「Veep」に参加しました。6月14日から数日、出張していたため、15日に開催された「Younger」LAイベントには参加できず、今年の参加は「Veep」が最後となりました。
向かいの撮影所では、「キャッスル ~ミステリー作家は事件がお好き」や「スキャンダル 託された秘密」が撮影されている。 ©Meg Mimura
パラマウント撮影所で開催されたこの日のイベントには、下記の出演者9人が参加しました。
ジュリア・ルイス=ドレイファス(セリーナ・マイヤー役/エクゼクティブ・プロデューサー)
トニー・ヘイル(’牛目’ゲイリー)
アナ・チョムスキー(エイミー)
リード・スコット(ダン)
ティモシー・C・サイモンズ(’でくの坊’ジョナ)
マット・ウォルシュ(マイク)
ケヴィン・ダン(ベン)
ゲイリー・コール(ケント)
スーフィー・ブラッドショー(スー)
2013年7月10日の「エミー賞根回しイベント『Veep』の実力見たり!」で本作の手作り感の舞台裏をご報告しましたが、2年振りのイベント開催です。この日はシーズン4の最終回放送に先駆けて試写した後、パネルインタビューが実施されました。当然のことながらシーズン4のオチ=セリーナが大統領に当選するか否かは、ツイートしないように警告がありました。
パネルインタビューに参加した(左から)ウォルシュ、ドレイファス、モデレーターのアラン・セピンウォール、ヘイル。 ©Meg Mimura
私は、実はシーズン4の第一話しか観ておらず、いきなり大統領選の結果にタイムスリップしてしまい、少々戸惑いました。いずれHBO無料視聴日に一気観する予定です。これだけ手の込んだコメディは、何度観ても飽きないので、ゆっくり待つつもりです。そう言えば、ヒュー・ローリー(「HOUSE」)がゲスト出演すると聞いていましたが、セリーナの立候補コンビ=副大統領候補役(5~10話)だったんです!そして、シーズン4のオチは、ローリー扮するトム・ジェームズ上院議員/副大統領候補が鍵です。
コメディもドラマも完璧にやってのけるローリー。今回は、セリーナの人気をはるかに上回ってしまう、トム・ジェームズ上院議員/副大統領候補役だ。ジョー・バイデン副大統領のように、一言多くて、危なっかしいキャラだ。 WENN.com
左からスコット、チョムスキー、ウォルシュ。シーズン4で、セリーナの選挙運動に残ったのは、ウォルシュが演じる報道官マイクのみ。ダン(スコット)はスケープゴートにされ、ヒステリーを起こして辞任したエイミー(チョムスキー)を、ロビイスト団体に引き抜く。「同じ穴のムジナなので、どこで働いていても以心伝心だった」と声を揃える。 ©Meg Mimura
13年の根回しイベントでは、HBOならではの、念入りな制作過程が披露され、本作の実力見たり!とご報告しましたが、あれ以上の新鮮な情報は期待できない?と思って参加しました。制作過程は全く変わっておらず、ローリーのみが余裕たっぷりの過程を初体験したわけです。「最初はちょっと戸惑ってたけど、そこはプロ。共演者に迷惑をかけないようにって、気を使うところがイギリス人だわ!!」と、ドレイファスが披露しました。
左から、サイモンズ、コール、ブラッドショー。サイモンズ演じる’でくの坊’ジョナは、大統領と副大統領の執務室を行ったり来たりで、誰の側近なのか全く不明。コールが演じる上級戦略家ケントは、辞任した大統領付きだったものの、セリーナの側近に組み込まれた。ブラッドショー演じる秘書スーは、政界が大嫌いと言いつつ、最も有能且つ常識ある秘書。 ©Meg Mimura
シーズン3で、大統領が私的理由で退任し、棚ぼたでマイヤーが昇進しました。閑職から一気に世界の指導者にのし上がったものの、(現実にはあり得ないことですが)副大統領執務室の側近をそっくりそのまま従えてホワイトハウスに乗り込みます。シーズン4は、任期が終了する以前から、再選キャンペーンを始め、最終話で選挙運動の結果に至ります。
恥の上塗りを繰り返していたセリーナが、大統領に就任したからと言って急に賢明になる訳ではなく、「今シーズンは、’威厳ある’恥の上塗りを繰り返しただけ....かな?」とドレイファスは笑います。13年のイベントで、離れ小島できりきり舞いするような副大統領をドレイファスが「ホラー」と指摘したことを思えば、’何をやってんだか?’セリーナが、世界の指導者なんて、「ホラー」どころの騒ぎではありません。
パネル後、参加者のリクエストに快く応じるドレイファス。今年もエミー賞コメディ部門の主演女優賞を手にしそうな勢いを感じた。 ©Meg Mimura
又、ドレイファスが「セリーナの特技は、勘違いを何の疑いもなく信じ切れることでしょ?」とキャラを評価すると、カバン持ちの’牛目’ゲイリー役でエミー賞助演賞を獲得したヘイルは、「セリーナ女王を崇拝するのがゲイリーの特技」とコメントして笑いを取りました。カバン持ちの名にふさわしく、目を閉じていても、必要なものをカバンから’即’取り出せると自慢。カバンの見取り図が頭の中にしっかりと入っているので、側近仲間から新しいカバンをもらってありがた迷惑!と戸惑う下りがあったことをヘイルが指摘しました。ありました!ありました!!
ハンサムなスコットは、いつ見ても女性ファンに囲まれている。 ©Meg Mimura
会場の外では、選挙運動ポスターがデカデカと展示され、本格的アメリカ料理(ミートローフ、チキン&ワッフル、チーズバーガー)が振舞われました。
パネル後のレセプション会場の壁に映し出された番組のロゴ。 ©Meg Mimura
最近、「Veep」シーズン1は好調ではなかったと聞きました。へー!?政界内幕暴露コメディが珍しいこと、ドレイファスのファンであることも相まって、私は第1話から大いに気に入っていたのでびっくりしました。過去に同様の作品があったのか、「二番煎じどころか十番煎じ」とまで酷評されたたシーズン1。米国で生まれ育った人間ではないので、私には新鮮に映ったのかもしれませんが、酷評していたおじさん評論家たちがシーズン2以降寝返ったのは喜ばしいことです。現実を覗き見しているようなコメディ作りには、手間暇かけて生み出した自然体、自然な会話が不可欠です。笑いを狙ったジョークの連発や怒鳴り合いをつなぎ合わせたようなコメディに、うんざりしている視聴者には、心地よい「Veep」の今後が楽しみです。
レセプション会場は、マイヤーに一票を!のポスターだらけ。 ©Meg Mimura
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「スーツ」シーズン5開始。相も変わらず事務所内の揉め事ばかり!
去る7月1日、「スーツ」シーズン5が始まりました。先シーズン漸くマイク(パトリック・J・アダムス)が周囲を巻き込んでひた隠しにしてきた秘密(弁護士の資格も無く、ハーヴァード出でもない)が暴露され、これでやっと一件落着かと思いきや、今度はハーヴィー(ガブリエル・マクト)とルイス(リック・ホフマン)が繰り広げるドナ(サラ・ラファティ)の取り合い合戦に移行しました。本来の法廷での闘いや、マイクの特殊技能を生かしたひねりの効いた弁護に戻って欲しいと思うのは私だけでしょうか?
(左から)ハーヴィー(ガブリエル・マクト)、ルイス(リック・ホフマン)、ドナ(サラ・ラファティ)。ルイスは、ハーヴィーのドナ奪回作戦に気が気でなく、ドナから目を離すことができない。 Courtesy of USA Network
弁護士事務所内の内輪揉めは、確かに面白いのですが、延々と続くと飽きがきます。そういう意味では、「グッドワイフ」のシーズン6は、アリシア(ジュリアナ・マルグリース)がイリノイ州最高法務官に立候補し、舞台が政界に移行した異色シーズンだったと言えます。弁護士としては一人前になったアリシアが、選挙運動の醜い駆け引きにどう対処し、人間として成長して行くかが描かれました。政界を垣間見る良い機会だったこと、アリシアを支える検事ポルマー(マシュー・グード)が活躍したことを考えると、面白いシーズンでしたが、従来の法廷ドラマが半減したことは否めません。
(左)「グッドワイフ」の主人公アリシア(ジュリアナ・マルグリース)はシーズン6で政界の醜さを体験する。検事フィン・ポルマー(マシュー・グード)は、陰に陽に支えてくれた恩人。 WENN.com
「スーツ」シーズン5の唯一の救いは、自信満々のハーヴィーがドナを失った事実を認められず、パニック発作を体験して、カウンセリングに通い始めたことです。しかも、勝訴のためなら手段を選ばないのは何故か?背景の心理は?など、ハーヴィーがこれまで避けてきた心痛の根元を探ります。これは、通常の法廷モノ、弁護士モノにはほとんど登場しないシーンで、当然のことながらハーヴィーは嘘か真実の欠片しかカウンセラーに打ち明けませんが、視聴者には事実が明かされるという仕組みになっています。
(左)ハーヴィー(マクト)とマイク(アダムス)は、元の鞘に収まった感があるが、実は立場が逆転した。マイクがオールバックにした理由は、その象徴なのか? Courtesy of USA Network
マイクは、ハーヴィーのお守役となり、立場が逆転。憧れのドナをアシスタントに迎えたものの、ルイスは相変わらずハーヴィーの尊敬を買おうと空回りを繰り返します。そろそろ、ネタ切れなのかなぁ~と観ていますが、つい先日シーズン6継続が発表されました。
(左)ハーヴィー(マクト)とマイク(アダムス)の名コンビは、シーズン6に前進する。無資格で法廷に出ているマイクと言う名の「爆弾」を抱えたPSL法律事務所の行方は? Courtesy of USA Network
今シーズンの主軸となるドナ(ラファティ)。取り合いする価値は十分の敏腕アシスタントは、粋な大人の女! Courtesy of USA Network
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2015年TCAプレスツアー総決算ー戦国時代のテレビ業界
2015年度夏のTCAプレスツアーは、7月28日から8月13日まで17日間に渡り、(まだまだ)改築が進行中のビバリーヒルトンで開催されました。
【スケジュール】
7月28日 Netflix
7月29日 ケーブル局(ニールセン社の視聴率記録最新技術、ナショジオ、Viacom、WGN America、Hallmark 主催のパーティー)
7月30日 ケーブル局(ディスカバリー、UP、El Rey Network、HBO、ディスカバリー局のプールサイド・パーティー)
7月31日 ケーブル局(BBC America、STARZ、AMC、Fuse局のカクテル・パーティー)
8月01日 PBS
8月02日 PBS
8月03日 Amazon、午後「Last Man Standing」他、スタジオ見学
8月04日 ABC
8月05日 午後1時までABC、午後3時からCrackle、米脚本家組合(WGA)のパネルディスカッション
8月06日 Fox
8月07日 FX
8月08日 ワーナースタジオへご招待、午後7時からTCA賞授賞式
8月09日 Acorn、DirecTV、Reelz、Hulu
8月10日 CBS
8月11日 The CW/Showtime
8月12日 NBCU傘下のケーブル局(USA、SyFy、Sprout、CNBC)
8月13日 NBC
7月28日、ネット配信の大御所Netflix社テッド・サランドス社長によるオリジナル作品への取り組み方で始まった2015年夏のTCAプレスツアーは、8月13日NBCの「Heroes Reborn」の制作発表のパネルインタビューで幕を閉じました。17日間に、総計146回の記者会見が実施されました。
オリジナル作品を配信するようになってまだ2年余りと言うのに、今一番鼻息が荒いNetflix社のサランドス社長。9月初旬に予定されている日本への乗り込みもプレゼンの注目点の一つとして提示された。 WENN.com
長かったようで、短かった、2015年夏のプレスツアーですが、ワクワク度の高い2014~15年の新番組はほんの数本と、お粗末な限り。黄金時代と言われる割には、新作に魅力がありません。
パネルインタビューでの言及頻度26回と最高記録を出したのは、他でもない’時の人’ドナルド・トランプ共和党次期大統領候補でした。又、最近漸く過去の犯罪を認めざるを得ない状況に追いやられつつあるビル・コスビーについて触れる場面も多々ありましたが、まだまだひそひそ声で、「余り公にはできませんが….」感たっぷりの発言でした。評論家仲間の間では、「コスビーの歳を考えれば、裁判を引き伸ばせば済むこと!」が代表的な反応でした。ここでも反社会的’悪事’を働いても、権力や金力で揉み消せば、罪の償いをせずに済むアンチヒーローの横行は、テレビ番組と同様まだまだ続くようです。あの世に行けば許されるなんて、安易過ぎませんか?
’時の人’トランプ(=自称ザ・ドナルド・左)は、独断と偏見に満ちた発言で世間を騒がせている。敵陣の最有力候補であるヒラリー・クリントンをまともな人間に見せるために、共謀しているのではないか?と思ってしまう。コスビーは、火のないところに煙は立たぬ論を、日に日に実証。昔から、人相が悪いと思っていたが、最近とみに悪相になってきた。 WENN.com
プレミア・ケーブルは当然ながら、ベーシック・ケーブルやオリジナル作品市場に最近参入したネット配信会社(Netflix、Amazon、Hulu)で制作に関与している人達は、相変わらずビジョン貫通の’自由’を謳歌、17日間に何と34回も’創作の自由’が指摘されました。これに対して、地上波局のお偉方が寄越す注意書き=意見は最近では前向きなものが多く、制作上大いに参考になったと37回指摘があり、地上波局もそろそろ恐竜のままでは生存の危機に瀕していると悟りつつあるのか、プロデューサーに台詞を吹き込んでいるのか?
毎ツアー、必ず出る決まり文句が、相も変わらず飛び出しました。時間繋ぎの常套手段なので、聞き流してはいますが…
1)脚本に惹かれて登板 今回は44回指摘
2)ロケ地もキャストの一部 今回は27回指摘
3)キャストは家族同然 今回は22回指摘
テレビ業界が今、「正に黄金時代」との指摘は23回に及びましたが、一方では「従来のニールセン社による視聴率は番組の全体像を捉えていない」と地上波局/ケーブル局のお偉方は、25回も反論しました。確かに、7月29日に、ニールセン社が提示した視聴率記録最新技術のプレゼン+質疑応答は、時代の流れに必死になって追いつこうとしている焦りを感じるのみで、解決策は無いの?と疑問が残りました。技術にテコ入れしている間に、ネット配信会社は着々と個人の嗜好分析を進め、スポンサーが喉から手が出るほど欲しがっている情報を蓄積しているのです。
そんな中、「我が局が一番!」と手前味噌を並べたお偉方は13人。ネット配信会社のように、従来の視聴率ではなく、加入者数を誇る視聴率無視型あり、14歳~25歳の青少年視聴者のみに絞り込み型あり、ドラマ/コメディー/リアリティー等ジャンル別分類型あり、エミー賞ノミネーション数自画自賛型あり、各局が切り口を変えて自局/自社の優位を自慢しました。唯一、テレビ業界の現実を包み隠さずありのままに分析/提示したFX局のジョン・ランドグラフCEOに何らかの賞を贈りたいと思うのは、私だけではありません。テレビ王として業界を見守り、混沌を乗り切る指導的立場に立って欲しいものです。
FX局CEOランドグラフは、元プロデューサーだけあって、自局の限界をしっかりと把握した上で、オリジナル作品に情熱を注ぎ込む「キュレーター役」と言う。大事に育て上げている自局作の「真の視聴数は60日後にしか出ない」と指摘、テレビ業界の今後2年を語った。 WENN.com
次回からは、印象深かった今プレスツアーのハイライトをご報告します。
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アマンダ・シュルを追い越す勢いの新人サラ・ヘイ
今夏もパイロットを片っ端から観て、プレスツアーに臨みました。
ツアーが始まる直前に、早く続きが観たい!と思ったシリーズは、
・Starz「Flesh and Bone」
・The CW「Crazy Ex-Girlfriend」
・CBS「Limitless」
の3作と、寂しい限りでしたが、プレスツアーに参加して下記の2作が新たに’早く続きが観たい!’リストに加わりました。
・Crackle「The Art of More」
・ABC「Quantico」
今回は、今秋私が最も期待するStarz(プレミア・ケーブル局)の意欲作「Flesh and Bone」をご紹介します。とは言え、放送前(11月8日、シリーズ全8話をストリーミング公開の予定)からシーズン継続は無いと発表があり、8話限定シリーズと心して楽しむしかないのが玉に瑕です。マシュー・グードが好演した「Dancing on the Edge」(2013年春放送)、「The White Queen」(2013年夏)に続く、プレミア・ケーブル局のイベントシリーズ/限定シリーズです。
【動画】「Flesh and Bone」予告編
パイロットと第2話をオンラインで観て、すっかりハマってしまった訳ですが、最大の魅力は主役のバレリーナを演じる役者の迫真の演技です。こんな名優がいたのか?と思うと同時に、踊れて演技ができるのか?名優で踊れるのか?という疑問が湧いてきました。7月31日午後に実施されたStarz局の最終セッションで、判明しました。
「『ブレイキング・バッド』でエミー賞を3回受賞したモイラ・ウォリー・ベケット作」と一番上に記してあるのみで、他はタイトルとプレミア日、局名しかない。細部に目を凝らすと、ピンクのトーシューズ、十字架のアンクレット、スパイクの付いたブレスレットに気が付く。更に、クレアの背中の刺青「take no prisoners」(捕虜は無用=皆殺しにしてやる!)は、華麗な世界に殴り込みをかけたクレアの気迫を物語っており、従来のバレエ物語ではないことが一目瞭然だ。これ程意味深の番宣ポスターは珍しい。
(C)2015 Courtesy of Starz
暗い過去に押しつぶされそうになりながらも、華麗で残酷なクラシックバレエの世界で、逞しく、危なっかしく、必死に生きるクレア・ロビンスの生き様を描きます。クリエイターのモイラ・ウォリー・ベケットは、「ブレイキング・バッド」で凄まじい人間ドラマを書いた体験を元に、「きらびやかで、現実離れした世界を美しい映像で見せるのが習わしだったけど、本作ではバレエ団の恥部を暴露する」と創作の動機を披露しました。「ボディダブルは絶対に使わない!」宣言をした手前、芝居上手なバレエダンサーを世界中で隈無く探して配役した本物嗜好のシリーズです。
それでも、クリエイターがイメージするクレアが最後の最後まで見つからず、制作を諦めかけていた時、本作の振付師イーサン・スティーフェルが、アメリカン・バレエ・シアター(ABT)時代、印象深かった生徒サラ・ヘイを思い出したと言います。ドレスデンのゼンパーオーパー・バレエ団で踊っていたヘイに白羽の矢が立ち、登板の運びとなりました。
主役を踊りたくて、鎬を削るアメリカン・バレエ・カンパニー(ABC)団員達は、ぽっと出のクレア(ヘイ・中央)へのやっかみを隠さない。 (C)2015 Courtesy of Starz
初めてのテレビシリーズについて、「クレアの職場での葛藤は、バレリーナなら誰でも体験したこと。私の日常よ!」と、実物ヘイはキャラよりずっと明るく語ります。撮影完了翌日には、ドレスデンの仕事に戻ったと告白したヘイですが、祖国アメリカでは活躍できるバレエ団が見つからず、探しあぐねた結果手に入れた天職ならこその意気込みと大いに納得が行きます。
クレア(ヘイ・左)の並外れた才能を利用して、12年前に設立したABCをNY一のバレエ団にしようと策略を巡らすディレクターのポール・グレイソン(ベン・ダニエルズ)。グレイソンは、躁鬱病でしかもバイセクシュアルの典型的な(?)芸術家で、クレアを将棋の駒扱いするが.... (C)2015 Courtesy of Starz
ダンサーはスポーツ選手と同様、体が資本ですから、短命は周知の事実。故に、死に物狂いで手に入れた地位は、何が何でも死守しなければならず、自ずとドラマが生まれます。しかも、3話以降は、クレアの暗い過去=家庭の事情が明るみに出ると説明がありましたが、「ブラック・スワン」のようなホラー/サイコスリラーではありません。
パネルインタビュー後、控え室に戻るヘイと立ち話をしました。演技指導を受けたことはないそうで、生まれつきの芸術家と読み取れました。「12モンキーズ」のアマンダ・シュルの前例を挙げたところ、「はい、知ってます。私の良き先輩にしたいです」と答え、27歳にしてそろそろバレエ界引退後の第二の人生を考えている様子でした。ドレスデンのバレエ団仲間と付き合っていて、「今日も一緒に来てるの」と打ち明けましたが、恋人云々より引退後は役者の道を選んで欲しいと伝えました。結婚して家庭に引っ込んでしまうのは、宝の持ち腐れです。礼儀正しく、謙虚、しかも芯の強そうな純粋培養は、今秋最も有望なニューフェースです。去年、ヒスパニック系少女のお手本になりたいと「Jane the Virgin」に登板したジーナ・ロドリゲスを彷彿させるスターレットです。
次回は、それほど斬新なアイデアではない分、役者の魅力で’続きが観たい!’と思った新作をご紹介します。お楽しみに。
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レイチェル・ブルーム、プリヤンカー・チョープラーの魅力でお薦め!
映画、テレビに関わらず、アイデアが枯渇して久しいエンタメ業界。しかも、テクノロジー時代の視聴者は、忍耐力が皆無の上、シンプル=つまらないの方程式が出来上がっているため、制作陣の苦肉の策は、過去にヒットした作品をあの手この手で’改善’することです。
’改善’には
1)ストーリーの切り口を変える
2)キャラの人種や性別に21世紀の世相を反映する
3)ジャンルを幾重にも重ねて複雑にする
などがありますが、リスクを嫌うハリウッドでは「前代未聞」のレッテルを貼られないことが鍵です。但し、いかなる手を講じても、主人公のキャラに’続きが観たい!’と思わせる魅力がなければ、ポシャることは間違いありません。
今回ご紹介するのは、それほど斬新なアイデアではない分、役者の魅力で’続きが観たい!’と思った作品です。
先ず、昨年は「Jane the Virgin」を放って、局自体の株が上がったThe CWの「Crazy Ex-Girlfriend」です。「フェリシティの青春」に「SMASH/スマッシュ」を掛け合わせた作品をイメージして頂ければ、大体内容はお分かりになるかと思いますが、タイトルとは裏腹に、歌って、踊って、大いに笑える優れものです。
【動画】ドラマ「Crazy Ex-Girlfriend」トレーラー
サマーキャンプで2ヶ月付き合ったジョシュ・チャン(ヴィンセント・ロドリゲス3世)にあっさりと振られたレベッカ・バンチ(レイチェル・ブルーム)の、10年後の恋人奪還作戦を綴るロマコメ・ミュージカルです。マンハッタンの一流弁護士事務所で出世街道を真っしぐらに走っていたレベッカが、10年前に逃がしたジョシュを取り戻すため、出世を棒に振って後先省みず、ジョシュの故郷カリフォルニア州ウエスト・コヴィーナに引っ越す一途さと、初っ端からレベッカに気があるグレッグ・セラーノ(サンティノ・フォンタナ)との三角関係が出来上がる点が「フェリシティの青春」と類似しています。ロマコメ・ミュージカル仕立てにしたことで、ひねりを効かせています。
レベッカを嫌味なく演じるブルームは、自作自演のコメディをオンライン発信して有名になった。「テレビシリーズを作らせてもらえるなんて、信じられないわ!時々、ドッキリカメラのカモにされているんじゃないか?と周囲を見回しちゃう!」と笑う。地元で育ったからこそ、何の変哲もないLA郊外の町ウエスト・コヴィーナを’ビーチから2時間、ラッシュ時には4時間’などと、笑い種にできる。 WENN.com
元々、ブルームと映画「プラダを着た悪魔」の脚本を書いたアライン・ブロッシュ・マッケンナが、プレミア・ケーブルShowtimeのために創作した作品です。Showtimeでは、プレミア・ケーブルが武器として使用してきた規制無しの’描写’で大人向けの30分コメディに仕上がっていたようですが、今回CWで放送が決まって、1時間(と言っても正味42分ですが)ものになり、地上波向けに書き替え、「長くなった分キャラの数を増やしたり、各キャラを深く掘り下げる予定」とクリエイターコンビが披露しました。
見所は盛り沢山ですが、
1)恋人奪還作戦=若気の至りを斜に見ながらも、応援する女の友情を描く
2)太陽とビーチがテーマのカリフォルニア文化の実情を、ウッディー・アレン女版レベッカの目から面白おかしく描く
3)ブロードウェイのベテラン達が配役されている本格的ミュージカルで、毎話あらゆるジャンルのオリジナル2~3曲を楽しめる
など、とにかくミュージカル好きには堪らない、一緒に歌って、踊りたくなる作品です。
一方、ABC「Quantico」は、「グレイズ・アナトミー」X「HOMELAND/ホームランド」と言う触れ込みで、鳴り物入り秋のデビューが見込まれるサスペンスドラマです。米連邦捜査局の捜査官になることを目指してクワンティコのFBIアカデミー集まって来た新入生のドラマで、主人公アレックス・パリッシュ(プリヤンカー・チョープラー)が仲間内に潜んでいたテロリストを捜査します。パイロットは、特に’続きを観なければ!’と思わせる魅力に欠けていましたが….
【動画】ドラマ「Quantico」トレーラー
8月4日、ビデオインタビューで目の前に座っていたチョープラーの眩いばかりの美しさにすっかり魅了されてしまいました。私の大好きなフクシャピンクのドレスを褒めると「4時間しか寝てないから、ドレスだけでも明るくしようと思ったの」と気さくに打ち明けるチョープラー。憧れのアメリカのテレビシリーズに初主演することが何よりも嬉しそうで、多様性を重視するABCの配役が痛くお気に入りのようでしたが、「逞しくてセクシーなジェイソン・ボーンの女版を観て欲しい!」と言います。過去にボクサーや刑事役もこなしているので、体を鍛えることには何の抵抗もないようです。但し、待ち時間なしで、「1日15時間以上働くテレビ業界には、まだ慣れない」とも言います。昨夏、初めてお目にかかったヴィオラ・デイヴィスも息を呑むほどの美しさでしたが、チョープラーは2000年のミス・ワールドに選ばれただけあって、気品のある物腰が絶世の美女と呼ばれる所以ではないでしょうか?
長い一日を乗り切ったチョープラーは、グリーンのドレスに衣装替えしてABCのオールスター・パーティーに登場。アジア人女性に珍しい低い、落ち着いた声が魅力だが、「そんな太い声では婿取りは無理!とよく注意されたわ」と、私と同様の’苦い体験’を打ち明けてくれた。絶世の美女にも悩み(?)があるのだ。 WENN.com
クリエイターのジョシュア・サフランは、「アレックスを水先案内人とする群像劇で、各キャラの過去に遡り、ドラマはテロ事件発生後のNYを現在進行形で描く『LOST』形式にした」と手の内を明かしました。女でもぞっこん惚れてしまうチョープラーを観るのが目的ですから、複雑過ぎて何が何だか?にならないようにお願いしたいものです。
ビデオインタビューの後、早速チョープラーのミュージックビデオやコマーシャルを観ましたが、「Crazy Ex-Girlfriend」のブルームと同じく、歌って、踊って、演技もできる所謂’トリプル・スレット’(三分野に優れた人)です。前回、ご紹介したサラ・ヘイも実は’トリプル・スレット’だったりして….
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孝行息子が変~身!?するテクノスリラー、欲望渦巻く未知の世界を描くドラマ
今秋もスーパーヒーローや世の終わり/大惨事に纏わる被害妄想アクションモノが目白押しで、同じようなパイロットを続けざまに観ると、どれがどれだったか?訳が分からなくなるほどです。
数ある似たり寄ったりの新ドラマの中で、CBSの「Limitless」はキャラの動機に惚れて’続きが観たい’と思った作品です。映画「リミットレス」(2011年公開)の続編をテレビシリーズ化したもので、新しいキャラが水先案内人をしてくれます。
【動画】「LIMITLESS」トレーラー
ブライアン・フィンチ(ジェイク・マクドーマン)が、FBIが支給するNZT(神経昂揚剤)を服用して、12時間強化版ブライアンに変身、脳機能を100%活用して事件解決に協力するテクノスリラーで、CBS局お得意の一話完結型犯罪捜査モノでありながら、筋は1本通っている連続ドラマ仕立てです。
続編の主人公ブライアンに抜擢されたマクドーマン。「Manhattan Love Story」で好演していたが、ABCが容赦なく打ち切り、画面から姿を消してしまっただけに、期待のドラマで復帰は大歓迎。 WENN.com
ミュージシャンとして大成できなかった負け組ブライアンのリベンジや野心からではなく、強化版ブライアンになって得た知恵を生かして、難病にかかった父親を救うことが目的なのです。今時珍しい親孝行なダメ息子です。降って湧いた第二の人生を、身内とは言え、人のために使うとは…何と殊勝な青年ではありませんか?
左からヒル・ハーパー(ボイル捜査官役)、マクドーマン、メアリー・エリザベス・マストラントニオ(プロジェクトを仕切るプーラン捜査官)。ハーパーは、どんなキャラを演じても、いつも暗~い....WENN.com
ブライアンの浪花節的行動に惚れて、’続きが観たい’と思ったのは私だけではありません。評論家仲間の間でも、今秋の期待できるドラマトップ5位に必ず上がります。しかし、8月10日に実施されたパネルインタビューでは、映画で主人公エディ・モーラを演じたブラッドリー・クーパーの’シリーズ関与度’が論点となりました。大統領選に出馬したモーラ上院議員=政界の黒幕として、映画撮影の合間に、時折出演する他、創作からキャラ設定まで深く関わっているなど、微に入り細に入り説明がありました。続編ですから、「エディ以外の人間に、NZTは効き目があるのか?’負け組’ブライアンに戻った時、どのような副作用があるのか?などを探りたい」とクリエイターのクレイグ・スウィーニーが述べました。
一方、ソニー系列のオンライン放送局Crackleの初のオリジナル作品「The Art of More」は、未知の世界を垣間見ることが大好きな好奇心満々の方にお薦めしたいドラマです。ブルックリンのブルーカラー社会で育ったグラハム・コナー(クリスチャン・クック)が、米陸軍兵士としてイラクで関わった骨董品窃盗団とのコネを利用して、NYの著名なオークションハウス、パーク・メイソン社に殴り込みをかけ、叩き上げのアカウント・エグゼクティブとしてのし上がって行きます。
【動画】「The Art of More」トレーラー
グラハム・コナーを演じる英国人俳優クック。ブルックリン出身の青年を演じるにあたり、「富裕層と接する時は、お里が知れないようにNYアクセントに切り替える知恵があり、密輸など違法行為に関わっている時は、荒っぽいブルックリン訛りに戻ってしまう柔軟なペテン師」と語った。英国北部出身のクックは、ロンドン生活7年にして、よそ者扱いされないために、地元人と同じ話し方をするようになった体験をそのまま活用。WENN.com
美術工芸品、骨董品、クラシックカーなどを収集する億万長者の物欲や自己顕示欲が描かれると同時に、競売会社間のクライアントの争奪戦や社内の蹴落とし合い、更に盗作、偽造などが描かれます。
裕福に育った不動産業界の大物サム・ブルックナーを演じるデニス・クエイド。物欲に目が眩んだ収集家と違う点は、「美術工芸品を使って権力を手にいれることが目的」とブルックナーを解説した。WENN.com
競合オークションハウスCEOの令嬢ロクサーヌ・ウィットニーを演じるケイト・ボスワース。グラハムとのクライアント争奪戦が見もの。WENN.com
最近は、中東のテロリスト団が骨董品を盗んで高値で売る=つまり世界中の大金持ちが美術工芸品と引き替えに、テロ活動を支援していると言う恐ろしいケースが増えており、本作は一般には知られていないオークションハウスの舞台裏を赤裸々に描きます。シーズン1は10話で綴る興味津々の豪華絢爛で、同時に醜い世界を暴くユニークなドラマです。
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インド色濃い?2015~16年シーズンの新作
テレビ作品が現実(=人種の多様性)を反映していないと、所謂少数民族から文句が出て15年余りの米国ですが、ここに来て漸くアフリカ系やヒスパニック系、果てはトランスジェンダーまでがキャストに含まれるようになりました。まだまだ’お義理で配役?’感が残るのはアジア系のみですが、毎年主流が中国系、韓国系などと振れる中、今夏の数々のドラマを観て気づいたのは、2015~16年シーズンの作品はインド色が濃いと言うことです。
最も顕著なインド色は、9月7日の記事でお薦めしたABC「Quantico」の主役アレックス・パリッシュ(インド人+白人のハーフ役)に抜擢されたプリヤンカー・チョープラーです。ミス・ワールドからボリウッド入りした世界的に有名な女優で、知らなかったのはアメリカ人だけかも知れません。そのチョープラーがABCのお抱え女優になったと言うことは、例え「Quantico」がポシャっても、今後数年はチョープラーを全面的に押す意図があってのことと読み取れます。
ABC「Quantico」の主役アレックスに抜擢されたプリヤンカー・チョープラー。今年の’インド色’の中で、一際輝くチョープラーは、容姿、才能、好感度など、どれを取っても申し分がない。 WENN.com
主役級は、2012~15年自作自演の「The Mindy Project」で、コメディエンヌのみならずプロデューサーとしても地位を確立したミンディ・カリングが最も有名でしょう。2003年オフ・ブロードウエイから頭角を現し、数々の映画やテレビ出演を経て、「ザ・オフィス」アメリカ版のレギュラーを長年務めたインド系アメリカ人です。声に敏感な私は、カリングの甲高い声に拒否反応を起こすことと、コメディ業界での苦い体験が災いしているのか、カリングの心の奥深く秘められた’怒り’を感じてしまうため、残念ながらどうしても好きになれません。コメディアンの世界は確かに’怒り’をブチまけて笑いを取る人がほとんどですが、私は温和なコメディアンが好きです。
Foxで3シーズン自作自演したミンディ・カリング。今月末からHuluに鞍替えする「The Mindy Project」について、「Huluのオリジナル作品に加えてもらったことが、何より嬉しい!」と、8月9日のパネルインタビューで涙ながらに語った。 WENN.com
他にも列挙すると、インド系英国人のクナル・ネイヤー(「ビッグバン✮セオリー/ギークなボクらの恋愛法則」)、エミー賞助演女優賞に輝いたアーチー・パンジャビ(「グッド・ワイフ」)、ラザ・ジェフリー(「SMASH」「HOMELAND」)などが今世紀に入って、気長にアジア人俳優インド人部門を開拓してきました。パンジャビは、「グッド・ワイフ」降板後、直ぐに主役が決まっていると報じられていましたが、2015~16年シーズンのパイロットでは見かけませんでした。来春以降なのでしょうか?ジェフリーは、下記「Code Black」にハドソン医師として出演しています。
(左から)「ビッグバン」で、インド料理や人ごみが嫌いな’変なインド人’ラジェッシュを演じるクナル・ネイヤー、「グッド・ワイフ」シーズン1で彗星の如く登場し、ジュリアナ・マルグリーズより先にエミー賞を獲得したアーチー・パンジャビ、ここ数年テレビで活躍するようになったラザ・ジェフリー。 WENN.com
助演ではありますが、今秋初めて目にするインド系アメリカ人は、上出の9月7日の記事でお薦めした「Crazy Ex-Girlfriend」で、レイチェルの隣人でプー太郎を決め込んだヘザー・パテル役に3話以降登場する新人ヴェラ・ラヴェルです。パイロットしか視聴していないので、ラヴェルの芝居はまだ観ていませんが、ジュリアード音楽院出で、「Crazy Ex-Girlfriend」のキャストに選ばれたと言う事実から、トリプル・スレットであることに間違いないでしょう。芸能界にはまだ5年足らずの新人です。
新人ヴェラ・ラヴェルは、3話から「Crazy Ex-Girlfriend」のキャストに仲間入り。ベテランに混じって、どこまでジュリアードで学んだことを発揮するか、大いに楽しみだ。 WENN.com
もう一人、私が注目しているのは、「Code Black」(CBS)でマラヤ・ピネダ研修医を演じるメラニー・チャンドラです。2009年芸能界入りしたイリノイ州出身のインド系アメリカ人ですが、前出のチョープラーと同様、2007年にミス・インド・アメリカに輝いた美女です。スタンフォード大卒で、何と機械工学を専攻、4年生で学生自治会の会長を務める一方、チアリーダーとして活躍したり、空手の黒帯保持者と言いますから、正に才色兼備です。
CBSの医療ドラマ「Code Black」で、マラヤ・ピネダ研修医を演じるメラニー・チャンドラ。2014年には、短編コメディ「Bollywood Stripper」を制作する一方、HBOのコメディ「The Brink」でも女優としての実力を実証した。 WENN.com
【動画】「Code Black」トレーラー
「Code Black」のパネルインタビューでは、群像劇の一大キャストの一人として、発言の機会はありませんでしたが、セッション後、パイロットを観た時にキラリと輝いていたので期待していると立ち話をしました。2015~16年シーズンの新作はインド色濃いことを指摘しましたが、「この役は学ぶことが山ほどあるし、猛スピードで進むから自分の役をこなすことだけで精一杯です」との答えでした。何しろ、久しぶりの「ER緊急救命室」級の群像ドラマなので、チャンドラが演じるマラヤの人となりに行き着くのは、シーズン2以降かもしれません。
番組として、インドを前面に押し出すのはPBSが放つシリーズ「Indian Summers」とドキュメンタリー「India’s Daughter」です。米国ではPBSのMasterpieceと呼ばれる名作劇場の時間枠を設けており、世界的にヒットした「ダウントン・アビー」や「SHERLOCK/シャーロック」、シーズン2撮影中の「Poldark」など数々の名作を世に送り出してきました。Masterpiece傘下の最新作として9月27日にデビューするのが、新作「Indian Summers」です。
【動画】「Indian Summers」トレーラー
ヒマラヤ山脈の麓にあるシムラは、英国人統治者=政界の黒幕が、毎夏避暑に集まって来る小さな村です。未亡人シンシア(ジュリー・ウォルターズ)が牛耳るロイヤルクラブで繰り広げられる人間ドラマを描きます。英国領インド帝国の終焉を勘付き、必死でしがみつく英国人、盛り上がる反英感情や独立運動に勤しむインド人を対比します。1932~47年の15年間を描くMasterpieceお得意の歴史小説と言えるでしょう。
逆に、一見近代化したようで、実はカースト制度が根強く残る現代のインドの恥部を暴くのが、ドキュメンタリー「India’s Daughter」です。2012年12月に首都ニューデリーで起きた集団暴行を、被害者の両親、加害者、被害者死亡後のデモ行進、警察や加害者の見解、文化人のコメントを映像とインタビューで綴ります。男尊女卑文化や貧富の差など、事件の発端や背景を探りますが、世界中が見守る中、インドは変わるのでしょうか?こんな惨たらしい事件を目の当たりにして、国内のみならず世界中からプレッシャーがかかっているにも関わらず、インドはこのドキュメンタリー映画の公開禁止を言い渡しました。サンディーフック小学校以降、米国の銃乱射事件が、毎日一件の割で発生している事実に触れた時と同じく、また喉元過ぎれば…で終わってしまうのでは?と不安になります。
【動画】「India’s Daughter」トレーラー
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事実は小説よりも奇なり!を実証する最近のドキュメンタリーが面白い
1999年に米国で制作されたドラマは29本でしたが、今年は400本に至りました。奇しくも、私がテレビ評論家として業界を内側から見るようになったのも、過去15年ほどになります。この数字を見た時に、私が2010年あたりから、唸るほどの秀作が出現しなくなったと嘆くのは、この水増し状況が原因だと気が付きました。13倍強に希釈すれば、1本1本の濃度が薄まる=悪くはないけれど、毎週続きを観たい!と思わない凡作がほとんどなワケです。むやみに数を出せば良いってもんではないと実証されたことになります。
秀作を生み出す力のあるクリエイターの数に限りがあるので、並みの放送作家は、苦肉の策として映画やテレビシリーズのリメイクやスピンオフ、あるいはジャンルを超えたハイブリッドなどをひねり出しますが…それでも、スピルバーグのお墨付き作品がどれもヒットしないのは、視聴者の目が肥えているからでしょう。更に、映画とテレビの境界線がぶれ、映画館からお茶の間に’鳴り物入り’スーパーヒーローモノが多数侵入して幅を利かせ、ユニークなドラマが生まれ難い環境になってしまいました。
今秋、ユニークで斬新な作品は、「Flash & Bone」(9月3日にご紹介)「Crazy Ex-Girlfriend」(9月7日)と「The Art of More」(9月10日)の3本しかありません。実に情けない限りです。
暴力沙汰で目も当てられないドラマや、結末見え見えの面白くない作品に無駄な時間を費やしたくないので、当然のことながら最近とみにドキュメンタリーに手が出てしまいます。特記に値する作品として
2013年1月30日にHBO「Mea Maxima Culpa: Silence in the House of God」
2013年2月28日にPBS「The Central Park Five」
2014年4月21日にPBS「A Fragile Trust」
をご紹介しました。自分なりに分析してみたところ、所謂’暴露モノ’ドキュメンタリーは、何度観ても飽きが来ないと判明しました。悪事や嘘を重ねて来たにも関わらず、良心の呵責を感じるどころか、周囲の人間や生い立ちの所為にするサイコバスの’とどのつまり’が明確で、爽快感があるからでしょう。
2014年11月からShowtimeで繰り返し放送されている「Stop at Nothing: The Lance Armstrong Story」は、癌を克服してツール・ド・フランス7連覇を果たし、自転車ロードレース界のみならず「叩き上げ根性」や「アメリカン・ドリーム」の権化として一世を風靡したランス・アームストロングの栄枯盛衰を描いています。
【動画】「Stop At Nothing: The Lance Armstrong Story」トレーラー
ドーピング疑惑で痛い所を突かれると猛烈な攻撃に出る、後ろめたさの裏返しとして責められる前に相手を責める(名誉毀損や損害賠償などの訴訟好きとして有名)など、アームストロングを敵に回した自転車レースの先輩/同輩/後輩や使用人、ジャーナリストなどへのマフィア的行動を記録した作品です。プロデビューから、’時代の寵児’がタイトル剥奪、水泳、トライアスロンを含む自転車競技から永久追放されるまでを描きます。
2010年12月米国で公開された映画「All Good Things」(邦題「幸せの行方」)をご覧になった方に特にお薦めしたいのは、映画を制作、演出したアンドリュー・ジャレッキーがHBOのために制作した「The Jinx: The Life and Deaths of Robert Durst」です。
過去10年余り、ロバート・ダーストで頭が一杯だったアンドリュー・ジャレッキー。生まれ育った環境は同じでも、「NYの黒幕一家の御曹司に掛けられた期待とプレッシャーに押し潰されたダーストは、世捨て人になるしか道がなかったように見受けた」と、ジャレッキーは印象を述べた。確かに、ダーストの眼は完全に光を失って、魂が抜けたようだ。 WENN.com
映画でライアン・ゴスリングが演じたキャラのモデル、NYの不動産王ダースト一族の長男ロバート・ダースト(当年とって71歳)の気味悪い生き様と妻、友人、隣人の謎の死を6話で検証するドキュメンタリー・シリーズです。
【動画】「THE JINX - The Life and Deaths of Robert Durst」トレーラー
本作も、アームストロング同様、良心の呵責、他人への思いやりに欠け、コントロールが効かなくなると周囲や環境の所為にするサイコバスの成れの果てを全米に披露しました。動かぬ証拠をダーストに提示したシリーズ最終回で、マイクを付けたまま入ったトイレで呟いた犯行を認めるかのような独り言が、そっくりそのまま放送され、後日逮捕、追訴に繋がり、ドキュメンタリーの力を証明する結果となりました。
今年1月8日に実施された同シリーズのパネルインタビューで、ジャレッキーは初めてダーストと会った時の模様を「握手した時に、少なくともガルベストンで隣人の遺体を解体した『手』を握っているんだ!と妙な気持ちになった」と語りました。映画同様、約5年の歳月をかけてドキュメンタリーを制作した動機について、「生まれ育った環境が酷似しているので、どこでどう間違うとサイコパスになるのか?に大いに興味があった」と言います。それでも、興味半分、恐怖半分だったようで、「ダーストの操り人形/スポークスマンに利用されてなるものか!視聴者に判断を委ねるために、飽くまでも証言の一部とするのが自分の使命だと信じていた」とジャレッキーは固く決心して撮影に臨みました。
TCA賞、エミー賞受賞時、ジャレッキーは「これまで完全に無視されてきた妻キャシーさんの遺族に、何らかの結末を提供することができて嬉しい」と述べました。それにしても、金と力で’お裁き’を巧みに免れてきたダーストですから、逮捕されるまでは’消される’のでは?と危惧して、「一家で身を隠していた」と言いますから、サイコバスを暴露するドキュメンタリー制作は命がけ!です。
PBSの「The Central Park Five」のように、真犯人の逮捕に繋がったり、「The Jinx」のように逮捕、追訴など、好ましい結果を生み出すドキュメンタリーは、爽快感がありますが、今秋プレミアが待たれる次の3作は、遺憾ながら問題提起に終わっています。
9月28日、HBOで放送される「San Francisco 2.0」は、ITに乗っ取られた「霧の町」サンフランシスコの現状を描くドキュメンタリーです。ゴールドラッシュで発展、60年代はヒッピー、70年代はゲイが集まる反体制文化の中心地として全世界に名を馳せたサンフランシスコ。しかし、IT産業が集中していた地域(パロアルトやサンホセなど)が既に満杯となり、近年サンフランシスコに住んでIT企業のバスで通勤する若者が急増していることに目を付けたデベロッパーが、あらゆる手を使ってIT成金しか住めない町に創り替えようとしています。ここ数年、毎年サンフランシスコに出張する機会に恵まれ、建設ブームでLAとは打って変わって活気に満ちているなーと肌で感じていましたが、本作はブームの裏を暴き出します。
【動画】「San Francisco 2.0 」トレーラー
本ドキュメンタリーは、「デジタル・ゴールドラッシュ」と呼ばれる好景気再来の裏で、住み慣れた町を追い出されて路頭に迷っている庶民が急増している現実を指摘します。しかし、一攫千金を夢見て博打打ちが集まって来る町は、物理的/金銭的/精神的に住めない庶民を排出します。マンハッタン、ヴァンクーバー、ロンドンなど、過去の例は多々あります。資本主義社会では、致し方のないことですが….本作を制作したアレクザンドラ・ペローシーは、解決策のヒントさえ与えてくれませんでした。
10月10日放送開始となるShowtimeの「Prophet’s Prey」は、カルト教団の指導者が終身刑+20年の禁固刑に服しているにも関わらず、1万人余りの信徒は刑務所から送られて来る説教を’殉教者の声’と崇め、益々団結を固めていると言う、いとも恐ろしく、悲しい事実を突きつけます。
【動画】「Prophet's Prey 」トレーラー
一夫多妻制を飽くまで主張してモルモン教から分派せざるを得なくなったThe Fundamentalist Church of Jesus Christ of Latter-Day Saints(FLDS=末日聖徒イエス・キリスト原理主義教会)の歴史に始まり、2002年教団の指導者となったウォレン・ジェフス(当時、46歳)の「神に選ばれた預言者」としての独裁振りと狂気の沙汰を綴ります。信徒が外界で稼いで来た収入を吸い上げて構築した孤立共同体は、自給自足、外界から完全に隔離して、信徒の反発の芽をもぎ取ります。ジェフスは’神のお告げ’と称して理不尽な規則をでっち上げ、従わない者は最後の審判で刑罰に処されると脅します。信徒は幼い頃から労働にふされ、一般教養ではなくFLDSの歴史を14~15歳まで叩き込まれて、洗脳されます。重婚や未成年者への性的行為がもっともセンセーショナルに取り沙汰されていますが、ジェフスが服役しているにも関わらず、信徒の盲目的な従順=信仰が何よりも怖いと思いました。何世代にも渡って、この手のカルト教団で洗脳されると、常識や教育を施されていないため、考えることができなくなっているのでしょう。刑務所を解錠したのに、囚人が脱獄したがらないのは、外界で生き延びる知恵も勇気も好奇心もとっくの昔に摘み取られてしまい、恐怖におののいているからに違いありません。信仰の刑務所に閉じ込められている人を救うことは、至難の技だと実証した、切ないドキュメンタリーです。
最後は、米国では11月16日PBSで放送予定のドキュメンタリー「India’s Daughter」です。9月15日の「インド色濃い?2015~16年シーズンの新作」で既にご紹介しましたが、2012年12月にニューデリーで起きた集団暴行殺害事件を検証する生々しいドキュメンタリーです。本作も「San Francisco 2.0」や「Prophet’s Prey」と同じく、男尊女卑やカースト制度の虜になっているインド人を解放するのは、外圧と同時に教育で内側から変える努力です。気が遠くなる話ですが、鉄は熱いうちに打て!の言葉通り、今こそはじめの一歩を踏み出すしかありません。
【動画】「India’s Daughter」トレーラー
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差別撤廃宣言には、まだまだ程遠い!エミー賞
第67回エミー賞授賞式が9月21日、無事終了しました。例年、誰が受賞するかを予想して欲しいと依頼されますが、今年は本サイトのスペシャル動画企画「第67回エミー賞授賞式直前のハリウッドに行ってみた!ハリウッドの達人に聞く!エミー賞授賞式の楽しみ方編」の第1回~第4回でノミネートされている俳優の中で、受賞して欲しい!と切望している人の名前を数人あげました。
どうでも良い年が何年か続き、今年も希望的予想は一応あったのですが...9月18日に思い立って、好みに執着しない現実的な予想を書き出しました。
最優秀ドラマ:「ゲーム・オブ・スローンズ」
最優秀主演男優賞:カイル・チャンドラー
最優秀主演女優賞:ヴィオラ・デイヴィス
最優秀助演男優賞:ピーター・ディンクレイジ
最優秀助演女優賞:エミリア・クラーク
最優秀コメディ:「Transparent」
最優秀主演男優賞:ジェフリー・タンボー
最優秀主演女優賞:ジュリア・ルイス=ドレイファス
最優秀助演男優賞:トニー・ヘール
最優秀助演女優賞:アリソン・ジェニー
この予想一覧表を手に、放送を観たところ...
最優秀主演男優賞:ジョン・ハム
最優秀助演女優賞:ウゾ・アドゥーバ
最優秀コメディ:「Veep」
の3賞を外しましたが、打率は7割と過去最高を記録しました。
悲願のエミー賞を手にしたジョン・ハム(左)は、個人名を長々と羅列して謝恩スピーチをした。愛犬の名前まで含まれていたと後で判明。カイル・チャンドラー(右)に2本目のエミー賞を持って帰ってもらいたかったのは私だけではない。 WENN.com
最優秀主演男優賞の本命はハムと噂されていましたが、高視聴率を獲得した「HOUSE」で熱演したヒュー・ローリーが毎年ノミネートされていたにも関わらず、投票権を握っているテレビアカデミー俳優グループは、今年で最後だからと言うお情け票を投じなかった過去の実例がまだ記憶に新しいからです。とは言え、私が長年肩入れしてきたチャンドラーに2本目のエミーを手にして欲しかった!が本音です。
司会のアンディ・サムバーグは、ハムが舞台を去る後ろ姿に「僕はカイル・チャンドラーを応援してたんだけどな~~」と遺憾の意を表しました。私の言いたかったことを、そっくりそのまま、最高のタイミングで口にして頂いて、感謝感激雨嵐で~す。サムバーグの本音だったように見受けたので、今まではどうでも良かった俳優ですが、今後サムバーグを応援しよう!と思いました。
アンディ・サムバーグは、誰もが神経過敏になっている’差別’にさりげなく、嫌味なく触れ、好評を博した。「チャンドラーを応援していた」と司会者には珍しく私見を告白した点だけでも、私の世界では株が上がった。 WENN.com
また、「Transparent」を最優秀コメディと予想したのは、今年はトランスジェンダーの年だからですが、意外にも私の大好きな「Veep」が初受賞しました。主演男優賞は「Transparent」のジェフリー・タンボーが受賞しましたが、パーティーの席で「これで少しは視聴者が増えると良いのですが」と述べ、ストリーミング配信は誰が観ているか分からないという地上波局やケーブル局の懸念を証明してしまいました。
「Transparent」のトランスジェンダー役で、主演男優賞を受賞したジェフリー・タンボー。「意欲作に挑戦して、人生が変わった」と述べた。 WENN.com
最優秀コメディ賞は、2012年から4年連続ノミネートされた「Veep」が受賞!英国人制作陣は「米政界を風刺して、ドルを稼がせてもらえて最高!」と会場を沸かせた。チームワークの良さ+きめ細やかな手作り感+文句無しの出来栄えが、受賞に繋がったと読む。 WENN.com
式典初っ端から「人種の多様性」が謳われましたが、白人が大半を占める客席を見回したサムバーグが、「ジャッキー・ロビンソンの初試合で、『ドジャース史初の多様性をご覧あれ!』と宣言したようなものですが…」と、差別撤廃からは程遠いことを指摘しました。1890年以降白人選手はMLB、黒人選手はニグロリーグと完全に分離されていた球界で、初めてMLB参加が許され、有色人種のメジャーリーグ入りの道を切り開いたパイオニアがロビンソンなのです。
黒人女優3人がエミー賞を手にしたくらいで、「人種の多様性」などちゃんちゃらおかしいではありませんか?精々、「エボニー&アイボリー」くらいで収めておけば良かったのでは?それでも、「American Crime」でノミネートされていた数々の役者や放送作家を出し抜いて、演技派レジーナ・キングが唯一助演女優賞で評価されたのは、嬉しいことです。更に、ドラマ部門のウゾ・アドゥーバとヴィオラ・デイヴィスで総計3人です。
ハリウッドのパイオニア・トリオは、(左から)ヴィオラ・デイヴィス、ウゾ・アドゥーバ、レジーナ・キング。ラテン系、アジア系の俳優が受賞するのはいつのことだろう?私の目の黒いうちにお願いしたいものだ。 WENN.com
デイヴィスが受賞しなきゃ嘘でしょ!と思ってはいましたが、受賞スピーチにはジュリアード学院卒でありながら、肌の色だけで差別されてきた苦難が存分に込められていました。ラテン系、アジア系然り、白人以外の俳優は、善くぞ言ってくれました!と喝采したに違いありません。そして、今日のために、茨の道を切り開いてくれたハル・ベリー、ケリー・ワシントン(「スキャンダル」)と、ワシントンに続いてシリーズ主演を果たしたニコール・ベハーリー(「スリーピー・ホロウ」)にも言及しました。デイヴィスほどの大物映画女優が登場するまでは、ワシントンとベハーリーがシリーズで頑張って地盤を築いていたからです。
やっと手にしたエミー賞、「次はアカデミー賞!」と思ったのですが…人の成功を素直に喜べない人が約1名いたのです。昼メロのベテラン女優ナンシー・リー・グラーン(57歳)が「ションダ・ライムズにスピーチを書いてもらうべきだと思う」に始まり、「私はもう40年女優をやってるけど、女優には尊敬もチャンスもあったもんじゃない。エミーは人種差別を訴える場じゃないわ。女は皆んな見くびられてるだから!」などと、つぶやいてデイヴィスの受賞にケチをつけました。確かに、差別は人種に限ったことではなく、性別、年齢が業界の争点となってうん十年です。しかし、グラーンは「デイヴィスはこれまで人種差別を受けていない。デイヴィス同様のチャンスが自分も欲しかった…」などと、恥の上塗りをする始末。業界人のみでなく、全米を敵に回して、引っ込みがつかなくなりました。翌日、謝罪と称して、まるで弁護士のような発言で怒り狂っている人達(特に、黒人)を煙に巻き、1週間後には話題に上らなくなりました。果たして、あれは今後益々チャンスが激減して消え失せるしかない女優の売名行為=最後の足掻きだったのでしょうか?それとも、今絶好調の名優デイヴィスへの単なるやっかみでしょうか?
あれだけテレビアカデミー会員が執着してきた「マッドメン」も、安直な結末でシリーズが完了、ジョン・ハムが悲願の主演男優賞を獲得して、過去の栄光に終止符を打ちました。今年は「人種の多様性」の名の下、名優デイヴィスの心からの発言で歴史的瞬間を祝う筈だったのですが、グラーンの心無いつぶやきのお陰で、何とも後味の悪い年となりました。
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2015年新番組、放送1ヶ月後の成績表ーABCとCBS
地上波5局の新番組20本は、今年も9月21日から追々始まりました。昨年同様、パイロットのみ放送して打ち切りという極端な例はありません。地上波局は、漸く放送後1ヶ月の期間に配信形態の異なる視聴方法で、何人の目に触れたかの総計が出るまでは、じっと我慢の子でいるしかないと悟ったようです。とは言え、翌日の視聴率は嫌でも耳に入って来るので、期待の割に視聴率が取れず、お先真っ暗なの?と心配になります。10月18日現在、打ち切り第1号の発表はありません。
■ ABC
ドラマ
◇「Blood & Oil」
裏番組が「グッドワイフ」や「ウォーキング・デッド」など何シーズンも続いているヒット作であることも大いに影響しているとは思いますが、とにかく出だしから視聴率がとれません。チェイス・クロフォードが「ゴシップガール」の優男(優少年?)のイメージを脱却しようと必死に逞しい男を演じていますが、続きを観たい!と思わせないのは、欲深い人間集団に共感できない視聴者が多いからではないでしょうか?今年初の打ち切り候補第一位です。
ビリー役でイメチェンを狙うチェイス・クロフォードだが、我利我利亡者に囲まれて、どう見ても線が細い。WENN.com
◇「Quantico」
特に斬新なアイデアではないだけに、果たしてプリヤンカー・チョープラーの魅力だけでシリーズが成立するのか?と心配していましたが、午後9時枠の「Blood & Oil」の視聴率が低迷しているお陰で、午後10時枠の本作が何倍も輝いて見えます。シーズン1確約の発表がありました。
美貌だけでなく、頭脳も体力も要求されるアレックス役は、プリヤンカー・チョープラーにとってはもってこいの役だ。テレビシリーズの撮影スピードに慣れただろうか?WENN.com
◇「Wicked City」
1980年代のLAを舞台に連続殺人鬼男女コンビを描く犯罪捜査ドラマ。こちらも「ゴシップガール」出身のエド・ウェストウィックが、何を思ったか連続殺人鬼を演じます。映画「俺たちに明日はない」で描かれた強盗殺人犯ボニー&クライドを、連続殺人鬼ケント&ベティーに模様替え(?)。ディズニーABCの社風にそぐわないエログロから、何か学び取ることがあるのでしょうか?
連続殺人鬼ケントを演じるエド・ウェストウィック。「ゴシップガール」で演じたプレーポーイに殺人要素を加えただけ?WENN.com
継続ドラマ
毎週木曜日はションダ・ライムズ日で、午後8時「グレイズ・アナトミー」9時「スキャンダル」10時に「殺人を無罪にする方法」(以下「殺人」と省略)とプライムタイムを独占しています。
継続する意味がない「グレイズ」、優柔不断なオリビアに苛立ち、メリー側に乗り換えた視聴者もいるのではないか?と思う「スキャンダル」。「殺人」は、主演のヴィオラ・デイヴィスが黒人女優として初めてエミー賞を手にしたこともあって、アナリースの奇行が益々悪化しており、敏腕弁護士/大学教授の品格などどこ吹く風!アナリースは「ダメージ」のパティー・ヒューズではなく、「グッドワイフ」のカリンダ・シャルマを彷彿させる、勝つためには手段を選ばない破廉恥キャラに成り下がってしまいました。ライムズ好みのメロドラマに豹変してしまったのは、残念です。
アナリースを演じて、エミー賞ドラマ部門の最優秀女優賞を受賞したヴィオラ・デイヴィス。パティー・ヒューズ級の敏腕弁護士ではあるが、カリンダ・シャルマ張りの狡猾さは興醒めだ。WENN.com
コメディー
◇「The Muppets」
4話放送。カーミットが制作するミス・ピギーのトーク番組の舞台裏をユーモアたっぷりに描いていますが、内輪ユーモアがどこまで通じているのでしょうか?プレミア以来、毎回視聴率が下降しています。
◇「Dr. Ken」
3話放送。医師から俳優に転業したコメディアンのケン・チョンの体験を元に自作自演するコメディー。昨年絶賛された「Black-ish」(黒人文化)と「Fresh Off the Boat」(台湾)に続く◇「Dr. Ken」(韓国)は、人種の多様性を前面に押し出すABCならではの作品です。
自叙伝を自作自演するケン・チョン。この手の人種別コメディーは、人種毎に植え付けられた固定観念を却って助長するのではないか?WENN.com
■ CBS
ドラマ
◇「Limitless」
4話放送。1日も早く22話を確約して欲しい2015年シーズンの最も楽しい新作です。先週、他局でオリジナル映画「リミットレス」を観て、テレビ化する際に暗い影の部分が巧みに取り除かれたことが分かりました。時々、登場するブラッドリー・クーパーの胡散臭いエディー・モーラ上院議員が、’暗影’を持ち込みますが、ジェイク・マクドーマン(「Manhattan Love Story」)のブライアン・フィンチが負け組と勝ち組を好演して吹き飛ばしてくれます。マクドーマンの実力が活かされて、とにかく楽しい作品に仕上がっており、プレミア日の視聴率を維持する偉業を成し遂げています。
ブライアン役を好演しているジェイク・マクドーマン。「Manhattan Love Story」で共演したアナリー・ティプトンが、元彼女ショウナ役で第三話に登場した。WENN.com
◇「Code Black」
3話放送。9月30日のプレミア日でさえ視聴率が取れず、青息吐息です。ハーデン級の名優でも、「エキストラでさえ本物の看護師を配役!」と宣伝しても、この何の特徴もない医療ドラマを救うことはできないでしょう。
CBSは、何度も医療ドラマに挑戦してきましたが、毎回失敗に終わっています。犯罪捜査局と化したCBSの定着ドラマに匹敵するほどの医療ドラマがないと言うよりは、視聴率のハードルが高すぎる割には、局側の辛抱が足りないからだと思います。
◇「Supergirl」
プレミアは10月26日。CBSのドル箱コメディー「ビッグバン★セオリー ギークなボクら恋愛法則」の後続番組であり、前評判がかなり高かったこと、パイロットが面白かったことなどを考えると、かなりの視聴率が取れるものと期待されています。
ワーナーの撮影所ツアーをした時に、5サウンドステージを使って、テレビ史上最大規模の制作をしていると聞きました。初期投資を考えると、シーズン1は何があっても安泰と予想されます。
継続ドラマ
「グッドワイフ」は、10月4日からシーズン7が始まっています。毎年、アリシアの成長過程を辿って行くのが本作の意図ですが、今年は第一話を送って来るでもなし、夏のプレスツアーに制作陣が姿を現す訳でもなく、情報不足でシーズン7が始まってしまいました。今シーズンで完了?と言う噂が流れていますが、クリエイターコンビ(ロバート&ミシェル・キング夫妻)が夏にNYに移転した上、来年夏に政界コメディー「BrainDead」を発表するため、嘗てほど「グッドワイフ」に力を注いでいないように見受けます。
日本では、シーズン4以降放送されていないので、2シーズンが抜けてしまいますが、シーズン6がアリシアの政界デビュー(?)なら、今シーズンはアリシアの独立独歩を夫ピーターの大統領選出馬を背景に描きます。本シリーズが始まった時から、キング夫妻は「アリシアの終着点は明白」と宣言してきました。私は、終着点をアリシアの大統領就任だと読んだので、就任した時点で本作が完了するものと信じています。
シーズン7は、例年の如くアリシアの背景/環境が大きく変化しました。カリンダ、フィンは姿を消し、古巣の法律事務所に戻れなくなってしまったので、ダイアンやケーリーなどとも接点が減少しています。長女グレイスがアリシアのアシスタント兼相談役に昇進したことは喜ばしいことです。今シーズンのアリシアの相手役は、ジェフリー・ディーン・モーガンが演じるジェイソンで、カリンダの後釜に座った胡散臭い私立探偵です。
コメディー
◇「Angel From Hell」
11月5日にデビューする予定だった、ジェーン・リンチ主演のコメディは、来春に延期されました。唯の酔っ払い?それとも守護天使か?どちらとも取れる、ちょっと意味深なコメディーですが、いつまで疑惑を維持できるのか?と心配しています。
ジェーン・リンチが天使?酔っ払い?を演じるコメディー。11月初旬にプレミアが予定されていたが、急遽来春に延期された。理由は不明。WENN.com
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2015年新番組、放送1ヶ月後の成績表ーCW, FOX, NBC
2015年10月20日現在の、CW、FOX、NBCの新作の成績です。
■ The CW
ドラマ
◇「Crazy Ex-Girlfriend」
10月5日にデビューしたばかりのミュージカル・コメディー。あれだけ、街中で番宣ポスターを目にし、好意的な作品評が出回っていたにも関わらず、プレミア日の視聴率は期待を大きく裏切る低さでした。裏番組「ビッグバン★セオリー ギークなボクら恋愛法則」と「ヴォイス」に対抗したのは得策とは言えませんが、視聴率低迷など何のその!と「Jane the Virgin」を更新したCWですから、「Crazy Ex-Girlfriend」を辛抱強く見守って行くつもりなのでしょう。
9月7日に、「レイチェル・ブルーム、プリヤンカー・チョープラーの魅力でお薦め!」で本作を推薦しましたが、英語の評論も是非、ご一読ください。
http://www.familychoiceawards.com/entertainment/crazy-ex-girlfriend-premiers-on-the-cw/
■ FOX
ドラマ
◇「Minority Report」
5話放送済みですが、9月21日のデビュー回から全く視聴率を獲得できません。コミコンでSFあるいは「マイノリティー・リポート」オタクから絶賛を博しても、必ずしも視聴率につながらないことが、又々証明されました。
スピルバーグ監督の映画「マイノリティー・リポート」のテレビ化ですが、映画の最終シーンで姿を消した3人の予知能力者(=プリコグ)の物語で、映画の11年後(2065年)の未来社会が舞台となっています。青年ダッシュ(スターク・サンズ)が、予知夢を利用してメトロ警察署のヴェガ刑事(ミーガン・グッド)と殺人阻止に乗り出します。違う世界からやって来た白人男性と敏腕黒人女性刑事の会話は、「スリーピー・ホロウ」のイカボッド・クレーン+ミルズ刑事を彷彿させます。従って、「いずれ、面白くなるのかな~~」と期待して観ているのですが....
残念ながら、シーズン1の契約本数13話を10話に削減されてしまいました。10話で一巻の終わりとなるのでしょうか?それとも、スピルバーグのお墨付きで世界に放送権を売ってしまった手前、シーズン2まで引き延ばすのでしょうか?
◇「Rosewood」
「エンパイア」(午後9時放送)の先行番組として、9月23日のプレミア回は750万人が視聴しましたが、毎週確実に620万(9月30日)、570万(10月7日)、500万人(10月14日)と下降の一途を辿っています。それでも、10月16日には22話が確約されました。
「HOUSE」や「Backstrom」(2月16日にご紹介した自暴自棄、暴飲暴食、偏屈刑事)に次ぐ偏屈病理学者ローズウッド(モリス・チェストナット)が主人公の犯罪捜査ドラマです。特にこれと言って、目新しいアイデアのドラマではありません。
コメディー
◇「Grandfathered」
3話放送済み。9月29日のパイロット版は534万人の視聴者を獲得しましたが、2週目は387万人、3週目は317万人と、悪戦苦闘かと思いきや....10月15日、6話追加制作が発表されました。
ジョン・ステイモスが50歳の独身実業家を演じる本作は、タイトル通り、ある日突然目の前に現れた息子と孫娘に戸惑うジョージ・クルーニー風「最後の独身男」のコメディーです。
◇「The Grinder」
3話放送済み。「Grandfathered」の後続番組として9月29日に放送されたパイロット版は、498万人の視聴者を獲得しました。2週目は315万人、3週目は253万人と、明らかに「Grandfathered」より更に悪戦苦闘しています。ところが、本作も10月15日に、6話追加制作が発表されて、シーズン1は19話となる見込みです。
ロブ・ロウがドラマ「The Grinder」で演じた弁護士を、故郷アイダホ州ボイジーにそっくりそのまま持ち込むコメディー。弁護士として活躍していた弟を差し置いて、クライアントに法律のアドバイスを始めると言う、ロウのファンにとっては嬉しい(?)コメディーのようです。
■ NBC
ドラマ
◇「Blindspot」
放送3週目に、22話が確約されました。今シーズン初の「ヒット作!」とNBCが主張するの
は、放送開始日に、1000万人の視聴者を獲得したからですが、10月19日には、782万人に減少しています。この調子で、22話を維持できるのでしょうか?
記憶喪失の女性の全身に刻み込まれた刺青が、犯罪捜査の手がかりとなるアクションスリラーは、特に目新しいアイデアではありません。但し、他にこれほどの視聴率を獲得した作品がないので、NBCはシーズン更新するでしょう。
◇「Heroes Reborn」
10月15日に第5話が放送されたミニシリーズ。10話限定で制作しているようなので、今シーズンは安泰に違いありませんが、放送5週目には、プレミア日に獲得した609万人の視聴者のうち200万人余りが、放棄しています。
同様のヒーロー・アクションモノが、これでもかこれでもかと登場する現在、「新キャラの新ドラマ」との触れ込みでは、嘗てのファンを掴みきれないのでしょう。
◇「The Player」
4話放送済みですが、裏番組がABCの「殺人を無罪にする方法」なので、悪戦苦闘中です。とは言え、9月24日のプレミア時に獲得した468万人の視聴者が、比較的変わりなく観ていると言う事実は否めません。10月15日の放送時、約400万人弱の固定ファンで定着した感があります。
但し、ドラマとして目新しさもなく、キャラに魅力がないので、続きを観たいと思いません。また、アクションスリラーが1本増えた?程度の印象しか残らず、今年初の打ち切り作になる可能性が大です。「Blood & Oil」と打ち切り第一号の座を争っているような...
コメディー
◇「Best Time Ever With Neil Patrick Harris」
ニール・パトリック・ハリス司会のバラエティ番組。ドラマと違って、経費もそれほどかからない上、10月13日放送の第5回目でも、450万人に視聴者を維持しているので、しばらくは安泰ではないでしょうか?
◇「Truth Be Told」
1話放送済み。パイロットでは、「それを言っちゃっちゃおしまい」が余りにも沢山ありすぎて、今の世の中、実に生き難い!がテーマでした。パイロット以降、どのようなコメディーになるのかは不明ですが、キャラ設定から生まれたコメディーではないようです。人種差別撤廃や家庭内暴力撲滅など、概念をコメディーにするとこうなるのでは?と言う好例のような気がします。
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「Satisfaction」よ、お前もか!?青空シリーズは古代の遺物になる?
「Satisfaction」(昨年9月10日「21世紀の結婚を考察する『Satisfaction』『The Affair』」でご紹介)の期待のシーズン2が、 10月16日午後10時に放送開始されると聞きつけ、9月中旬からUSA局広報にDVDを送ってくれるよう再三依頼しました。ぎりぎりになって、DVDには焼かない方針になった、オンラインでも前もって観るようにはしていないと言い渡されました。えー?今年に入って、USA局のどの作品の番宣DVDも舞い込まなくなった訳です。
シーズンの展開を説明する文書と共に、1~2話録画したDVDを必ず送ってきたUSA。他局同様、オンラインに移行したのかと思い、アクセスしたいと懇願したがそれも断られた。(c) Meg Mimura
星の数ほどあるテレビ番組の中から、厳選してお薦めするのが評論家の使命です。視聴者と同時に観ていては、仕事になりません。新番組にしか番宣予算がとれない各局が、毎シーズン視聴率が下降することを前提に、継続番組の番宣に手間暇かけないと言う投げ遣りな態度が最近横行しています。シーズン2を観て、えー、こんな秀作見逃していたの?と気付く視聴者もいますから、番宣に手間暇かければ、この悪循環を断ち切ることは可能だと思うのですが....
とは言え、番宣予算云々以前に、局の持ち味が豹変し始めたことが気になります。USA局の名を上げるのに大きく貢献した青空シリーズ(Blue Sky series)が、一本ずつ消えて行きます。青空シリーズとは、「ホワイト・カラー」や「リーガルに恋して」「サイク/名探偵はサイキック? 」「ロイヤル・ペインズ/Royal Pains 〜救命医ハンク〜」「バーン・ノーティス 元スパイの逆襲」などに代表される、私立探偵/刑事/弁護士/医師のお洒落でユーモアたっぷりのドラメディーです。元々、レスリング局として知られていたUSAが、女性視聴者集客を目論む苦肉の策だったのかもしれません。
ところが、「SUITS/スーツ」ファンの半数以上が青年層と発表があり、スポンサーの毛色が変わった後に登場した「グレイスランド/西海岸潜入捜査ファイル」(2013年)辺りから、抜けるように青かったUSAの空に、雲が現れ始めました。2014年の「RUSH ~スキャンダルな外科医」は呆気なく打ち切られてしまいましたが、今春登場した「Complications」や「Mr. Robot」の前兆だったようです。来年1月にデビューを控えているカールトン・キューズの「Colony」は、宇宙人に乗っ取られたLAで必死に抵抗するレジスタンス一家を描くSFアクション・アドベンチャーです。次第に、USA局の青空に暗雲が垂れ込めるような、陰険な作品が登場し始めました。底抜けに明るい作品ばかりと言う訳には行かないのは分かりますが、陰険さで他局とどんぐりの背比べする必要はない筈です。
10月16日に始まった「Satisfaction」シーズン2も、暗雲に拍車を掛けています。シーズン1は、21世紀の結婚を考察する作品として、「アフェア 情事の行方」と並べてご紹介したほど、示唆に富んだドラマでした。
グレース(ステファニー・ショスタク、左)は、夫の裏切りに愛想をつかして、インテリア・デザイナーとして雇ってくれたマダム・エイドリアナ(キャサリン・ラナサ)の豪邸に逃げ込む。リッチな女性にジゴロを派遣するエイドリアナの商売や夫との関係にも興味津々のグレース。Courtesy of USA Network
何の不自由もなく、幸せな一家として世間から羨望の的だったトルーマン一家ですが、蓋を開けて見ると....外見と中身は大違い!進学を断念した歌手志望の娘アニカ(ミシェル・デション)が巣立つと、すれ違いで広がった溝を埋める努力を怠った結果、ニール(マット・パスモア)とグレース(ステファニー・ショスタク)は遂に別居してしまいます。
ニール(マット・パスモア)は、投資アドバイザーに復帰したものの、時々有閑マダムのお相手をする羽目に。マダム・エイドリアナのコントロールを嫌い、今シーズンはサイモンとコンビを組む。Courtesy of USA Network
夫婦を引き裂こうとするのは、ニールにあの手この手でちょっかいを出すマダム・エイドリアナ(キャサリン・ラナサ)と、グレースの元ジゴロのサイモン(ブレア・レッドフォード)です。しかし、ニールはサイモンと組んで高級ジゴロ派遣会社を設立し、グレースはマダム・エイドリアナの罠にまんまと引っかかって、男対女の闘いに発展して行きます。
サイモン(ブレア・レッドフォード)は、バーで会ったグレースに恋して、駆け落ちを提案した。シーズン2では、サイモンの素性や父親との複雑な関係が明るみに出て、意外な事件に発展して行く。Courtesy of USA Network
シーズン1からニールは悟りを開こうと奔走し、今シーズンも何とか倦怠期を乗り切ってグレースを取り戻そうとします。片や、相変わらず他力本願で、地に足が着かないグレースは、才能を伸ばす降って湧いたチャンスを棒に振って、逃げの一手に出ます。背信を詫びるどころか、自責の念に駆られることもありません。口にこそ出しませんが、グレースの居直りの根拠は、「夫に構ってもらえないから、浮気に走るのは当然!」のようです。シーズン2に至っては、マダム・エイドリアナの挑発に乗ったり、時にはニールを巡ってマダムと張り合ったり、どんどん現実離れして行きます。
第一話放送の翌日、シーズン2全10話が一気観できるようになっていることを発見しました。局の方針が不可解なので、一時的にアップロードされているだけかも知れないと、丸1日かけて、観ました、観ました。一気観は3話が限度なんですが....
「クリエイターはこんな展開を最初から予想して、創作したのだろうか?是非、聞いてみたい!」と思いました。クリエイターのビジョンが大きく振れたのではないか?と想像するからです。更に、余程女にひどい目に会ったのではないか?と思うほど、グレースとエイドリアナのキャラがどぎつい悪女として描かれています。
金曜日夜10時という放送時間をとっても、シーズン2が暗い、ムカつく終わり方をした事実をとっても、シーズン3はもうあり得ないと推測します。万が一更新されても、ニール以外のキャラには感情移入できないので、後は野となれ、山となれ!すっかり、興味を失ってしまいました。
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「アフェア」シーズン2進行中。益々、面白くて目が離せない!
昨年9月10日「21世紀の結婚を考察する『Satisfaction』『The Affair』」でご紹介した二作の内、「Satisfaction」は、180度方向転換してしまい、更新されても観たくない暗~い作品になってしまったことは既にご報告しました。(10月30日の「『Satisfaction』よ、お前もか!?青空シリーズは古代の遺物になる?」をご覧ください。)
「Satisfaction」とは正反対、シーズン2は1の何倍も面白いのが、10月4日から放送されている「The Affair」です。英語で書いたテレビ評は、こちらをご覧ください。
http://www.familychoiceawards.com/entertainment/the-affair-season-2-airs-on-showtime/
邦題「アフェア 情事の行方」として、11月19日にWOWOWプライムで放送開始されましたが、シーズン2は益々面白くなるので、お見逃しなく!という私の一押しドラマです。ネタバレしない程度に、ご報告します。
クリエイター(ハガイ・リーヴィー、サラ・トリーム)の過去の実績を目の当たりにしていたので、不倫の波紋を描くこのドラマへの期待度は高かったのですが、第一話からすっかりハマってしまうほどの出来。昨今珍しい心理ドラマであることに加えて、不倫の当事者アリソン(ルース・ウィルソン)とノア(ドミニク・ウエスト)の物の見方が、如何に異なるかが実に巧妙に描かれました。性別、生い立ち、階級、教養などのフィルターを通すと、不倫に纏わるアリソンとノアの体験談がここまで違ってくるのか?とびっくりしました。
シーズン1プレミアに先駆けて、昨秋送られてきた小冊子。第1章ノアとヘレン(左上の白い冊子)と第2章アリソンとコール(紺色の冊子)には、トリームの序文、ドラマの触りやセリフ、俳優のプロフィール、制作陣の経歴などが記載されていた。右上端は、TCAプレスツアーで配布されたプレミア回のDVD。プレミア後は、数話纏めてDVD(下段の3枚)が届いた。(c) Meg Mimura
もう一つ驚いたのは、去る8月に実施されたパネルインタビューで、「事実はどれなのか?」と尋ねる評論家が多数いて、トリームとプロデューサーのジェフリー・ライナーを困惑させたことです。散り散りなった2組の夫婦を繋ぎ止める役目を果たす、とある「事件」の謎解きをしたい気持ちは解りますが、「事件」に固執する余りドラマの真髄を見逃しているな~と思いました。この手の心理ドラマに慣れていない評論家が多いからでしょうか?それとも得体の知れないものを分析しようとする余りの質問だったのでしょうか?確かに、シーズン1は「??」と思うことが多かったとは思いますが、私は何度も観て確認したので、質問は流し観している人から出たのではないでしょうか?
シーズン2は、4人の視点で描くドラマの内容に因んで、化粧箱を開けると、各キャラの小冊子が4冊出てきた。今シーズンから、オンラインで前もって視聴できるようになったが、最初の2話が入ったDVDも添付されていた。(c) Meg Mimura
現実からの逃避だったシーズン1とは打って変わり、今シーズンはアリソンとノアが現実に直面せざるを得なくなります。出逢いから不倫までは、夢の中のようで、現実が入り込む余地はほとんどありませんでしたが、流石にお互いの家族や日々の暮らしが貫入して来ると、綺麗事では済みません。
シーズン2は不倫発覚後のヘレン(モーラ・ティアニー)とコール(ジョシュア・ジャクソン)が加わり、4人の男女の視点から描かれ、早いペースで進展して行きます。アリソンとノアが築こうとする新たな世界は、波打ち際に作った砂の城のように、少しずつ崩れて行きます。ノアが書いた小説が作り話であるにも関わらず、登場人物として取り上げられた人達の現実が歪み始める「文字の魔力」が描かれている点は、もの書きにとっては特に面白い点です。
残り3回となってしまいましたが、早く次回が観たいと思うと同時に、終了してしまったら、シーズン3まで待てない!と不安を覚えます。
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